ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
  7.6 監視機器及び測定機器の管理         こう変わった!  <31-01-760>
1. 記述の変更
   英語表現の適切さの改善のための表記の変更が1件、及び、意図の明瞭化のための用語の変更が1件2ケ所、同じく表現の変更が2件、注記の追加が1件、及び、不要となった他条項引用と注記の削除が2件と1件の、合計6件、8ケ所。
   
2. 変更詳細
(1) 監視及び測定の手段と機器
[2000年版] 監視及び測定のdevice とequipmentが使い分けられている。
               但しJIS和訳ではどちらでも「機器」であり、区別がない。
[追補版]    equipment 1本になった。これに伴い、7.5.1 d)項の device も equipment に変更された。
<変更の趣旨: 意図の明瞭化のための用語の変更>
   JIS和訳はどちらも「監視機器及び測定機器」のためわからないが、規格原文では、device (手段)とequipment (機器)が使い分けられている。 標題はdeviceであり、第2文もdeviceであり、7.5.1 d)もdeviceであり、 equipment は校正云々に関してのみ登場している。監視や測定には、視覚、嗅覚、触覚によることを初め、書類の突合、計算、比較、アンケート調査など機器(equipment)による計測以外の種々の手段(device)がある。 機器による計測は、監視測定のひとつの手段( device )に過ぎない。品質保証活動において組織は、製品が7.2.1項で定めた要求事項に適合している証拠を得ることが必要であり、この証拠を得るために、どのような監視や測定を行うことが必要か、また、そのためにどのような「監視及び測定手段」が適切であるかを決定しなければならない。そして、これら「監視及び測定手段」の内の「測定機器」で、マイクロメーターや強度試験機、分析機器などの場合は常に正しい測定値を得るためには定期的な校正又は検証が必要である。これらは a)〜e)項に従って校正又は検証をしなければならない。規格の英文の正しい解釈と条文の趣旨はこの通りである。 7.6項のJIS和訳は特に誤訳が著しくて、このような規格の意図を表現するものとなっていない。
 
   CD9001では、deviceとequipmentの違いを明確にするように、「監視及び測定手段(devices)には、測定機器(equipment)と測定機器(equipment)ではない手段(device)があり、前者は監視又は測定に使用され、後者は監視のために使用される」という注記2が追加された。ところがDIS9001で一転、すべてがequipmentに変更された。JIS仮訳説明ではISO14001(4.5.1項)が監視及び測定機器(equipment)の検証又は校正のみしか扱っておらず、これとの整合のために equipmentへの1本化されたそうだ。 device と equipment が、equipment に統一され、規格の意図が変更される形で、意図が明瞭化された。
 
  監視や測定に関しては、機器の精度管理のための校正も大切だが、各製品やプロセスにどのような監視、測定手段を用いるべきかの方がより本質的で重要である。大切な「適切な device の選定の必要」を規定しないで、 equipment だけ規定するのでは、効果的なマネジメントの必要条件をrequirement (JIS和訳は「要求事項」)として示す規格の性格を歪ませることになる。 この変更が、6.4項の作業環境の範囲を限定するかの注記の追加と同じように、第三者審査の利便性が理由であるとするとすれば、ISO9001が作成時の志を希薄にして、ビジネスとしての審査登録基準に変質し始めたということなのであろうか。
 
  品質マネジメントシステム規格国内委員会発表(H20.8)の「ISO9001の2008年版改訂について」は、“device”と“equipment”の違いを認め、追補版では“device”は“equipment”に含まれるとの用語解釈をすると説明している。(H20.9.12追記)
 また、米国の国内委員会(TAG)の3人の解説では、現行のISO900:2005の用語の定義が“measuring equipment(測定機器)”が“measuring instrument(計測計器)”を含むとしており、この“measuring instrument(計測計器)”が“measuring device”を含み得ると解釈することになったと説明している(Quality Digest; 2008.11月号) (H20.12.7追記)
<組織、審査への影響  なし>
   例えば苦情を目視検査の欠陥見逃しのせいにしている組織など、検査項目と方法の適切さ、基準の明確さ、記録のとり方など監視及び測定の手段(device)について見直す機会となるのがCD9001の注記追加だった。 これが消えて、DISと現行のJIS和訳が維持されるなら、元々測定機器の校正の規定として理解されてきた日本の組織が抱える現実の問題を見直す機会が失われたということである。従って審査には何の影響も及ぼさない。
 
