ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
17 ISO9001: 2015 解説:    
9.1.1  監視、測定、分析及び評価 一般    (パフォーマンス評価)
   - 変更点と移行対応 (10) -
<31e-01-17>
 
 
0.1 概要   こちら
 
0.2 実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:
  実績 ⇔パフォーマンス;   実績評価 ⇔パフォーマンス評価$31;   品質実績 ⇔品質パフォーマンス$31;
   製品サービスの実現(活動) ⇔製品及びサービスの提供$41.4;   製品サービス実現の計画(活動) ⇔運用の計画$28-2;
  品質実績 ⇔品質パフォーマンス$31;  品質経営 ⇔品質マネジメント$19-0;   品質経営体制 ⇔品質マネジメントシステム$19-1-1;     
 
1. 規定条文 (JIS Q 9001: 2015)
9. パフォーマンス評価
9.1 
監視、測定、分析及び評価
9.1.1 
一般
  組織は,次の事項を決定しなければならない。
a) 必要とされる監視及び測定の対象。
b) 該当する場合必ず,妥当な結果を確実にするための,監視,測定,分析及び評価の方法。
c) 監視及び測定の実施時期。
d) 監視及び測定の結果の,分析及び評価の時期。
 
  組織は,品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性を評価しなければならない。
  組織は、この結果の証拠として,適切な文書化された情報を保持しなければならない。
 
[08年版 関連規定]
8. 測定、分析及び改善
8.1 一般
 組織は、次の事項のために必要となる監視、測定、分析及び改善のプロセスを計画し、実施しなければならない。
a) 製品要求事項への適合を実証する。; b) 品質マネジメントシステムの適合性を確実にする。;
c) 品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善する。
これには、統計的手法を含め、適用可能な方法、及びその使用の程度を決定することを含めなければならない。
8.2.3 プロセスの監視及び測定
  組織は、品質マネジメントシステムのプロセスの監視、及び適用可能な場合に行う測定には、適切な方法を適用しなければならない。これらの方法は、プロセスが計画どおりの結果を達成する能力があることを実証するものでなければならない。
 
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
  規格は、製品サービスの顧客満足§10の追求により組織の永続的な存続発展を図る品質経営§2.1の在り方を規定している。その基本要件は、あるべき顧客満足の状態に関する経営戦略§35.2を時代の変化に応じて適切に変更し、それを確実に実現させるという循環的活動§33として品質経営活動を行うことであり、規格の規定はこれを、品質経営製品サービス実現との2種類のプロセスアプローチ/PDCAサイクル§43.2の形で記述している。
 
  規格では、狙いの顧客満足の状態を確実に実現させるための品質経営のプロセスアプローチ/PDCAサイクルにおいて、業務が品質経営体制の計画(6.1項)及び製品サービス実現の計画(8.1項)で決められた通りに行われ、決められた通りの結果を確実に出すようにする業務実行管理の活動の中の、決められた必要な結果が得られたかどうかを判定する活動は「実績評価」である。9章は効果的な品質経営活動に必要な実績評価の活動を取り上げ、狙いの顧客満足の状態を確実に実現させるという観点で効果的であるための要件を規定している。
 
  本項は、業務実行管理において必要な結果が得られたどうかを判定する実績評価の活動が効果的であるための要件を、すべての業務や活動に当てはまる共通的な表現で規定している。9.1項の他の条項では特定の実績評価の活動又は特定の側面についての要件を、同じくすべての業務や活動に当てはまる共通的な表現で規定している。
 
(2) 論理及び用語
① 業務実行管理§28.1
  決められた通りに業務を行い、決められた結果を確実に出すようにする実務の業務実行管理の活動は一般に、業務結果の情報を収集、把握し、これを狙いの結果の許容範囲を示す管理基準に照らして評価し、必要な結果が得られたどうかを判定する実績評価の活動と、不合格となった業務結果や製品サービスを決められた最終的な業務結果や製品サービスとするように処理する活動と、問題の再発を防止する活動とから成る。
 
  規格では、この業務実行管理の活動をそれぞれ、JIS和訳「パフォーマンス評価」の実績評価$31(9.1.1項)、不適合の処理(10.2項)、是正処置(10.2項)として表している。
 
② 監視、測定、分析、評価§28.2
  規格は、実績評価の活動を、「監視」「測定」「分析」「評価」という4段階の活動、或いは、4種類の要素業務を次々に行なう活動とみなして規定を記述している(9.1項)。
 
