ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
  6.2項   人的資源         こう変わった!  <31-01-620>
1. 記述の変更
   6.2.1項で、規格内で不統一な表現の是正が1ケ所、意図の明瞭化のための注記の追加が1件の、計2ケ所。
   6.2.2項で、標題がISO14001(4.4.2項)に合わせて変更された他、6.2.1項と同じ表現の是正1ケ所、及び、意図の明瞭化のための記述の変更が2ケ所ある。
   
2. 変更詳細
(1) 力量マネジメントの対象の要員の範囲 (6.2.1項)
[2000年版] 製品品質に影響がある仕事に従事する要員は
[追補版]    製品要求事項への適合に影響がある仕事に従事する要員は
[2000年版] 注記なし
[追補版]     注記 品質マネジメントシステム内の作業に従事する要員は、製品要求事項への適合に直接又は間接的に影響を及ぼすかもしれない
<変更の趣旨-1: 規格内で不統一な表現の是正>
   資源マネジメントの対象の範囲の表現が、6.2項と他の資源の6.3, 6.4項とで異なっていたが、他の項と同じ「製品要求事項への適合性」という表現が使われることになった。この記述の統一によって6章の資源マネジメントのどの資源も対象範囲が同じであることが明瞭になった。
<変更の趣旨-2: 意図の明瞭化のための注記の追加>
   「製品要求事項への適合性」とは、検査合格など組織内での製造やサービス提供の活動における製品品質に関するものでなく、顧客のニーズと期待、つまり、顧客要求事項への製品の適合性、結局、顧客満足のことである。品質マネジメントシステム は顧客満足向上、つまり、顧客要求事項への製品の適合を図る業務の体系であるから、「製品要求事項への適合性に影響を与える仕事に従事する要員」とは、品質マネジメントに関連する業務を行うすべての人々を指す。追加された注記は、このことを説明している。
<組織、審査への影響:  あるだろう>
   規格の意図の力量マネジメントには相当しないのだが、日本の審査では個人別の業務能力の開発管理を以て6.2.2項への適合が認められる。しかも、この業務能力開発管理の対象を製造やサービス提供の第一線にある要員のみに限定されていても、普通はに認められてきた。しかし、すべての要員が対象という本来の意図が理解されれば、このような管理には不適合指摘が行われる可能性がある。
 
(2) 標題 (6.2.2項)

[2000年版] 力量、認識及び教育・訓練
[追補版]     力量、教育・訓練及び認識
<変更の趣旨:  ISO14001(4.4.2項)との表現の整合化>
  標題が羅列する3つの項目の順番をISO14001に合わせただけ。  但し、awarenessの和訳が「認識」と変わらないので、ISO14001のJIS和訳「自覚」との違いはそのまま残る。
<組織、審査への影響:  全くなし>
 
(3) 力量マネジメントの対象の要員の範囲 (6.2.2項)
[2000年版]  a) 製品品質に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量
[追補版]     a) 製品要求事項への適合に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量
<変更の趣旨:   規格内で不統一な表現の是正>
   上記(1)と同じ
<組織、審査への影響:  あるだろう>
   上記(1)と同じ 
 
(4) 力量マネジメントのPDCAサイクル 
[2000年版] a) 製品品質に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量を明確にする。
[追補版]    a)製品要求事項への適合に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量を明確にする。
[2000年版] b) 必要な力量がもてるように教育・訓練し、又は他の処置をとる。
[追補版]    b)適用可能な場合は、必要な力量が達成されるように教育・訓練し,又は他の処置をとる。
[2000年版] c) 教育・訓練又は他の処置の有効性を評価する。
[追補版]    c) 必要な力量が達成されたことを確実にする。
<変更の趣旨:   意図の明瞭化のための記述の変更>
   6.2.2 a)〜c)項の意図は、要員の業務遂行力つまり力量の不足を原因として品質マネジメントの効果的実行に支障があるか、又は、見込まれる場合に、どのような力量が不足しているかを特定し( a)項)、その必要な力量を充足する処置をとり( b)項)、そのような処置によって必要な力量が間違いなく得られたかどうかを評価して( c)項)、品質マネジメントの実行と結果の問題点の確実な解消を図るという力量マネジメントのPDCAサイクルを規定することである。a)項の「必要な力量」という表現を、b)項、c)項でもそのまま用いるという記述の変更によって、「必要な力量」を特定し( a)項)、「必要な力量」を充足するための処置をとり( b)項)、「必要な力量」が得られて品質マネジメントの問題が解決されること確実にする( c)項) と、a)〜c)項でPDCA サイクルを規定する規格の意図がより明瞭にされた。
 
   なお、b)項の「適用可能な場合は」は、原英文 where applicable であり、「該当する教育訓練又はその他の処置」の意味である。また、b)、c)項の力量を「達成する」は achieve であるが、この場合は「力量を得る」の方がわかり易い。更に、c)項の「達成された」ことを「確実にする」では日本語として両節の時制が不自然であるが、これは、ensure that the necessary competence has been achieved であるから、「必要な力量が間違いなく得られたということを確認する」の意味である。
<組織、審査への影響:  ないと思われる>
    日本ではJIS和訳の「力量」(competence)の概念に誤解があり、規格の意図の力量マネジメントが個人の能力開発管理と混同されている。これはa)項の「必要な力量を決定する(determine)」が「を明確にする」と和訳されたため紙に書いて“明らかにする”の意味に解釈され、c)項を「教育訓練という処置がその必要を満たした有効なものだったかどうかの評価」でなく「技能や知識を習得させたかどうかの、教育訓練という行為の有効性の評価」に解釈されていることからきている。 記述の変更はこのような誤った理解を正すのが狙いであろうが、変更された記述のJIS仮訳には理解を変更する意志が伺われない。従って、記述の変更が従来の審査に特段の影響を与えることはないと思われる。
 
   ただし組織が、これを機会にその人事関係のマネジメントの諸業務の手順を見直して、担当者からトップマネジメントまですべての人々の何らかの業務遂行力の不足のために、特定の業務をこなす人がいないために、人数の不足のために等々、品質マネジメントの実行と結果に支障を来すようなことがないようにする枠組みがあり、実行されているかどうかを、つまり、6.2項の力量マネジメントの要件が満たされていることを確認するのが有意義と考えられる。
 
引用文献( 英語文献及び文章中の *印は著者による翻訳)
H19.12.10 
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