ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
3.  種々のマネジメントシステム
 (個別マネジメントシステムと全体マネジメントシステム)
実務のマネジメントシステム (入門解説編)   −組織の実務に照らして考える−
24-01-03
1.品質、環境マネジメントと全体マネジメント
    マネジメントは、組織の日々の作業活動を方向づけ、制御する活動であり、管理者が担う業務である。マネジメントは、その対象により全般管理と部門管理に分けられ階層化されている(第1報:マネジメントを参照)。
一方で、ISO9001,14001規格の品質マネジメント、環境マネジメントのように種々の名称の付してマネジメントの種類を表すことがある。例えばこの他にも労働安全衛生マネジメント、リスクマネジメント、情報マネジメント、顧客関係マネジメントである。これらはマネジメントの目的あるいは対象とする問題や分野を限定したマネジメントのことを意味し、その目的や対象が名に冠されている。
   
   この概念も目新しいものではなく、日本では management に"管理"という日本語があてられていたために、用語として新しいだけである。例えば、人事制度、採用、教育訓練、業績評価など一連の人事施策を司る人事マネジメントは"人事管理"であり、同様に生産マネジメントは"生産管理"、研究開発マネジメントは"研究開発管理"、資金マネジメントは"資金管理"である。ただし、"品質管理"の場合は所定の製品品質を得る活動たる quality control に対する日本語として定着しているので、どのような製品品質を顧客に提供するかを決める quality management の概念を当初は"広義の品質管理"と訳されていたものの、2000年版のISO9001から"品質マネジメント"と呼ばれるようになった。最近では品質マネジメント以外の従来"〇〇管理"とで呼ばれてきたものも"〇〇マネジメント"と呼ばれることが多い。
   
   普通、単にマネジメントと言う場合は、組織の諸作業活動の全体として方向づけ、制御する活動を意味する。ISO9001,14001規格ではその品質、環境マネジメントとの区別を明確にする場合は、この組織の全体としてのマネジメントのことを「全体マネジメント」又は「組織のマネジメント」と呼んでいる。また、事業組織のマネジメントであるから、これをビジネスマネジメント(Business Management)と呼ぶ海外の解説書(1)(2)もみられる。当ウェブサイトでは、全体マネジメントに対する、特定の目的、対象範囲のマネジメントのことを"個別マネジメント"と呼ぶ。
   
  
2. 個別マネジメントの意義と概念
   事業の拡大、複雑化に伴って作業活動に付随する問題、課題も多様になり、マネジメントの業務も膨らみ、多様な視点、多様な取組みが必要になる。そして、組織の活動を全体的に運営管理するよりは、重要な問題に対応した種々の観点から運営管理するのが経営の目標の達成を図る上で効率的で効果的になる。例えば、全体マネジメントの中から品質向上という観点でのマネジメントを区別して、品質管理、品質保証、品質改善など品質向上に関係する諸業務の業務体系を明確にし責任者を決め、その下に資源を投入し、作業を管理するなど諸業務を統括、制御するのが品質マネジメントである。
   
   すなわち、個別マネジメントとは、組織の全体マネジメントの中のそれぞれ特定の観点あるいは目的に関係する部分に焦点を当て浮かび上がらせたものであり、全体マネジメントのそれぞれの側面である(図1)。 個別マネジメントは、組織をどのような観点からマネジメントするか、或いは、全体マネジメントのどこに焦点を当てて浮かび上がらせるかの問題である。 その観点や焦点の当て方は組織の必要により様々であるから様々な個別マネジメントというものがあり得る。
   
   また、個別のマネジメントとして他と明確に区別されていない場合でも、必ずしもそのような観点が全体マネジメントに存在しないないとは言えない。組織の運営管理に不可欠な観点、例えば、労働安全、コスト、生産能率、設備維持などに関するマネジメントは、他の関係する個別マネジメントの中で、或いは、全体マネジメントの中で区分して意識されないまま取り扱われている。
   
   
図1 個別マネジメント=全体マネジメントの側面 図2 個別マネジメントの業務と全体マネジメントの業務の関係
(品質マネジメントで例示)
  
