ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
1    2015年版ISO9001全体像判明−見掛けは全面改訂、但し論理は不変
                         (CD版でわかること)

<31e-01-01>

(0.1) 概要     こちら
 
(0.2) 2015年版 ISO9001(CD版)の現行2008年版との差異 一覧    一覧表へ(本文末)
 
 
(1) CD版発行
   改訂作業中のISO9001の6月3日付けのCD(委員会原案)版原文を入手した。9月10日にはCD版への意見提出と賛否投票が締め切られ、計画に従えばDIS版、FDIS版を経て、2015年の初頭に2015年版が発行される。条文には今後改められるべき未熟な表現も少なくないが、CD版が2015年改訂版の骨格となることはほぼ間違いない。
 
  CD版では序文に主要な変更点の説明があり、6点が挙げられている。これを参考に条項配置と条文をざっと読んで、規格解釈の混乱による認証組織の不要な負担の可能性という観点から、要求事項の変更に大きく3つの特徴があることを読み取ることができる。ひとつは条項の順番、用語が大きく変って条文が00年版改訂の時以上に原理的で抽象的な方向にほぼ全面的に改められることであり、ふたつ目は見掛けの変更にもかかわらず品質保証・顧客満足追求の効果的な経営管理活動の指針としての規格の本質とそれを支える論理には変更がないことであり、3つ目に認証業界の思惑に迎合する言わずもがなの表現が所々に見られることである。
 
(2) 条文記述がほぼ全面的に変更される
  ひとつ目の特徴は、条文記述がほぼ全面的に改められ、一段と原理的で抽象的な表現になったことであるが、これはCD版序文で明確にされている改訂版執筆方針としての、共通テキスト化と規格の全業種業態に適用できる汎用化の一層の推進及びサービス産業への適用の容易化が図られた結果であろう。
 
  このために、サービスを含む概念である『製品(product)』というこれまでの表現が「物品及びサービス(goods and service)」に変えられ、『製造及びサービスの提供』は「物品製造及びサービスの提供」に、『製品実現』は「業務実行」、『製品の設計及び開発』は「物品及びサービスの開発」にそれぞれ変えられている。また、いわゆる社内外注をも含むなど多様な概念である『購買』は「物品及びサービスの外部からの供給」に変えられた。
 
  また、より重要なことは「製造業の業務手法に由来する要件(requirement)表現の規範的性格(prescriptive nature)を薄める」という考え方から、方法論の規定が大きく簡略化され、基本的な必要条件のみを表すものとなった。これにより例えば、設計開発管理の『レビュー、検証、妥当性確認』の用語とその方法論(新8.5.2項)の規定がなくなり、計測器の校正の必要性と方法論(新7.1.4項)、及び、『プロセスの妥当性の確認』の条項と方法論(新8.6.1項)も規定からは消えて、注記での説明に変わった。初版の『受入検査』から続く現行『購買製品の検証』(7.4.3)、初版から続く品質管理手法としての『予防処置』(8.4 c))のそれぞれの具体的規定が無くなったこと、登録取得の代名詞であった『品質マニュアル』作成の規定(4.2,2)がなくなったこともこの一環であろう。
 
 
(3) 規格の本質は変わらない
  規格の条項で新たに追加されたのは、次の8条項であるが、いずれも新たな論理の導入でも、既存の論理の変更でもなく、規定表現の変更に過ぎない。条項の追加と削除から判断する限り、品質保証・顧客満足追求の効果的な経営管理活動の指針としての規格の本質とその基盤とする論理にはいささかの変更も認められない。
 
@ 4.1 組織とその状況の理解
A 4.2 利害関係者のニーズと期待の理解
B 4.3 品質マネジメントシステム適用範囲
C 7.1.5 知識
D 8.2.1項 市場ニーズ決定及び顧客との意思疎通 一般(顧客との意思疎通を図る活動)
E 8.6.5 引き渡し後の活動
F 8.6.6 変更管理
 
  すなわち、@Aは現行でも品質方針(5.3)や品質目標(5.4.1)の決定のために当然ながら考慮してきたことであり、これらは経営の基礎理論における経営戦略の決定のための不可欠な要素であるから、規格が経営戦略と実行の方向と到達点を示す品質方針、品質目標を決める必要を規定しているからには、それらは@Aを考慮しなければ決めることができない。形だけの品質方針を品質マニュアルに記載するだけでよしとする日本の審査の常識からすると、@Aは新規な重大な要求事項の追加ということになるが、規格の本質に照らすと当然のこととして規定されていなかったことが規定として明確化されることになったに過ぎない。
 
