ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
  4.1項   品質マネジメントシステム  一般要求事項         こう変わった!  <31-01-410>
1. 記述の変更
   合計8ケ所の記述が変更、追加された。翻訳性改善のための用語の変更が2ケ所、英語表現の適切さの改善のための変更が1ケ所、規格内で不統一な表現の是正が1ケ所、意図の明瞭化のための表現の変更が2ケ所、意図の明瞭化のための注記の追加が2ケ所である。
   
2. 変更詳細
(1) 必要なプロセスの明確化
[2000年版] a) 品質マネジメントシステムに必要なプロセス・・・を明確にする(1.2参照)
[追補版]    a) 品質マネジメントシステムに必要なプロセス・・・を明確にする(1.2参照)
<変更の趣旨: 翻訳性改善のための用語の変更>
   「明確する」の原英語が、identify からdetermineに変更された。JIS仮訳説明では 追補版ではidentifyを使わないことにしたとのことであるが、追補版の意図のひとつである翻訳性の改善が目的なのであろう。規格の意図においては、条項4.2〜8.5.3の標題に相当する活動が“プロセス”であり、これが品質マネジメントシステムの基本構成要素である。しかし、組織の性格によっては顧客満足向上を図るために必要でないプロセスが存在するので、そのような場合には規格の該当する規定の適用を除外してもよい。これが、「1.2参照」の意味である。組織は、条項4.2〜8.5.3の基本的プロセスの内から適用除外できない、つまり、必要なプロセスを「特定(identify)」することが品質マネジメントシステム確立の第一の要件であるというのが、a) 項の趣旨である。しかし、identify では、単に事実を「見つける」(1)という意味に受けとめられかねないので、検討して判断するという意味での「決定する」のdetermineに変更されたものと思われる。因みに b)項 やc)項のJIS和訳「明確にする」は元から determineである。これによって、どのプロセスが必要でどれが必要でないかを顧客満足向上を図るという観点から組織が判断し、決定しなければならないという規格の意図をより明瞭にするというのが、変更の目的である。英語 identity を用いないことで、各国言語に正しく翻訳されるようになるというのが規格執筆者の見方なのであろう。
<組織、審査への影響:  なし>
   JIS仮訳では「明確にする」のままで翻訳に変更がないし、a)の意図の受けとめにも変化はない。 b), c)項の和訳と合わせて、在るものを“明確にする”という意味に受取り、品質保証体系図の作成の要求であるというこれまでの解釈が変更されることにはならないと思われる。
 
(2) プロセスの監視、測定

[2000年版] e) これらのプロセスを監視、測定及び分析する.
[追補版]    e) これらのプロセスを監視し、(適用可能な場合は)測定し、分析する.
<変更の趣旨:  規格内で不統一な表現の是正>
  この具体的な要件を規定する 8.2.3項(プロセスの監視及び測定)では「プロセスを監視し、適用可能な場合には、測定をする」と表現されており、これに合わせたとJIS仮訳は説明している。つまり、測定には制約があることを示唆する表現であるが、8.1項や8.2.4項ではmeasurementにこの註釈はついていないから、 measurementの性格の明瞭化が意図ではなく、「プロセスの監視、測定」という同じ表現における記述の統一が趣旨であったのであろう。
<組織、審査への影響:  全くなし>
 
(3) 品質マネジメントシステムに必要なプロセスとは
[2000年版]  参考1. 品質マネジメントシステムに必要となるプロセスには、運営管理活動、資源の提供、製品実現
                   及び測定にかかわるプロセスが含まれる。
[追補版]     注記1. 品質マネジメントシステムに必要となるプロセスには、運営管理活動、資源の提供、製品実現
                   並びに測定、分析及び改善にかかわるプロセスが含まれる。
<変更の趣旨:   規格内で不統一な表現の是正>
   この参考1.は、条項4.2〜8.5.3の標題に相当する活動が規格の品質マネジメントシステムの基本構成要素であるプロセスに相当することを説明するのが趣旨であり、8章に相当するプロセスを“測定”としていたのをその標題と同じ“測定、分析及び改善”に変更した。4章(品質マネジメントシステム)と5章(経営責任*)をまとめて“management activities (JIS和訳は“運営管理活動”)と称することは変えていないが、現状が妥当な表現であると思われる。
<組織、審査への影響:  なし>
   プロセスの大きさの議論が無くなるなど、規格のプロセスの理解の誤った部分の解消に役立つことが期待される。
 