(2) 校正の識別

[2000年版] c) 校正の状態が明確にできる識別をする
[追補版]    c) 校正の状態を明確にするために識別表示を付ける
<変更の趣旨:  英語表現の改善>
 JIS仮訳の説明では、determineの用法との関係で、動詞形のidentifyの使用をやめるとの一般合意に基づき、本項でも、the measuring equipment shall be identified…が .shall have identification となったと説明されている。
この英文の変化をたどると、
現行:  shall be identified to enable the calibration status to be determined
CD:   shall have identification to enable their calibration status to be determined
DIS:  shall have identification in order to determine its calibration status
と2度にわたって少しずつ変わっている。 これを見ると、測定機器は「識別の状態が決定されることができるように識別される」という回りくどい表現が、「校正の状態が決定されることができるような識別を有する」を経て、「校正の状態を決定するために識別を有する」と直接的な表現に変えられたと考えることができる。
 
  しかし、JISは現行の条文を適切に意訳しているので、変更の必要はないのに、JIS仮訳は「識別表示を付ける」と翻訳して、要求事項を2000年版から変更してしまった。すなわち、これまでの審査では現品への校正期限表示でなくとも、台帳管理でもよかったが、今後は「識別表示を付ける」ことが必要になる。
 
  11月15日付けのISO9001:2008の発行と同時に日本規格協会から発売された英和対訳版では、英文はDIS、FDISから変更がないが、和訳は「校正の状態を明確にするために識別を行う」と変えられている。これなら原文の意味を反映しており、識別表示が必要ということにならないから、問題は解決された。(H20.12.7追記)  
<組織、審査への影響 大きい >
 JIS仮訳がこのまま維持されるなら、審査では校正台帳による管理だけでは不適合となる恐れが強い。かなりの組織の審査に影響があるように考えられる。
 
(3) 関係条項引用の変更 (7.2.1参照、4.2.1参照)
[2000年版]   @ 組織は、定められた要求事項に対する製品の適合性を….を明確にすること(7.2.1参照)。
              A a) 定められた……場合には、…….校正又は検証に用いた基準を記録する。
[追補版]      @ 組織は、定められた要求事項に対する製品の適合性を….を明確にすること。
              A a) 定められた……場合には、校正又は検証に用いた基準を記録する(4.2.4参照)。     
<変更の趣旨: 不要な参照指示除去、意図が明瞭化のために参照指示追加 >
@ 7.2.1項の参照指示がなくなった。 この参照指示は、「定められた要求事項」が7.2.1項で定められた「製品に関連する要求事項」であること、従って、7.6項によって組織が決定することを求められる監視及び測定が、不良品を出さないという従来の概念の品質保証活動のためのものであることを明確にしている。この参照指示が抹消されたとしても、本項が7章(製品実現)である以上は、本項の監視及び測定の対象をマネジメント活動に拡げるものではないと考えてよい。
A 4.2.4項への参照指示が追加された。組織が独自に決める校正、検証の基準とするものの記録も、適合の証拠として維持すべきことを明確にしたもの。
<組織、審査への影響:  なし>   
 
(4) 校正又は検証する 
[2000年版] a) 定められた間隔又は使用前に、…….校正又は検証する。
[追補版]    a) 定められた間隔又は使用前に、…….校正又は検証、若しくはその両方をする。 
<変更の趣旨:  意図の明瞭化 >
JIS仮訳説明では、校正、検証のどちらも適用し得る状況があるので、calibrated or verified が、 calibrated and/or verified ,or both, となったとされるが、その理屈も新表現の英語も不可解である。いずれにせよ、表現の変更は意図や意味の変更をもたらすものでない。   
<組織、審査への影響: なし > 
 
(5) 注記の削除と追加 
[2000年版] 参考「ISO10021-1、-2を参照」
[追補版]    上記の参考が削除され、新たな注記「意図した用途を満たすコンピューターソフトウェアの能力の確認は、通常、その使用の適切性を維持するための検証及び構成管理も含まれる」が追加された。 
<変更の趣旨: 不要な注記除去、意図が明瞭化のための追記が追加 >
新たな追記のJIS仮訳説明では、 コンピューターソフトウェアの能力の確認に関する要求事項が不明確であるのを補うためとされている。コンピューターソフトウェアは、監視及び測定のためだけではなく製造及びサービス提供など製品実現の様々な業務で使用されているから、この注記を設けるなら本項が適切かどうかの問題が残る。   
<組織、審査への影響: なし > 
 
H20.1.23,  1.28, 9.12, 12.7(追) 
禁無断転載  (個人的使用のための複写歓迎)
サニーヒルズ コンサルタント事務所             〒458-0031 名古屋市緑区旭出2−909