ISO9001/ISO14001
コンサルティング・研修


解説
 
    実務の視点    規格要求事項の解釈
このセクションでは、ISOマネジメントシステム規格(ISO9001/ISO14001)の要求事項を
実務の視点で、様々な角度から読み解き、解説します。
目  次
MSS 共通テキスト
定義・上位構造
13
2015年改定の要点
ISO9001
14 2015年改定の要点
ISO14001
英語で読み解く
ISO9000/14000
規格の論理
ISO9000/14000
実務の視点による
ISO9001の解説
よく見られる
誤った取組み
ISO9001/14001
この方がよくわかる
ISO14001:2004
実務の視点による和訳
規格と認証の利用
ISO9001/14001 事例研究
改定の要点
ISO14001:2004
10 改定の要点
ISO9001:2000
11 改定の要点
ISO9001:2008



ISO14001 2004年版 改定の要点 31b
ISO14001:2004 改定の狙いと改定された要求事項の意味について、
公表されたISO諸文献を基礎として
海外での受けとめをも参考にして、実務の視点で考えます。
目 次
.  ISO公式見解に見る 2004年版改定の趣旨
.  2004年版 改定内容の検討    −何が変わったか?−
.  2004年版への移行の要点     −必要な組織の対応−
.  2004年版 変更された要求事項の検討 (1) −条項建ての変更−
.  2004年版 変更された要求事項の検討 (2) −表現の変更−
.  2004年版 変更された要求事項の検討 (3) −各条項の記述(4.1〜4.3 章)
.  2004年版 変更された要求事項の検討 (4) −各条項の記述( 4.4 章 )
.  2004年版 変更された要求事項の検討 (5) −各条項の記述(4.5〜4.6 章)


 .   ISO公式見解に見る 2004年版改定の趣旨  

1.改定作業開始の経緯と改定の狙い

   1996年にISO14001が発行されてTC207/SC1の取り組みの中心は規格の運用の推進 (Implementation issue)に移ったが、ここで関心が集められていたのが、規格の解釈、ISO9001との両立性、途上国や中小企業における規格普及の問題(1)であった。 このような中でISO9001の改定作業が始まり、1998年のTC207サンフランシスコ総会において、ISO9001との両立性の改善という観点を優先しつつISO14001の見直しに着手することが決議された(1)。これを受けてTC207/SC1は加盟各国の代表の意見を聴取(6)したところ、投票権を有する全47ケ国の内の31ケ国から規格を改定することに賛成する見解が出された。この賛成意見の大多数はどちらかというと広範囲な見直しが必要とするものであったが、同時に、このような早期の規格改定は規格使用者に混乱と不安を引き起こすことを心配する声があった。
 
   結局、2000年のストックホルム総会で、ISOの5年毎規格見直しルールに基づく改定作業を、次の2点を改定の狙いとして開始することがが決められた(3)
ISO9001:2000 との両立性(Compatibility)の向上
1996年版の文章の明瞭さ(Clarity)の改善
この決定を伝えるコミュニケには、「現行の規格条文の如何なる変更も、ISO14001に新たな要求事項を持ち込まないことが前提でなければならず、使用者の規格理解と実行を助けるものでなければならない」と明記されている。
 
2.主要な改定点
   改定原案は2003年にCD2(第二次委員会原案)からDIS(国際規格原案)になったが、改定作業の中心にあったSC1議長 O.A.Dodds氏が ISO公報にこの時期までの改定作業について発表している(6)。 これによると主要な改定点として次の13点が挙げられている。
図1にPDCAとISO9001のプロセスアプローチの説明を追加
両立性の改善と意味の明瞭化のための定義の変更と追加
EMSの範囲の決定に関する要求事項を序文(1章:筆者註)から4.1項に移動
環境方針は〜の性質、規模、環境影響に対して適切」という要求事項の「〜」が「組織のEMSの決められた範囲の活動、製品及びサービス」に変わる
"従業員”と”構成員”という語句は、”組織の業務に従事するか、組織に代わって業務を行うすべての人々”に置き換えられる
法規制の条項が「法の規定がEMSの構築、実施、維持において考慮されることを確実にすること」という明白な規定を含むことになる
理解の容易化のため、目的、目標、環境マネジメントプログラムの条項が統合される
体制及び責任と訓練、自覚及び能力の両条項がその目的の明瞭化と理解の容易化のために変更された
文書化された手順の要求事項が運用管理のための手順のみに限定され、他のすべての文書化の必要性は新しい文書化に関する条項に示される
法遵守の定期評価の要求事項が規格使用者に十分な関心をもってもらうように監視及び測定の条項から分離される
EMS監査の条項が他の監査の活動との混同を避けるために要求事項が組織内部のものであることを強調するように改定される
付属書Aも要求事項の変更に合わせて、また、過去の経験と組織の必要に基づく指針を示すように改定された
付属書Bも改定に合わせて ISO9001とISO14001との対照表が更新される
 
3. 要求事項の変更と追加
   狙いをISO9001との両立性と条文の明瞭性の向上に限定し、要求事項の変更や追加を一切行わないという方針で開始された改定作業であるが、CD2やDISの段階までこの方針が維持されたようだ。改定作業責任者の O.A.Dodds氏はDIS移行直前の段階で改定作業が次の4つの条件を満足するように行われたことを確認している(6)
1996年版の文章の明瞭さの改善
ISO9001:2000との互換性の一層の改善
翻訳の容易化と世界中での規格使用の確実化
新しい要求事項の導入の回避(上の改定点以上の如何なる変更もない)
 
   CD2は2003年7月のバリ総会(4)でDISに昇格し、2004年にFDIS(国際規格最終原案)を経て11月15日にIS(国際規格)として発行されたのであるが、この間のブエノスアイレス総会(8/30〜9/5)のコミュニケ(5)も改定作業の方針変更には触れていない。その後数々の議論を経て、予定より1年遅れで改定版は11月15日に2004年版として発行されたが、これを告げるISOの新聞発表(7)(全文和訳こちら)でも改定版について次のように述べられている。
要求事項の意図がより明瞭になった。
ISO9001:2000との両立性が向上した。
 
