ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
20 ISO9001: 2015 改定解説:   4.3  品質マネジメントシステムの適用範囲の決定
- 変更点と移行対応 (13) -
<31e-01-20>
 
 
0.1 概要   こちら

 
0.2 実務の視点和訳とJIS和訳の対応 英語解釈 抜粋)
  経営管理⇔マネジメント$19;  経営管理体制⇔マネジメントシステム$19-1;  品質経営⇔品質マネジメント$19-0;
  品質経営体制⇔品質マネジメントシステム$19-1-1;  業務⇔プロセス$2;   必要事項⇔要求事項$1;  
  要件 ⇔要求事項$1    
 
1. 規定条文
4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲
組織は,品質マネジメントシステムの適用範囲を定めるために、その境界及び適用可能性を決定しなければならない。
この適用範囲を決定するとき、組織は、次の事項を考慮しなければならない。
 
a) 4.1に規定する外部及び内部の課題
b) 4.2に規定する、密接に関連する利害関係者の要求事項
c) 組織の製品及びサービス
 
決定した品質マネジメントシステムの適用範囲内でこの国際規格の要求事項が適用可能ならば、組織は、これらを全て適用しなければならない。
 
組織の品質マネジメントシステムの適用範囲は、文書化した情報として利用可能な状態にし、維持しなければならない。適用範囲では、対象となる製品及びサービスの種類を明確に記載し、組織が自らの品質マネジメントシステムの適用範囲への適用が不可能であることを決定したこの国際規格の要求事項全てについて、その正当性を示さなければならない。
 
適用不可能なことを決定した要求事項が、組織の製品及びサービスの適合並びに顧客満足の向上を確実にする組織の能力又は責任に影響を及ぼさない場合に限り、この国際規格への適合を表明してもよい。
 
[08年版 関連規定]
1.2 適用
この規格の要求事項は、はん(汎)用性があり、業種及び形態、規模、並びに提供する製品を問わず、あらゆる組織に適用できることを意図している。組織及びその製品の性質によって、この規格の要求事項のいずれかが適用不可能な場合には、その要求事項の除外を考慮することができる。このような除外を行う場合には、除外できる要求事項は箇条7に規定する要求事項に限定される。除外を行うことが、顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たす製品を提供するという組織の能力又は責任に何らかの影響を及ぼすものであるならば、この規格への適合の宣言は受け入れられない。
4.2.2 品質マニュアル (抜粋)
組織は、次の事項を含む品質マニュアルを作成し、維持しなければならない。
a) 品質マネジメントシステムの適用範囲。除外がある場合には、除外の詳細、及び除外を正当とする理由(1.2参照)
 
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
  規格のJIS和訳「マネジメント」は「経営管理」のことであり、経営論では経営管理は、事業組織を無限持続体として存続発展させる活動である。実務的には経営者と管理者の業務の活動である。また、JIS和訳「品質マネジメント」は「品質経営」であり、組織の経営管理の活動の一側面或いは一部としての顧客満足の追求を図る活動である。さらに、同「品質マネジメントシステム」は「品質経営体制」であり、それに則って品質経営の活動が行われるように整えられた品質経営の体制のことであり、規格のプロセスアプローチ/PDCAサイクルの概念では、品質経営のための一連の業務ないし業務実行の手はずの集合体とみなされる。
 
  ISO9001規格は、顧客満足の追求により事業の健全な存続発展を図る組織のための、世界標準としての効果的な経営管理の在り方を、関連する各業務と実行の必要条件として規定している。無限持続体として存続発展を図る組織は、ISO9001規格の規定の要件を満たした品質経営体制を確立し、それに則って品質経営の活動を効果的に行なわなければならない。
 
  本項は、組織の品質経営体制の対象とする製品サービスの範囲の明確化が必要であること、及び、それがISO9001規格適合の品質経営体制であるための規定の適用に関する要件を規定している。
   
