ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
   英語解釈       実務の視点による ISO9001:2008 要求事項の 解説

$1 要求事項 [英文:requirement] (用語:各条文)
l “requirement”は「必要とするもの又は望むもの*1」及び「何かをするために持っていなければならないもの*2」 (101)、 また、「望まれるもの又は必要とされるもの*3」及び「何かの存在や実現に必須のもの*5」として、「必要や不可欠*4」及び「条件*6」の意味をもつ(102)
l 事業用語としては必要条件、必要事項の意味であり、「要件」「条件」「基準」「規則」が当てられる。
l 規格の定義では『ニーズ若しくは期待』であり#18、「必要」の意味を広く捉えている。
l 規格の文脈では、あることが満たされなければならない、あることが実現されなければならないという意味での「必要」「必要性」「要件」である。
l また、規格は各業務のあり方を『~しなければならない』という表現で規定しているが、この『~しなければならない』という形式の規定のことを規格では“requirement”と呼ぶ。これは規定の表現のひとつの方式であり、「適合性を主張する場合に満たさなければならない、そして、それからの逸脱が認められない基準を伝える規格における表現方法*7」であると決められている (130a)
*1 something that you need or want; *2 something that you must have in order to do something else;
*3 something wanted or needed; *4 necessity; *5 something essential to the existence or occurrence of something else; *6 condition; *7 expression in the content of a document conveying criteria to be fulfilled if compliance with the document is to be claimed and from which no deviation is permited.
$1-1 規格が要求する (英文:……required by this International Standard) (条文:4.2.2 c))
動詞“require”は「何かを必要とする」の意味(101)であるから,「規格によって必要とされる…」である。
   
$1-2 要求事項(修飾語の付いた場合) (用語:各条文)
英文法では、2つの名詞から成る名詞は群名詞と呼ばれ、後の名詞が本来の名詞としての意味を持ち、前の名詞 は後の名詞を修飾する形容詞として働く(107a)。この場合の群名詞ABでは、B is from(for)Aの意味に受けとめ、Aに関する(Aの)要件、条件、必要事項、必要又は期待、必要性というように和訳するのがよい。
$1-2-1 購買要求事項 [英文:purchasing requirement] (用語:7.4.1)
購買製品が組織の必要を満たす仕様と品質であることを確実にするための「購買に関する必要事項」であり、供給者が組織への購買製品の供給に関して満たさなければならない要件であり、組織が供給者に課した「購買条件」である。
$1-2-2 顧客要求事項 (用語:5.2, 5.6.3 b) [英文:customer requirement]
「顧客に関する必要条件」「顧客要件」であり、供給者としての組織が満たす必要がある事項である。規格は顧客のニーズと期待を満たす製品を供給することを旨としており、『要求事項』の定義#18の『ニーズ若しくは期待』に倣って「顧客のニーズと期待」がよい
$1-2-3 顧客の要求事項 (用語:8.2.1) [英文:customer’s requirement]
• 顧客が必要としている事項という意味の「規格要件」であり、規格の意図では「顧客のニーズと期待」である。
• 名詞が2つ組み合わされた形の群名詞ABと、A’sBのような’S属格(所有格)の違いは、例えば“dog food”と“the dog’s food”のように、前者はスーパーの棚に並ぶ一般的な犬の餌を意味し、後者は特定の飼い犬に与えている餌を意味する(107e)
• この英語の用法に従うと、群名詞 “customer requirement”$1-2-2は一般論としての「顧客のニーズ及び期待」の意味であり、’S属格の“customer’s requirement”は、ある特定の「顧客のニーズ及び期待」を意味する。
$1-2-4 製品要求事項、製品に関連する要求事項 (条文:6.2~6.4, 7.2)
英文:product requirements, requirements related to the product]
どちらも「製品に関する必要条件」であり、組織が製品に関して満たすべき必要条件という意味である。簡単には「製品要件」である。
$1-2-5 監視及び測定の要求事項  [英文:monitoring and measuring requirement] (条文:7.6)
「監視測定活動に関する必要条件」の意味であり、規格の文脈からは「監視測定活動の必要」がよい。
   
$1-3 要求事項(その他の場合)
$1-3-1 顧客が規定した要求事項 [英文:requirements specified by the customer] (条文:7.2.1 a))
“specify”は「特に正確な大きさや時間、正確な指示内容を示すことによって、何かについて言う又は記述する*1」の意味であり(101)、日本語では「~を明確(明細)に述べる、特定する、明記する」である(108)。条文の文脈からは「具体的に表わされた」に意味があり、条文の意図は「顧客の想いの具体的な必要条件」である。
*1 to state sth, especially by given an exact measurement, time. exact instruction, etc.
$1-3-1 ~に関する要求事項を規定するために、“文書化された手順”を確立する (条文:8.5.2, 8.5.3)
英文: A documented procedure shall be established to define requirements for …….
l 『要求事項』は「必要事項」であり$1、『規定する(define)』は「明確にする」であるから、『~に関する要求事項を規定する』とは「~に関する必要事項を明確にする」の意味である。
l 不定詞“to define”は形容詞的用法であり名詞“A documented procedure”を修飾するから、『要求事項を規定するために“文書化された手順”を……』は「必要事項を明確にする“文書化された手順”」の意味である。
l つまり条文の意味するところは、a)~f)のそれぞれに関する「必要事項を明確にした“文書化された手順”を確立しなければならない」である。
 
$2 プロセス (英文: process) 各条項
① “process”には「特定の結果を達成するために行なわれる一連の事柄*1」「何かを行い又は作る方法。特に、産業界で用いられる方法*2」「生じる一連の事柄。特に、自然に生じる一連の事柄*3」の意味がある(101)
日本語では前者は、仕事、出来事など、中者は、方法、工程など、後者は、進行、時の経過などである(110)
② 規格の“process”は事業組織内で特定の結果を出すために次々と行なわれる活動を指しているから、“business process”のことであり、仕事や業務の活動のことである。
*1 a series of things that are done in order to achieve a particular result; *2 a method of doing or making sth, especially one that is used in Industry
*3 a series of things that happen, especially ones that result in natural changes
 
$3 システム [英文: system] (条文:4.1他)
l 『システム』の英文“system”は類似した幾つかの意味をもつが、この場合は「結びつけられている、或いは、一緒に機能している一連の物事や装置の部品など」の意味(101)に解するのがよい。
l 日本語では「体系、系統、系」であり(110)、「組織、体制」の場合もあり(108)、仕組みや枠組みの方がよい場合もある。
l 規格の定義では『相互に関連する、又は、相互に作用する要素の集まり』である#20
l 例えば新幹線運行制御システムとは安全な大量輸送のための時刻表、列車の運転、電力供給、走行情報の送受信、情報処理、運行調整等に係わる要員、設備、情報の有機的な集まりである。自動車は人が運転して迅速安全に移動できるシステム製品であり、エンジン、動力伝達装置、運転装置、車輪、車体、その他多数の部品が機能的に繋がったものである。人間は臓器、血管、神経、筋肉、骨格、皮膚などが有機的に機能する人体システムによって生きている。
 
$4 実施する [英文: implement] (条文:4.1他)
l “implement”は、「公式に決められていたことの実行又は使用を開始する*1」(101)、「定められた義務又は契約を完遂する*2」「~に効力を与える*3」の意味(114)である。TC176指針(6)では「(決定や計画)に効力を与える*3」と定義されている。単なる「実行」ではなく「決められた通りに実行する」という意味である。
l 日本語では、債務の履行、条約の履行、方針の履行などとして使われる「履行」が適している。
l 「品質マネジメントシステムの履行」とは、品質マネジメントシステムの手はずの下で、確立した手順に則り、用意された資源を使用して業務を行なうという意味である。
l プロセスアプローチの計画-実施-管理-継続的改善の『実施』も“implement”で、「計画」された手はずを実行することであるから、やはり「履行」の意味である。
*1 to make sth that has been officially decided start to happen or be used; *2 to fulfill an obligation or contract which has been entered into; *3 to give effect to; put (a decision or plan) into effect;
 
$5 維持する [英文: maintain] (条文:4.1他, 6.3)
“maintain”で規格に関係する意味は、「物事に同じ水準、基準などを続けさせる*1」「建物やたけもの機械などを、定期的点検や修理によって良い状態に保つ*2」である(101)。また、TC176指針(6)では「続ける、継続する、(計画や事業を)元のままに維持する*3」である。
$5-1 品質マネジメントシステムを維持する (条文:4.1)
品質マネジメントシステムの必要な機能を保つことであり、品質マネジメントシステムに必要な変更を加えること
$5-2 インフラストラクチャー を維持する (条文:6.3)
物的資源の機能、性能を保守、保全すること
*1 to make sth continue at the same level, standard, etc; *2 to keep a building, a machine, etc. in good condition by checking or repairing it regularly; *3 go on with, continue, preserve in (an undertaking)
 
$6 明確にする (英文:determine) (条文:4.1 a), b), c),6.1,6.2.2 a), 6.3, 7.1, 7.2.3, 7.3.1, 7.3.2, 7.6)
l “determine”は「何かについての事実を発見する、正確に計算する*1」「特定の方法で何かを生じさせる*2」「正式に決める、手はずを整える*3」「何かを行なうことをはっきり決める*4」(101)であり、いろいろの意味での「決定する」ことである。
l 日本語では、決定する、確定する、~と判断する、計算で求める、定量する、測定する、割り出す、~を解決する、権利などを消滅させる、~の要因である、~を左右する等である(110)(109)(108)
l 規格では、多くの中から探して特定するという意味での「~を決定する」であり、「特定する」と和訳する方が合っていることが多い。
*1 to discover the facts about sth; to calculate sth exactly; *2 to make sth happen in a particular way *3 to officially decide and/or arrange sth *4 to decide definitely to do sth

