ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
 <実務の視点>
  2004年版 改定内容の検討 ―何が変わったか?―
 <31b-01-02>

1. 原理・原則
(1) 規格の意図、規格と審査登録制度の意義         [不変]
ISO14001の96年版の序文(0章)には、ISO14001の制定の背景と狙い、ISO14001環境マネジメントシステムの目指すもの、原則、方法論、及び、審査登録制度の意義が詳しく説明されていた。2004年版ではわずかな変更はあるが記述はほとんどそのままである。両版の序文の記述を比較して内容も意味するところも変わっておらず、規格の論理に変更は認められない。従って、規格の意図、規格と審査登録制度の意義は2004年版においても規格制定時から変化していないと考えられる。
   
すなわち、概略の通りである。
環境法規制の強化や環境問題への社会や諸利害関係者の懸念の高まりに対応してあらゆる組織は、その活動、製品、サービスの持つ環境影響を管理し低減することに努めている。
このような取組みを、組織の事業活動の発展を阻害せず、かつ、地球環境の保全に寄与し、利害関係者のニーズと期待を満たす効果的なものとするためには、組織の戦略に組み込まれた体系的マネジメントシステムの中で実行することが必要である。
ISO14001は、このような目的で制定され、広範囲な利害関係者のニーズと期待に対応する環境パフォーマンスを、適切で且つ経済的に実行可能な最良の利用可能技術の適用によって継続的に着実に実現を図ろうとする、組織の環境マネジメントの業務体系の必要条件を「要求事項」として規定している。
審査登録は、組織が規格に従って業務を行っていることの保証であり、利害関係者に対して組織の環境取り組みが適切であるとの安心感を与えるものである。
 
(2) 環境マネジメントの方法論     [不変]
   規格は論理の体系であり、要求事項の単なる集合体ではない。ISO14001の環境マネジメントの方法論の原則は、規格のそれぞれの章、条項を構成要素として表される環境マネジメントシステムモデルとして図1に示されている。このモデルは、環境パフォーマンスの継続的改善の実現を目指して、環境方針(4.2章)から計画(4.3章)、実施及び運用(4.4項)、点検(4.5章)、マネジメントレビュー(4.6章)と回るPDCAによって環境マネジメントシステムの継続的改善を図るというものである。
   
   このモデルは図1に示されるだけで、両版とも文章による説明を掲載していない。しかし、図1には、用語の変更はあるが96年版と同じPDCAサイクルが描かれており、変化は認められない。従って、環境マネジメントシステムモデルには変更がなく、つまり、規格の環境マネジメントの方法論の論理には変更がなかったと考えられる。
 
 
2. 要求事項の意図      [不変]
   規格の改定に際してのTC207の決議(1)は、改定作業を「ISO9001との両立性及び文章の明瞭化に関連する問題」の検討に限定すると共に、「文言のどのような変更も、ISO14001に新たな要求事項を追加しないで使用者の理解と利用を助けるものでなければならない」と要求事項の変更を厳に禁止している。
   
   実際、規格の序文の記述から規格の意図、規格と審査登録制度の意義(上記(1))にも、その環境マネジメントの方法論(上記(2))にも変更が認められない。 規格が規定する環境マネジメントシステムには何の変更もないということであるから、その環境マネジメントシステムの必要条件たる「要求事項」の変更はないということになる。改定作業が決議を遵守して行われたが、これからも確認できる。2004年版の要求事項の意図するものは96年版から何の追加も変更もないと考えることが、改定版規格の意図と合致する適切な規格解釈である。従って、要求事項の記述に変更があっても、それは両立性と明瞭性の向上のための文言或いは表現上の変更であって、要求事項の意味するところや要求事項が意図するところが変化したものではないと解するべきである。
 
   
3. 規格の構造・表現
(1) 要求事項の構成(章、条項建て)     [変化あり]
   規格の章や条項建ては96年版から基本的に変わっていない。 しかし、4.3章(計画)から4.3.4項がなくなり、旧4.5.1項の一部が新4.5.2項として分離され、4.5章(点検及び是正処置)が4.5.1〜4.5.5項に増えた。 この変更の趣旨はいずれも規格の論理や要求事項の意図の明瞭化であると考えられる。
 
   変更された条項建てとその意義は次の通り。
@ 4.3.3項(目的及び目標)と4.3.4項(環境マネジメントプログラム)が統合され
    新4.3.3項(目的、目標及び実施計画)に
一連の繋がった事項をひとつの条項に規定されて、その意図がより明瞭になった。
A 4.3.4項第3節が4.3.1a)項に移動
4.3.4項消滅に伴う残部を関係ある4.3.1項に移動しただけかもしれないが、 これにより規格の論理により沿った記述となり、要求事項の意図がより明瞭になった。
B 新4.5.2項(遵守の評価)が4.5.1項(監視及び測定)から分離
法遵守評価の重要性を強調するために別条項として独立したと説明されている。
C 4.5.2〜4.5.3項の条項番号が順送りにずれた。
条項番号が変わっただけ
 
(2) 用語、要求事項の記述      [変化あり]
   条項の標題で変更されたものがあり、記述の変更はすべての条項にわたる。 また、ISO14001の英語の変更がなくともJISQ14001の日本語が変更されているところもある。
   
   JISQ14001における記述の変更をその意図又は結果としての効果の観点で分類すると、主要な変更は凡そ次のように理解できる。
 
(イ) 英原文の変化
a) 意味や意図の明瞭化のため、また適切な翻訳が可能なように記述が変更された
@ 組織で働く又は組織のために働く人々(4.2章、4.4.2項)
A 活動、製品及びサービス(4.2章、4.3.1項)
B 環境マネジメントシステムの適用範囲内(4.2章、4.3.1項)
C 確立し、文書化し、実施し、維持し、継続的に改善する(4.1章他)
D 環境側面、法規制の考慮(4.3.1項、4.3.2項)
E 資源、役割、責務、権限(4.4.1項)
F 内部監査(4.5.5.項)
   
b) ISO9001との両立性の向上のためにISO9001の記述が全面的又は大幅に取入れられた
@ プロセスアプローチ(序文)
A 文書化に関する要求事項(4.4.4項)
B 文書管理に関する要求事項(4.4.5項)
C マネジメントレビュー(4.6項)
 
c) 意味や意図の明瞭化のためにISO9001記述に沿って記述が変更され
@ 是正処置、予防処置(4.5.3項)
A 監視及び測定機器(4.5.1項)
 
(ロ) JIS翻訳のみの変化
a) 日本語として意味の明瞭化
@ 実施計画(4.3.3項)
 
b) JISQ9001の日本語に沿って日本語記述が変更された
@ 力量(4.4.2項)
A レビュー(4.2章他)
B トップマネジメント(4.2章他)
C コミットメント(4.2章他)
 
c) 96年版翻訳が原英文に沿って修正された
@ 組織が管理できる環境側面及び影響を及ぼすことができる側面(4.3.1項)
   
 
引用文献 (英語文献の翻訳及び*印は筆者による翻訳)
(1) TC207: Communique 8th Annual Meeting of TC207, 2000-07-10, N429
H1612.11 
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