   規格自身もその改定版の序文において、第2版が「第1版の明瞭化に焦点を当て、規格使用者の利益のためにISO9001とISO14001両規格の両立性を強化するのに正当な考慮を払った」と改定の趣旨を明記している。
 
   このように ISOの公式文書は、要求事項の意図の変更や追加を一貫して否定している。 従って、改定版の条文、語句のいずれの変更についても、規格の狙うところや要求事項の意図には全く変化がないという前提でその意味を考えることが正しい解釈ということになる。
 
 
引用文献 (*印及び英語文献は筆者和訳)
(1) TC207: Communique 6th Annual Meeting of TC207(June 14-21 1998), N283
(2) TC207: Communique 7th Annual Meeting of TC207, 1999-06-06, N357
(3) TC207: Communique 8th Annual Meeting of TC207, 2000-07-10, N429
(4) TC207: Communique 11th Annual Meeting of TC207, July 2003, N629
(5) TC207: Communique 12th Annual Meeting of TC207, Sep. 2004, N703R1
(6) O.A.Dodds: ISO Bulletin, June 2003, p.20-22
(7) ISO中央事務局: Press Release (全文和訳こちら),
                   15 November 2004, Ref.:940
このページの先頭へ H16.11.22(H17.4.20微修)

 .   2004年版 改定内容の検討 ―何が変わったか?―
1. 原理・原則
(1) 規格の意図、規格と審査登録制度の意義      
[不変]
    ISO14001の序文には、ISO14001の制定の背景と狙い、ISO14001環境マネジメントシステムの目指すもの、原則、方法論、及び、審査登録制度の意義が説明されている。両版の序文の記述を比較してみるとわずかな文言の変更はあるが、内容も意味するところも変わっておらず、規格の論理に変更は認められない。従って、規格の意図、規格と審査登録制度の意義は2004年版においても規格制定時から変化していないと考えられる。
   
すなわち、ISO14001とは、
組織の戦略に組み込まれて実行されるべき体系的な環境マネジメントの業務体系の必要条件を「要求事項」として規定している。
それは諸利害関係者のニーズと期待を満たす環境パフォーマンスを、経済的、技術的に可能な最良の手段を適用して、継続的に着実に実現を図ることを狙いとしている。
審査登録は、組織が規格に従って業務を行い、適切な環境取り組みを行っているとの安心感を利害関係者に保証することである。
 
(2) 環境マネジメントの方法論      [不変]
   ISO14001の環境マネジメントの方法論の原則は、環境マネジメントシステムモデルとして図1に示されている。このモデルは、環境パフォーマンスの継続的改善の実現を目指して、環境方針(4.2章)から計画(4.3章)、実施及び運用(4.4項)、点検(4.5章)、マネジメントレビュー(4.6章)と回るPDCAによって環境マネジメントシステムの継続的改善を図るというものである。この図1には、用語の変更はあるが96年版と同じPDCAサイクルが描かれており、変化は認められない。従って、環境マネジメントシステムモデルには変更がなく、つまり、規格の環境マネジメントの方法論の論理には変更がなかったと考えられる。
 
   
2. 要求事項の意図      [不変]
   規格改定のTC207の決議(1)は、「文言のどのような変更も、ISO14001に新たな要求事項を追加しないで使用者の理解と利用を助けるものでなければならない」と要求事項の変更を厳に禁止している。実際、上記1.のように規格の意図、規格と審査登録制度の意義にも、環境マネジメントの方法論にも変更が認められない。 規格の環境マネジメントシステムには何の変更もないということであるから、その必要条件たる「要求事項」の変更はないということになる。要求事項の記述に変更があっても、それは両立性と明瞭性の向上のための文言或いは表現上の変更であって、要求事項の意味するところや要求事項が意図するところが変化したものではないと解するべきである。
 
   
3. 規格の構造・表現
(1) 要求事項の構成(章、条項建て)     [変化あり]
   規格の章や条項建ては96年版から基本的に変わっていない。 4.3.4項がなくなり、4.5.2項が新たな条項なる等の変更もあるが、いずれも規格の論理や要求事項の意図の明瞭化が趣旨であると考えられる。
 
@ 4.3.3項と4.3.4項が統合され新4.3.3項(目的、目標及び実施計画)に
一連の繋がった事項がひとつの条項に規定され、その意図がより明瞭になった。
A 4.3.4項第3節が4.3.1a)項に移動
規格の論理により沿った記述となり、要求事項の意図がより明瞭になった。
B 新4.5.2項(遵守の評価)が4.5.1項(監視及び測定)から分離
法遵守評価の重要性を強調するために別条項として独立したと説明されている。
C 4.5.2〜4.5.3項の条項番号が順送りにずれた。
条項番号が変わっただけ
 
(2) 用語、要求事項の記述    [変化あり]
   条項の標題の変更があり、記述の変更はすべての条項にわたる。JISQ14001における記述の変更をその意図又は結果としての効果の観点で分類すると、主要な変更は凡そ次のように理解できる。
 
(イ) 英原文の変化
a) 意味や意図の明瞭化のため、適切な翻訳が可能なように記述が変更された
@ 組織で働く又は組織のために働く人々(4.2章、4.4.2項)
A 活動、製品及びサービス(4.2章、4.3.1項)
B 環境マネジメントシステムの適用範囲内(4.2章、4.3.1項)
C 確立し、文書化し、実施し、維持し、継続的に改善する(4.1章他)
D 環境側面、法規制の考慮(4.3.1項、4.3.2項)
E 資源、役割、責務、権限(4.4.1項)
F 内部監査(4.5.5.項)
 
b) ISO9001との両立性向上のためにISO9001の記述が取入れられた
@ プロセスアプローチ(序文)
A 文書化に関する要求事項(4.4.4項)
B 文書管理に関する要求事項(4.4.5項)
C マネジメントレビュー(4.6項)
   
c) 意味や意図の明瞭化のためにISO9001記述に沿って記述が変更された
@ 是正処置、予防処置(4.5.3項)
A 監視及び測定機器(4.5.1項)
 