 
(4) アウトソースされたプロセスの管理 
[2000年版]
   アウトソースしたプロセスの管理について、組織の品質マネジメントシステムの中で明確にすること.
[追補版]
  @ これらのアウトソースしたプロセスに適用される管理の方式及び程度は、
       組織の品質マネジメントシステムの中で定めること。
  A 注記2. アウトソースしたプロセスとは、組織が品質マネジメントシステムにとって必要であると認めているが、
             組織の外部で実施することにしたプロセスである。
  B 注記3. アウトソースしたプロセスに適用される管理の方式及び性質は、
             次のような要因によって影響されるかもしれない。
    a) アウトソースしたプロセスのもつ、要求事項に適合する製品を提供するという
        組織の能力に関しての、潜在的な影響
    b) そのプロセスの管理の分担程度
    c) 7.4の適用を通じて必要となる管理を達成する能力
   アウトソースしたプロセスに対するする管理を確実にするということは、全ての顧客要求事項及び
   法令・規制要求事項 への適合に対する責任を免除するものではない。
<変更の趣旨:   意図の明瞭化のための表現の変更、及び注記の追加>
   アウトソースされたプロセスやその管理に関する規格の意図は先にTC176の指針(2)が公表されて明らかにされているが、追補版の記述はこれを越えていない。すなわち、規格の品質マネジメントシステムは、規格の各条項に相当する業務(プロセス)が顧客満足向上を目指して相互に関連をもって実行される状況の各業務の全体を指す。規格が規定しても組織には存在しない又は不必要なプロセスがあり得るので、その場合は規格の該当する規定の適用を外してよい。しかし組織によっては、プロセスの結果としての製品・サービスを外部から購買しているが故に、これらのプロセスのどれかが必要でなく、実際に組織内ではそのような業務が行われていない場合がある。しかし、だからと言ってそれらのプロセスに係わる規格の規定の適用を除外して何もしなければ、不良品を出荷せず一貫して顧客のニーズと期待を満たす製品・サービスを供給できるということにはならない場合もあり得る。本来組織が行うべき業務であるから、供給者は組織がそれを行うのと同じ条件で、つまり、規格の規定を満たして行わなければならない。組織は供給者のプロセスの実行が規格の要件を満たしていることを確実にするために、必要な程度に必要な方法で管理する必要がある。
 
   これが、規格全体の枠組み或いは規定の基本的考え方を示す4.1項という条項に、アウトソースされたプロセスの管理の必要が規定された理由である。追補版では注記2の追加によって、規格の意図のアウトソースされたプロセスが何であるかがより明瞭になった。一方、「管理を確実にする」という管理については、2000年版が「組織の品質マネジメントシステムの中で明確にする(identify)」としていたのが、「管理の方式と程度」を「定める(define)」との表現になり、何を以てどのように管理するのかということを“正確に述べ又は示す”ことが必要というTC176指針(2)の趣旨をより明瞭に反映した記述となった。すなわち、組織はアウトソースされたプロセスが該当する規格の規定を満たして行われることをどのように管理するかの手順を確立し、必要により文書化しなければならず、出来れば品質マニュアルで触れることが望ましいということである。この管理の在り方を示したのが注記3である。
 
   4.1項は、品質マネジメントシステムをプロセス(業務)の有機的集合体として記述しているので、プロセスを外部で実施する(業務を外部委託する)という観点で書かれているが、マネジメントの実務では業務の購買ではなくその結果の製品・サービスの購買である。原材料の購入は当然、業務の外注の場合でも結果として受取る製品やサービスが組織の製品の品質に影響を及ぼす訳であり、購買するのは製品・サービスである。従って、規格はアウトソースされたプロセスの管理ではなく、購買管理の在り方として7.4項(購買)に組織が必要な品質の製品・サービスを間違いなく得るための要件を規定している。この中で規格は、製品・サービスの仕様を明確にして(7.4.2項)、受入れ検査や試験で確認する(7.4.3項)だけでは常には必要な品質が得られないと思われる場合には、製品実現の手順、実行必要な関連業務、使用する設備の条件、或いは、供給者の要員の能力や品質保証システムの確立、履行に関しても必要と考える条件を明確にして供給者に要求すること(7.4.2 a)〜c)項)、これが間違いなく行われるように供給者を管理すること(7.4.1項)を規定している。TC176指針(2)で7.4項がアウトソースされたプロセスの管理にも適用できると説明され、DIS9001で削除されたがCD9001に「7.4項の要求事項はアウトソースされたプロセスに適用してもよい」という注記2があったのは、このようなことを意味する。
 
