ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
1.   マネジメント とは
実務のマネジメントシステム(入門 解説編)   −組織の実務に照らして考える−
24-01-01
1.規格の定義のマネジメント 
   規格のマネジメントとは、「組織を方向づけ、制御する統制された活動*」、又は、「組織を指揮、管理する体系的活動*」(いずれも筆者訳)である(ISO9000 3.2.7)。 その原英語は management であり、この英語はJISQ 9001 ではマネジメントの他、運営管理活動とも翻訳されている。
   
 
2.組織の実務におけるマネジメント
(1) 組織の種々の業務

組織は存立の目的の追求のための事業を行なっている。 組織の維持、発展を図るために事業をどのようなものとするのかを決定するのは経営であり、これを担うのが経営者である。経営者は組織の維持、発展のための経営戦略を策定し、経営の目標を中長期の経営計画などの形で示し、人々を雇用してその実現に必要な業務を行なわしめる。
例えば製造会社を例にとると、生産、設計、販売、購買、人事、財務、研究開発などの業務があるが、これらは製品を造り販売するという組織の事業活動そのものの業務である。人々は一般に機能別に分けられた各部門に属して、部門の役割たる業務をそれぞれに分担し実行している。 これらの人々はそれぞれの業務の担当者と呼ばれ、また、事業活動の実務を担っているので実務者とも呼ばれる。
一方でこのような実務を直接的には担当せず、それら業務の仕方を決め、その実行に関して人々を指導し、指示を与え、業務が効果的、効率的に実行されて所定の成果を出すことを責任とする人々がいる。 このような業務は管理業務と呼ばれ、これは英語では management である。 管理業務を担う人々は管理者(manager)と呼ばれるが、部門の長としての役職を負っているので役職者とも呼ばれる。
経営管理学(1)では上記の3つの業務ないし機能(職能)を、それぞれ、経営職能、作業職能、管理職能と呼び、その業務の活動は経営活動、作業活動、管理活動とも呼ばれる。 この場合の管理も management の翻訳である。
従って、実務上も学問上も、管理とは management のことであり、規格のマネジメントも management である。 日本でこれまで管理という用語を用いていた組織の機能や活動に対して、規格では片仮名のマネジメントという用語があてられた。
 
(2) マネジメント

マネジメントとは、図1のように経営活動の結果である経営の目標を効果的、効率的に実現するために組織の日々の作業活動を方向づけ、制御する活動のことである。
マネジメントを担う人々が管理者(manager)であり、管理者という名の人々が行なっている業務がマネジメントである。
なお、マネジメントは多面的な活動であり、種々に説明されることができる。経営管理学でも例えば次のように定義されている。
他の人々をしてものごとをなさしめること(3)
集団の中で協働する個々人が設定された目標を効率的に達成する場合における環境を設計し、維持するプロセス(2)
企業目標を達成するために限られた資源を有効適切に活用しコントロールする行動(4)
 
 
3.会社の組織構造とマネジメントの階層
(1) 経営とマネジメント
商法の委員会等設置会社でない旧来の株式会社を例にとると、株主総会の委託によって取締役会が経営の意思決定を行なう。 従って、経営者に相当するのは実質的に取締役会である。
取締役会は、代表取締役をして取締役会の決定に係わる業務の執行を行なわしめ、その執行を監視する。
代表取締役は普通、会社の組織の長たる社長を兼ねて、社員を指揮、管理して業務の執行にあたる。
社長の業務は経営の決定を実現させるよう社員の業務の実行を管理することであり、管理活動、つまり、マネジメントである。
 
(2) マネジメント機能の分化
多くの雇用された人々が働く組織では、マネジメントも社長だけで行なうことが出来ず、マネジメントの機能も幾人かの管理者が分担している。
そして規模の大きな組織では管理者の数も多く、管理機能が分化し、階層化する。
経営管理学(1)ではこれを次のように分類している。
取締役会の決定である経営の戦略や目標の実現を図るための会社全体としての業務を方向づけ、制御する全般管理
全般管理の下で、部門の役割を果たすよう部門内の業務を方向づけ、制御する部門管理
部門管理は更に、部門機能が細分化された中間的部門間の業務を管理する中間管理と、その中の作業活動を直接指揮管理する現場管理に階層分化される
   