  Dも現行でも契約又は受注した製品を顧客の意図した、或いは、顧客のニーズと期待を満たす仕様と品質であるように決める(7.2.1)ためには、顧客との意思疎通を図る活動の存在が必須であり、ほとんどどの組織でも営業部門にこの責任を明確に付託している。@Aと同様、これまでも当然実行されていることの規定としての明確化である。Bもどの品質マニュアルにも記載されていることであるから、現行と変わらない。
 
  Eは00年版で「7.5.1 製造及びサービスの提供の管理」に統合された94年版の『4.19 付帯サービス』の再登場であり、現行の『製造及びサービス提供の管理』の規定(7.5.1)の『製品の引渡し後の活動が実施されている』の要件を汎用的表現で規定されているだけであり、規格の意図は現行と変わらない。
 
  Fは、現行の『5.4.2品質マネジメントシステムの計画』の中の変更管理の規定を、戦略計画としての『品質マネジメントシステムの計画』の変更の管理と日常業務計画としての『製品実現の計画』の名称を変更した「業務実行計画」(8.3項)の変更の管理に分けて規定したものである。これまでは『5.4.2品質マネジメントシステムの計画』の変更管理の規定が『製品実現の計画』の変更管理にも及ぶものと理解されてきて、設備変更時の製品品質維持を図る手順変更などの管理が行われてきた。
 
  Cは、次の(2)の言わずもがな規定である。
 
(4) 言わずもがな規定、記述が目立つ
  3つ目であるが、認証業界では規格に不祥事の発生を防ぐことを狙いとする直接的な規定を設けることで認証制度離れ  を食い止めたいという思惑がある。すなわち、これは、認証制度不信を増幅させる認証組織による品質事故、不祥事が、組織の不祥事というリスクへの対応取組みが甘いことに起因し、また、不良品を顧客に引き渡さないことを確実にする業務能力が組織に不足しているからであるという理屈である。認証業界からは改訂版規格においてこれを正すような規定や表現を含めることが期待されている。
 
  実際、これに迎合する表現が目につく。その典型がリスクであり、共通テキストで取り入れられた『6.1 リスク及び機会への取り組み』を含めて『リスク(及び機会)を特定する、決定する、考慮する、に取組む』と和訳されるであろう規定記述が数えると11カ所もある。しかし管理とは『機会』たる狙いの結果を確実に出すようにする活動であり、それは同時に『リスク』たる狙いに反する結果が出ることのないようにする活動である。品質管理では狙いの製品品質が得られるように工程の方法や条件を決めるが、例えば温度や圧力や速度等々で品質に影響を及ぼし且つ変動の激しい要因については自動警報、連続的監視記録の確認、定期的点検などによって許容範囲の逸脱のないよう監視する。経営用語では前者は『機会』の追求であり、後者は『リスク』への対応である。前者を遵守管理、後者を異常管理と区別して考えることもできるが、両者は一体であり管理の裏表の関係に過ぎず、『リスク』を考慮しない管理は存在しないのである。また、要員の配置管理において新人には易しい仕事を与えるのは、ミスや技能不足による手順逸脱の『リスク』を緩和するためである。規格がなにがしかの管理を規定するのに リスク云々に言及することは冗長であり本来不必要である。
 
  また、資源マネジメントの「7.1.5 知識」の「品質保証・顧客満足に必要な知識を決め、維持、保護、必要に応じて利用できるようにしておかなければならない」の規定は要員が『意図した結果を達成するために知識及び技能を適用する能力』たる『力量』を『備えることを確実にする』という規定(7.2項)と重複する記述である。「8.6.1 物品製造及びサービス提供の管理」の「人為ミスによる不適合を防止しなければならない」に至っては、これを規定することがどういう意味があるのか理解出来ず、規格の価値が疑われる規定である。
 
(5) 2015年改訂の意義 
  08年版を除き過去の改訂は、日本製品の高品質の秘密の探究を基礎とする初版の品質保証の基本論理からずれることなく、論理の整理の進展と世界で定着した手法を取り入れつつ、表現の汎用化を進める形で実用的経営管理指針としての価値を高めてきたとしてその意義を認めることもできる。2015年版でも共通テキストの採用と更なる汎用表現化があり、『認識』『力量』『教育訓練』の完全分離という論理の整理にも進歩が見られる。通俗的な言わずもがな表現が今後の詳細条文検討において他の未熟表現と共に適切に修正される可能性もあるから、2015年版改訂はこれまでと同じ意義のある方向で進められていると考えることもできる。
 