$6-1必要なプロセス及びそれらの組織への適用を明確にする (条文:4.1 a))
英文:determine the processes needed for the quality management system and their application throughout the organization
① 『~明確にする』
• 00年版では“identify”$14であったが、これは規格の他の部分で「識別する」「特定する」と和訳されているように、多くの中から探して特定するという意味である$6。08年版で“determine”に変わったのは “identify”と“determine”の使い方を“determine”に一本化することにしたためと説明されている(91)
• 『必要なプロセスを明確にする』とは「どの業務(プロセス)とどの業務(プロセス)が品質マネジメントシステムに必要であるかを決める」という意味である。
② 『それらの組織への適用』
• 『それら』とは上記で必要と決めた業務(プロセス)のことを指し、“application”は使用や運用、適用の意味であるから、『それらの適用』とは日本語で言えば、「業務の実行」のことである。
• “throughout”は「至るところに」の意味(108)である。『組織への適用』とはそれら業務(プロセス)が組織内のいろいろな部門で実行されることを意味する。つまり、各業務が組織内のどの部門で行なわれるのか、又は、分野横断的業務としてどの部門とどの部門を通して行なわれるのかという意味であり、“determine”であるから、このようなことを決めなければならないということである。英文を日本語で表現するなら「それら業務の」であろう。
③ 適切な和訳は「必要な業務及びそれらの組織内での実行の主体を決める」であり、品質マネジメントに必要な業務とそれらを実行する部門を特定するという意味である。
$6-2 判断基準と方法を明確にする (条文:4.1 c))
『判断基準』は“criteria”で、判断や評価の基準、満たすべき条件の意味(109)であり、業務実行の基準や結果の許容範囲のことであり、実務的には工程条件や製品の合否判定基準などを指す。『方法』は“method”で、方法、やり方、方式、手順、手法、技法などを意味(109)し、規格では「手順」である。『明確にする』は“determine”で「決定する」である。
 
$7 確立する (条文:4.1他) 設定されている (条文 5.4.1) [英文: establish]
“establish”は「制定又は合意によって恒久的な規則とする*1」(102)、「(永続することになっている)組織や システム などを開設又は創設する*2」(101)という場合に通常用いられる。規格における意味として「恒久的なものとして制定する、定着させる、創設する」ことであるという説明(23a)もある。
*1 to institute (as a law) permanently by enactment or agreement;
*2 to start or create an organization, system, etc. that is meant to last for a long time
 
$8 運用 [英文:operation] (条文:4.1 c),d); 4.2.4)
l “operation”は、医療、組織的活動、事業、電子計算機、機械/システム*1、軍事活動に関係する言葉であり(101)、規格の文脈上は組織的活動の用語としての「異なる事を行なう多数の人々が関係する組織化された活動*2」の意味に解するのがよい。
l すなわち、規格の“operation”は「業務の実行」の意味である。品質マネジメントシステムは品質マネジメントに関係する多くの業務の有機的集合体であるから、『品質マネジメントシステムの運用』(operation of the quality management system)とは「品質マネジメントの諸業務の実行」のことである。
*1 Medical, Organized activity, Business, Computer, Machine/System;
*2 an organized activity that involves several people doing different things
 
$9 文書化された手順 (英文:documented procedures) (条文:4.2.1)
この表現は英文でも94年版で用いられていた。すなわち、各条項の書き出しの「….の手順を文書に定め、維持すること」は英文では“……shall establish and maintain documented procedures for ….”と、「文書化された手順を確立し維持する」であった。
 
$10 これらのプロセス について、計画どおりの結果が得られるように、かつ、継続的改善を達成するために必要な処置をとる (条文:4.1 f))
英文:implement action necessary to achieve planned results and continual improvement of these processes
“implement”は定められた手順に則って業務を行なうことである$4から、予め定められた処置(action)があり、これを実行するということである。英文を素直に和訳すると「これらプロセスの計画$28通りの結果、及び、継続的改善を達成するのに必要な処置を定められたように実行する」である。
 
$11 品質マネジメントシステムの適用範囲 [英文:the scope of the quality management system] (条文:4.2.2 a))
『適用範囲』の英文は“scope”であり、これは「あるもの、組織、活動などが取り扱うものの範囲」という意味(101)である。「品質マネジメントシステムの適用範囲」は、品質マネジメントシステムが取り扱う範囲、対象とする範囲といった意味である。
*1:the range of things that a subject, an organization, an activity, etc, deals with
 
$12-1 それらを参照する情報 [英文: reference to them] (条文:4.2.2 b))
l 名詞の“reference”には種々の意味があるが、この場合は「書籍の中の特定の情報がどこから来ているかを示す註釈*1」(101)の意味である。
l “them”は『文書化された手順』のことであり、英文の意味するところは、品質マニュアルに概括される手順が実際に規定されている文書を、文書名や文書番号で指し示すことである。正しい和訳は「それらを記載する文書名」である。
*1 a note in a book that tells you where a particular piece of information comes from
 
$12-2 製品の合否判定基準を参照している [英文: reference product acceptance criteria] (条文:7.3.3 c))
動詞の“reference”は“to refer to sth”であり(101)、「参照する/言及する/引用する」である(108)。この場合は「製品の合否判定基準を引用している」が適当である。
 
$13 一連のプロセス を システム として適用する (条文:0.2項)
この英文は“The application of a system of processes within an organization, ……,can be referred to as the process approach”であり、直訳すると「諸プロセス のシステム を組織内に適用することを、……、プロセスアプローチと呼ぶ」である。
 
$14 識別する、識別 [英文: identify, identification] (条文:4.2.3, 4.2.4, 7.3.7, 7.5.3, 7.5.4, 7.5.5, 7.6 c), 8.3)
l 動詞“identify”には、次のa),b),c)のような意味(101)がある。
a) 特定 =「見分けて、誰であるか又は何であるかを言うことができる*1」であり、日本語では「特定する」「同定する」である。
b) 発見 = 「誰か又は何かを見つける、発見する*2」であり、日本語では「つきとめる」である。
c) 区別 =「誰であるか又は何であるかを見分けることができるようにする*3」であり、日本語では「見分けられるようにする」「区別できるようにする」「識別できるようにする」である。「服装によって人々が属する特定の社会的階層を見分けることができる*4」というように使われる。
l 名詞“identification”には、“identify”する行為、“identify”された状態、「身元証明」の意味がある。
l JISが『識別する』『識別』と和訳している場合は、c)の「識別できるようにする」「識別できるようにする活動」の意味である。
*1:to recognize ~ and be able to say who or what they are; *2:to find or discover ~; *3 to make it possible to recognize who or what sb/sth is; *4 In many cases, clothes people wear identify them as belonging to a particular social class
 
$14-1文書の変更の識別 及び 現在有効な版の識別を確実にする (条文:4.2.3)
英文: to ensure that changes and current revision status of documents are identified”。
l 文書の変更の識別 [英文:changes of documents are identified]
英文は、文書の変更が見分けられるという意味である。“ensure”は、これを確実にするという意味であるから、文書のどこがどのように変更されたかをわかるようにすることを確実にする、ということである。
l 現在有効な版の識別 [英文:current revision status of documents are identified]
• “status”は、「進行中の特定の時期における状況」の意味$17である。“revision status”であるから改定に係わる状態であり、初版か改定版か、改定何版かというようなこと意味する。その現状が“current revision status”であり、直訳すると「文書の改定に係わる現在の状態」である。
• 英文は、この「文書の改定に係わる現在の状態」が見分けられるようにするという趣旨である。標題が同じひとつの文書で内容の異なる初版や改定版がある場合に、どれが新版でどれが旧版か、現在の最新の改定版は第何版か、などの改訂の状態が見分けられるようにする、という意味である。
   
$14-2 不適合製品を識別する 条文(8.3項)
英文: product which does not conform to product requirements is identified
不適合製品を識別できるようにするという意味であり、不適合製品であることがわかるように他の適合製品と区別ができるような状態で取り扱い、保管などの管理をすることが英文の意図である。
 
$15 読みやすく、容易に識別可能、かつ、検索可能でなければならない (条文:4.2.4)
      読みやすく、かつ、容易に識別可能な状態にあることを確実にする (条文:4.2.3;
英文:remain legible, readily identifiable and retrievable
l “remain”は「引き続き~である*1」「まだ同じ状態又は状況にある*2」である。JIS和訳では「~である」であるが、“remain”が付いているので、規格の意図は「~である状態を維持する」である。
l 読みやすい [英文:remain legible]
“legible”は「書かれたり印刷された文字が読み取ることができるのに十分に明瞭である*4」ということ(101)であり、“remain”の同じ状態に留まっているという意味を合わせると、文書や記録の内容が読み取れる状態が維持されているということである。
l 容易に識別可能 [英文:remain readily identifiable]
この場合の“identity”は、特定するという意味$14であり、“identifiable”は「特定できる」である。readily”は「迅速で困難なく*3」であり、迅速にできるという意味で『容易に』である(101)。どのような文書、記録であるかが難なくわかる、或いは、これがそうだと必要な文書や記録を難なく特定できるという意味である。更に“remain”であるから、英文の意図はその状態が維持されているということである。
l 容易に検索可能 [英文:remain readily retrievable]
“retrieve”は「ある物を、特に、あるべきでない場所から元に戻す、又は、取り戻す*5」の意味であり(101)、日本語では「取り返す、回復する」(110)「取り出す、取り戻す、回収する、取ってくる」(108)である。“retrievable”は、記録を保管されている状態から取り出すことができるという意味である。これも“remain”であるから、規格の意図は必要な程度に迅速に取り出すことができるような状態で保管することである。”
*1: to continue to be sth; *2: to be still in the same state or condition; *3 :quickly and without difficulty;
*4: (of written or printed words) clear enough to read;
*5 :to bring or get sth back, especially from a place where it should not be;
 
$16 要求事項への適合
$16-1 要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの効果的運用の証拠 (条文:4.2.4)
英文:evidence of conformity to requirements and of the effective operation of the quality management system
$16-2 要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの有効性の継続的改善に対するコミットメント (条文:5.3 b))
英文: commitment to comply with requirement and continually improve the effectiveness of the quality management system
● 『要求事項への適合』
• 何に関する『要求事項』を指すのかわからない。$16-1、$16-2のどちらの場合も文末の“of the quality management system”が“requirements”にも掛かり、“requirements of the quality management system”で「品質マネジメントシステムの要求事項」であると解釈するのが規格の意図に適うと考えられる。
• このような英文解釈は、文法上では適切とは言えないが、規格にはこの種の英文が少なからず見られる。例えば、0.2項のプロセスアプローチの説明文の中の “when developing, implementing and improving the effectiveness of a quality management system”は、『品質マネジメントシステムを構築し、実施し、その品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善する際に』と和訳されている。つまり、英文の意図するところは“developing, implementing a quality management system and improving the effectiveness of a quality management system”である。
● 「品質マネジメントシステムの要求事項への適合」
• これは、4.1項の『この規格の要求事項に従って品質マネジメントシステムを確立し、文書化し、実施し、維持し、継続的に改善すること』と基本的に同じ意味である。
• 『要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの効果的運用の証拠』の『効果的運用』は“effective operation”であり、「効果的な業務実行」の意味である。このことは規格では普通は『効果的実施(effective implementation)』と表現されている。いずれにせよ「品質マネジメント システムの要求事項への適合」の一部であり、これと併記することは重複記述である。業務実行と結果の証拠としての記録の性格#7を強調した表現なのであろう。
『要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの有効性の継続的改善に対するコミットメント』の『有効性の継続的改善』は「品質マネジメントシステムの要求事項への適合』の一部であり、両者の並列記述は重複記述である。問題を解決し変化する情勢に対応して組織を方向づける品質方針の本来的性格である現状改善を強調する表現と考えられる。
• 規格の条文記述には、統一性に欠けるところが少なからず見られる。例えば、8.1項でも品質マネジメント システムの『適合性を確実にする』ことと『有効性を継続的に改善する』ことが並列記述されており、上記の4.1項の品質マネジメント システムのPDCA/プロセスアプローチ サイクルの表現も、5.1項では『~の構築及び実施、並びに、その有効性を継続的に改善すること』と異なって表現されている。
 
