ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
ISO9001:2008
留意すべき変更
1. アウトソース した プロセスの管理 (4.1項 一般要求事項)  <31-02-01>
 [記述の変更}  4.1項
2000年版 2008年版
要求事項に対する製品の適合性に影響を与えるプロセスをアウトソースすることを組織が決めた場合には、組織はアウトソースしたプロセスに関して管理を確実にすること。
 
アウトソースしたプロセスの管理について、組織の品質マネジメントシステムの中で明確にすること。
 
参考2.ここでいう、“アウトソース”とは、あるプロセス及びその管理を外部委託することである。
 
“アウトソースしたプロセスを確実にする”とば、外部委託したプロセスが正しく管理されていることを確実にすることである。(JIS独自の註釈)
要求事項に対する製品の適合性に影響を与えるプロセスを アウトソースすることを組織が決めた場合には、組織はアウトソースしたプロセスに関して管理を確実にしなければならない。
これらのアウトソースしたプロセスに適用される管理の方式及び程度は,組織の品質マネジメントシステムの中で定めなければならない。
注記2 “アウトソースしたプロセス”とは、組織の品質マネジメントシステムにとって必要であり、その組織が外部に実施させることにしたプロセスである。
注記3 アウトソースしたプロセスに対する管理を確実にしたとしても、すべての顧客要求事項及び法令・規制要求事項への適合に対する組織の責任が免除されるものではない。
アウトソースしたプロセスに適用される管理の方式及び程度は、次のような要因によって影響され得る。
a〉要求事項に適合する製品を提供するために必要な組織の能力に対する、アウトソースしたプロセスの影響の可能性
b〉そのプロセスの管理への関与の度合い
c〉7.4の適用において必要な管理を遂行する能力
 
[記述変更の意図]

  アウトソースしたプロセスの管理についての規格の意図を明瞭化するためである。追加の注記はいずれも アウトソースの管理に関するTC176支援文書(2)の趣旨が規格の中に取り入れられたものである。注記2は、規格の意図の「アウトソースしたプロセス」が何であるかをより明瞭にするものであり、注記3はTC176の意図するアウトソースしたプロセスの管理というものを明らかにすることが目的であり、ここでは7.4項を越える管理の必要が示唆されている。また、同支援文書では、「管理を品質マネジメントシステムの中で定めること」のひとつの態様が、アウトソースしたプロセスを組織の品質マネジメントシステムの範囲に含めて、組織のそのプロセスについての責任を品質マニュアルなどに明確にすることであると説明している。
 
[記述変更の意義]
(1) 適用除外
  規格の各条項はそれぞれの標題に対応する プロセスに関する要件を規定している。組織は効果的な品質マネジメントを行なうためにどのプロセス(条項)が必要かを判断し、必要なプロセスについては対応する条項に規定される要求事項を満たすことが必要である。 4.1 a)項は、これを「品質マネジメントシステムに必要な プロセスを決定する(JIS和訳では“明確にする”)」と表現している。 2000年版はすべての業種業態に適用できる汎用規格であるから、組織の製品の性格や特徴によって規格の製品実現のすべての条項や要求事項に相当するプロセスを必要とせず、あるいは、実際に特定のプロセス なしに製品実現を行なう場合があり得る。そのような組織では、該当するプロセスが存在しない、あるいは、プロセスの要件を適用できないのであるから、それらの規格要求事項、又は、特定条項を丸ごと「適用除外」してもよい。というより、適用不可能である。これが 同項末尾に「1.2参照」が付されている意味である。 1.2項は、この適用除外に関する説明を規定している。
 
  同じ4.1項の「組織はアウトソースしたプロセスに関して管理を確実にすること」という要求事項は、本来組織にあるべき プロセス なのに アウトソース したが故に組織に存在しないというような場合には、適用除外ができないということを明確にすることが意図である。 適用除外しては、不良品を出荷せず顧客満足の製品を一貫して供給できるということにはならないからである。 しかし、組織内に プロセス が存在しない以上、規格の要求事項を適用することもできない。だから、管理せよということであり、製品品質に影響するプロセスをアウトソースしても組織内での製品実現と同じように狙いの顧客満足の製品を顧客に引き渡すためには、組織は アウトソースしたプロセスが規格要求事項を満たして計画され実行されるように管理しなければならない。これが、規格全体の枠組み或いは基本的考え方を示す4.1項という条項に、アウトソースしたプロセスの管理の必要が規定された理由である。
 
