ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
12 ISO9001:2015  改定解説 
6.2  品質目標及びそれらを達成するための計画策定
- 変更点と移行対応 (5) -
<31e-01-12>
 


0.1 概要   こちら

 
0.2  実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  (英語解釈 抜粋)
  品質経営品質経営活動 ⇔品質マネジメント$19-0; 品質経営体制 ⇔品質マネジメントシステム$19-1-1;
  品質経営体制の計画 ⇔品質マネジメントシステムの計画$19-1-1;  業務 ⇔プロセス$2;
 
 
1. 規定条文
6.2 品質目標及びそれらを達成するための計画策定
6.2.1 組織は、品質マネジメントシステムに必要な、関連する部門、階層及びプロセスにおいて品質目標を確立しなければならない。
 
品質目標について次の事項を満たさなければならない。
 
a) 品質方針と整合している。
b) 測定可能である
c) 適用される要求事項を考慮する
d) 製品及びサービスの適合及び顧客満足の向上に関連している
e) 監視する
f) 伝達される
g) 適宜更新する
 
  組織は、品質目標に関する文書化した情報を維持しなければならない。
 
6.2.2 組織は、品質目標をどのように達成するかについて計画するとき、次の事項を決定しなければならない。
 
a) 実施事項
b) 必要な資源
c) 責任者
d) 達成期限
e) 結果の評価方法
[08年版 関連規定]
5.4.1 品質目標
トップマネジメントは、組織内のしかるべき部門及び階層で、製品要求事項を満たすために必要なものを含む品質目標[7.1 a)参照]が設定されていることを確実にしなければならない。品質目標は、その達成度が判定可能で、品質方針との整合がとれていなければならない。
5.4.2 品質マネジメントシステムの計画
トップマネジメントは、次の事項を確実にしなければならない。
a) 品質目標に加えて4.1に規定する要求事項を満たすために、品質マネジメントシステムの計画を策定する。
4.2.1 文書化に関する要求事項 一般
品質マネジメントシステムの文書には、次の事項を含めなければならない。
a) 文書化した品質方針及び品質目標の表明
 
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
  経営戦略を時代の変化に適応させて永続的な存続発展を図るプロセスアプローチ/PDCAサイクル(4.4項)による循環的活動である規格の品質経営活動においては、それぞれのサイクルは、そのサイクルで必要な狙いの顧客満足の状態を品質経営の業績目標として、その達成に必要な業務を実行管理して、確実な達成を図る業績追求の活動である。
 
  各サイクルの業績追求の活動では、組織は、その狙いの顧客満足の状態(5.2項)を品質経営の業績目標として実現させるよう、時代の変化に対応する処置として決めた処置に係わる業務実行の手はず(6.1.2項)を含み、必要な業務実行の手はずを整え、手はずに則って業務実行を管理しなければならない。
 
  本項は、品質経営の業績目標である狙いの顧客満足の状態を確実に実現させるための効果的な業務実行管理の枠組みとしての、管理すべき業務の選定と業務目標の設定に関する要件を規定している。
 
 
(2) 論理及び用語
① 品質目標の達成の計画
  規格の『計画』は手はずを整えることを意味し$28品質経営に係わる業務の実行の手はずを整える活動は、すべて品質経営体制の計画 である。規格で業務実行の手はずを整えるとは、業務の狙いの結果である品質目標を達成するための手順を確立し必要な資源を用意することと表現できる。よって、『品質目標の達成の計画』とは品質経営体制の計画 §5を条項の趣旨に合わせて呼び代えたものである。
 
  さらに、規格で業務実行の手はずを整えるという場合は、プロセスアプローチ(4.4項)の概念に基づいて、業務実行の手はずだけでなく、業務が手はずの通りに実行され狙いの通りの結果を確実に達成させる業務実行管理の手はずも含んでいなければならない。
 
  また、規格の文脈では品質経営体制の計画の結果は一般に、品質経営体制を構成する手順書などの文書に表されるが、狙いの業務結果の品質目標の達成に関して業務実行の手はずに不確実性がある場合には、手段や日程を明確にした“programme”として表される。“programme”はISO14001:2004でISO9001の『計画』に対応して用いられており「実施計画」と和訳されている。
 
② 品質目標§4
  品質目標は「品質に関連して達成すべき結果」と定義され、08年版では「品質に関して、追求し、目指すもの」である#22-2から意味は変わっていない。規格では品質経営$2.1に係わる目標、つまり、顧客満足§9の追求に関係する狙いの結果はすべて「品質目標」と呼ばれる。
 
③ 業務目標と業績目標§4.1
  品質方針と合わせてトップマネジメントが決める組織の品質目標(5.2項)は、経営戦略の一環たる組織のあるべき姿としての顧客満足の状態を表す。これを下にして、必要な経営業績に関連して達成する必要がある顧客満足の状態を表す特定期間の品質目標が決められる。これら品質目標は品質経営の狙いの業績目標である。
 