$17 状況 [英文:status] (条文:5.6.2 d))
この場合の“status”は、「進行中の特定の時期における状況*1」の意味(101)であり、日本語では「状態、状況、現状、進行状況」である(108)
*1:the situation at a particular time during a processs
  
$18 顧客満足の向上を目指して、トップマネジメントは、顧客要求事項が決定され、満たされていることを確実にしなければならない。 (条文:5.2)
英文: Top management shall ensure that customer requirements are determined and are met with the aim of enhancing customer satisfaction)
l 顧客満足の向上を目指して
Ÿ 『顧客満足の向上』は“enhancing customer satisfaction”であり、規格の文脈では「顧客満足の追求」であり、これが品質マネジメントの目的である。
Ÿ 『を目指して』は“with the aim of ….ing ”であり、「目指して、を目的に」の他に「~の旗印の下で」とも和訳される(109)
Ÿ 『顧客満足の向上を目指して』は「顧客満足の追求という(品質マネジメントの)狙いに沿って」が規格の意図の意味であり、日本語としては例えば高品質という観点でも低コストという観点でもないという意味での「顧客満足の追求という観点から」が適当である。
l 顧客要求事項が決定され、満たされている
Ÿ 顧客要求事項を決定し、満たすのは組織であるから、that節を能動態表現にすると主語は組織(organization)である。
Ÿ 日本語的に能動態で表現すると「組織は、顧客要求事項を決定し、満たす」である。
l 条文は『顧客要求事項』を「顧客のニーズと期待」と表し$1-2-2、「トップマネジメントは、組織が顧客満足の追求という観点から顧客のニーズと期待を把握し、満たすことを確実にしなければならない」と和訳するのが、規格の意図に合い、わかりやすい。

$19 マネジメント [英文:management] (条文:多数)
l 英文“management”には2つの意味があり、ひとつは「事業組織やその他類似の組織を指揮し統御すること*1」で、もうひとつはそれを「行ない、又は、責任をもつ人々*2」である(101)
l 日本語では前者は「経営」又は「経営管理(マネジメント)」であり、後者は「経営層」又は「管理層」である。
l 規格では、“management”が人を表す場合は「マネジメント活動」との混乱を避けるため、“top management”のように修飾語を付きで用いるのが原則である(ISO9000;3.2.6 注記)。
$19-1 マネジメントシステム [英文:management system] (用語:多数)
l “management system”は、経営管理の業務の体系のことであり、日本語では経営管理の業務体系、或いは、経営管理体系である。組織の経営管理の目的に向けて種々の要素が関連して機能するようになっているそれら要素の集まり、つまり、経営管理活動を行なう枠組みのことである
$19-2 経営者の責任 [英文:management responsibility] (標題:5章)
群名詞であり、“management”は名詞“responsibility”に対する形容詞として機能する。また、規格では、“management”を人の意味で用いる場合には“top management”のように修飾語を付けることになっている#19。従って、経営に係わる責任という意味であり、経営責任のことである。
$19-3 経営者のコミットメント [英文:management commitment] (標題:5.1)
l $19-2と同じ文法上、及び、規格の用語の用法上から、経営に係わるコミットメントという意味である。
l 『コミットメント』を誓約、公約の意味#29をあてると、『経営者のコミットメント』は、経営を行なうことに係わる誓約であり、経営公約と表現できる。
$19-4 管理責任者 [英文:management representative] (用語:5.5.2項)
l “represent”は「ある点で~にとって代わる*1、~の代わりに行動する*2」であり、“representative”とは「他を“represent”する人」を意味する。“represent”する方法は「代議士、代理人、補佐人、代役」としてである(101)
l 規格では“management”は「経営」を意味し$19、“management representative”は$19-2と同じく群名詞であるから、「経営代行者」又は「経営代表者」の意味となる。
l 通常に用いられる用語としては、U.S.Trade Rep.(米国通商代表)、National Military Rep.(多国籍軍司令部に派遣された各国軍人)、Sales Rep.(会社を代表して販売する権限を持つ者)、Mill Rep.(苦情処理の工場代表)
*1:to take the place of in some respect; *2:to act in the place of ;
$19-5 管理責任者を任命しなければならない (条文:5.5.2項)
英文:Top management shall appoint a member of the organization’s management who, irrespective of other responsibilities, shall have responsibility and authority that includes a), b), c)
l 『任命する』は“appoint”であるから、「特定の仕事や役職に誰かを選ぶ*1」であり(101)、日本語では「指名する」である。
l 英文では“management representative”とは記述されておらず、「a)~c)項の責任及び権限を持つ組織の管理層の一員」と表現されている。
l 全文は「トップマネジメントは、他の責任が何であっても、a)~c)項の責任及び権限を持つ組織の管理層の一員を指名しなければならない」である。
*1:to choose somebody for a job or position of responsibility
  
$20 定められた、明確な [英文:define, be defined, defined] (条文: 5.5.1, 7.2.2, 7.2.5)
l “define”は、(語句の意味)を~だと言う又は説明する*1、正確に記述する又は示す*2、線や形又は端をはっきりと示す*3の意味である(101)
l 日本語では、~を定義する、~の意味を明確にする、~を特徴づける、(内容)を明示する; (責任、立場、役割)を明確にする; (範囲)を決める、規定するであり(108)、”defined”は「定義、明確、規定された」である。
*1:to say or explain what the meaning of a word or phrase is; *2: to describe or show sth accurately
*3:to show clearly a line, shape or edge
  
$20-1 次の活動に必要な管理を規定するために“文書化された手順”を確立しなければならない。[条文:4.2.3]
英文:A documented procedure shall be established to define the controls needed
l 英文では“needed”の後に、“a) to approve……”“b) to review ……”とa)~g)項が続くから、“define”はそれらひとつひとつの活動に必要な管理を明確にするという意味である。また、“to define”は結果を表す不定詞の副詞的用法と解するのがよい(112)
l 正確な和訳は「文書化された手順を確立して次の活動に必要な管理を明らかにしなければならない」である。
  
$21 伝達される、周知される、コミュニケーション、通信 (条文:5.1, 5.3, 5.5.1, 5.5.2, 5.5.3, 6.3, 7.2.3, 7.3.1,7.4.2)
英文:communicate, communication
l 他動詞の“communicate”で条文に関係する意味としては、次の2つである(101)
• 誰かと情報、ニュース、考え等を交換すること*1
• 考え、感情、想い等を他の人に知ってもらうようにすること*2、他の人と想いを相互に理解して、よい関係を築くこと*3
l 日本語では「知らせる、伝える、伝達する、~に連絡する」である(108)
*1: to exchange information, news, ideas, etc. with sb; *2: to make your ideas, feelings, thought ,etc. known to other people so that they understand them; *3: to have a good relationship because you are able to understand and talk about your own and other people’s, thoughts, feelings, etc.;
  
$21-1 内部コミュニケーション [英文:internal communication] (標題:5.5.3)
[条文] Top management shall ensure that appropriate communication processes are established within the organization and that communication takes place regarding the effectiveness of the quality management system.
l 条文英文は、ひとつの主語と動詞「トップマネジメントは」「を確実にしなければならない」に続く “that ~ and that ~” という構文の2つの名詞節から成る。2つのthat節に分かれるのは英語の表記の原則に従ったまでで、実質はひとつの文章で、「~して、~する」と和訳するのが適切である。
l 規格の意図では、どちらのthat節の“communication”も同じ“effectiveness of the quality management system”に関するものであると考えるのが自然である。
l 文意は「品質マネジメントシステムの有効性に関する」「適当な情報交換活動が確立し、その情報交換が行なわれる」であり、これを「トップマネジメントが確実にしなければならない」である
  
$22 レビューする  レビュー [条文:4.2.3 b), 5.3 c), e), 7.2.2, 7.3.4]
英文:review (動詞)、 reviewing (動名詞)
l “review”は見直し、再考の意味であるが、これにはふたつの観点がある(101)
➀ それでよいかどうかを評価するという意味で、物事を見直すこと。例えば「とりわけ、変更する必要があるかどうか決めることができるように、物事を再び、注意深く調査し、又は、考慮する*1」
② どのようなことであったか過去の出来事を振り返えるという意味で、物事を見直すこと。例えば「なぜそのようなことが起きたのか理解するために、過去の出来事を考える*2」
l 日本語では、➀の意味では、再調査、再検討、再吟味、再考など、②の意味では、回顧、反省、検査、点検、査察、検閲、審査などである(108)
*1:to carefully examine or consider sth again, especially so that you can decide if it is necessary to make changes;
*2: to think about past events, for example to try to understand why they happened
  
$22-1 マネジメント レビュー “management review” [標題、条文:5.6]
l 2つの名詞から成る群名詞であり、前の名詞は後の名詞を修飾する形容詞の働きをする。更に“review”は行為を表す名詞であり、前の名詞はこの行為の直接目的語の意味を持つ(107-c)。
l ここに“management”は「経営管理(マネジメント)」であるから$19、これを見直すことが“management review”である。
l “review”には「一定期間の行事として総合調査*1」の意味がある(102)。すなわち、“management review”は、一定期間の経営管理(マネジメント)活動を振り返り、実績と現状を体系的に総合的に見直して評価、検討し、課題を抽出し対応処置を決める活動のことであり、経営管理(マネジメント)活動の一環として制度化されているものを意味する。
*1 a general survey (as of the events of a period)
   