  『監視』は業務がどこまで行なわれ、どのようになっているかを調べることであり、『測定』はそれらを業務進行状態と出来ばえの形で特定することであり、『分析』は業務進行状態と出来ばえの本当の姿を明らかにし実体を把握することを意味し、『評価』はそれが定められた通りであるかどうかを評価、判定することである。或いは、『監視』は業務実行管理のために必要な情報、データを検知することであり、『測定』はその中身を確定することであり、両者を合わせて管理情報の収集である。『分析』は収集した生の種々の情報、データを分析して、正しい『評価』ができるような科学的事実としての情報を生み出すことであり、『評価』はこの実績情報を狙いの結果に関する情報に照らして合否を判定することを意味する。
 
③ パフォーマンス §11.1
  JIS和訳「パフォーマンス」の英文は“performance”であり、何かがどれ位首尾良く又は首尾悪く行なわれたかという意味であり$31、日本語ではずばり「実績」であり、場合によっては「業績」「成績」が適当である。それ自身が優れていることを示唆する「功績、性能」やこれが類推される「パフォーマンス」は適当な日本語ではない。08年版では「成果を含む実施状況」と和訳されていた(8.2.1)。
 
  実績とは単純には業務の実行の結果のことであるが、一般には達成すべき又は狙いの結果がどの程度達成されたかという意味での実績のことである。規格の実績がこのような意味であることは、『目標』が「達成すべき結果」として#22、『実績』が「測定可能な結果」として#54、それぞれ定義されていることからも明らかである。「実績 」は「目標」の達成度であり、「目標」たる狙いや決められた結果と同じ指標又は表現で表される。
 
  規格では、品質経営における狙いの結果はすべて「品質目標」であり、狙いの結果の達成を目指して行った業務の結果たる実績はすべて「品質実績 」である。JISはこれを「品質パフォーマンス」と和訳している。
 
④ パフォーマンス評価§11.2
  JIS和訳「パフォーマンス評価」は英文が“performance evaluation”であり、日本語では「実績評価」である$31。この「実績評価 」は規格では、業務実績の情報を収集し、これを基準に照らして評価し合否を判定するという業務実行管理の方法論のことを指し、これは実務においても管理の基本的で普遍的な手法である。規格で「品質実績を評価する」ということは一義的には、品質経営の業務が決められた通りであるように管理することを意味し、実務的には業務実行管理を行うこと、厳密には業務実行管理の中の実績評価の活動を行うことに相当する。
 
  規格の表現においては、品質実績とは品質目標の達成実績のことである。実績評価は対応する品質目標に照らして行なわれる。品質目標には品質方針に表される狙いの顧客満足の状態を示す組織の品質目標(5.2項)とその達成を図るための業務の管理点として決められた関連業務の狙いの結果としての品質目標(6.2項)があり、従って、品質実績にも実現した顧客満足の実績と個々の業務の実績の2種類がある。実務的には前者の品質実績の把握と評価は品質経営の業績管理、後者は日常的な業務実行管理に相当する。
 
  業務実行管理の活動は規格ではPDCA/プロセスアプローチ サイクルの管理/Cの活動をことである。これは、08年版では表現が一定しないが、凡そ「監視、測定、分析の活動」と表現されている。規格の意図では08年版の8章の標題の「測定、分析」が15年版の9章の標題の「パフォーマンス評価」に相当する。
     
⑤ 品質マネジメントシステムの有効性の評価§11.3
  規格の概念では、品質経営は組織の経営管理活動の一部として組織の存続発展に必要な顧客満足を追求するトップマネジメント主導の活動であり、この品質経営 活動は業務の手順や方法の明確化、要員の配置や設備の用意など狙いの顧客満足の状態を実現させるように整えられた手はずに則って行なわれる。
 
  規格は、このように品質経営のために整えられた一連の手はずのことを品質経営体制§22.2と呼び、品質経営 活動を行なうことを品質経営体制履行と表現する。品質経営で追求する業績目標としての狙いの顧客満足の状態は、規格では品質経営体制の品質目標と表現され、狙いの顧客満足の状態の実現は、品質経営活動の結果ではなく、品質経営体制履行の結果と表現される。
 
  『有効性』は規格では、決められた通りに業務が行なわれ決められた通りの結果が得られるかどうか#4の意味であるから、品質経営体制の有効性とは品質経営の手はずと手はずに基づく業務が必要な狙いの結果を出しているかどうかである。すなわち、「品質実績の評価」が、当該業務実績が狙い業務結果を満たしているかどうかの観点での適否或いは合否の評価、判定を行うことであるのに対して、「品質経営体制の有効性の評価」とは、品質経営体制の手はずが狙いの顧客満足の状態の実現にどの程度有効であるかを評価、判断することであり、狙いの顧客満足の状態がどの程度に実現しているのかの評価と判断(9.1.2項)に関係している。
 
  実務的には「実績評価」は決められた業務結果を確実に出すための業務実行管理の手法であり、「品質経営体制の有効性の評価」は品質経営の業績目標たる狙いの顧客満足の状態を確実に実現するための品質経営の業績管理の手法を指す。
   