(2) アウトソース と購買
  TC176の支援文書「用語の指針」(3)では「ISO9000系規格においては“下請負い(subcontract)”と“アウトソース(outsource)”とは相互に交換して使用でき、同じ意味を持っている」と明記されている。 94年版では“下請負いに出す”と“購買する”とは同じ意味であり、この「購買」(4.6項)が2000年版の「購買」(7.4項)に引き継がれている。従って、2000年版の「購買」と“アウトソース”は同じ意味であり、どちらも物品の購入と業務の外注のことを指す。 “購買する”は物品やサービスを購入するという観点での表現であり、“下請負いに出す”とか“アウトソースする”とはその物品の製造又はそのサービスの提供を外部に委託するという観点の表現である。因みに、購買先やアウトソース先は94年版では「下請負契約者」であったが、2000年版では「供給者」と呼び方が変わっている。
 
  組織が不良品の出荷やサービスの引渡しをしないことを確実にするためには、その製品、サービスに使用する購買製品、つまり、物品及びサービスが不良品であってはならない。7.4項は、組織が所定の購買製品を確実に手に入れるための要件を規定している。4.1項が アウトソースしたプロセスの管理の必要を規定しているのは、アウトソース先が組織に必要な製品、サービスを間違いなく供給する、つまり、組織が受取ることを確実にするためである。組織が必要なのは所定の購買製品の確実な入手であり、アウトソース先のプロセスを管理するのはそのための手段である。 7.4項は、供給者と購買製品との両方を管理することの必要を規定しており、組織が所定の購買製品を確実に手に入れるためには供給者の業務実行の管理が必要であることを明確にしている。 また、購買製品にも検査や試験で検証が不可能なものがあり、この場合は供給者のプロセスの実行を管理することが必要だというのが規格の論理である(7.5.2項)。7.4.2項(購買情報)では、組織がその購買要求事項を満たす製品を確実に受け取ることができるように、「購買情報」として必要な事項を明確にし、供給者に伝える必要を規定している。 この中で、その必要事項が製品の仕様だけではなく、手順、プロセス、設備、要員、品質保証業務を含む広い範囲にわたる必要があり得ることを明確にしている。このように、7.4項の購買製品に関する管理には アウトソースしたプロセスの実行を管理することが含まれている。
 
(3) TC176の見方
  TC176の支援文書 (2)が アウトソースしたプロセスの管理として例示しているのは、販売した機器の保守業務の外注の場合に自身の専門技術者に外注業者の保守作業の監督をさせる、熱処理工程の外注の場合に実績の温度チャートを提出させる、グループ内商事会社に原料購買を任せている場合には、グループ内といえども委託業務仕様を文書で取交わし、定期会議で商事会社の業務遂行を監視及び管理する、建設会社で設計を外注する場合は、設計インプットを明確に提示し、定期会議で設計活動を監視し、自身で設計結果の検証、承認をする、銀行が顧客サービスのための コールセンター を海外の会社に外注した場合、業務実行に関する必要条件を明確にし、定期的に電話応対を監視し、自身の品質方針の外注会社要員への徹底のための教育を要求する、である。
 
  これらはいずれも、7.4項に規定される購買製品に関する管理の要件の域を出るものではなく、例示された供給者のプロセス実行の管理の方式は、組織の品質マネジメントシステムの中に採り入れられ、実行されている。しかし、注記3 c)項は7.4項を越える要件の存在を示唆しており、CD版では「7.4項の要求事項もまたアウトソースしたフロ゚セスに適用してもよい」とする注記2があったから、支援文書 (2)を含めて、購買製品の管理(7.4項)とアウトソースの管理とが重なるものの異なるものと位置づけているようである。米国同委員会メンバー(5)は、特定業務を本社にアウトソースするような場合は両者に上下関係はなく、金銭のやりとりもないから、これを「購買」とみなすことは適切ではなく、また、このような場合の管理の方式として一般的な相互の業務連絡会議が7.4.2項のa)〜d)のいずれにも含まれないとの理解を示唆している。
 
(4) アウトソースしたプロセスの管理の4.1項への記述
  購買製品の確実な入手のための管理としての アウトソース先のプロセスの実行管理に関する要件が7.4項に規定されている上に、更に、4.1項にも規定されているというのはややこしい。 しかも、4.1項で7.4項以上の要求事項があると言いながら、その4.1項には何の具体的な要求事項も明らかにされていない。 もし7.4項の現状の要求事項ではアウトソースしたプロセスの管理という観点で不足があるのなら、それを7.4項に追加すればよい。 また、適合した購買製品の入手のために アウトソースしたプロセスの管理の方が受け取る製品の管理より重要なら、7.4項を「購買製品の管理」から「アウトソース先のプロセスの管理」に改編すればよい。
 
