ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
26 ISO9001: 2015 解説     7.1.4  プロセス運用の環境
- 変更点と移行対応 (19) -
<31e-01-26>
 
 
0.1 概要   こちら

   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  (英語解釈 抜粋)
 
業務 ⇔プロセス$2;  業務実行 ⇔プロセスの運用$8-1;  顧客のニーズと期待 ⇔顧客要求事項$1-2-2;
   品質経営 ⇔品質マネジメン$19-0;
   
   
1. 規定条文 (SL共通テキストJIS仮訳又は山田秀・須田晋介の私訳; これらのない部分は筆者のJIS的和訳)
7.1.4  プロセス運用の環境
  組織は,プロセスの運用に必要な環境、並びに、製品及びサービスの適合を達成するために必要な環境を明確にし、提供し、維持しなければならない。
 
  注記 適切な環境は、次のような人的及び物理的要因の組み合わせである。
      a) 社会的要因(例えば、非差別的、平穏、非対立的)
      b) 心理的要因(例えば、ストレス軽減、燃え尽き症候群防止、心のケア)
      c) 物理的要因(例えば、気温、熱、湿度、光、気流、衛生状態、騒音)
   これらの要因は、提供する製品及びサービスによって、大いに異なり得る。 
[08年版 関連規定]
6.4 作業環境
組織は、製品要求事項への適合を達成するために必要な作業環境を明確にし、運営管理しなければならない。
注記:“作業環境”という用語は、物理的、環境的及びその他の要因を含む(例えば、騒音、気温、湿度、照明又は天候)、作業が行われる状態と関連している。
   
 
2. 条項の意図
(1) 主題
  本項は、品質経営の業務を効果的に行なうために必要な作業環境の整備の要件を規定している。
   
(2) 論理及び用語
① プロセス運用の環境$22-1
  JIS和訳「プロセス運用」の英文は、一連の業務の組織的実行#8-1という意味であり、「プロセスの運用の環境」とは「業務実行の環境」であるから、08年版の「作業環境(work environment)」のことである。規格の『作業環境』は「作業が行われる場の条件の集まり」と定義され#25p、狙いの結果を確実に出すという観点で要員の業務実行に物理的及び心理的な影響を及ぼす要員の置かれた状態のことを指す。また、個々の業務の作業環境というより、組織の品質経営の一連の業務を行なう環境であり、効果的な品質経営のために必要な作業環境という意味である。
 
  94年版の作業環境は、製品の品質の作り込みのための管理された状態のひとつとしての作業環境であり、作業の出来ばえを通じて品質に影響する温度や雰囲気中の粉塵、照度や作業場の広さなどを意味していたが、00年版以降は必要な業務結果を確実に出させるために不可欠な経営資源としての要員の業務実行の環境を指すものとなった。
 
② 作業環境の意義$22-2
  規格では、経営資源としての作業環境を、所定の業務結果を確実に出す業務実行のための例えば温度や雰囲気成分に関連して快適或いは不快というような物理的要因に基づく作業環境だけでなく、例えば表彰制度の存在や人間工学的検討に基づく業務実行姿勢の快適さという人的要因に起因して要員が自分は組織からどのように期待され、組織から気遣われているかに関する要員の受け止め方を形成することに繋がる心理的な作業環境とに大別している。
 
  前者の作業環境に不備があれば、例えば暗くて検出すべき疵を見落とした、騒音で指示を聞き誤った、蒸し暑くて汗で滑って工具で製品に疵を付けた、整理整頓が悪くて誤ったボルトを用いた等々で狙いの業務結果を出せないことになり、また、蒸し暑さでいらいらしてくる、手順通りの窮屈な作業姿勢で疲れて、雨が降りこむのが気になって注意力が散漫になる等々により作業ミスを引き起こす。後者の作業環境が不備な場合は言われたことを言われた通りに行なう要員が育ち、適切に整えられた作業環境で業務が行なわれるなら、要員が職務への認識(7.2項)を高め、心に中に組織への帰属意識、或いは、組織の経営目標の達成や組織の発展への参画意識が育まれ、要員は意欲的、主体的に業務を行うことになる。また、前者の暗くて騒々しい環境を放置して要員に意欲的な業務実行は期待できない。
 
  業務実行により要員が組織の必要とする業務結果を真に確実に出すことを組織が期待するならば、要員が職務能力(7.2項)を持っているだけでは十分ではなく、要員がその能力を業務実行で発揮しようとする意欲や責任感を持っていることを確実にしなければならない。効果的な品質経営活動に必要な経営資源には、要員の職責の認識とやる気を育み、要員が意欲的、主体的に業務に取り組むことを促進する物理的及び心理的な作業環境を含めることが必要である。
    
