ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
22 ISO9001:2015 改定解説    5.3   組織の役割、責任及び権限
- 変更点と移行対応 (15) -
<31e-01-22>
 
 
0.1 概要   こちら
   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応
 
品質経営(活動) ⇔品質マネジメント$19-0;  品質経営体制 ⇔品質マネジメントシステム$19-1-1;
   経営代行者 ⇔管理責任者$19-4;

   
   
1. 規定条文
5.3 組織の役割、責任及び権限
トップマネジメントは、関連する役割に対して責任及び権限が割り当てられ、組織全体に伝達され、理解されていることを確実にしなければならない。
 
トップマネジメントは、次の事項に対して責任及び権限を割り当てなければならない。
 
a) 品質マネジメントシステムがこの規格の要求事項に適合していることを確実にする
b) プロセスが、意図したアウトプットを生み出すことを確実にする
c) 品質マネジメントシステムのパフォーマンス 及び改善(10.1参照)の機会を特にトップマネジメントに報告する
d) 組織全体にわたって顧客重視を促進することを確実にする
e) 品質マネジメントシステムへの変更を計画し、実施する場合に、品質マネジメントシステムを“完全に整っている状態”に維持することを確実にする

[08年版 関連規定]
5.5.1 責任及び権限
トップマネジメントは、責任及び権限が定められ、組織全体に周知されていることを確実にしなければならない。
5.5.2 管理責任者
トップマネジメントは、組織の管理層の中から管理責任者を任命しなければならない。管理責任者は、与えられている他の責任とかかわりなく、次に示す責任及び権限をもたなければならない。 a) 品質マネジメントシステムに必要なプロセスの確立、実施及び維持を確実にする。; b) 品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況及び改善の必要性の有無について、トップマネジメントに報告 する。; c) 組織全体にわたって、顧客要求事項に対する認識を高めることを確実にする。
5.4.2 品質マネジメントシステムの計画
トップマネジメントは、次の事項を確実にしなければならない。; b) 品質マネジメントシステムの変更を計画し、実施する場合には、品質マネジメントシステムを“完全に整っている状態” (integrity)に維持する。
   
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
  トップマネジメントの統率の下で多数の要員が協働する品質経営活動において、狙いの顧客満足の状態を実現するように関連業務が効果的に実行されることを確実にするには、各業務を担う責任権限が抜けなく、重複することなく、それぞれの要員に割り当てられていることが必要である。
 
  本項では、品質経営活動の各業務の責任権限の割り当てに関するトップマネジメントの責任を規定している。
   
(2) 論理及び用語
① 責任及び権限§13-1
  経営用語では、業務、権限、責任の3用語は相互関連的である(54)。要員に割り当てられた特定の業務は実務的には職務と表現されるが、規格では組織上の役割と表現している。要員が特定の職務を担うためには、要員にはそのための責任と権限が委ねられていなければならない。責任とは業務遂行の義務を意味し、権限は業務を正式に遂行できる権利ないし力を意味する。また、要員はその職務を果たすことのできる能力、つまり、職務能力を持っていなければならない(7.2項)。
 
② 管理責任者§13-2
  08年版(5.5.2)のJIS和訳「管理責任者」は英文“management representative”から「経営代行者」であり$19-4、トップマネジメントに代わって品質経営の日常業務を統率することに責任権限を持つ経営者又は上席管理者のことである。また、その責任には品質経営活動に関して外部の関係者に対して組織を代表することも含まれている。
 
  トップマネジメントの日常は基本的に多忙であり、日常の個別の問題に係わることのできる深さには限界があるから、組織の業績を左右する重要な問題については、特定の責任者を明確にして、日常業務の指揮監督を委ねることが多い。トップマネジメントは、これら責任者に一元化され、整理された情報と問題分析と改善の提案を基礎として経営判断を行う。規格の経営代行者と役割は、このような実務の経営管理活動のトップマネジメントによる統率の実態に倣ったものである。
 
  15年版規定では経営代行者に関する用語もそれを規定する条項もなくなったが、08年版の5.5.2項(管理責任者)の経営代行者の役割に相当する規定が、本項に組織の役割、責任及び権限の一環として規定されている。これに関して付属書A(16)は、「経営代行者」という用語は用いられていないが、同様の責任権限の割り当てが本項に規定されていると説明し、説明の中で用語「経営代行者」が用いられている。
 