(2) 論理及び用語
① 品質保証規格§1
  規格とは物事の標準を定めた文書であり、自由に放置すれば多様化、複雑化、無秩序化する事柄を少数化、単純化、秩序化することが規格化の目的である
§1.1。品質保証規格は、納入される兵器に不良や欠陥がないことを確実にするための供給者の品質保証業務の在り方を決めてすべての供給者に遵守を求めた米国国防省の1959年制定の購買基準としてのMIL-Q9858Aが最初である。これを規格化というのは供給者毎にばらばらであった品質保証の管理の方法を最良のものに統一し標準化したからである。1970年頃から日本製品に触発されて製品品質の重要性が民生部門に及ぶようになり、欧米各国の企業が同じ考えで購買基準を制定し、乱立するこれら購買基準を統一、標準化するために各国で品質保証規格が制定され、やがて国境を超えた貿易が盛んになる中で、世界標準の品質保証規格として1987年に誕生したのがISO9001規格である§1.2
 
② 品質と顧客満足
§1.4
  00年版以降の規格では『品質』は「一連の固有の特質が必要事項を満たす程度」と定義され、単に製品の機能や性能が良いか悪いかではなく、それが顧客の必要を満たしているかどうかであり、満たしている程度が品質である。
 
  一方、今日の実務でもマーケティング論でも、顧客満足とは製品サービスを買ってもらい又は取引をしてもらうために顧客に抱いてもらう必要がある組織と製品に対する好感、満足感、安心感、信頼感の状態や程度のことである。87年版(1章)までは不良品を出さないことが顧客満足になるという認識で書かれていたが、不良品のないことが世界的に当たり前になった1990年代に作成の00年版では「顧客の必要や期待が満たされている程度」と定義
#17される顧客満足の状態を実現しないと組織の存続発展はないという認識が品質保証規格の基礎となった。
 
  00年版以降の『品質』とは、いわゆる品質が良いかどうかだけでなく、それを含む顧客満足の状態や程度を意味し、品質と顧客満足とは実質的に同義語であり
(2)、規格は顧客満足の保証の規格である。
 
③ 品質マネジメント
§2
  JIS和訳「品質マネジメント」の英文は“quality management”であり、“management”は日本語では経営又は経営管理であるから、品質に関する経営管理の意味の「品質経営」である
#19-0である。ここに、上記②のように品質は顧客満足の意味であり、規格の品質経営とは、組織の経営管理活動のひとつの側面、或いは、一部としての顧客満足の追求に係わる経営管理の活動である。品質経営の活動は、組織が必要な売上をあげるための前提となる製品サービスに対する必要な顧客満足の在り方を決めて、その確実な実現を図ることが目的である。
 
④ 品質マネジメントシステム§2
  JIS和訳「システム」の英文は“system”であり、「結びつけられている、或いは、一緒に機能している一連の物事や装置の部品など」の意味
(101)であり、規格では「相互に関連する又は相互に作用する要素の集まり」と定義される#20。日本語では体制、体系、枠組みである#3から、JIS和訳「品質マネジメントシステム」とは、それに則って品質経営の活動が行なわれるように整えられた品質経営の体制のことである。
 
  この品質経営体制は、組織の全体の経営管理体制の中の品質経営に係わる部分のことであり、組織の経営管理体制に融合して含まれる顧客満足の追求に必要な一連の要素の集まりを指す。品質経営体制の要素とは実務的には、品質経営のための組織構造、要員の責任分担、業務手順、用いる文書、使用設備、情報伝達手段などである。
 
  規格のプロセスアプローチ/PDCAサイクルの概念では、この要素を顧客満足の追求に関連する一連の業務であるとし、規格の各条項はこれら一連の業務に相当する。規格では品質経営体制とは、狙いの結果及び業務実行方法を決め必要な資源を用意することも含む品質経営に必要な、相互に関係する業務と業務実行の手はずの有機的集合体と見做される。
 
  規格の規定は、組織が必要な顧客満足の状態の実現に向けて品質経営の活動を効果的に行うための要件を示しているが、品質経営の活動を行なうということはJIS和訳「品質マネジメントシステムの実施」つまり「品質経営体制履行」と表現される。そして、規格の規定は品質経営をどのように行うのかではなく、品質経営体制がどのようでなかえればならないかという形で表されている。
    