$22-2 トップマネジメントは、組織の品質マネジメントシステムが、引き続き、適切、妥当かつ有効であることを確実にするために、あらかじめ定められた間隔で品質マネジメントシステムをレビューしなければならない。
英文:Top management shall review the organization’s quality management system, at planed intervals, to ensure continuing suitability, adequacy and effectiveness.
l 英文では『確実にする』は副詞的用法の不定詞“to ensure”であり、目的を表す場合は「~を確実にするために~をする」、意図を表す場合は「~を確実にするように~をする」、結果を表す場合は「~をして~を確実にする」と和訳される(115)。
l 規格では標題が品質マネジメントシステムのプロセスを意味し、条文はこのプロセスの実行自体が必要というのではなく、実行の要件を規定している。本項も『レビューする』ことが必要と言うのではなく、『レビューする』ことの要件として『~を確実にする』ことが必要だと言っている。条文の本意は、『レビューする』ことで『~を確実にする』である。不定詞“to ensure”は動詞“review”の結果を表すと解釈すべきである。
l 英文の趣旨は、「…品質マネジメントシステムをレビューして、…引き続き、適切、妥当かつ有効であることを確実にしなければならない」である。
  
$23 適切かどうか、妥当であること、適切性 [英文:adequacy] (条文:4.2.3 a), 5.6.1, 7.3.2, 7.4.2)
l “adequacy”は名詞で、形容詞が“adequate”である。これは「特定の目的又は必要に対して量的に十分、又は、質的に十分良い*1」の意味である(101)
*1: enough in quality or good enough in quality for a particular purpose or need
 
$24 適切性、適切であること、適切な [英文:suitability、suitable] (条文:5.3 e)、5.6.1、7.5.1 c)、8.2.3)
l “suitability”は名詞、“suitable”は形容詞であり、「特定の目的や場合に対して、正しい又は適当である*1」の意味(101)である。 TC176指針(6)でも「ある目的、場合、人の性格などに、合う又は適当な*2」である。
l 適当な、適した、よく合った、ふさわしいという意味で、適切ということを表す。
*1: right or appropriate for a particular purpose or occasion
*2:fit for or appropriate to a purpose, occasion, person’s character, etc.
  
$25 有効性、効果的に [英文:effectiveness, effectively] (条文:4.1、5.6)
l 形容詞“effective”は「必要とした又は意図した結果が実現している*1」の意味である(101)
l 日本語では、名詞“effectiveness”は「有効であること、効果的であること、有効性」であり、副詞“effectively”は「有効に、効果的に」2る。
*1:producing the result that is wanted or intended
  
$26 しかるべき (条文:5.4.1)、 該当する(条文:8.4)
英文:relevant
“relevant”は「議論している問題、或いは、考えている状況と密接に関係している*1」(101)、「当該事項に無視できない程に強く、証拠で示し得る程に関係した*2」(102)であり、密接に関係する、間違いなく関連する、というような意味である。
*1: closely connected with the subject you are discussing or the situation you are thinking about
*2: having significant and demonstrable bearing on the matter at hand
$26-1 しかるべき部門及び階層 (relevant functions and levels)
『部門及び階層』は「経営機能上及び管理の観点」であり$61、『しかるべき』は「密接に関係する」であるから、『しかるべき部門及び階層』とは、品質方針及び組織の品質目標(5.3項)の達成に「関係する経営機能と経営の観点」という意味である。
$26-2 該当する情報源 (relevant sources)
データ分析する事項に「関係のある情報源」のことである。
 
$27 製品要求事項を満たすために必要なものを含む品質目標が設定されている(条文:5.4.1)
英文: quality objective, including those needed to meet requirements for product, are established
「製品の要求事項を満たすのに必要なものを含む品質目標が確立される」である。
   
$28 計画 [英文:planning] (標題・条文:5.4.2、7.1)
l “planning”であるから、「計画すること」であり、規格では「計画活動」を意味する。
l plan(計画する、計画)は、「将来行いたい事の手はずを整える*1」「何か、とりわけ、前もって詳細に考慮されたことを実現するために行なう一連の事柄*2」であり(101)、将来行なうことの手はずを整えること、又は、その手はずのことである。
 *1(動詞) to make detailed arrangements for sth you want to do in the future; *2(名詞) a set of things to do in order to achieve sth, especially one that has been considered in detail;
$28-1 品質目標に加えて4.1に規定する要求事項を満たすために、品質マネジメントシステムの計画を策定する (条文:5.4.2)
英文:Top management shall ensure that the planning of the quality management system is carried out in order to meet the requirements given in 4.1, as well as the quality objectives,
● 品質マネジメントシステムの計画を策定する
英文では「品質マネジメントシステムの計画活動$28が実行される」である。すなわち、品質マネジメントの業務の実行の手はずを整える活動が(各責任者によって)実行される、という意味である。
● 品質目標に加えて4.1に規定する要求事項を満たすために
英文の“A as well as B”は、「BだけでなくAも」であり(107b)、“in order to ~”は、人の目的やある事をする理由を述べるのに用いられ、日本語では「~するために」又は「~するように」である(107c)。この場合は後者であり、「品質目標だけでなく、4.1に規定する要求事項をも満たすように」である。
l 全体は、「トップマネジメントは、品質マネジメントシステムの計画活動が品質目標だけでなく、4.1に規定する要求事項をも満たすように実行されることを確実にしなければならない」である。
 
$29 コミットメント [英文:commitment] (条文:5.1, 7.2.2)
『コミットメント』は、「何かを行なう、又は、特定の態度をとることの約束*1」「何かを支持する約束*2」「自身がコミットメントしているという事実*3」であり(101)、日本語では対応する言葉はなく、義務、責務、責任、約束、確約、公約、言質、など様々な言葉が当てられる(108)
*1:to promise to do sth or to behave in a particular way; *2:a promise to support sb/sth;
*3:the fact of committing yourself
  
$30 完全に整っている状態 [英文:integrity of the quality management system] (条文:5.4.2 b))
l “integrity”は、「一体であり分割できない状態*1」を意味する(101)
l システムとは、多くの要素がばらばらでなく、相互に関連又は作用し合って全体としてひとつの目標を達成に向けて機能している状態を指す$19-1。この状態であることが“integrity”である。
l 英文の「品質マネジメントシステムの一体性」とは、品質マネジメントシステムの各業務がばらばらでなくシステムとして実行されている状態であり、品質マネジメントシステムのシステムとしての一体性のことを指す。すなわち、『品質マネジメントシステムが“完全に整っている状態”を維持する』とは、品質マネジメントの業務がシステムとしての一体性を保ちながら実行されることである。
*1 the state of being whole and not divided
  
$31 成果を含む実施状況 [英文:performance] (条文:5.5.2 b), 5.6.2 c), 8.2.1)
l “performance”は、➀演劇、演奏又はその他の楽しみ事を行なうこと*1、又は、②その方法*2、③何かをどれ位の首尾で行なったか、どれ位に首尾よく機能するか*3、④仕事や行為を行なうこと*4の意味である(101)。ある。
l この場合は③であり、日本語では「実績、業績(109)」「業績、実績、功績、成績、売上げ、出来高(108)」である。規格では、組織の品質マネジメントの成果としての実績であるから「品質マネジメントの業績」「品質マネジメントシステムの実績」が適当である。
*1 the act of performing a play, concert or some other form of entertainment; *2 the way a person performs in a play, concert, etc; *3 how well or badly you do sth; how well or badly sth works; *4 the act of performing a task, an action, etc
  
$31-2 品質マネジメントシステム の成果を含む実施状況の測定の一つとして (条文:8.2.1)
英文: As one of the measurements of the performance of the quality management system
l JIS和訳『測定』は“measurements”である。
Ÿ これは日本語では「測定、計測、軽量など」と「(計った)物の大きさ、広さ、深さなど」である(110)。前者は不可算名詞で、後者は可算又は不可算である(101)から、この場合は後者の意味である。この意味の延長として“performance measurement”に「業績指標」の訳を当て、“measurement”を「指標」の意味で用いる例がある(108)
Ÿ 一般に“measure”は、「物の大きさや程度のしるし*1」の意味を持ち(101)、「判断基準、尺度」の日本語が当てられる(109)。英米の規格解説書では、本項の説明でしばしば“measurement”でなく“as a measure of the performance of ….(20k)”“as a measure of system performance(12)”“as one of measures of QMS performance(24b)”のように“measure”を用いている。従って本条文の“measurements”は、「指標」「尺度」の意味で用いられていると考えるのがよい。
l 『成果を含む実施状況』は「業績」である$31から、条文の正しい和訳は「品質マネジメントシステムの業績の尺度のひとつとして」である。
*1: a sign of the size or the strength of sth
  
$32 改善の機会 [英文:opportunities for improvement] (条文:5.6.1)
l “opportunity”は「特定の状況が何かを行い、又は、なし遂げるのを可能にする時期」という意味(101)である。しかし、同義語には “chance, occasion,opening, room”が挙げられ(103)、前二者は「時機」であるが、後二者には「余地」の意味が読み取れる。
l 類語辞典(105)では「好ましい状況の組み合わせからもたらされる可能性」を意味するとし、同義語としてpossibility, possibleness(可能性)、room(余地)、opening(雇用の見込み)が挙げられている。
l 日本語では一般に「機会、好機、時機、潮時」であるが、「可能性、自由度、見込み」と和訳されもある(109)。例えば“see a significant opportunity”は「大きな可能性を予見する」、“compatibility with earlier models places a strong constraint on opportunities for new designs”は「先発機種との互換性は新しい設計の自由度(可能性)に厳しい制約を与える」である(109)
l “opportunities for improvement”の“opportunity”は可能性という意味であり、“room for improvement”と同じ意味の「改善の余地」「改善の可能性のある事項」という和訳が適当である。
  
$32-1 予防処置の機会 [英文:opportunities for preventive action] (条文:8.4)
l 『予防処置の機会』は「予防処置の余地」の意味であるが、所定の結果を確実に出すことを図る業務実行管理の実務における予防処置の意義からは「予防処置の必要の可能性」という意味に捉えるのがよい。
l 条文は“The analysis of data shall provide information relating to characteristics and trends of processes and products, including opportunities for preventive action”であり、データ分析の結果の プロセスと製品の特性及び傾向に関連する情報には、実行が必要で、実行可能と思われる「予防処置」を含んでいなければならないという意味である。
  