(ロ) JIS翻訳のみの変化
a) 日本語として意味の明瞭化
@ 実施計画(4.3.3項)
   
b) JISQ9001の日本語に沿って日本語記述が変更された
@ 力量(4.4.2項)
A レビュー(4.2章他)
B トップマネジメント(4.2章他)
C コミットメント(4.2章他)
 
c) 96年版翻訳が原英文に沿って修正された
@ 組織が管理できる環境側面及び影響を及ぼすことができる側面(4.3.1項)
 
 
引用文献 (英語文献の翻訳及び*印は筆者による翻訳)
(1) TC207: Communique 8th Annual Meeting of TC207, 2000-07-10, N429
このページの先頭へ 詳しくは<31b-01-02>

 .  2004年版への移行の要点    −必要な組織の対応−

1. 1996年版から2004年版への移行
(1) 移行のために必要なこと
(イ)基本的考え方
    ISO14001の原理、原則、方法論の基本には何の変化もなく、2004年版には新たな要求事項はない。従って、96年版規格に適合している環境マネジメントシステムはそのままで2004年版年版にも適合している。
 
(ロ)適切な環境マネジメントシステムを確立、運用している組織
    96年版規格の意図に沿って正しく環境マネジメントシステムを確立し、運用している組織は、現状の環境マネジメントシステムのままで2004年版にも適合しているはずである。殊に規格の狙いの利益を挙げている組織は、本質的な変更が必要とは考えられない。このような組織は、環境マニュアルの準拠規格の記述をISO14001:2004に変更するだけでよい。条項建てが変更された部分もそのままでもよいが、環境マニュアルを組織の環境マネジメントシステムのISO14001への適合性を主張する目的で作成しているなら新条項建てに変えた方が適切であろう。
 
(ハ)96年版規格の解釈に自信がないままの組織
    96年版で舌足らずの記述や統一性のない表現などで組織の理解を惑わした要求事項の意図が、改定版でより正確な詳しい記述で明瞭化されたのであるから、すべての組織はこれらの部分について既存の環境マネジメントシステムを見直すことが大切である。要求事項の意図が正しく理解されずに要求事項が誤ってシステムに反映されていた場合には、改定版で判明した要求事項の意図に沿ってシステムを修正することが必要である。
 
(ニ)要求事項の文言に対応して環境マネジメントシステムを構築した組織
    要求事項を「〜すること」との文言でのみ解釈して、それぞれの「〜すること」に対応した業務の形式や仕組みを以て環境マネジメントシステムとしている組織の場合は、2004年版では「〜」の部分の用語や記述が変わり、「〜すること」が増えているので、記述が変更になったすべての要求事項につき対応を逐次見直しする必要がある。結果的に、多くの変更を加えなければならないかもしれない。このような組織は、要求事項の変更があったとする解説や各審査の変更についての各審査登録機関の異なる見解が発表されているので、これらへの対応も必要になるであろう。
   
(2) 海外の受けとめ
   ウェブで入手可能な海外のISO14001改定に関する説明には、「うまく実施されているEMSは両版の基本要求事項を満たしているはず」(4)と本質的変更を明確に否定する見解から、「変わりなし(business as usual)と当初は考えられていたが、2004年版改定への適合を確実にするためには既存の環境マネジメントシステムを見直し、修正する必要があるだろう」(5)と改定の意味を少々重く見る意見まである。しかしいずれの解説も、改定の趣旨が、明瞭性と両立性の向上であることを明確にしており、要求事項の意図に変更があったことを明確に指摘する例はない。海外の受けとめは若干の幅があるにせよ、おおよそ、「96年版から要求事項に本質的変更はなく、2004年版移行は既存の環境マネジメントシステムの副次的な(minor)変更で済む」ということで一致しているように思われる。
 
(3) 改定の性格と組織の改定への備え
   ISO規格は5年後の見直しが原則となっており、ISO14001については次回の改定はISO9001と同時に行われる可能性がある(2)。 どちらもマネジメントの規格であるから、マネジメントの原理、原則は共通であり、その論理に変更が生じる事態とならない限り要求事項の意図の変更はないはずである。 ISO9001の2000年版改定は時代のニーズに対応してマネジメントの目標を品質保証から顧客満足に変更し、また、その論理が世界で確立しつつあった最新のマネジメントの論理(3)に準拠することを明確にして、要求事項とその構成をほとんど全面的に変更した。 しかし、ISO14001において今後この種の大幅な変更が生ずる可能性は小さいので、次の改定はISO9001との両立性の向上のための要求事項の記述の変更が主体となると思われる。
   
   予想される次回改定を含めて規格の通常の改定では、要求事項の記述は変わっても要求事項の意図は変わらないことがほとんどであるから、組織が規格の要求事項の意図に沿ってシステムを確立し運用しているなら、改定の度毎に何かをしなければならないということにはならない。 しかし、要求事項の文言に対応した業務の形式や仕組みを基礎とするシステムでは、改定の度毎に要求事項の文言の変更に対してシステムを見直し改定する必要が生じる。 このような組織にはこの度の改定作業を、要求事項を効果的な環境マネジメントシステムのための必要事項として受けとめ、なぜそれが必要なのかと要求事項の意図を考えて、その実現を図るように既存の環境マネジメンの業務体系を修正するというような本来のシステム確立の姿に切り換えるよい機会であるように思える。
   
   また、規格の章や条項建てが変更されても環境マニュアルの章や条項建てを変え、関係する文章を移動するだけで済ませられるように、環境マニュアルの記述内容、方法を考慮することも実務的には重要である。更に手順の変更がない限りは手順書の記述を変更しなければならないことがないような、手順書の記述内容、方法の工夫も大切である。
 