  従って15年版では、組織がその役割を「経営代行者」と呼ぶことを求めていないが、トップマネジメントによる品質経営活動の効果的な統率のためには、08年版と同じ役割を果す経営代行者の存在とその責任権限が果されることが必要であるとする規格の考えには変化はなく、経営代行者を指名しなければならないという規定の意図にも変化はないということである。
 
    
(3) 規定要旨
  トップマネジメントは、品質経営活動において各要員が職務として担う役割に関する責任権限を明確にする手はずを整え、手はずに則って品質経営の各業務の責任権限を要員に割り当てること、及び、それらが組織内に伝えられ、知られていることを確実にしなければならない。
 
  加えてトップマネジメントは、自らの包括的統率の下でa)~e)の責任権限を担って、自らに代わって品質経営の日常業務を統率する者を決めなければならない。
 
  ここに、a)は、ISO9001規格が規定に定める要件を満たして品質経営を行なうことであり、b)は、日常の業務実行管理を効果的に行うことであり、c)は、業務実績と問題点に関するトップマネジメントに報告し、指示を仰ぐことであり、d)は、トップマネジメントの想いの顧客重視の原則 (5.1.2項)の実務への浸透を図ることであり、e)は、業務実行の手はずの円滑な変更を管理することである。
 
 
(4) 実務の視点の解釈
  機能組織上の各部門の担当機能の範囲が明確にされ、担当機能とは無関係の階層別の役職者としての職務と責任権限が明確にされた状態では、管理者の職務は担当機能部門と役職名で明らかにされ、責任と権限はそれに伴う。 組織図や人事異動発表で組織内に伝達される。一般要員の職務は配置職場或いは担当業務によって明らかにされる。実務的には多忙なトップマネジメントに代わって経営管理の日常業務は副事業所長のような次席者が統率し、又は、品質保証機能を主管する機能部門の長が品質経営の日常業務を統率し、或いは、大規模組織では事業や製品別のそれら部門を束ねる品質保証管掌経営者が統率することもある。
     
   
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型← 08年版の5.5.1、5.5.2項をまとめればよい
 部門別の担当機能、及び、階層別の役職者に固有の責任権限をそれぞれ、部門別機能規程、役職者責任権限規程に定める。各役職者の職務は組織図に明確にする、役職者は、自部門が担当すべき業務を適切に区分して職務表に表し、それぞれに職務能力のある要員(7.2項)を割り当てる。
 
  品質保証機能担当部長は、職務の一環として品質経営の業績目標(5.2項)の達成の管理のために組織内の関連する業務の実行を統率し、業務実績を必要に応じてトップマネジメントに報告し、指示を仰ぐ。また、月例業務検討会(7.4項)と期末業績検討会(9.3項)の準備、進行、決定事項の実行管理を担う。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
① 組織の役割、責任及び権限 → 組織上の役割、責任及び権限  
   
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
  SL(共通テキスト)の導入のため08年版の5.5.1項と5.5.2項が単一条項に集約されただけで、規定の趣旨は不変。規定表現も似ている。用語「管理責任者」は用いられていないが、多忙なトップマネジメントに代わって品質経営の日常業務を統率する責任者の任命が必要という08年版5.5.2項の意図は変わっていない。08年版の管理責任者は00年版では小企業ならトップマネジメントがこれを兼務する(20)と説明されるほど絶対に必要な職務であったが、15年版では実務の必要に応じて指名するという正常な規定になった。
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  何も変えることはない。実務的には機能組織上で品質保証機能を担う部門の責任者を管理責任者としているなら、そのまま品質経営体制の組織図に残せばよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
 ISO事務局は廃止し、業務は関連する組織図などに決められた責任権限分担に従って分散させる。トップマネジメントが多忙な場合は、品質保証機能を担う最上位の管理者に顧客満足の追求に関連する日常業務を統率させる。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
② 管理責任者はなくなったが、重要事項をトップマネジメントに報告する担当者の任命は必要:Q17
④ 管理責任者の任命要求はないが、同等の内容の責任と権限の割り当ては求められる*Q38。
⑤ 管理責任者と同様の趣旨を規定している*39。
 
(2) 08年版から変わっているとする解釈
③ 中小企業では大変であり、トップマネジメントが責任を管理責任者に押しつけるので、管理責任者の要求事項がなくなった*Q33
 
   
     
7. 予想される極端な審査要求

    
     
H27.3.7(解釈変更 3.11)   修H27.11.28(2015年版)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所