  組織の実務の業務実行管理活動は、これらの業績目標を確実に達成するように、関連するそれぞれの業務が確実に狙いの結果を出すように管理する活動である。規格ではこれらの各業務の狙いの業務結果、つまり、業務目標も品質目標(本項)である。
 
  規格のプロセスアプローチの概念では、品質経営の業務の枠組みである品質経営体制$2は、多数の一連の業務の集まりであり、それらの一連の業務のすべてがそれぞれの狙いの結果を達成することにより、品質経営体制の狙いの結果である顧客満足の状態を実現することができると考えられている。実務的には前者の品質目標は、個々の業務の狙いの結果である業務目標であり、後者の品質目標は狙いの顧客満足の状態たる品質経営の業績目標である。規格では両者を区別して表現していない。
 
④ 改善と維持の品質目標§4.1
  規格では、マンジメント レビュー(9.3.1項)により組織の内外の事情(4.1、4.2項)に鑑みて品質方針、品質目標の見直し検討を行い、時代の変化に対応するように必要なら品質方針、品質目標を変更することを規定している。この変更された品質目標は、実務では一般に、年度品質方針、品質目標として表される。これら品質目標は何らかの問題点に対応するものであり、現状改善を図るための品質目標であるから「改善の品質目標」である。品質目標の達成に不確実性がある場合は、通常は日程と手段を明確にした業務実行計画が策定され、これに基づいて狙いの業務結果を確実に出すように計画の進捗管理が行われる。
 
  一方で管理者の日常の業務実行管理活動の対象は、ほとんどすべて業務実行計画のない、いわゆる定常業務である。これら業務が狙いの業務結果を出すことにより組織の存続発展の基礎として必要で十分な、これまでと同様の顧客満足の状態の実現、維持を図ることができる。従って、これらの狙いの業務結果は「維持の品質目標」であり、確立した品質経営体制の中の業務実行の手はずの中に、業務の管理基準や結果の合否判定基準の形で明確化にされているのが普通である。
 
 
(3) 規定要旨
  JIS和訳「部門」の英文“function”は「経営機能、職能」の意味であり、実務的には機能部門制組織構造における各部門の担当機能業務を指す$61。「階層」は“level”の和訳で、文脈からは経営管理上の観点という意味であり$61、これについてD.Hoyle氏は00年版解説書で、組織全体、部門単位、特定の業務の実行、製品品質、設備能力、要員の職務能力の5つの観点を挙げている(23)。また、本項の「品質目標」は、品質経営の業績目標の意味の「品質目標」を達成するために達成しなければならない関連業務の狙いの結果の意味の「業務目標」のことである。
 
6.2.1項(業務実行管理の手はず)
  組織は、品質方針及び組織の品質目標(5.2項)に表される品質経営の業績目標の確実な達成を図る枠組みとして、管理すべき業務の選定とそれら業務の狙いの結果である業務目標を決める手はずを整え、手はずに則って業績目標達成のための必要で十分な管理項目、管理基準を決めなければならない。
 
  効果的な業績目標達成管理のための管理項目、管理基準を決めるためには、管理対象の業務と狙いの業務結果を、狙いの顧客満足の状態の実現に関連すると考えられる経営機能上、経営管理上、及び、特定の業務というそれぞれの観点から検討しなければならない。 また、これら管理対象の業務の狙いの結果を意味する業務目標が、業績目標管理の効果的な指標であるためには、a)~d)、g)のようでなければならない。
 
  ここに、a)は、その業務目標の達成が狙いの顧客満足の状態の実現に重要な影響を及ぼすものであること、b)は、達成度が判定可能な表現であること、c)は、関係のある他の必要条件をも満たしていること、d)は、顧客満足の追求に関連があることを、g)は、必要に応じて変更することを、それぞれ意味している。
 
  さらに、業績目標達成の管理項目、管理基準としての管理対象の業務と業務目標は関係者が必要により知ることができるようになっていなければならず(f))、業績目標達成管理のためにそれらの実績を管理しなければならない(e))。
 
  また、管理項目、管理基準としての管理対象の業務と業務目標は文書化しなければならない。
 
6.2.2項(計画進捗管理の手はず)
 マネジメントレビュー(9.3項)により抽出した課題への対応として決めた処置に係わる業務実行の手はず(6.1.2項)をはじめ、狙いの顧客満足の状態の実現のために関連する業務実行の手はずを整える品質経営体制の計画 (6.1.2項)では、業務の狙いの結果を意味する業務目標の達成に技術的又はその他の不確実性が見込まれる場合には、a)~e)を明確にした実行計画を策定し、これに基づいて業務目標を必要な期限内に確実に達成するよう進捗管理をしなければならない。
 
  ここに、a)は、業務目標達成の手段や方法であり、b)は、このために導入が必要な資源であり、c)は、計画完遂の責任者であり、d)は、日程計画であり、e)は、狙いの業務目標が達成されたかどうか評価判定する方法である。
 
