ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
23 ISO9001:2015 改定解説:    6.3   変更の計画
- 変更点と移行対応 (16) -
<31e-01-23>
 
 
0.1 概要   こちら

   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  (英語解釈 抜粋)
 
経営管理体制 ⇔マネジメントシステム$19-1;   製品サービス ⇔製品及びサービス$8.1;
  製品サービス要件 ⇔製品及びサービスの要求事項$1-2-4 ;  製品サービスの実現 ⇔製品及びサービスの提供$41.4;
  製造及びサービス活動 ⇔製造及びサービスの提供$25;  設計開発 ⇔設計・開発§36.1;
  品質経営 ⇔品質マネジメント$19-0;   品質経営体制 ⇔品質マネジメントシステム$19-1-1;
   
   
1. 規定条文   (JIS Q 9001:2015)
 4.3 変更の計画
組織が、品質マネジメントシステムの変更の必要性を決定したとき、その変更は、計画的な方法で行わなければならない(4.4参照)。
 
組織は、次の事項を考慮しなければならない。
 
a) 変更の目的、及びそれによって起こり得る結果
b) 品質マネジメントシステムの“完全に整っている状態”(integrity)
c) 資源の利用可能性
d) 責任及び権限の割当て又は再割当て
[08年版 関連規定]
5.4.2 品質マネジメントシステムの計画
トップマネジメントは、次の事項を確実にしなければならない。  
b) 品質マネジメントシステムの変更を計画し、実施する場合には、品質マネジメントシステムを“完全に整っている状態” (integrity)に維持する。

 
 
2. 条項の意図
(1) 主題
  本項は、品質経営の業務実行の手はずの必要な変更を、問題を起こさず円滑に行なうための要件を規定している。
   
(2) 論理及び用語
① 品質マネジメント
  JIS和訳「品質マネジメント」の英文は“quality management”であり、“management”は日本語では経営又は経営管理であるから、品質に関する経営管理の意味の「品質経営」である#19-0である。ここに、品質は顧客満足の意味であり、規格の品質経営とは、組織の経営管理活動のひとつの側面、或いは、一部としての顧客満足の追求に係わる経営管理の活動である。品質経営の活動は、組織が必要な売上をあげるための前提となる製品サービスに対する必要な顧客満足の在り方を決めて、その確実な実現を図ることが目的である。
 
  JIS和訳「品質マネジメント」は英文から品質に関する経営という意味の「品質経営」のことである$19-0。規格は、組織が必要な売上をあげるための前提となる製品サービスに対して必要な顧客満足§10を追求する経営管理活動であり、組織の経営管理活動のひとつの側面ないし一部としての活動である。
 
② 品質マネジメントシステム
  JIS和訳「システム」の英文は“system”であり、「結びつけられている、或いは、一緒に機能している一連の物事や装置の部品など」の意味(101)であり、規格では「相互に関連する又は相互に作用する要素の集まり」と定義される#20。日本語では体制、体系、枠組みである#3から、JIS和訳「品質マネジメントシステム」とは、それに則って品質経営の活動が行なわれるように整えられた品質経営の体制のことである。
 
  この品質経営体制は、組織の全体の経営管理体制の中の品質経営に係わる部分のことであり、組織の経営管理体制に融合して含まれる顧客満足の追求に必要な一連の要素の集まりを指す。品質経営体制の要素とは実務的には、品質経営のための組織構造、要員の責任分担、業務手順、用いる文書、使用設備、情報伝達手段などである。
 
  規格のプロセスアプローチ/PDCAサイクルの概念では、この要素を顧客満足の追求に関連する一連の業務であるとし、規格の各条項はこれら一連の業務に相当する。規格では品質経営体制とは、狙いの結果及び業務実行方法を決め必要な資源を用意することも含む品質経営に必要な、相互に関係する業務と業務実行の手はずの有機的集合体と見做される。
 
  規格の規定は、組織が必要な顧客満足の状態の実現に向けて品質経営の活動を効果的に行うための要件を示しているが、品質経営の活動を行なうということはJIS和訳「品質マネジメントシステムの実施」つまり「品質経営体制履行」と表現される。そして、規格の規定は品質経営をどのように行うのかではなく、品質経営体制がどのようでなかえればならないかという形で表されている。
 
③ 品質マネジメントシステムの計画§5
  「計画」の英文は“planning”であり、日本語の「計画」とは違って、将来行なうことの準備万端を整えることを意味し$28、TC176指針でも「前もって手はずを整えること」と定義(6)されている。すなわち、規格の『計画』は業務実行の手はずを整えることを意味する。
 
  JIS和訳「品質マネジメントシステムの計画」とは「品質経営体制の計画」であり、品質経営に関連する一連の業務がそれに基づいて業務が行なわれるように手順を決め、資源を用意して、それら業務実行の手はずを整えることを意味する。この結果によって品質経営体制が確立する。
 