$33 品質マネジメントシステムの改善の機会の評価、並びに、品質方針及び品質目標を含む品質マネジメントシステムの変更の必要性の評価も行わなければならない。 (5.6.1)
英文:This review shall include assessing opportunities for improvement and the need for changes to the quality management system, including the quality policy and quality objectives.
英文には『評価』は1回しか書かれておらず、『改善の機会、並びに、変更の必要性の評価』となっている。改善と変更の対象である『品質マネジメントシステム』も1回しか書かれておらず、この『品質マネジメントシステム』が『品質方針及び品質目標を含む』のである。英文に忠実な和訳は「このレビューは、品質方針及び品質目標を含む品質マネジメントシステムの改善の余地、並びに、変更の必要性を評価することを含まなければならない」である。
  
$34 品質マニュアル [英文:quality manual] (条文:4.4.1, 4.2.2)
l “manual”は、便覧や案内書、又は、教本や小冊子*1を意味する(102)。また、やり方や使い方を書いた本、特に、購入した機械等に付属する取扱い説明書*2である(101)。日本語では、小型本、取扱い説明書、手引き書、小冊子、入門書、便覧であり(108)、手引き書、便覧、案内書(110)である。
l 和訳するなら、規格の定義#14に沿って、要点をまとめた文書、事柄の大要をまとめて見易くした文書の意味(113)の「要覧」がよい。
*1:a handbook or small textbook; *2:a book that tells you how to do or operate sth, especially one that comes with a machine, etc. when you buy it

$35 フォローアップ [英文:follow-up action、follow-up activities] (条文:5.6.2 e)、8.2.2)
l 名詞“follow-up”は「既に始まった何かに続く行為*1」(101)という意味である。“follow-up action/activities”は群名詞であり、“follow-up”は形容詞として“action/activities”を修飾し、「~から続く処置/活動」である。
l 『前回までのマネジメント レビューの結果に対する~』は“follow-up action from previous management reviews”であるから、「以前のマネジメント レビュー から続く処置」であり、マネジメント レビュー の結果の処置(5.6.3)がどうなっているかである。
l 『フォローアップには』は“follow-up activities shall ~”であり、この場合の「既に始まった何か」は行った監査のことであるから、監査に引続く活動、つまり、「監査後活動」の意味である。
*1:an action or a thing that continues sth that has already started
  
$36 決定 [英文:decision] (条文:5.6.3)
加算名詞の場合の「何が最良か考慮し議論した後に下す選択又は判断*1」と非加算名詞の場合の「決定能力*2」と「決定すること*3」の3つの意味がある。条文では“decisions”と複数形で用いられているから「選択、判断」の意味で用いられている。
*1:a choice or judgement that you make after thinking and talking about what is the best thing to do; *2:the ability to decide sth clearly and quickly; *3:the processs of decideing about sth important, especially in a group of people or in an organization
  
$37 必要な資源を明確にし、提供する (条文:6.1)
英文:determine and provide the resources needed ~]
l “determine”は「特定し、決定する」の意味であり$6、『必要な資源を明確にする』は英文では、どんな資源が必要かを決めること、或いは、必要な資源を特定することである。
l “provide something for somebody”で、誰かに何かを与える*1、誰かが使用できるようにする*2の意味であり(101)、日本語では前者は「供給する、支給する」、後者は「を(に)備えつける」である(110)
l 本項では後者の意味であり、『必要な資源を提供する』は英文では、必要と決めた資源が実際に使用可能なようにしておく、または、用意することである。
*1:to give sth to sb ; *2: make it available for them to use;
$37-1 資源の提供 [英文:provision of resources] (標題:6.1)
l “provision”は、必要な又は欲しがられている何かを誰かに供給すること*1、将来起きるだろう何かのために準備すること*2 の意味であり(101)、日本語では前者は「供給、支給」、後者は「準備、用意」である(110)。規格の意図は後者の意味である。
l 『資源の提供』は業務実行に必要な資源を用意しておくことであり、「資源の用意」である。
*1:act of supplying sb with sth that they need or want; *2:preparations that you make for sth that might or will happen in the future
$37-2 資源の運用管理 [英文:resource management] (標題:6章)
“resource management”は文法上の群名詞$1-2であり、“management”は「経営管理」である$19から、資源に関する経営管理という意味である。規格では、必要な資源を充足し、用意する経営管理活動のことである。
  
$38 技能 [英文:skills] (条文:6.2.1)  
可算名詞の複数形としてのskills は「特定の能力又はある種類の能力」という意味(101)である。例えば “management skills”(管理能力)、“language skills”(語学力) というように使われる。頭脳的な能力に関係する「知識」 と対照的な匠の技のような「技能」ではなく、広く職務上の専門性、専門能力という意味に解する方が適当である。
  
$39 実証する [英文: demonstrate] (条文:7.5.2, 8.2.3)
l “demonstrate”は「証となるものや証拠によって、物事を明瞭に示すこと*1」の意味であり(101)、「実演する、行動で示す、実例によって明らかにする、証明する」(108) 、「実証(証明、論証)する、実演する、デモをする」(108) と和訳される。
l 規格では「事実で以て示す」「証拠で示す」という程度の意味で用いられている。「明確にする」「明確に示す」「明確に表す」等の和訳が適当であり、「証拠で示す」「証明する」があてはまる場合もある。
*1:to show sth clearly by giving proof or evidence
$39-1 妥当性確認によって、これらのプロセスが計画どおりの結果を出せることを実証しなければならない (条 文:7.5.2) [英文:Validation shall demonstrate the ability of these processes to achieve planned results.]
l この場合の“Validation”は「有用化」である$46から、「有用化とは、これらの業務が計画$28通りの結果を出せることを証拠で示すことでなければならない」である。
$39-2 プロセス が計画どおりの結果を達成する能力があることを実証するものでなければならない。(条文 8.2.3)
英文:These methods shall demonstrate the ability of the processes to achieve planned results
l この場合の“demonstrate”は「明確に表す」の意味であり、英文は「これらの方法は、計画$28された結果を達成するプロセスの能力を表すことができるようなものでなければならない」と和訳するのが適切である。
l JIS和訳の場合は「能力があること」を監視測定結果によって証明するという意味になるが、英文が表現する規格の意図は、監視測定の方法が「能力(の程度)を明確に表す」ことができなければならない、つまり、監視測定の結果によって所定の結果が得られるかどうかを判断できなければならないということである。
  
$40適格性確認、認定 [英文: qualification]
“qualification”の持つ意味で、規格の趣旨に関係するのは次の3種類であり(101)(105)、それぞれの日本語が当てられる (108)(109)
① 合格した試験、又は、履修した教科*1
・・・・、(認定された)資格、資格証明書、免許状
② 特定の業務又は活動に必要な専門性、又は、経験の種類*2
・・・・資質、技能、能力、
③ ある仕事をするのに又はある競争に参加するのに必要な、試験に合格した、又は、教育訓練の課程を履修した、又は、一定の水準に達した、という事実*3 ・・・・ (~を行なうことが出来るという意味での)資格、適格性
*1:an exam that you have passed or a course of study that you have successfully completed; *2:a skill or type of experience that you need for a particular job or activity; *3:the fact of passing an exam, completing a course of training or reaching the standard necessary to do a job or take part in a competition;
$40-1 適格性確認 条文(7.4.2, 7.5.2) [英文: qualification]
l ここでは①の意味で用いられており、規格では要員にある業務の実行のために必要な能力を持たせることを指す。JIS和訳の『適格』を用いるなら、『適格性確認』ではなく「適格化すること」である。
l 『適格性確認プロセス』の定義#10における“qualification”も、要員が特定の業務の実行に必要な能力を持つことを証明することを意味する。
l すなわち、規格では要員に特定業務の実行能力を持たせることを、その業務実行に関して要員を「適格化すること」と表現される。
l 必要な業務能力を持つことを証明された要員は、当該の業務の実行に関して「適格化された要員」と呼ばれ#10-1, その特定業務の実行を委ねられ、或いは、実行することが許される。
l 7.4.2項では、組織の必要な製品を確実につくるために必要不可欠な特定の業務能力を供給者の要員に身につけさせることに関係している。
l 7.5.2項では、特定の製品実現業務で事後の製品の試験や検査が不要なほどに所定の結果を間違いなく出すために必要な業務能力を当該業務の要員に身につけさせることに関係している。
 
$40-2 認定 [英文: qualification]
ここでも①の意味で用いられているから、規格の意図では00年版JIS和訳『適格性確認$40-1』と同じ「適格化すること」である。
$40-21このようなプロセスについては、工程能力の確保、及び、プロセスの作業中のすべての重要なプロセス管理特性の確 実な管理のために、事前の認定(妥当性確認)が必要である (JISZ9904-1994条文:11.4)
英文:Such processes require prequalification (validation) to ensure process capability and control of all critical variables during process operation
l 『事前の認定』の英文は“prequalification”で「事前の適格化$40-1」であり、『妥当性確認』は“validation”で「有用化$46」である。“to ensure process capability”は形容詞的用法の不定詞であり、“prequalification”の目的を表す。
l 条文は「そのような業務については、予め工程能力を確実にする適格化(有用化)を行い、また、工程業務の実行においてすべての不可欠な工程条件を制御することが必要である」である。
l 「適格化すること」の“qualification”と「有用化すること」の“validation”が、( )で記述されていることは、規格では両者が同じ概念であることを物語る。
$40-22関連する設備及び要員を含む工程作業の認定に対する要求事項を規定すること (JISZ9901:1994条文:4.9)
英文:The requirements for any qualification of process operations, including associated equipment and personnel shall be specified.
l “requirement”は「要件」であり$1、“process operation”は「業務を実行すること」、“any”は「必要なすべての」の意味であるから、「関連する設備及び要員を含む必要な業務実行の適格化のための要件を規定しなければならない」である。
  
$41 資格認定する (JISZ9904-1994条文:4.18)
英文:Personnel performing specific assigned tasks shall be qualified .........
“qualify”は“qualification”$40の動詞であり、その意味(101)と対応する日本語(108)(110)は、
① 誰かにその必要とする専門性や知識を身につけさせる*1 ・・・・・・資格を持たせる、適格化する
② 何かを行なう権利を誰かに持たせる又は与える*2 ・・・・・・. 資格付与する、資格認定する、格付けする
③ 示される特定の物事に合った資質、素養、本質、質などを持つ*3 ・・・・・ 能力がある、(能力があるという
意味で)資格がある
l この条文では③の意味であり、「特定の業務を行う要員は、…必要な能力を持っていなければならない」である。
*1: to give somebody the skill and knowledge they need to do something; *2: to have or give somebody the right to do something; *3:to have the right qualities to be described as a particular thing
$41-1 有資格者 [英文:qualified personnel, qualified operator] (JISZ9904-1994条文:4.4.2, 4.9)
上記③$41の意味の“qualify”であり、必要な能力を持つ要員、作業者という意味である。
  