 
(4) 実務の視点の解釈
  例えば“ナンバーワン品質”を経営戦略たる基本方針とする組織では、ある年は品質ナンバーワン供給者という顧客の評価をさらに固める好機であるとの前年末マネジメント レビューでの経営判断に基づいて、稼働開始の新鋭工場の品質機能の最大化と苦情発生率の対前年半減が年度方針、年度業績目標である。各部門ではこの達成を図る各種品質水準の向上、試験方法の見直し、出荷基準の見直しを業務目標として、年度業務目標実行計画書に基づいて取り組んでいる。
 
  同時に、顧客での使用成績の首位の維持、個別品質水準の高位維持、緊急納期要請への完全対応などの業績目標が、組織の品質業績の実態として組織内に定着している。例えば工程条件や検査方法など各業務の手順は正にこれらの業績目標が実現するように定められているのであり、決められた通りに業務を行い、決められた通りの結果をだすようにする日常の業務実行管理によって、これら定常的業績目標の達成を管理している。
 
   
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型 ←08年版の一部書き直し
  品質基本方針 (5.2項)に基づく狙いの顧客満足の状態を確実に実現させるために必要な業務の実行の手はずを整え、文書化する。これには、業務実行管理(9.1.1項)で狙いの業務結果であるかどうかを判定するための管理基準を明確にする。
 
  部門長は、その実現に責任のあるそれぞれの狙いの顧客満足の状態に関して、その実現に重要な業務と狙いの結果を日常的な業務実行管理の項目として実績を管理する(9.1.1項)。
 
  年度品質方針に係わる年度重点取み組み事項(5.2項)に関係する部門長は、部門の担当機能の観点から責任があると考えられる事項を決定し、狙いの顧客満足の状態を実現させるのに必要な取組みと狙いの結果を部門年度業務目標計画書に定め、計画進捗を管理する(9.1.1項)。
 
  トップマネジメントは、業績目標としての両品質方針に決めた狙いの顧客満足の状態の確実な実現を図る観点から管理が必要で十分と考えられる業務を選び、実績の評価方法と共に月例業務検討会(7.4項)の議事録書式に明確にする。
 
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
関連する機能、階層及びプロセス → 関連する経営機能、管理の観点$61 及び、特定業務 (単純な誤訳)
  英文の”level”が「階層」と和訳されたことが、品質目標が品質改善活動の目標であり、品質目標が組織全体から組織構造の各階層を下り、さらに、個人別に割り当てられなければならないという誤った解釈を支えている。
 
 
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
  共通テキスト化のために、08年版5.4.1項 (品質目標)と5.4.2項(品質マネジメントシステムの計画)が組み合わされ、ISO14001(4.3.3 実施計画)の規定が織り込まれたものであり、品質経営体制の計画に関する規定としての趣旨に変更はない。
 
 
5. 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  年度品質方針、品質目標を設定する組織では普通、その達成の手はずの中に進捗管理のための実行計画書を作成してきたと考えられるから、何の変更の必要はない。但し、6.2.1項の品質目標を改善活動の目標として取り扱っている組織は、実際の日常管理項目の位置づけを規格の意図に沿って変えることが大切である。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  トップマネジメントは日常の業務実行と結果に関して一定の関心事があり、あれはどうだったか、どうなったかと担当者に聞き、会議でよく質問し指示を出し、或いは、知らされなかった場合に怒るのは、それらの事柄が、必要な業績を確実に挙げ又はそれを危うくすることにつながるとトップマネジメントが考えているからである。これを整理すれば業績管理のためのトップマネジメントの想いの業務実績の管理項目が明確になるので、管理者の意見も取り入れて組織として必要な管理ホ項目を決めることができる。これら管理項目の実績の情報をどのように収集し、まとめ、トップマネジメントに報告されるのかの手順を、規格の関連規定に従って決めるとよい。
 
 
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 要求が明確化した。5.1 (リーダーシップ)、5.2 (品質方針)を考慮して品質目標を設定し、達成手段を計画する*Q5
② リスクと機会の評価が終われば品質目標の制定と達成計画の作成に移る。品質目標は品質方針と結びつける必要はない*Q17
③ 6.1はリスク及び機会に対する計画、6.2は品質に関する目標と計画*Q27
④ 品質目標確立対象にプロセスが明示された。計画を5W1Hスタイルで行うことが求められている。
(2) 08年版から変わっているとする解釈
① 6.1でリスク及び機会を特定し、取組みを定め、6.2で取組みに対する計画を立てることを求めている*Q24
② 9.のパフォーマンス評価と関連させて計画、実施したことが品質パフォーマンスにどう貢献したかの評価が必要*Q36
 
 
7. 予想される極端な審査要求
① パフォーマンス重視(10.1)審査のために、品質改善の品質目標が達成されたかどうかの評価が厳格になり、達成できなかった場合にはその原因の是正処置が求められる。
 
 
H26.9.22(修11.2)  修(マニュアル記述:H27.3.12 )  実務の視点解釈記述修正(H27.8.21)  FDIS(9.14)  H27.11.9(そのまま2015年版に)  
修11.29(表現統一)
禁無断転載  (個人的使用のための複写歓迎)
サニーヒルズ コンサルタント事務所