  
3. 個別マネジメントシステムの実体
   全体マネジメントの業務体系が全体マネジメントシステム、個別マネジメントの業務体系が個別マネジメントシステムである。 個別マネジメントシステムは、全体マネジメントシステムの要素の内のそれぞれのマネジメントの目的に必要な要素をそれぞれの目的の達成を図るように関連づけ結びつけたものに相当する。従って、個別マネジメントシステムはその構成要素の点で全体マネジメントシステムの一部であると考えることができる。
 
  システムの要素を各業務であるとした場合、組織には図3のような種々の業務があり、それらは矢印で表したような相互関係で結びつけられている。全体マネジメントシステムは、このような諸業務の有機的集合体である。 個別マネジメントシステムは図4のように、この個別マネジメントに必要な業務が結びつけられた有機的集合体である。
 
   機能別部門から成る組織構造をもつ組織では、業務は図2のように機能別に明確にされて、組織によっては文書化して実行されている。 個別マネジメントの業務は、全体からその個別マネジメントに必要な業務を抽出したものと理解することができる。

   組織図で表される組織構造、責任と権限を例にとると、組織全体の組織図から例えば品質マネジメントに関係のある部門や部署を抜き出して、品質マネジメントで果たす役割で再配列した組織図が品質マネジメントシステムの組織構造である。

   ISO9001は 4.1項で、品質マネジメントシステムの確立の手順を
 a) 品質マネジメントシステムに必要なプロセスを特定し*、
 b) これらプロセスの順序および相互関係を決定する*
ことと規定している。これは規格も、システム要素を業務であるとして、個別マネジメントシステムたる品質マネジメントシステムが全体マネジメントシステムの中からその目的達成に必要な業務を特定し相互に結びつけたものとする図3、図4と同じ概念に依拠していることを示している。
   
図3  全体マネジメントシステム
(組織のプロセス=業務とそれらの順序と相互関係)
図4  個別マネジメントシステム
(必要なプロセス=業務とそれらの順序と相互関係)
 
   
   
4.ISO規格の品質、環境マネジメントシステム
   品質マネジメントシステムは、品質に関する個別マネジメントシステムを意味する一般名称である。直ちにはISO9001の品質マネジメントシステムを指すものではない。  ほとんどどの組織も、製品の品質の改善、新製品の開発、不良品の減少など組織の全体マネジメントの中に品質に関する観点又は側面をもっている。しかし、品質のどのような点を重視するのかは組織の必要性の問題である。また、それを個別マネジメントとして取り組むのか、全体マネジメントの中に織り込むだけで済ますのかも、組織の必要次第である。従って、品質マネジメントと言っても目的や対象とする問題、分野は様々であり、多様な品質マネジメントシステムがあり得る。
   
   一方、ISO9001の2000年版では「顧客満足」を追求することが品質マネジメントの目的であり、この業務体系に関する必要条件を規定している。規格の要求事項を満たしているマネジメントシステムがISO9001(適合の)品質マネジメントシステムである。 組織の従来からの"品質マネジメントシステム"と規格が確立を求める"品質マネジメントシステム"は、目的や対象とする品質問題の範囲、また、関係する業務と業務間の相互関係において全くは同じでないことが多いはずである。実務においては両マネジメントを合わせたような形でマネジメントが行われているに違いない。
   
 同様に、環境マネジメントとは、環境保全、環境影響低減に取り組むマネジメントの活動の一般名称である。このひとつであるISO14001の環境マネジメントは、利害関係者のニーズと期待を満たしながら経済的技術的に実行し得る最大限の環境保全努力をするという組織の環境取り組みのマネジメントである。そのための業務体系がISO14001(適合の)環境マネジメントシステムである。これまでも全体マネジメントシステムの中に他と明確に区別された環境保全のマネジメント、つまり、環境マネジメントシステムをもっていた組織は、その規格の要求事項を満たしていない部分に必要な修正、補強を加えることによって、その環境マネジメントシステムはISO14001の目的の達成をも図る業務体系となる。
   
   
引用文献   海外文献及び文中の*印は筆者の和訳
(1) I.Frederics 他: "ISO14000", http://wwwmbmt14k.com/ems.htm
(2) K.Roberts: PSI IDEAS Q&A: Question 7,Answer From Standards Expert, The Informed Outlook, Vol.7,No.12; p.5
H16.8.24(改 H16.10.7,8、10.14)
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