(3) 規定要旨
 本項規定のJIS和訳「プロセス運用」の英文は、一連の業務の組織的実行#8-1という意味であり、規格の文脈では品質経営の一連の業務を行なうこと、或いは、品質経営 活動を行なうことである。また、「製品・サービスの適合」とは、規格が顧客のニーズと期待 を満たした製品の一貫した供給を目指す組織(1 a)項)に対する指針であることに照らすと、製品・サービスが顧客のニーズと期待に適合することであり、そのことを図る活動が品質経営 活動である。
 
  従って、規定の作業環境とは「組織の一連の業務の実行のために、及び、製品及びサービスの適合の実現を図るために必要な環境」であり$70-2、「及び」の前後のどちらも品質経営 活動を行なうことを指すから、「効果的な品質経営活動に必要な作業環境」ということである。 この「効果的な品質経営 活動に必要な作業環境」は08年版(6.4)では「製品要求事項への適合を達成するために必要な作業環境」と表現されていた。
 
  さらに、「提供する」は「用意しておく」ことである$37から、英文と規格の意図に沿った規定条文の趣旨は、「品質経営 活動に必要な作業環境を特定し、用意しておき、維持しなければならない」である。
 
  組織は品質経営 活動の業務の実行によって、狙いの顧客満足の状態の実現に必要な狙いの業務 結果を確実に出すために不可欠な物理的及び人的要因の作業環境を特定し、要員がその下で業務を実行できるように必要な作業環境を創造し、維持し、必要により改善、強化しなければならない(9.3.2 b)項)。
 
 
(4) 実務の視点の解釈
  例えば、蛍光灯がチカチカするのに1本だけだから照度は法令を満たしているとして放置された貧乏たらしい職場では働く意欲が減退する。組織が主宰又は支援する旅行、忘年会などの行事には職場で孤立しがちな人や不満を持つ人は欠席しがちだが、何のための行事かを考えるとこれを放置して参加者だけで挙行することは意味がない。いたずらや悪意で製品品質を汚すのは組織の利害とは無関係と感じ又は組織から期待されてないと感じる者の行為であり、組織に愛着を持つ要員は絶対にしないのであり、監視カメラ増設は信頼されてないと感じて要員の心が組織から離れていく作業環境を作ることになる。
     
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型←08年版と全く同じ
 勤務制度や教育訓練、福祉施策の設計と運用、労働法規の適用に際しては要員の意欲と職責意識の醸成(7.3項)という観点を十分に配慮する。部門長は、業務手順に要員の安全と働き易さの必要な観点が含まれていることを確実にし、明るく風通しのよい職場風土の創造と維持に努める。この一環として部門長は、それぞれの職場の室温、照度、作業空間、整理整頓、衛生状態が、要員に期待する業務実行の出来ばえに照らして十分な状態であるよう管理する。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
① プロセス運用の環境 → 業務実行の環境(作業環境)#8-1
プロセス運用の環境を提供する → 業務実行の環境(作業環境)を用意する$37
     
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
 表現の違いだけであり、規定の趣旨は08年版6.4項と全く同じ。注記の記述変更により規定の作業環境が物理的要因の作業環境に限られるという08年版での規定解釈が誤りであることが明確になった。
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
 どのトップマネジメントも高収益を挙げることと共に「良い組織」にしたいとの想いで経営をしている。その「良い組織」とは顧客や社会から喜ばれ信頼される組織であるだけでなく、従業員にも喜ばれる組織であり、人々が組織と仕事を誇りに思い、活き活きと働く組織でもある。トップマネジメントは、この想いから従業員の幸せの増進を社是に掲げて、或いは、そうでなくとも人々の気持ちを慮る有形無形の、直接的には高収益とは矛盾する施策をとっており、その想いから人々の顔と名前を覚え、日々に親しく声を掛け、自らの行動を律する。これは良い組織であることこそが高収益を挙げ、無限持続体として存続発展するための条件であり、創業の目的に沿うとのトップマネジメントの認識に基づく。このようなトップマネジメントの想いを反映した制度、手順、管理基準を見直し、整理して、それぞれが狙いとする効果を挙げるようにその運用や実行の手順を明確にするとよい。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 08年版の作業環境と全く同じ*Q17
② 08年版の6.4と等価な要求。一般的な表現としてこのようなタイトルになった*Q5
  
(2) 08年版から変わっているとする解釈

 
   
     
7. 予想される極端な審査要求

    
     
H27.5.10(追5.22)  H27.12.15(2015年版)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所