   
2. 移行審査
   2004年版への切り換えに際して、ISO9001の2000年版のような移行審査は行われない。組織は、定期審査、更新審査のいずれの機会かに審査基準をISO14001:1996 から ISO14001:2004に変更して受審すればよい。移行の期間は、ISO14001:2004 の発行(2004年11月15日)から18ケ月と決められており、この詳細は近くISO-IAF共同声明として発表される(1)
   
   
引用文献(英語文献の和訳及び*印は筆者の翻訳)
(1) ISO中央事務局: 新聞発表、Ref.:940, 15 November 2004
(2) TC207: 第12回総会コミュニケ、Aug 30th-Sept 5th, 2004/12/13
(3) ISO中央事務局: ISO9001/14000謎解きの旅、汎用的ネジメントシステム、
       http://www.iso.ch
(4) DNV Certification: November 2004, http://www.dnv.com
(5) Lloyd’s Register Quality assurance: October 2004,
        http://www.lrqa.com
このページの先頭へ H16.12.13

 .   変更された要求事項の検討 (1)  ― 条項建ての変更―

(1) 4.3.3項と4.3.4項が統合され4.3.3項に 明瞭化(意図の明瞭化)]
変更の趣旨、効果
目的、目標とその達成計画が同じ条項に記述されて、意図がより明瞭化した。
規格改定作業責任者O.A.Dodds氏(1)も「理解を助けるため」と説明している。
その他
「環境マネジメントプログラム」も「実施計画」の原英語は programme(s) で変わっていない。
 
 
(2) 4.3.4項第3節が 4.3.1 a)項に移動明瞭化 (論理的整合性)]
変更の趣旨、効果
本変更はO.A.Dodds氏の改定の説明(1)では取り上げられていないので、4.3.3項との統合で残った部分を関係する4.3.1項に移動されただけの変更かもしれない。
ただし、移動部分が「・・・環境側面を特定する。その際に、〇〇〇・・」というように挿入されたことから、4.3.1項の「環境側面を特定する」とは事業や業務に変更があった場合に管理すべき環境側面に変化がないかを間違いなく調査するような仕事の仕方の意味であることがより明瞭になった。
また、96年版の4.3.4項第3節の記述では、事業や業務の変更を環境側面の検討を飛び越えて直接的に実施計画に反映させるかの印象をも与えた。本変更によって、事業や業務の変更があればまず新たな環境側面の有無を検討し(4.3.1a)項)、順次必要な手順を経て目的、目標の変更(4.3.3項)から実施計画の変更に至るという実務の流れに沿う論理的に適切な記述になった。
 
 
(3) 新4.5.2項(遵守の評価)が4.5.1項から分離
                                明瞭化(重要性の強調、用語の統一)]
同時に、96年版の「環境法規制(environmental legislation and regulation)」が「法的要求事項」と「その他の要求事項」となった。
また、両要求事項の遵守の定期的評価をそれぞれ別々のサブ条項に規定された。
変更の趣旨、効果
一見して「その他の要求事項」の遵守の定期的評価(4.5.2.2項)が追加要求事項であるかの印象を与えるが、96年版の「環境法規制」の定期的評価はこれを包含していた。
すなわち、96年版の「環境法規制の定期的評価」は、環境マネジメントシステムモデルのPDCAサイクルのC(監視、測定)に相当し、同サイクルのP(計画)の4.2.3項では「法的及びその他の要求事項」という表現になっているから、「環境法規制」と「法的及びその他の要求事項」は同義語である。
この変更の意図についてはO.A.Dodds氏は「定期的評価という問題が規格使用者によって適切に注目されるようにするため」に変更されたと説明(1)している。
また、96年版で条項により異なっていた用語や表現が、2004年版ではすべての条項で「法的要求事項」「その他の要求事項」に統一的に表現されるようになり、理解を惑わされることがなくなった。
その他
DISでは「環境上の」要求事項というように表現されていたが、FDISで「環境上の」が削除された。
サブ条項もFDISで設けられた。
   
   
(4) 4.5.2〜4.5.3項の条項番号が順送りにずれた 特に意味なし
変更点
4.5.2項(不適合並びに是正及び予防処置)が4.5.3項に、4.5.3項(記録)が4.5.4項に、4.5.4項(環境マネジメントシステム監査)が4.5.5項に、それぞれずれた。
変更の趣旨、効果
新4.5.2項(遵守の評価)の設定に伴うもので格別の意味はない。
   
   
引用文献 (英語文献の翻訳及び*印は筆者による翻訳)
(1) O.A.Dodds: ISO Bulletin, June 2003, p.20-22

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 5.  2004年版 変更された要求事項の検討(2) −表現の変更−  
(1) 組織で働く又は組織のために働く人々    明瞭化(意味の明瞭化)]
   組織の環境マネジメントシステムに関係のある人々を表す用語として、96年版の従業員(4.2章)、要員(4.4.2項)、従業員又は構成員(4.4.2項)の各用語がこれに統一された。
   
   原英語はpersons working for or on behalf of the organization である。前者は雇用された人、on behalf of は「誰かを代表して或いは誰かの代わりに」という意味であるから後者は組織に代わって業務を行う人という意味である。最近では、正社員、契約社員、パート社員など種々の雇用された従業員がおり、派遣社員、個人契約の専門家などが一体となって業務を行い、また、製造だけでなく事務関係も業務の全体を他の組織に委託することが拡がっている。組織のために働く人とは、派遣社員、個人契約の専門家、外注企業の要員など雇用された人以外で組織の環境マネジメントシステムの範囲内の業務を行う人々を指す。  ここに、「又は」であるが、どちらかであればよいという訳ではないことは、規格の趣旨から明白である。
   
   TC207/SC1委員長 O.A.Dodds氏は、「用語を置き換えた」と説明(1)して、規格の意図の変更でないことを示唆している。変更の趣旨は96年版用語の意味の明瞭化であり、3種類の用語をひとつに統一して要求事項の意味するところをより明瞭化したものであると考えられる。
 