$42 自らの活動のもつ意味及び重要性を認識し、品質目標の達成に向けて自らがどのように貢献できるかを認識する 条文(6.2.2 d))
英文:its personnel are aware of the relevance and importance of their activities and how they contribute to the achievement of the quality objectives
l “relevance”は、どの辞書でも「関連性」であり、付随的に「妥当性」「適切さ」が挙げられている(108等) 。『活動のもつ意味』は「活動の関連性」である。
l 文末の“to the achievement of the quality objectives(品質目標の達成)”は、“relevance and importance of their activities(活動の関連性と重要性)”と“how they contribute(どのように貢献するか)”の両方につながる。文法的には必ずしも適切でないかもしれないが、規格にはこの種の表現が他にも見られる$16
l つまり“relevance”は自らの活動が品質目標の達成とどのように関連しているのかという意味で「関連性」であり、『重要性』は自らの活動の品質目標達成に対する『重要性』である。
l 条文は「自らの活動の、品質目標達成との関連性及び重要性、並びに、品質目標達成にどのように寄与するかを認識する」である。
  
$43 その必要な力量に到達することができるように教育・訓練を行うか、又は、他の処置をとる 条文(6.2.2 b))
英文:provide training or take other actions to achieve the necessary competence.
l “achieve”は、「(努力して目標を)達成する、実現させる」「(目的のものを)獲得する、得る」であり(108)、“provide training”は「教育訓練を行う」の意味である(108)
l 不定詞“to achieve”は、人の目的を表す副詞的用法で、組織が「必要な力量 を獲得するように」である。
l 『力量』は職務能力であり(101)(110)(118)、条文は「必要な職務能力を取得するよう教育訓練を行うか、又は、その他の処置をとる」である。
  
$44 該当する、適用可能な [英文:applicable] (条文: 4.2.3 d), 8.1)
l 「適用できる、適用するのが適当である*1」の意味であり(102)、日本語では「適用できる、適用される、当てはまる、適切な、応用できる」である(108)
$44-1 該当するもの、該当する場合、適用可能な場合 (条文: 4.1 e),6.2.2 b), 6.3, 7.3.2 b), 7.5.1, 7.5.2, 7.5.5, 8.2.3, 8.2.4, 8.3)
英文: where applicable, as applicable
l “where”は接続詞で「~の場合に、~の場合には必ず」の意味であり(109)、“where applicable”には「該当するなら、当てはまるなら」である(109)
l “as”も接続詞であり、「~の通りに」の意味から“as applicable”には「規定通りに」(108)との和訳が見られ、法令や規定では「適用対象となる場合は」「適用される場合は」という意味で使われる(122)
l 規格執筆者のひとりによる規格用語の解説(22h)によるとは、“where appropriate”と“where applicable”とはほとんど同義語であるが、ISO9001規格では“where applicable”はもし出来るのなら行なわなければならないというような強い意味であるのに対して、“where appropriate”はある程度の自由度を認める場合の表現として区別して用いられている。
• すなわち規格では“where applicable”“ as applicable”とも「できるならば」「可能ならば」がよい。
*1:capable of, or, suitable for being applied; *2:usually implies that if it can be done, it should be done(unless there is good reason otherwise)
  
$45 適切、適切な、該当する [英文:appropriate] (条文: 5.3 a), 5.5.3, 6.2.1, 6.2.2 e), 7.3.3 b), 7.6, 8.2.4, 8.3, 8.4)
l 「特定の状況に対して合っている、適当な、間違っていない*1」という意味である(101)
l 日本語では「適当な、適切な、特有の、固有の」である(110)
*1: suitable, acceptable or correct for the particular circumstances
$45-1 該当するもの、必要な場合、適切に、 (条文:7.1, 7.3.1, 7.3.7, 7.4.2, 7.5.3, 8.2.3)
英文: where appropriate, as appropriate
l 一般に、“where appropriate”は「必要に応じて」「適切な場合には」(108)、“as appropriate”は「適宜(適切に、適当に)」(109)、「必要に応じて」「それぞれに見合った」(108)と和訳される。
l 規格執筆者のひとりによる規格用語の解説(22h)によるとは、“where appropriate”と“where applicable”とはほとんど同義語であるが、ISO9001規格では“where applicable”はもし出来るのなら行なわなければならないというような強い意味であるのに対して、“where appropriate”はある程度の自由度を認める場合の表現として区別して用いられている。
l 規格の文脈では
• “where appropriate”は「必要なら」「必要な場合には」
• “as appropriate”は「必要に応じて」などの日本語が適当である。

$46 妥当性確認、妥当性確認を行う [英文: validation、validate] 条文(7.1, 7.3.1, 7.3.6, 7.5.2)
l “validation”
• 形容詞“valid”は「法的又は公式に容認される*4」「論拠のある、又は、真実に基づいた*5」「ある枠組み内で許容される*6」という意味で、動詞“validate”は「真実であることを証明する*1」「法的に有効なものとする*2」「有用又は許容できることを公式に明らかにする*3」という意味(101)である。名詞“validation”は「validateすること*7」の意味(102)である。
• “valid”に対応する日本語は「(法的に)有効な/正当な/妥当な/根拠のある/適正な」(109)、「有効な/通用する/正当な/根拠のある/主張の正しい/事実に合っている/妥当な/確かな/穏当な/正当な/手続きを経た」(108)である。
• “validation”は、法的、論理的、真実だから、公式に認められているからなど、何らかの根拠に基づいて有効、有用、許容できることを証明する、表明する、そのようなものとするという意味である。
l 日本語の「妥当」は、「真理や道徳的、美的価値などのもつ、いつどこでも承認されるべきものだという性質(妥当性)についていう語」という哲学用語の他は「よくあること」(113)、「実状によくあてはまっていること/適切であること」(デジタル大辞泉)、「物事の実情などによくあてはまっていること」「考え方や処理の仕方に無理なところがなく適切であること」(三省堂:大辞林)であり、「穏当な」と同義語である。
l 規格では目的を果たすかどうかの観点での有効性に関連して用いられており、「有用性の判定」の意味である。これは規格では、「有用化」「有用性の実証」と同義語である。
*1: to prove that sth is true; *2: to make sth legally valid; *3: to state officially that sth is useful and of an acceptable standardy; *4: that is legally or officially acceptable; *5:based on what is logical or true; *6: that is accepted by the system; *7: an act, process or instance of validating
$46-2 ~の場合には、組織は、その製造及びサービス提供の概要するプロセスの妥当性の確認を行なう
英文では“The organization shall validate any processes for production and service provision where the resulting output cannot be verified by……”と動詞形で書かれているから、「~の場合には、(そのような)どの業務実行も有用化しなければならない」である。
$46-3 測定値の正当性 [英文: valid result] 条文(7.6)
“validation”は「論拠があって正しい」という意味であり、英文では「正しい結果」である。規格の文脈からは「正しい測定結果」である。
$46-4 測定した結果の妥当性 [英文: validity of the previous measuring results] (条文:7.6)
“validity”は形容詞“valid”の名詞形であり、“validity of the measuring result”は“valid result(正しい測定結果)$46-3”に相当する概念である。「測定結果の正しさ」である。
$46-5 測定した結果を無効にする [英文:invalidate the measurement result] (条文:7.6)
『無効にする』の英文は“invalidate”であり、これはあるものを“valid”でないようにするという意味であり、 “valid result(正しい測定結果)”の“valid”に対応する。測定結果が「正しい測定結果ではなくなるようにする」というのが、条文の意図である。
 
$47 検証、検証する [英文: verification, verify] 条文(7.1, 7.3.1, 7.3.5, 7.5.4, 8.2.4)
l “verification”
• 名詞が“verification”、動詞が“verify”で、真偽や適切さを判断又は証明する行為であり。次の2つの意味を持つ(101)
① ある事が真実又は正確であるかどうかを調べること*1
② ある事が真実又は正確であるということを示す、又は、表明すること*2
• 日本語では、①の意味で「検証/確認/検査/検定/照合」、②の意味で「実証/確証/立証/証明/証拠/根拠/証言」などの言葉が当てられている(108)(109)
l 日本語の「検証」は、物事がどのようなものかを実際に調べて明らかにする行為であり、次の意味(113)で使われるが、用語「検証」を使う場合には、例えば「原因の検証」「真偽の検証」「適合性の検証」のように何を調べるのかが付記される必要がある。
① 実際に調べて証明すること
② 仮説から論理的に導かれる結論を事実の観察や実験の結果と照らして合わせて、その仮説の真偽を確かめること。<論理学的用語>
③ 証拠資料たる事物・場所の存否定及び状態を裁判官や捜査機関が直接確かめること。<法律用語>
l 規格の『検証』は「規定された要件が満たされていることを客観的証拠によって実証すること」と定義#28されており、「適合性の実証」を意味する。実務の合否判定に関する用語であり、規格では「適合性判定」「適合化」とも同じ概念であり、それらの意味ででも用いられている。
*1: to check that sth is true or accurate; *2: to show or say that sth is true or accurate
$47-1 検証するために製品の特性を監視し、測定する 条文(8.2.4項 第1節 第1文) 824
英文は、“The organization shall monitor and measure the characteristics of the product to verify that product requirements have been met. ” であり、JIS和訳は「組織は、製品要求事項が満たされていることを検証するために、製品の特性を監視し、測定しなければならない」である。 JISは、不定詞“to verify”を、動詞“monitor and measure ”の目的を表す副詞的用法として「検証するために、監視し、測定する」と和訳している。 規格の意図は、「検証」であって、「監視し、測定する」は「検証」のために情報を検知することを意味する。動詞“monitor and measure ”結果を表す副詞的用法として、「監視し、測定して、検証する」と解すべきである。 すなわち条文は、「組織は、製品の特性を監視し測定して、製品要求事項が満たされていることを検証しなければならない」である。
 