  また、4.1項(一般要求事項)は、規格の各プロセスに適用すべき PDCAサイクルと同様のプロセスアプローチの考えを説明する条項であり、各プロセスに対する具体的な要求事項は該当する各条項で規定するというのが規格の構造である。 4.1項に特定のプロセスに関する要求事項を規定するのは、規格の構造という点で適切ではない。
 
  4.1項の記述は本来、適用除外を戒める規定であったのに、「アウトソースしたプロセスの管理」に触れたため7.4項が製品の管理の規定であったことから、アウトソースしたプロセスの管理の要求事項まで含めなければならなくなってしまったということではないだろうか。 この勇み足が意図の明瞭化のために更に深みにはまる注記3の追加をもたらした。具体的な要求事項を示さないままで、7.4項を越える要求事項の存在を示唆する注記3の追加は、アウトソースの管理と購買管理(7.4項)とが異なる概念であるかの誤解を生み、意図の解釈の混乱をもたらすだけである。
 
 
[組織の対応]
  しかし、アウトソース先のプロセスの管理の重要性を強調することは大切なことである。規格初版が作成された時代では原料や資材の購入と付帯作業の外注が中心で、せいぜい部品や部材の製作を外注することであった。90年代にはIT関連業務に端を発し、人事、教育、販売、顧客サービスなど組織の事業の一部分の業務を一括外注することが拡がり、製造業でも サプライチェーンとみなされるほどに製品の製造を多数の組織が分担するような生産体制が普通になった。今日では、組織の製品の内の特定の一部製品の製造を検査を含めて外注している状況は普通にみられるし、販売(7.2.2項)、コールセンター業務(7.2.3項)、設計(7.3項)、購買(7.4項)、或いは、製造(7.5項)などのプロセスをそっくり外注している場合も珍しくない。また、特定の事業所を適用範囲とする品質マネジメントシステムも少なくないから、例えば販売や輸送などが企業の一部門でありながら特定の事業所の品質マネジメントシステムでは外注扱いされていることも多い。外注した業務が同じ事業所内でひとつの工程として実行されている場合がある。
 
  このような多様な役割、形態の外注に対して、実質的に7.4項の定期評価、定期監査、製品の受入れ検査や付属文書の確認など、硬直化した形式のみの管理で済まされている場合が多い。2008年版を機に、外注化したことが組織の製品の品質保証にどのように潜在的悪影響を与えているかを見直し、社内の他の部門を外注としている場合も含めて、一律ではないそれぞれの購入、外注に適切な管理の方式及び程度となっているかを見直すのもよい。
 
 
[審査への影響]
  国内委員会メンバー(4)は、アウトソースには7.4項の管理とは異なる管理の適用が必要との誤解があったのが記述変更の理由であり、規格の意図は「まず7.4項の要求事項を適用する。そして(考えられる)他の管理を適用する」と説明している。米国同委員会メンバー(5)は、7.4項に規定する管理の方法だけでは不十分であることがあり得るというのが注記3 c)項の追加であると説明している。説明は、特定業務を本社にアウトソースするような場合は金銭のやりとりがない以上は「購買」と呼ぶことは適切でなく、実際にも社内会議による意思疎通など普通の「購買管理」とは異なる形式の管理が適用されているという実態にも触れている。この問題についての日米両国の規格執筆に参画した人々の意見は同じではない。また、日本では外注とアウトソースは異なるとする考えがあり、この考えの人々にとっては「7.4項でよいが、それだけでは十分でない場合がある」とする注記3 c)項がどのように受けとめられるのかという問題もある。
 
  審査では、ほとんど従来通りである場合も考えられ、マニュアルの4.1項にアウトソースの管理を7.4項と別に記述することが求められたり、丸投げ型の外注に対する定期評価表による形式的な管理だけでは不適合と判断されたり、当面はいろんな審査があり得るものと思われる。組織は、規格が品質不良を出さず、一貫して顧客満足の製品を提供するための業務指針であることを踏まえて、4.1項か7.4項かによらず、独自の必要な対応を確立することが大切である。
 
 
引用文献( 英語文献及び文章中の *印は著者による翻訳)
(1) Merriam-Webster’s Collegiate Dictionary, Merriam-Webster Inc
(2) ISO/TC176: “アウトソース”に関する指針、N630R, 24 June 2003
(3) ISO/TC176: ISO9001/9004:2000の用語に関する指針、17 May 2001, N526R
(4) 飯塚悦功:追補改正版の背景をあかす、アイソス、No.133, 2008.12月号, p.12-27
(5) L.Hunt他:The Insider’s Guide to ISO9001:2008, Quality Digest, Nov. 2008,
H20.12.20 
禁無断転載  (個人的使用のための複写歓迎)
サニーヒルズ コンサルタント事務所             〒458-0031 名古屋市緑区旭出2−909