   
(2) 力量    JISQ9001との和訳の共通化]
    96年版の「能力がある」が「力量がある」と変えられた(4.4.2項)。 原英語は competent のままであり、これはJISQ9001では既に「力量がある」と訳されているから、この変更はJIS翻訳におけるISO9001(JISQ9001)との両立性の向上をもたらした。
「力量がある」とは「知識と技能を活用できる能力が証拠で裏付けられている*状況」(ISO9000 3.9.12項)を指し、実務的には与えられた業務を責任をもって遂行できるということである。 力量のない人に業務を委ねれば所期の結果を出すことができず、不良や異常を起こす危険がある。
   
    力量があることは、学校教育、教育訓練又は職務経験を基に判断することができる。新規採用者、配置転換者などある人に初めての業務を命ずるには、足らない力量を教育訓練で充足し、必要な力量をもっていることを確実にしてからでなければならない。環境マネジメントシステムであるので著しい環境側面に係わる力量が規定され、ISO9001では重要な品質に係わる力量が規定されている。
   
    日本では「能力がある」の意味が正しく理解されず、教育訓練が「能力がある」ようにする手段であることの理解も希薄であった。翻訳が「力量がある」になってISO9001の要求事項(6.2項)との対比が可能になり、その意図の理解が容易になった。
 
   また、competent など用語は不変だが、4.4.2項のの条文の構成と表現が大幅に変わった。 O.A.Dodds氏は、4.4.1項と合わせてこの条項が「条項の目的を明瞭にするため、又、規格使用者の理解をより容易にするために」改定された(1)と説明している。これにより、要員を3種類に分ける日本の解釈が誤りであることも明確になった。 
   
   
(3) 組織が管理できる環境側面及び影響を及ぼすことができる側面
                                        [変化なし]

   組織が特定すべき環境側面は、「組織が管理でき、かつ、影響が生じると思われる環境側面」(96年版4.3.1項)から「組織が管理できる環境側面、及び組織が影響を及ぼすことができる環境側面」(2004年版 4.3.1a)項)と大きく変わり、いわゆる直接影響と間接影響の両方の環境側面を管理すべきことが明瞭な表現となった。
   
    しかし、これはJIS翻訳の変更に過ぎず、原英文ではわずかな記述上の変更があるだけである。すなわち、96年版の意味不明なJIS翻訳であるが、原文が「組織が管理できる環境側面、及び、組織が影響を及ぼすことができると思われる環境側面*」という2種類の環境側面の意味であったことは周知の事実である。 そして、これに関してISO14001解釈委員会が、翻訳の日本文の誤りに触れないまま、「直接影響と間接影響を意味する」との解釈を発表している(2)。 従って、2004年版のJISの日本語文言の大幅変更にもかかわらず、ISO14001でもJISQ14001でも要求事項の意味の変更はないのである。
   
   この問題は、O.A.Dodds氏の論文(1)に挙げられている13箇所の主要改定点にも含まれていない。 英語文献で本変更を取り扱っていないものもあり、説明があっても it can be expected から it can influence への意味合いの明瞭化としての説明である。
 
   
(4) 活動、製品及びサービス  明瞭化(意図の明瞭化)]
   組織が管理しなければならない環境影響の原因に関して、96年版では「組織の活動、製品又はサービス」と規定していたが、2004年版では「又は」が「及び」に変更された。これは、環境方針の適切性(4.2項)と環境側面の特定(4.3.1項)に関して用いられている表現である。これについて海外でも「悪名高い”or”が”and”になった」と改定を積極的に意味づけようとする文献(3)もあるが、大半は「組織のすべてに係わる環境影響を管理しなければならないことが明瞭になった」と受けとめている。
   
   ISO14001では定義が存在しないが、「活動」の結果が「製品」「サービス」であり、「製品」と「サービス」とは一般社会と同様の概念で区別されていると思われる。この概念では大抵の組織は「製品」と「サービス」の両方を提供していると考えられる。 一般的には、活動、製品、サービスを「又は」で繋ぐのか「及び」で繋ぐのかで意味が異なり、「又は」では3者の「いずれかであればよい」という意味にもなり得る。しかし、ISO14001は顧客やその他の利害関係者に負っている環境責任を組織が果たすための規格であるから、「又は」だからといって活動、製品、サービスのいずれかの環境影響にだけ取り組めばよいというような解釈は素直ではなく、規格の意図から妥当でないのは明白である。
   
   例えば、「場内で火災が発生しました。正面出口又は非常口から退避して下さい」というのは、「正面出口及び非常口から退避して下さい」と同じ意味である。「又は」と「及び」は相当に重なり合った意味で用いられるというのが言語上の現実である。2004年版でも「組織で働く又は組織のために働く」(4.2項)や「教育、訓練又は経験」(4.4.2項)などの「又は」が残っているが、規格の意図からこれらが「いずれかでよい」という意味でないことは明白である。一方、「及び」とすると「且つ」とか「及び」で繋がれたすべてを意味するようにも受けとめられ得る。
   
   諸刃の刃である「又は」の「及び」への変更が敢えて行われたのは、「いいとこ取り」のEMS(4)が存在しこれへの問題意識からの変更であったのかも知れない。この意味では「又は」より「及び」の方が規格の意図の明瞭化になると言える。しかし、O.A.Dodds氏(1)は変更の理由を説明しておらず、「又は」の「及び」への変更に深い狙いがあったのかどうかの公式説明はない。いずれにせよこの変更は、規格の論理に基づく要求事項解釈では大した問題ではなく、要求事項の意味の明瞭化の域を出るものではない。
 
 
(5) 確立し、文書化し、実施し、維持し、継続的に改善する 
         
ISO9001との整合化(表現)]  [明瞭化(表現の正確化)] 
   旧版では マネジメントシステム の業務を行うことを「確立、維持」と表現していたが、改定版では、ISO9001に倣って「確立、文書化、実施、維持、継続的改善」或いは「確立、実施、維持」改められた。「維持」は「実施」や「継続的改善」を含む用語であるからこの変更は、ISO9001との表現上の整合を図り、また、より正確なPDCAサイクル表現にすることが主旨であって、意味の変更ではない。
   