$48 サービス  [英文:service]
l “service”には様々な意味があるが、日本語のサービスに関連するものには「顧客のために何事かをなすが、品物を作らない事業*1」「そのような事業上の業務*2」「ホテル、レストランや店舗で顧客を支援すること*3」がある (101)
l 日本語では「サービス」は「給仕、接待、物質的生産過程以外で機能する労働」というような意味にとられている(113)
l 規格の『サービス』は非物質の製品を意味する#13-1が、日本語では「サービス」は「給仕、接待、物質的生産過程以外で機能する労働」というように(113)、非物質の製品を生み出す活動を意味する。
 *1:a business whose work involves doing sth for customers but not producing goods; *2:the work that such a business does; *3:the serving of customers in hotels, restaurants and shops/stores
$48-1 サービス提供 [英文:service provision] 標題(7.5.1,7.5.2)
l この場合の“provision”は「必要とされる又は求められる何かを提供する」の意味(101)であり、“service provision”は非物質の製品たるサービスを提供することである。
l 規格の『サービスを提供する』とは、例えば輸送業ではトラックで荷物を運送すること、自動車修理業では不良部品を取り替えて故障を修理することを意味し、提供する製品たる『サービス』とは顧客の荷物を指定のあて先に引き渡した、故障が直ったという事実或いは状態のことである。
l 『サービスの提供』とは上記事例のように、荷物の運送、自動車の修理という活動のことであり、日本語の「サービスをする」という概念に近いから「サービス活動の実行」と表現するのが適切である。
$48-2-1 サービスが提供された後 [英文:after the service has been delivered] 条文(7.5.2)
$48-2-2 サービスの提供は行なってはならない [英文:service delivery shall not proceed] 条文(8.2.4)
l “deliver”は「引渡す」「届ける」である(110)から、サービス活動の実行$48-1の結果の『サービス』という製品を顧客に引渡すことである。「サービスの引渡し」が適切な和訳である。
l 「サービスの引渡し」とは、例えば運送業では荷物を運送してあて先に着いた後に、あて先人に荷物を引き渡すことであり、自動車修理業では修理の終わった自動車を依頼主の顧客に引き渡し返却することである。
 
$49 形式で [英文:in a form]
l “form”は、「何かの類型又は種類」「あるものが表される方法」「質問と回答用空白のある公式文書」「何かの形」など多様な意味を持ち(101)、日本語でも「形、形状、形態」「姿、影、体つき、概観」「方法、形式、様式、やりかた、決まった手順」「記入要旨、用紙、ひな型」など多様に訳されている(108)
l “in a form”は一般には「~の形(様式)で」であるが、“in a suspended form”は「懸濁した」、“in a soluble form”は「水溶性の」、“in a serial form”は「連載で」と和訳される(108)から、これらの場合は「~の形態、状態、態様で」の意味である。ここでは、文書の書式ではないことが明確な「態様」がよい。
$49-1 ~は、組織の運営方法に適した形式でなければならない 条文(7.1)
英文:The output of this planning shall be in a form suitable for the organization’s method of operation
l “method”は「方法、やり方、方式……」「秩序、順序、計画、体系」であり(109)、“operation”は「手術」「組織的活動」「事業組織」「事業活動」など(101)を意味する。“method of operation”は、事業活動の秩序、決まった形態、やり方という意味であり、「事業形態」が適当である。
l “form”は「態様」であるから、条文は「~は、組織の事業形態に合った態様でなければならない」の意味である。
$49-2 ~は、設計・開発へのインプットと対比した検証を行うのに適した形式でなければならない 条文(7.3.3)
英文:The output of design and development shall be in a form suitable for verification against the design and development input
l “suitable”は「適当な」であり$24、“verification”は「適合性の実証」であり$53、“verification against ~”は単に「~に照らした/~に対するverification」の意味である。
l “form”は「態様」であり、“design and development input”は「設計開発条件」である(7.3.2項)。
l 条文は、「~は、設計開発条件に対する適合性を実証するのに適した態様でなければならない」である。
 
$50 顧客が明示してはいないが、指定された用途又は意図された用途が既知である場合、それらの用途に応じた
要求事項 (条文:7.2.1 b))
英文: requirements not stated by the customer but necessary for specified or intended use, where known.
l 『明示しない』は“not stated”であるから「表明しない」であり、この『明示しない要求事項』は用語は同じではないが、同じ7.2.1項の「具体的に表された要求事項(JIS和訳は『規定した要求事項』)」に対応する。そして、規格の文脈では、a)項が顧客が意識している必要条件であり、本b)項は顧客の意識しない必要条件である。
l “specified”は「明らかにされている」$1-3-1、“intended”は「目標とする~*1、~となるよう計画された/企画された*2」であるから、「その予定であると思われる」との和訳がよい。
l 文末の“where known(わかるならば)”は、“use”ではなく“requirements”を修飾すると解釈するのが、条文の趣旨に合致する。
l すなわち「顧客は表明しないが、明らかにされている又はその予定であると思われる製品の使用のために必要な必要条件がわかるなら、その必要条件」である。
 
$51 確認 [英文:confirmation] (用語:ISO9000, 3.8.4, 3.8.5)
“confirm”は「とりわけ証拠を示すことにより、ある事が絶対に真実又は正しいということを、述べ又は示すこと*1」の意味である(101)。また、「何か又は誰か(の立場)を強固なものとする*2」の意味もあり(101)、TC176指針では「公式合意によって効力を持たせること*3」である#32から、後者に近い。
l 日本語の「確認」は物事を確かめるという意味であるが、confirmation”は物事が正しいことを証拠で以て主張することであり、正しいという主張を事実を以て証明することである。
l 英和辞書では「確かに~だと述べる/間違いないということを示す/立証する」(109)や、さらに「承認する/正式に発表する/信念や意見を確かにする」(108)などが挙げられている。
l 「確認する」との和訳もあるが、これは予約など既に相手に伝えている内容がそのままでよいということを改めて意思表示するというような場合の「相手に確認を求める、相手に確認する」の意味での「確認する」である(109)
l 規格の意図に沿うには、事実によって証明するという意味(113)の「実証」、「証拠による証明」、或いは、あることを証拠立てるという意味の「立証」が適当である。
*1: to state or show that sth is definitely true or correct, especially by providing evidence; *2: to establish sb/sth firmly; *3: make valid by formal assent
 
$52 顧客とのコミュニケーションを図るための効果的な方法を明確にする
英文:The organization shall determine and implement effective arrangements for communicating with customers
l JIS和訳『方法』の英文は“arrangement”であり、「手配、準備、手はず」の意味である(109)
l 規格ではPDCA/プロセスアプローチ サイクルの『計画』の結果を“planned arrangements”と表現する。つまり、規格では、あるプロセスを計画するとは、そのプロセスの有り様を決めて、いつでも実行できるように手はずを整えることである。8.2.2項のJIS和訳『個別製品の実現の計画に適合しているか』も英文は“conforms to the planned arrangement”であり、『計画』は手はずを整えることである$28から、率直に和訳すれば「製品実現の計画で整えられた手はずに適合しているか」である。
l 計画して整えた業務実行のための手はずが“planned arrangement”(計画された手はず)であり、計画された手はずとは業務実行の方法を含む手順と資源のことである。
l JIS和訳『方法』は「手はず」であり、『明確にする』は“determine (決定する)”で、『コミュニケーション』は“communication(情報交換)”であるとして、英文の全体は「組織は、顧客と情報交換するための効果的な手はずを整え、顧客と情報交換を行う」と和訳されるべきであり、「情報交換の活動を計画し、実施する」と同じ意味である。
 
$53 製品を構成する要素及び既に引き渡されている製品に及ぼす影響の評価 (条文:7.3.7)
英文:evaluation of the effect of the changes on constituent parts and product already delivered
“already delivered”は、直前の単語“product”のみを修飾するのでなく“constituent parts and product”を修飾するから、『既に引き渡されている製品』ではなく『既に引き渡されている構成部品及び製品』が文意に適う和訳である。
 
$54 購買情報では購買製品に関する情報を明確にする (条文:7.4.2)
英文:Purchasing information shall describe the product to be purchased,
Ÿ “describe”は、(言葉・文章で)言い表す、説明する、(絵などが)描写する、表現するであるから、「購買情報は、購買する製品を表すものでなければならない」である。
Ÿ 94年版では“Purchasing documents shall contain data clearly describing the product ordered”であり、「購買文書は、発注する製品を明瞭に表す データ を含んだものでなければならない」である。
 
$55 注意を払う [英文:exercise care] (条文:7.5.4)
Ÿ “care”は、「ある事を大事に思って、その保護のために必要なものを提供すること*1」で、“exercise”は「持っている力、権利、又は、個人の資質を用いる*2」であり(101)、日本語ではそれぞれ「世話をする」「(任務)を果たす」である(110)
Ÿ 英米の解説書では「大事にする義務を果たす*3」(22p)とか、「防護する*4」(21ad)、「大事に扱う*5」(30d)ことと説明されている。
*1: process of caring for sth and providing what they need for their health or protection; *2: to use your power, rights, or personal quality in order to achieve sth; *3: exercise a duty of care; *4: safeguard; *5: take good care of
 
$56 保存する [英文:preserve] (条文:7.5.5)
Ÿ “preserve”は、次のように現在の良い状態を維持するという意味であり(101)、日本語では維持、保持、保全がよい(110)
① 特別な品質、特徴などを維持する; ② あるものを元の状態に維持する; ③ 特別な処理で食物などの腐食を防ぐ; ④ 危害や危険から守る
*1: to keep a particular quality, feature, etc; *2: to keep sth in its original state in good condition

$57 リリース [英文:release] (条文:7.3.3、7.5.1)
放つ、保持をやめる、感情を出す、義務等を免除する、固定位置から移動させる、緩める、公開するなどの意味があるが、ここでは「放つ」の「誰か/あるものを捕捉/保持されていた場所から出す*1」という意味が適当である。
$57-1 設計形開発からのアウトプットのリリース (条文:7.3.3)
設計開発の結果を確定し、それを次の段階又は決められた業務で使用すること。
$57-2 リリース活動 (条文:7.5.1)
顧客に引き渡すために製品を組織から外に出すこと
 
$58 監視機器及び測定機器 [英文:monitoring and measurement device] (標題及び条文:7.6項)
l “device”は、動詞では「何か新しいものや方法を発明すること*1」であり、名詞では「 特定の仕事のために考案されたもの又は装置*2」や「特定の結果や効果をもたらす何かを行なう方法*3」であり(101)、 装置や機器だけでなく広く“方法”をも意味する。このため「装置、機器、仕掛け(仕組み、機構、道具)、工夫(計画、案、対策、手段)」と多様な日本語訳がある(109)。 規格の文脈では「仕掛け」や「手段」が相当する日本語であろう。
l “monitoring and measurement devices”の表現は、“monitoring device”及び“measurement device”というより、“monitoring and measurement”の“device”と受けとめるのが自然である。 すなわち、JIS和訳『監視機器及び測定機器』は、監視測定の仕掛けや監視測定に使用する手段の意味であり、「監視測定用具」がよい。
l なお、08年版で、“monitoring and measurement equipment”と表記変更となったが、意味は変わらない(32)
*1: to invent sth new or a new way of doing sth; *2: ① an object or a piece of equipment that has been designed to do a particular job; *3: ④ a method of doing sth that produces a particular result or effect
 