   規格の規定を要求事項、つまり、規格の要求と理解し、規定の文章、記述をすなわち要求事項と見なす日本の典型的な規格解釈では、2015年版は大改訂であり、00年版に匹敵する混乱も生じるかもしれないが、2015年版規格と規格利用の本質ではない。2015年版の唯一の懸念は、汎用表現化の行きすぎである。方法論の規定を避け、あるべき姿の必要条件のみを規定することは、要件規格としての理に適い、規定を業務実行の形として受け止める誤りを避けることにも寄与すると思われる。しかし、規格の効果的な経営管理の論理は、日本を初め品質で成功した世界の企業の業務の実行と管理の形或いは方法論を基礎として組み立てられた論理である。組織は規格の規定する論理を組織特有の形或いは方法論に変換して規格の意図するような経営管理活動を行うのであるから、方法論を全く伴わない論理的必要条件のみの規定でこれが可能かどうか問題なしとしない。また、特定業界の方法論の規定がない方が他の業界の正しい規格理解に繋がるとは思えない。規格が普遍的な論理だけを表す教科書的なものとなり、組織の経営管理活動の実用的な指針書としての性格を失って、2015年以降には製造業用を含む、産業分野別のいわゆるセクター規格が乱立する可能性も考えられる。

2015年版ISO9001 (CD)の現行08年版との違い      本文先頭へ戻る

(1) ISO/CD 9001の標題は著者による和訳。但し、既存版や共通テキスト仮訳の和訳はそのまま採用。
(2) 赤字条項CD版の新規条項、 青字条項CD版には存在しない08年版条項
      共通テキスト:共通テキストにある条項(但し大部分の条項の中味はCD版で修正、追加されている)
      <リスク> :「リスク(及び機会)」に言及している条項、
     <
方法論>08年版規定の方法論の規定がなくなった条項

ISO/CD 9001(原文の著者による和訳*

 

ISO 90012008 (JISQ9001)

前書き

 

 

この委員会原案に関する序文

 

 

0.1

一般

 

 

0.2

付属書SL

 

0.3

重要な変更点

 

 

 

序文

 

 

0.1

一般

 

0.2

プロセスアプローチ

 

0.3

JISQ 9004との関係

 

0.4

他のマネジメントシステムとの両立性

1

適用範囲

 

1

適用範囲

 

1.1

一般

 

1.2

適用

2

引用規格

 

2

引用規格

3

用語及び定義

共通テキスト

 

3

用語及び定義

4  組織の状況

共通テキスト

 

4.1

組織及びその状況の理解

共通テキスト

 

 

4.2

利害関係者のニーズ及び期待の理解

共通テキスト

 

 

4.3

品質マネジメントシステム適用範囲の決定

共通テキスト

 

 

4.4 

品質マネジメントシステム

共通テキスト

 

4 品質マネジメントシステム

4.4.1

一般

共通テキスト

 

4.1

一般要求事項

4.4.2

プロセス アプローチ                              <リスク>

 

5 リーダーシップ

共通テキスト

 

5 経営者の責任

5.1  リーダーシップ及びコミットメント

共通テキスト

 

5.1

経営者のコミットメント

5.1.1

品質マネジメントシステムに関する

リーダーシップ及びコミットメント

共通テキスト

 

5.1.2

顧客ニーズ及び期待に関する

リーダーシップ及びコミットメント                  <リスク>

 

5.2

顧客重視

5.2

品質方針

共通テキスト

 

5.3

品質方針

5.3

組織上の役割、責任及び権限

共通テキスト

 

5.5 責任、権限及びコミュニケーション

 

5.5.1

責任及び権限

 

5.5.2

管理責任者  

6 計画

共通テキスト

 

5.4  計画

6.1

リスク及び機会への取り組み

共通テキスト  <リスク>

 

5.4.2

品質マネジメントシステムの計画

6.2

品質目的及び

それを達成するための計画策定

共通テキスト

 

5.4.1

5.4.2

品質目標

品質マネジメントシステムの計画

6.3

変更計画                                  <リスク>

 

5.4.2

品質マネジメントシステムの計画

7 支援

共通テキスト

 

 

7.1  資源

共通テキスト

 

6 資源の運用管理

7.1.1

一般

共通テキスト

 

6.1

資源の提供

7.1.2

インフラストラクチャー

 

6.3

インフラストラクチャー

7.1.3

業務環境

 

6.4

作業環境

7.1.4

監視機器及び測定機器                   <方法論>

 

7.6

監視機器及び測定機器の管理

7.1.5

知識

 

 

 