   同様に、手順に関しても「確立、維持」が「確立、実施、維持」となり、環境目的、目標の「設定、維持」も「設定、実施、維持」と変更されている。なお、後者の「設定」の原英語は establish(確立)である。
 
   
引用文献 (英語文献の翻訳及び*印は筆者による翻訳)
(1) O.A.Dodds: ISO Bulletin, June 2003, p.20-22
(2) ISO14001解釈委員会報告書: 2000年4月28日
(3) Lloyd’s Register Quality assurance: October 2004, http://www.lrqa.com
(4) 寺田 博:アイソムズ, 2003.12, p.32-36, (p.34)
このページの先頭へ 詳しくは<31b-01-05>

 .  2004年版 変更された要求事項の検討 (3)− 各条項の記述 −
 (4.1〜4.3 章)  
4.1 一般要求事項  
   ISO9001,14001両規格ともマネジメントシステムをPDCAで継続的に改善するという枠組みを論理の基礎としている。ISO9001(4.1項)はこれを マネジメントシステムの「確立、文書化、実施、維持、継続的改善」と表現し、同項のa)〜f)項及び第3節にそれを満たすための具体的な条件をプロセスアプローチの概念で規定している。改定版ISO14001は前者に関してISO9001に表現となり、後者については「どのように満たすかを決めること」との表現に止めている。<5-1>
 
   また、「適用範囲の明確化」が3章からこの項に移動したが、旧版でも登録証に適用範囲は明示されていたから実質的に変わることは何もないはずである。 4.2、4.3項の「環境マネジメントシステムの適用範囲内の」という表現との整合を図る技術的な配慮と考えよい。
   
4.2 環境方針
   「最高経営層」の「トップマネジメント」、「約束」の「コミットメント」、「見直す」の「レビュー」へのそれぞれの変更はJIS9001とのJIS和訳の共通化であって、いずれも原英語には変化がない。ISO9001に倣って英語の発音をカタカナで表して、それ自身は何の意味も持たない用語となったから、意味は原英文に立ち戻って解釈する他はない。
   
   旧版では環境マネジメントシステムの対象範囲という概念は「組織の活動、製品、サービスの管理できるか影響力を及ぼすことができる環境側面」という表現で示唆されるだけであったが、改定版では「組織が明確に決めた環境マネジメントシステムの対象範囲」という明確な表現が導入された。この結果、組織がその活動、活動場所や製品、サービスの中から環境マネジメントシステムを適用する範囲を選択して決めてよいということが明瞭にされた。逆に組織は、環境マネジメントシステムをどの範囲に適用しているのか、特にその境界を明確にする必要があることになり、これが4.1、4.4.4 b)項の要求事項ともなった。範囲を定める自由があると言っても、範囲を狭く限定し過ぎては地球環境保全を目的とするISO14001の適用の意義を失うことになる。組織が環境について負っている責任を果たそうとし、利害関係者がこれを認めるというISO14001と審査登録制度の枠組みからして、組織の環境マネジメントシステムの信頼性はその適用範囲をどのように選定するかにかかっている(A.2項)。もっとも旧版でも組織が事業所や事業部門(結果として製品、サービスも)を限定して環境マネジメントシステムを運用して登録証を取得することは少なくなかったし、登録証には適用範囲が明確に表記されてから、実質的には何も変わらない。
   
   「活動、製品、サービス」の「又は」の「及び」への変更については、組織に責任のあるすべての重要な環境影響を取り上げるという規格の論理をより明瞭にする表現への変更と考えてよい。規格の趣旨に立脚すればどちらの表現でも解釈は変わらないはずである。<5-4>
   
   「全従業員」が「組織で働く又は組織のために働くすべての人」へ変更されたが、この「従業員」はemployees(被雇用者)であり、今日では「従業員」以外にも種々の類型の人々が同じ事業所や職場で働いているという現実に照らした表現上の変更である。環境方針を伝達しなければならない人々の範囲を雇用された従業員だけでなく例えば外注先の従業員をも含むというように拡大されたということではない。規格の趣旨に照らすと改定版でも旧版と同様、環境マネジメントシステムの適用範囲内の業務を行うすべての人々という意味であることは明白であり、実際、4.2 f)項の英原文は「定められた環境マネジメントシステムの適用範囲内の・・・すべての人に周知される」である。また、業務請負会社の従業員のように同じ職場で働いていても組織の指揮下で仕事をしているのではない場合は、業務請負会社を通じて環境方針の伝達*が行われることになるが、このような規格の意図も付属書Aで明確に説明されている(A.2項)。<5-1>
 
4.3 計画
4.3.1 環境側面
   環境側面を「環境マネジメントシステムの適用範囲」の中で特定するというのは旧版でも当然のこととして理解され実行されてきたから、関連する他の条項の表現との整合を図る以上の意味はない。
   
   「管理できる側面及び影響を及ぼすことができる側面」という表現はJIS和訳の大幅な変更の結果であり、英原文上は少々まわりくどい表現が直接的になったという程度の変更に過ぎない。<5-3>
   
   旧版の4.3.4項(環境マネジメントシステムプログラム)のいわゆる変更管理(change management)に関する要求事項が本項に移され、業務上の変更→環境側面の特定→著しい環境側面の決定→環境目的、目標の設定という通常の業務手順に沿った記述となった。<4-2>
   
   著しい環境側面を考慮しなければならないのが「環境目的の設定)時に」から「環境マネジメントシステムを確立、実施、維持する上で」と変わったことも、同様の表現の正確さの改善が狙いと考えられる。
 
4.3.2 法的及びその他の要求事項
   本項を含めて規格全体で旧版の「手順の確立、維持」が改定版では「手順の確立、実施、維持」と変更されているが、意味は変わらない。<5-5>
   
   旧版の「特定、参照」が「特定、参照( a)項)」と「どのように適用するかを決定( b)項)」とになったのも、表現の正確化を図るものである。旧版でも法規制等を特定し参照するだけでなく、必要な基準や規則を組織の業務に適用してきたし、その遵守状況を定期的に評価してきた(旧版4.5.1項)。実務上で何の変更も必要ではないはずである。
   
