ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
ISO9001:2008
留意すべき変更
4. 管理のための情報検知手段
(7.6項 監視及び測定機器の管理)
 <31-02-04>
 [記述の変更}  7.6項
2000年版 2008年版
定められた要求事項に対する製品の適合性を実証するために、組織は、実施すべき監視及び測定を明確にすること。

また、そのために必要な監視機器及び測定機器を明確にすること(7.2.1参照)
定められた要求事項に対する製品の適合性を実証するために、組織は、実施すべき監視及び測定を明確にしなければならない。
また,そのために必要な監視機器及び測定機器を明確にしなければならない。
 
(1) 監視機器及び測定機器
[記述変更の意図]

  JIS和訳はどちらも「監視機器及び測定機器」のためわからないが、規格原文では、device (手段)とequipment (機器)が使い分けられている。 標題はdeviceであり、第2文もdeviceであり、7.5.1 d)項もdeviceである。 equipment は校正云々に関しての測定機器(measuring equipment)としてのみの登場である。規格の「監視」や「測定」は情報検知活動を意味し、このために使用するものが“device”である。この“device”には、視覚、嗅覚、触覚を初め、書類の突合、計算、比較、アンケート調査質問などが含まれる。計測器もそのひとつである。
 
  品質保証活動において組織は、製品が7.2.1項で定めた要求事項に適合している証拠を得ることが必要であり、この証拠を得るために、どのような監視や測定を行うことが必要か、また、そのためにどのような「監視及び測定手段」を用いるのが適切であるかを決定しなければならない。そして、これら「監視及び測定手段」の内の「測定機器」で、マイクロメーターや強度試験機、分析機器などの場合は常に正しい測定値を得るためには定期的な校正又は検証が必要である。これらは a)〜e)項に従って校正又は検証をしなければならない。規格の英文の正しい解釈と条文の趣旨はこの通りである。 7.6項のJIS和訳は特に誤訳が著しくて、このような規格の意図を表現するものとなっていない。
 
  CD版では、“device”と“equipment”の違いを明瞭にするように、「監視及び測定“devices” には、測定 “equipment” と測定“equipment” ではない“device”とを含む」という注記2が追加されていた。 「前者は監視又は測定のどちらにも使用され、後者は要求事項への適合性を監視するのに使用される」という付随する文章が意図をややこしくしているが、本文の方は“device”が“equipment”より広い概念であることを明確にしている。ところがDIS版では一転、すべてが“equipment”に変更された。 同版のJIS仮訳説明によると、ISO14001(4.5.1項)が監視及び測定機器(equipment)の検証又は校正のみしか扱っておらず、これとの整合のために“equipment”に1本化されたのだそうだ。
 
  これに関して米国の国内委員会(1)は、“device”が チェックリストのような“equipment”ではない“device”の意味だとする理解があったことを、改訂作業でこの明瞭化を取り上げることにした理由に挙げている。そして、用語“measuring equipment(測定機器)”は“measuring instrument(計測機器)”を含んでおり、この後者は“device”を含み得るという結論になったとして“equipment”への一本化の理由を説明している。この説明の計測機器云々はISO9000の用語の定義3.10.4項が“measuring equipment(測定機器)”を「測定プロセスの実現に必要な“measuring instrument*1”、ソフトウェア、測定標準、標準物質又は補助装置(auxiliary apparatus)若しくはそれらの組合わせ」となっていることを指すと思われる。これは相当に苦しい説明であり、ISO14001との用語の統一を迫る大勢に抗しきれなかった結果であると想像される。
 
[記述変更の意義]
  監視や測定に関しては、機器の精度管理のための校正も大切だが、各製品やプロセスにどのような監視、測定手段を用いるべきかの方がより本質的で重要である。“device”の“equipment”への変更は、この効果的な品質マネジメントの要件をあいまいにすることはあっても、明瞭化したことにはならない。意味のない変更というより、効果的な品質マネジメントの指針としてのISO9001規格の価値を毀損する誤った変更である。 6.4項の作業環境の範囲を限定する注記の追加と同じように、規格の第三者審査の登録基準への変質化の動きが、規格条文記述や要求事項をも歪ませるまでに至ったということである。
 
[組織の対応]
  しかし、例えば苦情を目視検査の欠陥見逃しのせいにしている組織など、検査項目と方法の適切さ、基準の明確さ、記録のとり方など監視及び測定の手段(device)について問題がないのだろうか。顧客の完全な無欠陥のニーズ に対してライン上の目視検査を画像解析による全数検査に切り替えた業界もある。規格の本条文は、検査や工程管理のためのこのような情報検知手段に対する要件を指摘しているのである。上の米国国内委員会も「用語“device”が消えたが、“device”が要求事項でなくなったとか、要求事項が軽減されたとかではない」と明言している。
 
[審査への影響]
  JISが“device”も“equipment”も「機器」と和訳してきたから、この原文の変更はJIS版では表面上認めることができない。JISとしては、“equipment”となった以上「機器」と訳することを誤訳と非難されなくともない。 JIS和訳が変わらないので、審査には何の影響もないだろう。
 
(2) 監視及び測定機器の対象
[記述変更の意図]
  条文文末にあった「7.2.1 参照」がDIS版で削除された。これについて同版JIS仮訳 (2)では、不要ではないかとの議論の結果で削除されたとしか説明しておらず、他の解説でもこの背景に触れたものはない。
 
[記述変更の意義]
  「7.2.1 参照」に先立つ条文はJIS和訳では「定められた要求事項」で始まるが、これは原文では“determined requirements(決定された要求事項)”である。 7.2.1項標題の「製品に関連する要求事項の明確化」も条文の「組織は次の事項を明確にしなければならない」のいずれの「明確化」も、原文では“Determination”“determine”であるから「決定」「決定しなければならない」である。 原文で読むと、7.6項の「決定された要求事項」が7.2.1項の「製品関連要求事項の決定」「次の事項を決定しなければならない」に対応するものであることが明白である。規格の意図は、「7.2.1参照」がなくても誤解されることはない。しかし、「7.2.1参照」があっても問題はないし、どちらかというとあった方がよい。なぜ削除されたかの理由は明らかでない。
 
[組織の対応]
  特になし
[審査への影響]
 
 
  製品の監視測定以外のプロセスに関する「監視及び測定機器」の管理についての質問を受けるかも知れない。
*1 JIS和訳では「計器」
*2 JIS和訳では「明確化」
 
引用文献( 英語文献及び文章中の *印は著者による翻訳)
(1) L.Hunt他:The Insider’s Guide to ISO9001:2008, Quality Digest, Nov. 2008
(2) 日本規格協会: ISO9001:2000及びISO/DIS9001比較表-抜粋-、2007.10
H20.12.19(修 12.26) 
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