ISO/CD 9001(原文の著者による和訳*

 

ISO 90012008 (JISQ9001)

7.2

力量

共通テキスト

 

6.2人的資源

 

6.2.1

一般

 

6.2.2

力量、教育・訓練及び認識

7.3

認識

共通テキスト

 

6.2.2

力量、教育・訓練及び認識

7.4

コミュニケーション

共通テキスト

 

5.5.3

内部コミュニケーション

7.5 文書化された情報

共通テキスト

 

4.2 文書化に関する要求事項

7.5.1

一般

共通テキスト

 

4.2.1

一般

7.5.2

作成及び更新

共通テキスト

 

4.2.3

文書管理

 

4.2.4

記録の管理

7.5.3

文書化された情報の管理

共通テキスト

 

4.2.4

記録の管理/4.2.3文書管理

 

 

 

4.2.2

品質マニュアル 

8 運用

共通テキスト

 

7 製品実現

8.1

運用の計画及び管理

共通テキスト

 

7.1

製品実現の計画

8.2  市場ニーズの決定及び顧客との意思疎通

 

7.2 顧客関連のプロセス

8.2.1

一般

 

 

8.2.2

物品及びサービスに関する要求事項の明確化

 

7.2.1

製品に関連する要求事項

の明確化

8.2.3

物品及びサービスに関する要求事項のレビュー

 

7.2.2

製品に関連する要求事項

のレビュー

8.2.4

顧客とのコミュニケーション

 

7.2.3

顧客とのコミュニケーション

8.3

業務実行計画プロセス                         <リスク>

 

7.1

製品実現の計画

8.4  物品及びサービスの外部からの供給の管理

 

7.4 購買

8.4.1

一般                                    <方法論>

 

7.4.1 購買プロセス

8.4.2

外部からの供給の管理の方式と程度          <リスク>

 

8.4.3

外部供給者のための文書化された情報

 

7.4.2

購買情報

 

 

7.4.3

購買製品の検証 

8.5  物品及びサービスの開発

 

7.3 設計・開発

8.5.1

8.5.2

8.5.3

開発プロセス                                 <リスク>

開発管理                                <方法論>

開発の移行

 

7.3.1

7.3.2

7.3.3

7.3.4

7.3.5

7.3.6

7.3.7

設計・開発の計画

設計・開発へのインプット

設計・開発からのアウトプット

設計・開発のレビュー

設計・開発の検証

設計・開発の妥当性確認

設計・開発の変更管理

 

 

 

 

 

 

8.6  物品製造及びサービス提供

 

7.5 製造及びサービス提供

8.6.1

物品製造及びサービス提供の管理             <方法論>

 

7.5.1

製造及びサービス提供の管理

 

7.5.2

製造及びサービス提供に関する

プロセスの妥当性確認

8.6.2

識別及びトレーサビリティ

 

7.5.3

識別及びトレーサビリティ

8.6.3

顧客又は外部供給者の所有物

 

7.5.4

顧客の所有物

8.6.4

物品・サービスの保存

 

7.5.5

製品の保存

8.6.5

引渡し後の活動                            <リスク>

 

 

8.6.6

変更管理

 

 

8.7

物品・サービスのリリース

 

8.2.4

製品の監視及び測定

8.8

不適合な物品・サービス

 

8.3

不適合製品の管理

 

ISO/CD 9001(原文の著者による和訳*

 

ISO 90012008 (JISQ9001)

9 パフォーマンス評価

 

8 測定、分析及び改善

9.1  監視、測定、分析及び評価

 

9.1.1

一般

共通テキスト  <リスク>

 

8.1

8.2.3

8.2.4

一般

プロセスの監視及び測定

製品の監視及び測定

 

9.1.2

顧客満足

 

8.2.1

顧客満足

9.1.3

データの分析及び評価

 

8.4

データの分析

9.2

内部監査

共通テキスト

 

8.2.2

内部監査

9.3

マネジメントレビュー

共通テキスト

 

5.6  マネジメントレビュー

 

5.6.1

一般

 

5.6.2

マネジメントレビューへのインプット

 

5.6.3

マネジメントレビューからのアウトプット

10 改善

共通テキスト

 

8.5 改善

10.1

不適合及び是正処置

共通テキスト

 

8.5.2

是正処置

 

 

8.5.3

予防処置

10.2

継続的改善

共通テキスト  <リスク>

 

8.5.1

継続的改善

            本文先頭へ戻る
H25.7.17(修9.15)
禁無断転載  (個人的使用のための複写歓迎)
サニーヒルズ コンサルタント事務所