   「環境マネジメントシステムを確立、実施、維持する上で・・を考慮に入れること」の追加により、先の4.3.1項の表現変更と合わせて、著しい環境側面の管理と本項の法規制等の遵守が環境マネジメントシステムの目的であることが明確に記述されることとなった。
 
4.3.3 目的、目標及び実施計画
   文書化された目的、目標も「確立、維持」から環境マネジメントシステムのPDCA表現(4.1項)と同様の「確立、実施、維持」へと表現が変えられた。この「確立」はJIS和訳では「設定」であるが、原英語は establish である。 <5-5>
   
   旧版では定義の備考で規定されていた「目的、目標が測定可能であるべきこと」が、改定版では本項の要求事項として規定されている。特に他意はなく、ISO9001の品質目標(5.4.1項)との表現の整合性を図ることが狙いと考えてよい。原英語は同じ measurable であるが、JISQ9001では「達成度判定可能」と和訳されている。
   
   「汚染予防に関する約束を含む環境方針」が「汚染の予防、法規制等の遵守、継続的改善に関するコミットメントを含む環境方針」へと変更され、4.2項(環境方針)のコミットメントに関する記述との整合が図られた。
 
   96年版4.3.4項の「環境マネジメント プログラム」が、programmeと略称されて要求事項が本項にそっくり移動した。目的、目標と同じ条項にそれらの達成計画が記述されて、プログラムの意図がより明瞭化された。<4-2>
   
   なお、「関連する各部門、階層」から 「各( each )」が消えて「関連する部門、階層」となった。変更が意図的かどうかの公式説明はないが、これで「すべての部門、階層で目的、目標の設定が必要」とする文言重視の形式的解釈が誤りであったことが明白となった。
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  .  2004年版 変更された要求事項の検討 (4) − 各条項の記述 −
 ( 4.4 章 )    
 
4.4  実施及び運用
4.4.1  資源、役割、責任及び権限
  標題に「資源」が追加され、条項の記述においても「資源」が先で「役割、責任、権限」が後になった。また、資源に組織のインフラストラクチャーが含まれることが明記された。資源と責任、権限とを分けて規定しているISO9001に倣った記述の変更で、改定作業の責任者のO.A.Dodds氏(1)はそれぞれの意義を明瞭にし理解を容易にするためであると説明している。
   
   第2節の「周知」の原英語では 旧版の「伝達」と同じ be communicated であり、また、第3節の管理責任者に関する記述は、「指名」から「任命」への変更を含めて原英文では一字一句変わっていない。
   
   同じ第3節のa),b)項の内のb)項の、「最高経営層」が「トップマネジメント」に、「見直し」が「レビュー」に、「実績」が「パフォーマンス」に変更されているのも日本語翻訳だけで原英語には変化がない。また、旧版の「改善の基礎として」も改定版の「改善のための提案を含め」も意味は同じである。トップマネジメントの意を受けて日常の環境マネジメントの実行を代行する管理責任者は、折に触れて業務上の重要な問題について状況(環境マネジメントシステムのパフォーマンス)あるいは問題解決の方策(改善のための提案)をトップマネジメントに報告、上申し、指示を仰がなければならないず、トップマネジメントは報告を評価、検討(レビュー)し、適切な判断をし、問題解決に必要な処置を管理責任者に指示しなければならない。 a)項は環境マネジメントを定められた業務体系に沿って実行するという意味であるから、a),b)両項は合わせて、実務における各層管理者の基本的な役割や責任を管理責任者に関連させて記述したものである。この趣旨は新旧両版で何の違いもない。
 
4.4.2  力量、教育訓練及び自覚
   「力量」は旧版の「能力」、「教育訓練」は旧版では「訓練」であったが、原英語では competence, training とそれぞれ不変である。
   
   「要員」「従業員又は構成員」という表現が環境方針(4.2項)と同じく、環境マネジメントシステムの適用範囲内で働く人々という意味の「組織で働く又は組織のために働く人々」に統一された。
   
   新旧両版とも、「力量(能力)」「教育訓練(訓練)」「自覚」に関する要求事項をそれぞれの文節で規定しているが、この順序が変わったこととISO9001(6.2項)に倣った表現となったことから、改定版の表現によって旧版の「・・可能性のある作業」と「・・なり得る作業」との記述の違いを理由にしたいわゆる「3種類の役割の要員」説が誤りであったことが明確になった。規格の意図は、効果的な環境マネジメントの実行には人々が与えられた業務を遂行することができる「力量」を有し、かつ、組織における自分の業務の役割を「自覚」している状況が必要であり、この実現を図る組織の有力な手段が「教育訓練」であるという人事マネジメントの基本を規定することである。
   
   本条項の記述変更も、4.4.1項と同じく各要素の意義の明瞭化、理解の容易化である(1)。しかし、旧版で「力量(能力)」を特定の要員だけにしか考慮してこなかった組織には大きな実際的変更となる。
 
4.4.3  コミュニケーション
   第2節の「著しい環境側面についての外部コミュニケーション」に関する要求事項記述が詳細になり変更されているが、付属書A(A.4.3項)やISO14004(4.3.3.1項)の記述を比較する限りは意図や内容に変化は見られない。O.A.Dodds氏(1)の変更の説明においても本項は何ら触れられていない。旧版の言葉足らずを補った程度の記述変更と考えてよさそうである。
 
4.4.4  文書類
   標題が「環境マネジメントシステム文書」(Environmental management system documentation)から「文書類」(Documentation)に変更になり、旧版のいわゆる環境マニュアルを想起させた記述がISO9001(4.2.1項:文書化一般要求事項)と同様の環境マネジメントシステム文書全般に関する要求事項が記述されるように変わった。 内容、表現ともISO9001とほぼ同じであり、両規格の互換性の向上が図られた。
   