④ 変更の計画
  TC176の変更説明(18)によると、品質経営の業務が組織の経営戦略を支えるという観点から15年版では変更管理に関する規定が強化されている。このため、製品サービス要件 (8.2.4項)と設計開発(8.3.6項)、品質経営体制 (6.3項)の手はずの変更に加えて、製品サービス実現 (8.1項)、製造及びサービス活動 (8.5.6項)の手はずの変更に関しても、変更の管理の要件が規定されている。
 
  規格の意図の変更管理とは、あることを良くするために行う変更が他の事柄に悪影響を与えず、また、変更作業による混乱を生じさせないで、必要な変更を実現させるよう変更作業の実行を管理することである。変更作業とは例えば、組織構造の変更、新設備の導入、文書の改訂、要員への徹底や習得教育などであり、変更の手はずにはそれらを何時又はどの対象から適用するのかが含まれる。変更の手はずを整えることは規格では「変更の計画」である。変更の計画の態様や程度を含む変更管理の程度は、管理しない場合に起きる可能性のある問題の大きさに対応したものでなければならない。
 
    
(3) 規定要旨
 品質経営体制 として整えられた特定の業務の手はずを変更する場合には、変更と変更作業が他の業務の実行と結果に悪影響を及ぼし、組織の狙いの顧客満足の状態の実現に支障を来すような状況を避けなければならない。組織は、このことを確実にするために、a)~d)項を考慮した変更作業の手はずを整え、手はずに則って変更作業が行われるよう変更作業の実行を管理しなければならない。
 
  ここに、a)は、変更の目的と変更がもたらす可能性のある結果、b)は、他の業務との必要な相互関係を乱すことのないようにすること、c)は、変更作業に投入できる資源、d)は、変更に伴い必要となる要員の責任権限の変更を意味する。
 
 
(4) 実務の視点の解釈
 例えば、手順の変更は手順書を改訂し責任者の承認を得て必要箇所に配布し旧手順書と差し替える、特定の製品苦情の再発防止処置のための特定製造工程の条件の変更は、手順書の改訂と配布と要員の新手順習得を確認してから正式に実行に移される。マネジメント レビュー(9.3項)の決定としての特定製品の品質水準の引き上げに関しては、新規な工程と工程条件での試作と製品品質評価、新製造法の問題点検討と必要な処置、製品実現の計画と操業の手順書の改訂と要員の習熟の確認の後に、製造工程内仕掛の半製品には旧製造法を、新規着手製品には新製造法をそれぞれ適用する管理を経て新製造法へ全面切り換えする。改善のために実物製品の製造方法を試験的に変える場合は、試験内容の事前説明、試験材の識別、試験手順書の配布、責任者の製造立ち会いなどにより適用する設備や手順、造った製品の現物が通常製品と混同されないようにする。新規設備の導入では、試運転、設備能力の確認、手順書の作成と要員の運転習熟、試作と製品品質調査の確認を経て、生産を正式に旧設備から切り換える。変更が重要、複雑な場合は、関係部門やトップマネジメントへの連絡を含む変更の実行のための手はずを整え、実行計画書による進捗管理を行なう。
     
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型  ←08年版5.4.2項の分割、書き直し
  新規設備や新技術の導入、新規製品の受注、又、異常や問題に対応するために、製品・サービスの仕様や品質、業務の出来ばえ、又は、業務方法や基準など、業務の実行と管理の手はずを変更する場合は、変更による混乱で所定の業務結果が出ない状況にならないように変更の実行を管理する。
 
  すべての手順にはその変更の手はずを含める。手はずの変更はこれに従って行い、月例業務検討会など各種の情報連絡方法(5.5.3項)を活用し、また、特に重要な手はずの変更の場合は期末業績検討会(9.3項)のの議題として円滑な変更を万全なものとする。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
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4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
  08年版の5.4.2の品質経営*の手はずを整える活動( a)項)と手はずを変更する活動( b)項)の要件の規定の内の、b)項を独立させたものであり、変更管理の要点の記述が詳しくなったが、規定の意図には変更はない。なお、15年版では日常管理業務統率者(08年版管理責任者)の責任(5.3項)に手はずの円滑な変更の管理が明示されている。
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
 何も変えることはない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
 仕事の仕方など組織の決まりを変える場合の決まりを明確にしておかないと、誰かが勝手に、また、行き当たりばったりに変えて混乱、事故、製品不良、損害を生じることもあり得る。変更頻度の高い決まりや重要な決まりの変更の決まりがどうなっているか見直し、適当な形で適当な程度に文書化する。規格の規定に従って業務の手はずを整えた場合は、このような状態が実現する。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 08年版の5.4.2 b)項に対応。規定がより詳細になった:Q5
② 08年版より拡張され、明確になった:Q17
  
(2) 08年版から変わっているとする解釈
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7. 予想される極端な審査要求
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H27.3.13(修 3.24)  修11.29(2015年版)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所