(3) 規定要旨
  組織は、対象とする製品サービスとその実現のための業務の範囲、及び、適用するISO9001規格の規定の範囲を決めて、その品質経営体制が機能する領域を明確にしなければならない。この決定には、a)~c)を考慮しなければならない。a)、b)項は、品質方針及び組織の品質目標(5.2項)を決めるなど品質経営の業務領域とその狙いの業績に関わる経営判断の基礎となる、組織の外部環境と組織の能力の変化(4.14.2項)のことを指す。
 
  規格の規定が適用できない場合は、狙いの顧客満足の状態の実現に適う製品サービスが顧客に引き渡されることを確実にするのに必要な別の処置をとらなければならない。規格の特定の規定を適用しない場合でも、整えた品質経営体制によって組織が、顧客のニーズと期待を満たす製品サービスを顧客に提供することを通じて、顧客の製品サービスへの満足、信頼を確立して無限持続体として存続発展を確実なものとすることができるなら、規格への適合を主張することができる。
 
  組織の品質経営体制の機能領域についての説明、及び、規定不適用の場合の正当性の説明を、文書化し利用可能な状態に維持しなければならない。
 
(4) 実務の視点の解釈
  実務では、この製品サービスは顧客満足を得なければならないが、これは必要ないというようなことはないから、品質経営体制の対象は組織のすべての製品サービスである。適用除外に関しては設計開発業務が存在しない組織はそのまま8.3項を適用除外し、対面サービスでは例えばサービス活動の結果のサービスが決められた通りかをサービスの引き渡し前に検査できないから、8.5.1 c)項は適用除外して、訓練や管理者による随時監視、指導など組織の現実を規定に対処する手順とすればよい。
    
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型
 品質経営活動を効果的に行なうために必要な品質経営体制をISO9001規格の規定を満たすように確立する。品質経営体制で取り扱うのはすべての製品である。また、製品の設計は顧客が行なうのでISO9001規格の8.3項(製品・ービスの設計及び開発)の規定は適用しない。
   
   
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)

   
   
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
 08年版の1章は規格の範囲(1)に関する規定であり、15年版の本項は品質マネジメントシステムの範囲の規定であるから新規な規定である。ISO14001の4.1項を受けた共通テキストの規定がISO9001に採り入れられたものである。但し、ほとんどどの組織も品質マニュアルの形式としてその1章に組織とその事業、製品サービスの概要を記述してきたから、新規規定であっても特段の変更ではない。また、規格規定の適用除外は1.2項からの移動であるが、内容的には、サービスをも意図した柔軟な除外が可能な表現に変わっている。
   
   
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
 変えるところはない。但し、認証範囲を実際の事業範囲より狭く限定している組織は、この機会に改めるのがよい。また、規格規定適用除外が7章(15年版では8章)に限定する規定がなくなったので、無理をしていた組織は実態に合わせるのがよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
 これを機会に、ISO9001が現場中心の品質改善運動の仕組みを規定する規格であるとする誤った認識なら、それを正すのがよい。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① どの活動までを規格に従って管理する必要があるかは4.1,4.2から理論的に決まる*Q38
② 恣意的な未適用は付加。該当しない要求は適用できない。文書化して維持する*Q39
 
(2) 08年版から変わっているとする解釈
① 組織の状況、戦略、利害関係者の期待などを理解した上で品質マネジメントシステムの適用範囲を決定するという要求が新たに追加された:Q3
② 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定に際して組織の外部、内部の課題、利害関係者の要求事項を考慮することが追加:Q18
③ 好きなように決めるのではなく、品質保証できることに加えて、4.1と4.2の結果を考える*Q39
   
   
7. 予想される極端な審査要求
① 8章以外の適用除外を認めない。
② 品質マネジメントシステムの範囲と4.1、4.2項の課題一覧表とのつながりの説明
   
H27.3.1   修正H27.11.23(2015年版)
禁無断転載  (個人的使用のための複写歓迎)
サニーヒルズ コンサルタント事務所