   アウトソースされたプロセスの管理と7.4項の関係については、DIS9001ではCD9001の注記2.が取り消され、新たな注記3.のc) 項のような表現となった。これは、アウトソースされたプロセスが組織の製品・サービスに重要な影響を与える場合には7.4項に示される要件だけでは、供給者の業務実行が原因として深刻な不良品の出荷或いは品質不祥事が引き起こされないことを確実にするには不十分な場合があり得るという、TC176指針(2) の考え方のより明確な反映である。7.4項を越える管理として同指針は、販売した機器の保守業務の外注の場合に自身の専門技術者に外注業者の保守作業の監督をさせる、熱処理工程の外注の場合に実績の温度チャートを提出させる、グループ内商事会社に原料購買を任せている場合には、グループ内といえども委託業務仕様を文書で取交わし、定期会議で商事会社の業務遂行を監視、管理する、建設会社で設計を外注する場合は、設計インプットを明確に提示し、定期会議で設計活動を監視し、自身で設計結果の検証、承認をする、銀行が顧客サービスのためのコールセンターを海外の会社に外注した場合、業務実行に関する必要条件を明確にし、定期的に電話応対を監視し、自身の品質方針の外注会社要員への徹底のための教育を要求する、を例示している。従来は専門の供給者からその仕様の製品を購入するとか、製品実現工程の付帯部門を外注するとかが、subcontract (下請負い契約) であったが1990年代以降、ファブレス、EMS、OEMを極端な例としても、TC176指針の例のように事業活動の不可欠な一部門をまるごと外注化することが拡がっている。2000年版が、94年版の subcontract (下請負い契約) からoutsource に用語を変更したのは、このような産業界の動向を反映したものである。そして、従来の外注の管理の在り方を基本に記述されている7.4項の規定が硬直的に読まれたのではマネジメントの新しい状況に対応できない危険があるとのTC176の懸念が、7.4項の規定を越える管理の必要の主張となり、「管理の方法と性質」について詳しく説明する注記3.が追加されたものと考えられる。
 
   7.4項の規定は、購買する製品・サービスが組織の製品品質のための必要を満たすことを確実するための製品・サービスと供給者の管理の必要事項、必要条件を示すものであり、具体的な管理の方法を決めているのではない。規定の文章をこの観点で斟酌すれば、TC176指針が例示する管理の方法も7.4項の規定の範疇のものと考えることができる。TC176の見解の重要な点はむしろ、管理の方法を「組織の品質マネジメントシステムの中で定める」ということであり、供給者に確実に規格の規定に従って業務を行わしめるために必要な組織の管理の活動の手順の明確化であり、その文書化である。そのTC176の諸説明からは、このような管理がきちっと行われていることを確認し、また、確証するために、品質マニュアルの中の、外注して組織内に存在しないプロセスに係わる規格条項の部分には、この管理の活動の手順の趣旨を記述し、或いは、process map(プロセス相関図*)をつくるならその中にこの管理の活動をプロセスとして明記するようなことも期待していることが推察できる。
<組織、審査への影響:  少なくないかも>
   製品実現のために何も購買していない組織はないが、その中でも注記2.に示される規格の意図の“アウトソースされたプロセス”がないか、ある場合は、現行の管理で供給者の不始末で組織の製品品質に悪影響を受けることがないかを見直すことが大切である。とりわけ、製品輸送や保管、製品やサービス用装置の据付けや保守作業、製品の設計、勧誘や営業業務、顧客相談窓口業務などをまるごと外注している組織、特定製品に限定してであっても製品実現のすべての工程を外注し、製品が直接顧客に届けられるような業務形態をとる組織などは、管理を見直し、管理の手順を明確にし、手順書を作成する必要について検討してみるのがよい。
 
   審査への影響に関しては、追補版の“アウトソースしたプロセス”の強調が外注とアウトソースは異なるとするような考えが復活することにつながって例えば、どれは購買だから7.4項、どれはアウトソースだから4.1項にと区別が求められたりするのか、品質マニュアルの4.1項の記述の強化が求められるなどの変化があるかも知れない。
 
引用文献( 英語文献及び文章中の *印は著者による翻訳)
(1) Merriam-Webster’s Collegiate Dictionary, Merriam-Webster Inc
(2) ISO/TC176: “アウトソース”に関する指針、N630R, 24 June 2003
H19.11.23 
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