(3) 管理者の階層
管理者は英語では manager と呼ばれるが、例えば労使(Labor and Management)のように、管理者を担当者・作業者と対比させて階層として集合的に表す場合の英語は、management である。
そして、全般管理を担う管理者層を top management(トップ マネジメント)、中間管理を担うのは middle management(ミドル マネジメント)、現場管理を担うのは lower management(ロア マネジメント) と言う。これらはそのまま(   )内のように日本語ともなっている。
   
 
(4) トップ マネジメント
 日本の株式会社で全般管理を担っているのは普通、社長を初め、副社長、専務、常務取締役などの役付取締役、○○担当取締役などの業務担当取締役、或いは取締役○○部長など使用人兼務取締役など、取締役会のメンバーである。
このため、トップ マネジメント のことを経営者と呼んだり、全般管理活動のことを経営と呼んだりすることが多い。
最近では、執行役員と称する取締役でない トップ マネジメント職が各社で設けられるようになっている。
米国では取締役会のメンバーは社外取締役が中心であり、取締役は director、トップ マネジメント の人々は officer と呼ばれて、両者の区別は明確である。
なお、複数の事業所を抱える会社では特に、本社の機能部門の部長が全般管理を担うことも少なくないから、この場合は部長も トップ マネジメント の一員である。
また、全般管理の下ではあるが事業所運営に高い自由度が与えられている場合もある。この場合は、事業所の所長などがそのような事業所マネジメントにおいて トップ マネジメント の役割を果たしている。
労働基準法、労働安全衛生法の使用者、事業者は、この トップマネジメント を指す。
規格の トップマネジメント(ISO9001)ないし最高経営層(ISO14001)は、いずれも原英語は top management であり、この トップマネジメント のことである。
   
(5) ミドル マネジメント、ロア マネジメント
一般に日本の会社で ミドル マネジメント に相当する役職は部長、課長であり、これら管理者層は時に中間管理者と呼ばれる。
ロア マネジメント に相当するのは、係長、主任、作業長などの役職を負う人々であり、これらの人々を監督者と呼ぶことがある。
規格では ミドル マネジメント や ロア マネジメント を名指しされることはないが、部門(function)、階層(level)に対する要求事項があり、これが部門管理や階層化された管理者層の存在を示唆している。
 
 
3.管理とマネジメント
(1) control と management の混同
日本では狭義の品質管理、環境管理などのように、結果を目標に納める活動(統制)を管理と呼んできた。
一方で上記ようにマネジメントについても、管理活動、管理者と管理の名をつけて呼んできた。
前者の管理は英語の control の訳であり、後者の管理は management の訳である。
組織運営に関しては、解決すべき課題を設定し、その解決のためにどんな結果をどのような方法で達成するのかを計画することから始まる活動が management(マネジメント)であり、所定の結果が得られるように計画した方法を遵守するように制御する活動が control である。
例えば人事管理という場合に、要員の出勤率を統制するだけでなく、要員充足、教育、給与の体系の実行、維持をも包含すれば、これは人事マネジメントの意味での人事管理である。
品質管理の先駆者の西堀栄三郎氏の quality control を「品質制御」と翻訳されるべきとの主張(5)が採用されていたなら、後年にこのような問題を生ずることはなかったかもしれない。
   
(2) 管理部門
   組織の機能部門の内、人事、財務などのサービス部門或いは間接部門を、事業活動を直接行なう現業部門、直接部門に対して管理部門と呼ぶことがあるが、この管理は control,management のいずれにも相当しない使われかたである。
   
   
引用文献     *印は、筆者の訳
(1) 兼子春三:マネジメントの基礎, 多賀出版,1996.6.10; p.147
(2) 小椋康宏:経営学原理,滑w文社, 1996.3.30; p.3
(3) 宮坂順一:経営管理学の論理, 轄W洋書房,1998.3.20; p.6
(4) 宮田 薫:管理者のためのマネジメント理論, 日本コンサルタントグループ, 1995.9.1; p.15
(5) 佐々木正:インタビュー 西堀栄三郎と私,標準化と品質管理,2003.1,p.34-38; p.36
H16.5.10
禁無断転載  (個人的使用のための複写歓迎)
サニーヒルズコンサルタント事務所        〒458-0031 名古屋市緑区旭出2−909