ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
ISO9001:2008
留意すべき変更
9. 是正処置/予防処置の管理   (8.5.2/8.5.3項)  <31-02-09>
 [記述の変更}
2000年版 2008年版
8.5.2 f) 是正処置において実施した活動レビュー
8.5.3 e) 予防処置において実施した活動レビュー
8.5.2 f) とった是正処置の有効性のレビュー
8.5.3 e) とった予防処置の有効性のレビュー

[記述変更の意図]

   8.5.2 f)項/8.5.3 e)項の「是正処置/予防処置において実施した活動のレビュー」が、「とった是正処置/予防処置の有効性のレビュー」に変更された。これは2つの記述変更から成っている。
 
   ひとつは「是正処置/予防処置において実施した活動」の「とった是正処置/予防処置」への変更である。この原文は“reviewing of the action taken”で不変で、JIS和訳が原文に沿って変更された。 f)項/e)項の意味を説明するJIS独自の註釈は、f)項/e)項の和文が適切に修正されたにもかかわらず、「a)〜e)/a)〜d)の一連の活動のことである」が「a)〜e)/a)〜d)のことである」に変えられただけである。 JABはこれに関して、「是正処置/予防処置とは、原因を除去のための処置(c),d)/b),c)の処置)ではなく、a)〜e)/a)〜d)のすべてである」と不可解な説明をしている。
 
   もうひとつがレビュー」が「有効性のレビュー」に変更されたことである。 これは、ISO14001(4.5.3 e)項)の記述との整合性を図るためだと説明されている。「レビュー(review)」は、「特に、変更が必要などうかを決めるために、注意深く検討すること、又は、再び考慮すること」の意味(1)である。 規格は名詞の「レビュー(review)」を「物事がその目標を達成するのに適当か、十分か、有効かを決めるために行なわれる活動」と定義#1している。 米国の国内委員会(US TAG)のメンバー(2)は、ISO14001とISO19011の記述との整合性を改善するために「有効性」を追加したが、元々「レビュー」は上の定義でもそうだが、「有効性」に関する考慮を含んでいるから、「有効性」という語句の追加は要求事項の追加とならないと判断した結果であると説明している。 そして、もし組織が是正処置/予防処置の「レビュー」をする時に「とられた処置の有効性」を考慮する手順になっていなければ、改めなければならないと言っている。 これは、「有効性のレビュー」と言っても単なる「有効性」に関する検討ではなく、「レビューする」と規定されていた2000年版と同じく、適当か、十分か、有効かの観点での検討であるという説明に他ならない。
 
  この記述変更は、7.6項の監視及び測定機器の“device”の“equipment”への変更と同様、改訂作業におけるISO14001との記述の整合性を求める勢力の強大さを窺わせるものであり、規格の効果的な品質マネジメントの指針としての価値を維持しようとしながら妥協を余儀なくされた米国国内委員会の苦しい弁明であると思われる。
 
 
[組織の対応]
  日本では元々 8.5.2 f)項/8.5.3 e)項の「レビュー」を、しばらくの間に問題が再発しなかったこと、或いは、予想した問題が起きなかったことを確かめることであるとの解釈が審査でも適用されてきた。2008年版の記述変更はこのような規格解釈が大手を振ってまかりとおる状況をもたらすだろう。しかし、この解釈は規格用語上も、実務上も誤りである。
 
  JIS和訳は、是正処置/予防処置の定義を「不適合の原因を除去するための処置」と誤って和訳してきた。 この和訳が、d)項/c)項の「決定及び実施」する処置が実質的に「原因を除去することを目的にした処置」と解釈することを許している。しかし、是正処置/予防処置の定義は“action to eliminate the cause of the nonconformity”であるから「不適合の原因を除去する処置」であり、d)項/c)項の「必要な処置の決定及び実施」とは、不適合の原因を実際に除去する処置の決定、実施でなければならない。そしてそれを是正/予防処置と言うのは、本当にそれで不適合の原因を除去できることを何らかの方法で確認してからでなければならない。この確認の記録がe)項/d)項の「とった処置の結果の記録」である。規格用語では、是正処置/予防処置とは、不適合の原因を除去できて初めてそのように呼ぶことができるのである。改善が実現して初めて「改善」と呼ばれるのと同じである。更に、一定期間内での問題の発生の有無を追跡する活動は「レビュー(review)」には相当しない。
 
  また、実務において例えば、発生した苦情が再発すると顧客からの信頼を大きく毀損するとか、補償要求など組織が甚大な損害を被るとした場合に、原因を除去するために処置をとったが、これが有効かどうかは、実際に苦情が再発するかどうかで判断するというような悠長なことは許されない。このような重大な再発防止処置の有効性は実施する前に慎重には慎重を期して間違いないことを確認しなければならない。是正処置/予防処置はその影響に応じたものでよいが、それは不適合の原因の除去の確実さ、つまり、再発/予想される問題の発生の危険性の許容度に関する是正処置/予防処置の程度を指しているのであり、不適合の原因が除去されたどうかわからない処置でもよいという訳ではない。
 
  起きた/起きそう問題をひとつずつ必要な程度に再発/発生の防止の処置をとり、品質保証能力の継続的な強化を図る組織の実務では、有効な是正処置/予防処置が確実にとられるから、それが コスト、能率、安全、環境など他の経営要素への悪影響を及ぼすことが少なくない。従って、実施した是正処置/予防処置は、組織全体の経営目標の達成との整合性の観点で後日に再評価することが大切である。品質マネジメントには有効でも組織全体のマネジメントとしては問題がある場合は、一定の期間が経過し、また、情勢の変化もあるその時点で、とった処置の必要性の見直しを含めて再評価し、必要なら処置を別の方法に変更することもある。これがf)項/e)項の「とられた是正処置/予防処置のレビュー(reviewing corrective/preventive action taken)」である。
 
 
[審査への影響]
  これまでの審査が大手を振って行なわれる。
   
 
引用規格条項
#1 ISO9000, 3.8.7;

引用文献( 英語文献及び文章中の *印は著者による翻訳)
(1) S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
(2) L.Hunt他:The Insider’s Guide to ISO9001:2008, Quality Digest, Nov. 2008,
H21. 1.19 
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