(3) 規定要旨
  狙いの顧客満足の状態を確実に実現させる効果的な品質経営活動のためには、決められた通りに業務を行い決められた結果を確実に出すために業務実行管理の活動を効果的に行わなければならない。業務実行管理では、業務実績の情報を収集把握し、その業務実績を狙いの業務結果或いは決められた管理基準と比較して、業務実行と結果の適否或いは合否を評価、判定する実績評価の活動を基礎としなければならない。また、これに基づいて、狙いの結果を確実に出すという観点で品質経営の業務の手はずに問題がないかを評価し判断しなければならない。
 
  このような実績評価は、個々の業務の実績と、それらの総合的結果である品質経営の業績たる実現した顧客満足の状態とのそれぞれについて行わなければならない。
 
  組織はこのような実績の把握と評価判定の手はずを整えなければならない。実績の把握と評価判定の手はずを効果的なものとするためには、手はずにはa)~d)を必要に応じて含めなければなければならない。
 
(4) 実務の視点の解釈
  日常業務管理では例えば、①粗加工後の部品は一定間隔で抜き取って外観観察、寸法測定し、外観・寸法管理基準に従って出来ばえを評価し、3水準に分類する。②最終製品は全数外観検査と抜き取り性能試験を行って検査基準に従って良品と不良品に分ける。③始業前には点検手順と基準に従って設備の異常有無を点検する。④熱処理では加熱温度は自動制御され、許容変動範囲を逸脱すると警報が鳴る。また例えば、①の外観・寸法の出来ばえ区分②の不良品率、③の異常検出率、④の警報吹鳴回数の月別データは、過去の実績又は決められた基準に照らして、狙いの顧客満足の状態の実現や製造上の潜在的な変化の有無の観点で問題がないか評価する。業績管理の一環としての⑤顧客から報告される供給者別加工成績のデータや⑥月別原因別苦情発生のデータは、競合他組織との優劣と過去からの変化に注目し、狙いの顧客満足の状態の実現や競合他組織の品質取り組み、組織内での関連業務の実績との関連の観点で問題ないか評価する。
 
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型← 基本的に08年版の8.1項と同じでよい
  顧客満足追求の業績管理(9.1.2項)と業績目標達成に係わる日常業務管理(6.2項)の手はずの一環として、業務が決められた通りに行なわれ決められた通りの結果を出すことを確実にする業務実行管理の活動の手はずを整える。
  トップマネジメントは、業績管理(9.1.2項)と日常業務管理(6.2項)のために監視が必要な業務を決め、どのように実績を管理するか、実績の指標、表し方、評価の基準を決めて、月例業務検討会(7.4項)の議事録書式に明確にする。また、業績の確定のための顧客満足の実績(9.1.2項)の監視と評価の指標、表し方は、期末業績検討会(9.3項)の議事録書式に明確にする。
 
 
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
① パフォーマンス → 実績 (誤解の回避)
  規格の意図の“performance”は単純に「実績」であり、「パフォーマンス」と和訳する必要はない。既にこのことで、達成度、出来ばえというような意味の誤解が生れている。
る。
 
 
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
  プロセスアプローチ/PDCAサイクルの管理/Cに相当する管理業務の必要に関する規定であり、08年版8.1項(測定、分析及び改善 一般)と趣旨は同じである。ただし、08年版では8.1項の規定は目的を主体とし、方法論はプロセスの監視及び測定(8.2.3)と製品の監視及び測定(8.2.4)に分けて規定していたのに対して、15年版は方法論を詳しく規定するものとなっている。また、管理の方法論の用語としての監視、測定、分析の意味が整理されて規定表現の一貫性が向上した。
 
 
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
用語や表現の変更のみで、管理業務に関する論理や要件が変わった訳ではない。移行のために何も変えることはない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
トップマネジメントの頭の中にある実現すべき顧客満足の状態の指標とそのためにトップマネジメントが実行と結果に関心を持ち、報告させ、必要な指示を出している業務と期待している結果を、一度書き出してみればよい。これを整理して、管理項目と管理の指標とその管理基準として明らかにする。この実績情報を月1回の会議で報告を受け、吟味する体制をつくるとよい。
 
 
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈

(2) 08年版から変わっているとする解釈
① 品質マネジメントシステムのパフォーマンス指標として何が必要か決定する*Q1
② QMSの有効性に加えて、品質パフォーマンスを評価することが求められている:Q5
③ 品質マネジメントシステムの有効性評価のためにどのような活動や指標を決めるかが問われている*Q17
 
 
7. 予想される極端な審査要求
① 認証取得、維持には、品質改善の実績のあることが必要
③ 品質マネジメントシステムの有効性を指標で評価する
 
 
H27.2.5(修8.3)  記述修正(H27.8.19)    H27.12.17(2015年版)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所