ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
ISO9001:2008
留意すべき変更
6.  内部監査の指摘への対応  (8.2.2  内部監査)  <31-02-06>
 [記述の変更}   8.2.2 項
2000年版 2008年版
監査された領域に責任をもつ管理者は、発見された不適合及びその原因を除去するために遅滞なく処置がとられることを確実にすること。
監査された領域に責任をもつ管理者は、検出された不適合及びその原因を除去するために遅滞なく、必要な修正及び是正処置すべてがとられることを確実にしなければならない。
[記述変更の意図]
   2000年版の「処置」では何の処置かわからないので、「修正及び是正処置」と明瞭化されたとの説明があるが、新旧両版とも「検出された不適合及びその原因を除去するために」と明記されているから、何の処置か明確である。従って、「処置」の「修正及び是正処置」への変更には深い意味があるとは思えない。変更する必要はなかったと考えられるが、英語表現上でこの方が適切と考えられたのかもしれない。 いずれにせよ、意図された変更は、英原文で“any necessary ……. actions” と、2000年版の“actions”に“any necessary”が追加されたことであると考えられる。これはJIS和訳では「処置がとられる」から「必要な修正及び是正処置すべて」への変化となっている。
 
  収益事業を営む組織の経営の実務では、費用対効果を無視してすべての不適合に是正処置をとるというようなことはしない。規格の意図においても、すべての不適合に対して是正処置をとる必要はない。是正処置は不適合のもつ影響に見合うものでなければならず、組織は不適合の原因を特定し、再発防止対策を実施すべきかどうかを判断しなければならない(8.5.2 c)項)。 これを規定する同じ規格が内部監査の不適合には必ず是正処置をとる必要を規定するのは矛盾である。実際の2000年版でも、英文は、“actions are taken …to eliminate detected nonconformities and their cause”であり、これを直訳すると「発見された不適合及びその原因を除去する処置がとられる」であるから、発見されたすべての不適合に処置をとるとは書かれていない。「必要なすべての修正及び是正処置」という表現に変えられたことによりはからずも、このことが明らかにされた。
  さて、JIS和訳では「必要な…….処置すべて」であるが、原文は“any necessary ……. actions”である。これは単なる「すべて」ではなく、「もし必要な修正や是正処置があるならそのすべて」という意味である。元々、規格のこの条文の意図は、「遅滞なく」修正、是正処置をとることにある。不適合があって放置すると品質マネジメントの効果的実行の結果に支障を来し、狙いの顧客満足の実現に支障が生じる可能性があるから、修正及び是正処置をとる必要があるのであるから、それらの処置は実際の問題の起きる前に、つまり、遅滞なく実行されなければならない。「必要な修正及び是正処置」なら「遅滞なく」実行されなければ意味がない。2000年版の英語条文では“without undue delay”、つまり、「『遅滞なく』処置がとられる」という部分に意味があったのである。しかし、JISが英文法を誤って英条文を和訳したことにより、「遅滞なく」が忘れられ、不適合のすべてに処置をとらなければならないというような解釈が生じたものと思われる。すなわち、“actions to eliminate …”は、不定詞の形容詞的用法であり、 “to eliminate ….”は“actions”を修飾する。 「処置(actions)」とはどんな処置か、それは「不適合及びその原因を除去する(eliminate….)」という処置である、というような意味で使われるのが不定詞の形容詞的用法である。 しかし、JIS和訳はこの“to eliminate ….”を副詞的用法に解釈して、「発見された不適合及びその原因を除去するために処置がとられる」とした。この誤りは2008年版にも引き継がれている。
 
  「処置」の「必要な……処置」への記述変更は、問題を実際に起こさないよう必要な処置は確実に実行しなければならないということを、より強調するためであると理解される。或いは、単に英語表現としてどちらが適切かの問題かもしれない。 なお、「発見された不適合及びその原因」から「検出された不適合及びその原因」への変更は、原文は“detected nonconformities and their causes”で変化なく、JIS和訳のみの変更である。
 
 
[組織の対応]
  多くの組織では、内部監査の指摘は是正処置が必要となるので、本来は不適合の事態でも “観察事項”などと称して不適合ではないという扱いをしており、これが内部監査を形骸化させる大きな原因となっている。2008年版の記述変更の意図ではないが、JIS条文が「必要な修正及び是正処置」をとればよく、不適合のすべてに是正処置をとる必要のないことを明確にする表現になった。組織がこの新記述を採用すれば、発見された不適合を、効果的なマネジメント、或いは、狙いの顧客満足の実現という観点でどのように処理するのがよいのか、自身で判断することができる。不適合なのに“観察事項”として逃げたり、有効な是正処置をとることができない問題なのに是正処置として形式的な事務処理のみ煩雑にするだけの処置をとる、というような問題が解消できる。意味のある内部監査を目指す土台が形成されたと考えられる。
 
[審査への影響]
  DIS版のJIS仮訳説明では、この条文の表現変更を「“処置”の明確化のため、“修正及び是正処置”が追加された」と説明しており、「必要なすべての(any necessary)」が追加されたことに触れていない。 従って、組織が強く主張しない限り、審査ではこれまで通り、不適合のすべてに修正及び是正処置をとることを求められる。
H21.1.7 
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