ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
4.  統合されたマネジメントシステム
実務のマネジメントシステム (入門解説編)   −組織の実務に照らして考える−
24-01-04
1.個別マネジメントの実務
   規模が大きく業務が複雑な組織や、或いは、事業のある特定の観点や側面を重視する必要がある場合には、その観点、側面から組織をマメジメントする個別マネジメントを全体マネジメントから分化させる(1)。個別マネジメントを分化させるとは、その個別マネジメントの業務体系を全体マネジメントシステムから浮かび上がらせ明確にするということである。全体マネジメントを幾つかの個別マネジメントに分けて分担するというのでなく、必要な個別マネジメントのみを分化させ、残りの観点は全体マネジメントの中に残される。
   
   組織の全体マネジメントを司るのはトップマネジメント(2)であるが、個別マネジメントもトップマネジメントの責任である。 しかしトップマネジメントがすべてに目を行き届かせることはできないから、普通、代行者(ISO9001,14001では、management representative だが、「管理責任者」と和訳されている)を任命して日々の個別マネジメントを統括させる。トップマネジメントは、代行者から日常的に問題の報告を受け、必要な判断を行い、指示を出すという形で個別マネジメントを行っている。
 
   機能別部門で構成される組織構造となっている組織では、各機能部門はその機能に関係する作業活動を担当する一方で、その機能に関係する個別マネジメントを統率しているのが普通である。 機能部門長は当該マネジメントに関する限りは同僚の他の部門長を指揮し必要な報告をさせる。 例えば、経理部門は、経費を集計し、対外支払いをするなどの作業活動を担当するが、他部門を含めた組織全体の設備投資を含めた年間予算を策定し執行、管理するという経理マネジメントを担っており、このような日常的経理マネジメントは経理部門長の責任となっている。
   
   業務の実行にあたる要員は、関係する個別マネジメントの責任者から直接に指揮、管理されることはない。要員は業務の目的や注意点に関する各個別マネジメントの必要は認識しているものの、業務の実行に当たっては組織図などに示される全体マネジメントシステムの責任と権限に従って行動し、また、その管理者からの指示を受ける。 組織の各業務はそれぞれの機能部門により全体マネジメントの枠組みの下に実行管理され、必要な場合のみ個別マネジメントによって取り上げられ管理されるのが実態である。例えば、生産に必要な材料の日常的な調達、使用管理は全体マネジメントシステム組織図に従って製造部門の業務であるが、予算という点では経理部門に申請し許可を得、実績を報告する必要があるなど、経理マネジメントの管理下に入る。
 
   個別マネジメントが分化していてもすべての業務は全体マネジメントの枠組みの中で実行されている。トップマネジメントが個別マネジメントの代行者からの報告をもとに下す判断や決定は、全体マネジメントとしての最適解である。どの個別マネジメントも全体マネジメントから独立して行われておらず、個別マネジメントは実務上、全体マネジメントと一体である。
 
 
2. 個別マネジメントシステムの業務と手順
   組織で幾つかの個別マネジメントシステムが分化されている場合には、ひとつの業務が複数の個別マネジメントに関係していることは少なくない。例えば月例給与の計算業務は、労務費実績という点でコストマネジメントに、支払い資金準備の点で資金マネジメントに、所得税源泉徴収の点で会計マネジメントにそれぞれ関係する。また、製造業におけるある部品の組み立て工程の作業及び結果の記録は、品質、安全、生産、能率、人事、コスト、経理等の各個別マネジメントマネジメントに関係し、また必要である。
 
   しかし、複数の個別マネジメントに関係する業務であってもその実行の手順はひとつであり、個別マネジメント毎に異なる業務方法がとられるというようなことはあり得ない。先の組み立て工程の作業手順は、品質、安全、能率、コストの各マネジメントの狙いから最適なものとして決められており、データ採取など人事、経理など各個別マネジメントの必要にも最も効率的に応じるものとなっている。
 
この業務の手順を文書に記述したものはISO規格では手順書と呼ばれる。この手順書は関係するすべての個別マネジメントシステムに共通に用いられる文書である。手順書を初め組織の業務に用いる文書は、どの個別マネジメントシステムの文書という性格のものではない。すべての文書は全体マネジメントシステムの文書であり、各個別マネジメントで使用する文書を便宜的に個別マネジメントシステム文書と呼ぶこともよい(図1)。
 
   全体マネジメントシステムを構成するこれらの業務あるいは文書に記述された手順からそれぞれに必要なものを明確にしたのが個別マネジメントシステムである。各個別マネジメントシステム間の相違は、関係する業務や手順書の相違とそれらの相互関係の相違だけであり、同じ業務ならその手順も文書はどの個別マネジメントシステムでも同じである。
     
図1   個別マネジメントシステムの文書 
   
   
  4.  統合されたマネジメントシステム
   組織のマネジメントは、幾つかの個別マネジメントが分化していても、実務上すべての個別マネジメントは全体マネジメントと一体となって行われている。個別マネジメントの業務体系たる各マネジメントシステムも全体マネジメントシステムと要素を共有しており、実体的に全体マネジメントシステムの一部である(図2)。 組織のマネジメントもマネジメントシステムも本質的に一体的な活動であり、概念あるいは実体である。"統合"という日本語を用いるなら、"統合された"ものということになる。
   
   ISO9001,14001にも、その品質、環境マネジメントシステムが「組織のマネジメントシステムの一部」(3)であり、「組織の既存のマネジメントシステムと一体化される(be integrated)」(4)などの表現があり、また、「すべての組織はマネジメントの機構(management structure)をもっているので、これを(規格の)品質マネジメントシステム構築の基礎とするべきである」(5)とも明記している。すなわち、両規格もその個別マネジメントシステムが組織の全体マネジメントシステムと一体となったものであるとの実務的な考えに立っていることがわかる。

図2.  種々の個別マネジメントシステム
(全体マネジメントシステムと一体化した個別マネジメントシステム)
 
   
5.  ISO9001,14001 "統合マネジメントシステム"
   個別マネジメントはいずれもその観点から問題を掘り下げる必要があって全体マネジメントから分化した。各個別マネジメントシステム間では、その目的ないし対象とする問題や分野が異なり、関係する部門や必要な専門性が異なるし、その故に異なるマネジメント代行者によって日常業務が統括されている。マネジメント代行者は、全体マネジメントシステムの中で当該の個別マネジメントを統括するのに最もふさわしい責任と権限を有する者であり、必要な専門性を有する者でなければ務まらない。
   
   異なる個別マネジメントシステム同士をのひとつの別の個別マネジメントシステムに統合するという考え方は、組織のマネジメントシステムに関する実務とその論理に照らして必要がないし、意味がるとは考えられない。そもそも各個別マネジメントシステムは全体マネジメントシステムと一体であることを通して、相互にも融合して一体となっている(be integrated)から、改めて統合(be combined)される余地はない。


<註> 英文文献及び文中の*印は筆者の和訳
引用文献
(1) 本シリーズ: 3. 品質、環境マネジメントシステムとは: 2項
(2) 本シリーズ: 1. マネジメントとは: 3 (4)項
(3) ISO9000; 2.11項、
(4) TC207:Articles and News, Dec.1995
(5) ISO中央事務局:謎解きの旅、ISO9001と小企業
H1610.14(改定 H16.11.24)
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