ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
ISO9001:2008
留意すべき変更
3.  やる気を醸成する環境の整備  (6.4項 作業環境)  <31-02-03>
 [記述の変更}   6.4項
2000年版 2008年版
注記  “作業環境”という用語は、物理的、環境的及びその他の要因を含む(例えば、騒音、気温、湿度、照明又は天候)、作業が行われる状態と関連している。
ISO9000:2000 3.3.4 作業環境(work emvironment)
作業が行われる場の条件の集まり。
参考 条件には、物理的、社会的、心理的及び環境的要因を含む(例えば、温度、表彰制度、人間工学的側面及び大気成分)。
 
[記述変更の意義]
   2000年版の6.3項には注記がなく、本文でも触れられていないが、ISO9000に「作業環境」の定義(ISO9000 3.3.4)が定められ、その参考として「物理的、環境的、社会的、心理的要素を含むとして」が規定されている。 これにより、94年版の照度、気温、雰囲気清浄性などの直接的に製品の品質に影響する物理的作業環境だけでなく、労働政策や能力開発支援など人々の勤労意欲を醸成する人的作業環境が不良品を出荷せず、製品の顧客満足の向上を図るために必要であることが明らかにされることになった。これは、1990年代に入って世界のマネジメントの理論や実務で日本的経営が発展させた勤労意欲を醸成する制度や施策の必要が常識となったことを反映している。
   
   然るに、2008年版改訂作業では、CD版で「作業環境という用語は、クリーンルーム、帯電防止対策や衛生管理のような製品要求事項に対する適合性を達成するのに必要な状態と関連する」となり、更にDIS版で「物理的、環境的及びその他の要素を含む」と狭くし、「騒音、温度、湿度、照度、天候など」と明記することによって、「作業環境」を94年版以前の狭い概念に戻してしまった。
 
   この変更に関し国内委員会(2)は、製品要求事項への適合に影響を与える作業環境に限定するものであることを明確にするためと説明し、国内委員会委員長の飯塚氏(1)は、規格は製品品質に影響する作業環境を意図しており、作業の安全確保のための作業環境までは意図していないことを明瞭にするものと説明している。6.2項では要員に関して「製品要求事項への適合」への影響には直接的と間接的なものを考えなければならないと言っているのだから、作業環境にも直接的と間接的な影響を考えなければならないはずであるから、この説明はおかしい。審査できる要求事項しか規定しないという考えでの議論の結果であるような気がする。
 
[記述変更の意義]
  規格を効果的な マネジメントの規範と考えるなら、作業環境の概念の縮小は問題がある。例えば、規格が必要と規定している人々の「認識」(6.6.2 d)項)は、このような作業環境の下ではじめて生まれるからであり、このことはISO9004(6.4項)でも説明されている。ISO9001規格を審査への使用が主目的かに取扱う傾向の強まる世界の流れに乗った、作業環境の新たな定義づけのように思える。認証審査の場で審査員が、人的作業環境ついては適合性の判定をすることが困難であることは事実である。しかし、それでなければ不良品を出荷せず、顧客満足の製品を一貫して供給するための品質マネジメントを効果的に行なうことができないというのも、事実であり、世界の共通認識である。規格の効果的な品質マネジメントの規範としての価値を毀損する誤った注記の追加である。
 
   規格を効果的な マネジメントの規範と考えるなら、作業環境の概念の縮小は問題がある。例えば、規格が必要と規定している人々の「認識」(6.6.2 d)項)は、このような作業環境の下ではじめて生まれるからであり、このことはISO9004(6.4項)でも説明されている。しかし、認証審査の場で審査員が、人的作業環境ついては適合性の判定をすることはほとんど不可能である。 ISO9001規格を審査への使用が主目的かに取扱う傾向の強まる世界の流れに乗った、作業環境の新たな定義づけのように思える。
 
[組織の対応]
  不良品を出さず、顧客満足を得て事業を発展させようとする組織は、2000年版の作業環境の趣旨を踏まえた マネジメント を行うことが必要である。人的作業環境を整備し、品質マニュアルにも規定している組織は、品質マニュアル記述をそのまま維持すればよい。
 
[審査への影響]
  審査では、人的作業環境についてはほとんど触れられてこなかったが、注記の追加はそのような審査を肯定するものとなる。
 
 
引用文献
(1) 飯塚悦功:追補改正版の背景をあかす、アイソス、No.133, 2008.12月号, p.12-27
(2) 品質マネジメントシステム規格国内委員会: ISO9001の2008年改訂について、H20.8

H20.12.2(修 12.26) 
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