$59 監視及び測定が実施できる ( 条文:7.6項)
英文: monitoring and measurement can be carried out and are carried out
英文は「監視及び測定が実行されることができる」と「実行される」との2つの文節から成る。規格の意図に沿って英文を和訳すると、「監視測定活動を行うことができ、かつ、行う」ことである。
 
$60 測定値の正当性が保証されなければならない場合には (条文:7.6項)
英文: Where necessary to ensure valid results
l “to ensure valid results”
Ÿ 『測定値の正当性』は、“valid results”であり「正しい測定値」である$46-3
Ÿ “ensure”は、「ある事が間違いなく起きるようにする、又は、間違いないものとなるようにする*1」の意味であり、一般には「確保する、確かなものにする、守る」「確実に~する」という日本語が当てられる(109)。「保証する」との訳語が用いられることがあっても(108) 、「大丈夫だ、確かだと請け合う」の「保証」ではなく(113)、「確実にする」の意味である。
Ÿ 規格では多用されており、本条文以外ではJISは『~を確実にする』と和訳している。
Ÿ 本条文では“ensure”の目的語は“valid results(正しい測定値)”であるから、「正しい測定結果を確保する」の意味であり、条文の前後の繋がりからは「正しい測定結果を確実に得る」と和訳するのが適切である。
l “where necessary to ensure valid results”
Ÿ “Where”は「~の場合に」の意味の従属接続詞である。この場合の文節“Where necessary …..”は従属節であり、主節は“measuring equipment shall be …….” などの箇条書きのa)~d)項の各文である。
Ÿ 従属接続詞の場合は本条文のように主語とbe動詞が省略される(106)ことがある。
Ÿ 従属節の英文が“Where it is necessary to ensure valid results”で、“it”は主節全体を指し、不定詞“to ensure”は副詞的に用いられて“necessary”を修飾して「正しい測定結果を確実に得るために必要な」とすると、「それが正しい測定結果を確保するために必要な場合には」である。条文ではこの従属節の後に主節の『測定機器は~されなければならない』が続く。
Ÿ JIS和訳では従属節の省略された“it”を名詞的用法の不定詞“to ensure”を指す形式主語とし、『正しい測定結果を確実に得るために必要な場合には』という意味に解釈している。この解釈では主節の主語が『測定機器』であるのに従属節の「確実に得る(ensure)」の主語は暗黙的に「組織」となる。このような主語不一致は英文法上不適切な表現とみなされる(111)から、条文の意図が『測定値の正当性が保証されなければならない場合には』と解釈することは間違いである。
*1: to make sure that sth happens or is definite
 
$61 部門及び階層 [英文:functions and levels] (条文:5.4.1項)
l 『部門』の英文“function”は、「機能」「職務」の意味(108)(110)であり、経営用語では「経営機能」「職能」であり、組織構造のひとつの単位の職能が実行、管理するべき一連の業務のことを指すとする説明もある(121)。実務的には機能別組織構造におけるそれぞれの部門の担当経営機能を意味する。
l 『階層』の英文“level”には、上下関係の意味の「水準」の他に、「観点」という意味で「何かを検討、対処、理解する特定の方法」という意味がある(101)
• 解説者のHoyle氏は、“level”は組織構造の階層の意味ではなく、管理又は改善の品質目標を確立する観点の意味であると説明している(23ad)。この考えから 同氏は、組織全体、及び、業績目標たる品質目標の達成を可能とするための特定の業務、製品、部門又は職能、さらに、要員の職務能力の5つの観点を挙げている。
• 15年版の共通定義(3.08)では、「xxx目標」は戦略的、戦術的、業務上の3種に分類することができ、また、事業戦略、組織全体、プロジェクト、製品、業務などの種々の“level”の「xxx目標」があり得るとの注釈を付記している。
l 『部門及び階層』は、「経営機能上及び管理の観点」である。
 
$62 顧客要求事項を満足しているかどうかに関して顧客がどのように受けとめているか (条文:8.2.1)
(customer perception as to whether the organization has met customer requirement)
• 直訳すると「組織が顧客要求事項を満たしたかどうかについての顧客の受けとめ方」である。
• 5.2項(顧客重視)の“Top management shall ensure that customer requirements ……are met with the aim of enhancing customer satisfaction” に対応する。
   
$63 発見された不適合及びその原因を除去するために遅滞なく処置がとられる (条文:8.2.2項)
l この英文、“The management responsible for the area being audited shall ensure that actions are taken without undue delay to eliminate detected nonconformities and their causes”」である。
l “that”以下の文章で、不定詞“to eliminate ~”はJIS文では「~除去するために」と副詞的に扱われているが、実際の原文は離れた不定詞が主語を形容する構文であり、よくある不定詞の形容詞的用法である。 つまり “to eliminate ~”は“actions”を修飾しており、「不適合及びその原因を除去する処置」である。この「処置が遅滞なくとられること(actions are taken without undue delay)」なのである。
l 英文は「発見された不適合及びその原因を除去する処置が、遅滞なくとられる」の意味である。
l JIS和訳では「~を除去するために処置がとられること」が主意のように誤解されるが、条文の主意は「処置が遅滞なくとられること」である。
 
$64 フォローアッフ [英文:follow-up activities] (条文:8.2.2項)
英語の“follow-up”は名詞では「あるものに引続く行動又はもの」の意味である(101)。 この場合「あるもの」は実施した監査のことであり、“activities”は活動であるから、監査に引続く活動、つまり、「監査後活動」の意味である。
 
$65 適合性評価 [英文: conformity evaluation] 用語(JISQ9000:2006, 3.8.2)
JISは“conformity”を『適合性』、“evaluation”を『評価』と和訳しており、この和訳文では適合の程度を検討するという意味に誤解されかねない。“conformity”は「適合」であり、『要求事項を満たしていること』を意味する#5。 一方、“evaluation”は「注意深く考慮して、物事の量、価値、品質についての考えを明確にすること」(101)であり、TC176指針(6)も「物事の量や価値を決定すること」としているからなっているから、「評価」より「判定」の方が意図がはっきりする。“conformity evaluation”は、適合であるかどうかと判断することを意味する。すなわち、「適合性判定」と和訳する方が誤解なく理解される。
 
$67 リリース を正式に許可した人を記録しておく 条文(8.2.4)
英文: Records shall indicate the person(s) authorizing release of product for delivery to the customer
l JIS和訳では、リリースを許可した人を明示した特定の記録を作成、維持することが必要であるかの印象を与えるが、英文は「記録は、リリースを許可した人(人々)を示さなければならない」である。
l つまり、リリースを許可した人を明示する特定の記録を作成するというのではなく、リリースを許可した人を何かの記録で特定できるようにしておかなければならないという意味である。この記録が「合否判定基準への適合の証拠を維持しなければならない」の合否判定の記録であると理解するのが、規定表現上から合理的である。
 
$68 不適合による影響に対して適切な処置をとる 条文(8.3)
英文: taking action appropriate to the effect, or potential effect, of the nonconformity
l 「不適合の影響に対して適切な処置をとる」のではなく、「とる処置が不適合の影響に対して適切である」という意味である。
l 英文の趣旨を明確にするためには「不適合のもたらす影響に合った処置をとる」の和訳が適当である。 なお、“effect”は、「何かが何かにもたらす変化」「結果」を意味(101)し、「不適合の影響」とは不適合がもたらした結果を意味する。
 
$69 評価する [英文: evaluate] (条文:8.4)
英文の“evaluate”は「注意深く考慮して、物事の量、価値、品質についての考えを明確にすること」(101)であり、TC176の指針(6) も「物事の量や価値を決定すること」としている。 すなわち、評価して判断、判定、決定することである。
 
$70 品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善の可能性を評価する
英文: to evaluate where continual improvement of the effectiveness of the quality management system can be made
英文は、どこに、どの点で品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善があり得るのかを評価し、判断するという意味である。
 
$71 7.4の適用において必要な管理を遂行する能力 (4.1項の注記 3 c)項)
英文: the capability of achieving the necessary control through the application of 7.4”
l 「7.4項の適用により アウトソースしたプロセス の必要な管理が出来る可能性」が適当である。
 
$72 適合性 [conformity] (条文:多数)
l “conformity”は「社会で認められ規則に則った言動又は処置*1」(101)、「何かと一致する又は何に則った事実又は状態*2」(102)という意味であり、日本語では「適合、一致」(110)「(規則、慣例など)に従うこと」(109)である。
*1:behavior or actions that follow the accepted rules of society; *2:the fact or state of agreeing with or obeying something
 
$73 不適合の再発防止を確実にするための処置の必要性の評価 (条文: 8.5.2 c))
英文:evaluating the need for action to ensure that nonconformities do not recur
l 不定詞“to ensure”は名詞“action”を修飾する形容詞用法であるから、「不適合が再発しないことを確実にする処置」である。
l 『評価する(evaluate)』はTC176用語の指針(6)でも“determine the amount or value of (物事の量や価値を決める)”であり、「判断する」である。
l 英文全体は正確には「不適合が再発しないことを確実にする処置が必要かどうかを判断すること」の意味である。
$73-1 不適合の発生を予防するための処置の必要性の評価 (条文: 8.5.3 b))
英文:evaluating the need for action to prevent occurrence of nonconformities
l 不定詞“to prevent”は名詞“action”を修飾する形容詞用法である。また、「予防処置」は予見される不適合が以降一切生じないないようにすることであり、『発生を予防する」は「発生を防止する」である。
l また、『評価する(evaluate)』は「判断する」である$73
l 英文全体は正確には「不適合の発生を防止する処置が必要かどうかを判断すること」である。
 
$74 是正処置/予防処置において実施した活動のレビュー (00年版条文: 8.5.2 f)/8.5.3 e))
英文: reviewing corrective action /preventive action taken
素直に和訳すると「とられた 是正処置/予防処置 を レビューすること」である。
$74-1 とった是正処置/予防処置の有効性のレビュー (08年版条文: 8.5.2 f)/8.5.3 e))
英文: reviewing the effectiveness of the corrective action /preventive action
JIS和訳の通り、「とられた 是正処置/予防処置 の有効性を レビューすること」である。

 
サニーヒルズ コンサルタント事務所