   本項では規格として文書化が必要とする手順については何ら触れていないが、
手順の文書化の要求事項があるのは4.4.6項のみとなった。これはISO9001が6種類の文書化された手順を必要とするという点で論理の曖昧さを際立たせた。
 
4.4.5  文書管理
   要求事項の記述が大きく変わり、ISO9001の文書管理(4.2.3項)とほぼ全く同じ表現の規定となったが、旧版の文書管理の要求事項の意図に変更があったとは考えられない。ただし、旧版の「定期的なレビュー」や「指定の期間の保持」を文字通りに実行している組織は、改定版に照らして実務的な管理に改めることが適切であろう。
 
4.4.6  運用管理
   「運用及び活動」が「運用」に、「確立し維持する」が「確立し実施し維持する」にと用語の変更があるだけで、内容と記述とも変化はない。
   
   規格の用語の定義(3章及びISO14050)にはないが、「活動」は「製品、サービス」と対比して使用されている(例えば4.2 a)項)からISO9001の process、つまり業務(という活動)を意味する。一方、「活動」は activity、「運用」は operation の和訳であり、前者は行為や活動一般を意味し、後者は組織的な活動とか事業活動を意味する(2)。本項の「運用」は組織の業務の内の、製造業の「操業」のように事業の遂行に直接係わる種類の業務のことを意味していると考えられるから、「運用」の標題の下で「運用及び活動」という記述は適切ではなかった。
   
4.4.7  緊急事態への準備及び対応
   緊急事態や事故の発生時の影響の予防、緩和について、旧版の「手順の確立」に加えて、手順の実行が要求事項として明記された。これは、4.3.2項における追加記述と同様の意図の明瞭化のための追記、変更である。
   
   準備と対応の手順について旧版では「組織は必要なら レビューし、改定すること」であったが、改定版では「定期的にレビュー し、必要なら改定すること 」となった。緊急事態はほとんど起きないから、対応手順はその想定訓練の実施や意図的な見直しによってしか適切さを確実にすることができない。この記述の変更についてO.A.Dodds氏(1)は触れていないが、旧版でも実質的に「定期的にレビューすること」であったということかもしれない。
 
   
引用文献
(1) O.A.Dodds:Rivising ISO14001 and ISO14004, ISO Bulletin, JUNE 2003
(2) Oxford Press:Oxford Advanced Learner's Dictionary,6th edition
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 .  2004年版 変更された要求事項の検討 (5) − 各条項の記述 −
( 4.5〜4.6 章)  
4.5 点検
4.5.1 監視及び測定

   4.5章の標題が変更されたが中身には変化はなく、表現上の適切化以上の意味はない。
 
   「運用及び活動」が「運用」に変わったのは4.4.6項と同じ。監視機器に関する記述がISO9001に倣う方向で少しだけより正確な表現となった。環境法規制遵守に関する旧版の第3節が4.5.2項として分離された。
 
4.5.2 順守評価
   規制の順守評価に関する規定が旧版4.5.1項から独立した。表現の変更もあって順守評価に関する意図がより明確にされた。
 
   「遵守」の「順守」への変更はJIS和訳上の変更であり、原英語は compliance で不変。また、「環境法規制(legislation and regulations)」が、「法的要求事項(legal requirement)」(4.5.2.1項)と「その他の要求事項(other requirement)」(4.5.2.2項)と4.3.2項と同じ用語表現となり、整合化が図られた。
 
4.5.3 不適合並びに是正処置及び予防処置
    不適合の処置と是正処置及び予防処置の性格を中心とする旧版の規定が、それら処理の手順を中心とする規定に変化したが、その表現はISO9001の是正処置(8.5.2項)、予防処置(8.5.3項)に倣ったものとなっている。
   
   新しい規定の a)〜e)項は、旧版の第一節の「調査、緩和処置、着手、完了の手順」の具体的要件を示すものである。旧版で組織が確立した不適合の管理と是正、予防処置の手順が a)〜e)項を満たしていなければ、規格の意図ではなかったということである。そのような組織は手順を追加補正する必要がある。
   
   ISO14001では不適合により現に起きている環境影響を緩和、解消する処置の緊要性に特徴があるが、環境、品質両マネジメントにおける不適合の管理とその再発防止処置や予防のための処置の必要性もそれら処置を効果的に実行する手順についての必要条件も基本的には変わらないはずである。両規格における規定の違いは表現上の範囲や文言の違いに過ぎないから、規定つまり要求事項が異なるからといって両マネジメントシステムでこれら処置の手順を別々に定める必要はない。

   同様に、新旧規格の規定の違いも単なる表現上の違いであるから、2004年版にはない旧版の例えば「問題の大きさに応じた是正、予防処置」とかその実施に伴う手順書の変更などの規定もマネジメントの実務においては引き続き維持すべきである。更に、2004年のa)〜e)項もISO9001の規定する是正、予防処置の要件より表現上舌足らずであるので、移行に際するこれら手順の見直しでは、ISO9001の規定を参照しつつ新a)〜e)項の文言をそのままおうむ返ししたような手順をつくらないことが大切である。
 
4.5.4 記録の管理
   標題、内容共にISO9001(4.4.3項)に倣った表現に変更されただけで、要求事項の意図には変化はない。ISO9001ともわずかな用語、言い回しの違いがなお残るが、いずれも本質的なものではない。
 
4.5.5 内部監査
   標題、内容共にISO9001(8.2.2項)に倣った表現に変更されたが、表現上(文言上)でのわずかな違いが多く残された。なお、旧版のがそのまま残された「結果の経営者への報告」という要求事項は内部監査という活動の本質であるから、
ISO9001では96年にあった記述(4.17項 参考20)が2000年版でなくなってはいても、両規格の内部監査に違いがあるというものではない。
 
4.6 マネジメントレビュー
   標題、内容共にISO9001(5.6項)に倣った表現に変更され、特に「インプット」項目が具体的に挙げられてレビューの対象事項が明確にされるなどにより、マネジメントレビューの意図や必要性がより明確になった。
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