ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
27 ISO9001 改定解説(DIS):  7.1.5  監視、測定のための資源
- 変更点と移行対応 (20) -
<31e-01-27>
 
 
0.1 概要
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0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  
 
実績 ⇔パフォーマンス$31;  監視測定用具 ⇔監視機器及び測定機器$58;   サービス活動 ⇔サービスの提供$48-1;
   
   
1. 規定条文 (SL共通テキストJIS仮訳又は山田秀・須田晋介の私訳; これらのない部分は筆者のJIS的和訳)
7.1.5  監視、測定のための資源
7.1.5.1  一般
要求事項に対する製品及びサービスの適合を検証するために監視又は測定を用いる場合、組織は、結果が妥当で信頼できるものであることを確実にするために必要な資源を明確にし、提供しなければならない。
 
組織は、用意した資源が次の事項を満たすことを確実にしなければならない。
  
a) 実施される個別の方式の監視及び測定に適切である
b) それらの目的に対する引き続く適合を確実にするために維持される
  
組織は、監視及び測定資源の目的への適合の証拠として適切な文書化した情報を保持しなければならない。
  
7.1.5.2 測定のトレーサビリティ
測定のトレーサビリティが要求事項となっている場合、又は、組織がそれを測定結果の妥当性に信頼を与えるための不可欠な要素とみなす場合には、測定機器は、次の事項を満たさなければならない。
 
a) 定められた間隔で又は使用前に、国際計量標準又は国家計量標準に対してトレーサブルなである計量標準に照らして校正若しくは検証、又は、それらの両方を行う。そのような標準が存在しない場合には、校正又は検証に用いたよりどころを、文書化した情報として保持する。
b) それらの状態を明確にするために識別を行う。
c) 校正の状態及びそれ以降の測定結果が無効になってしまうような調整、損傷又は劣化から保護する。
 
測定機器が意図した目的に適していないことが判明した場合、組織は、それまでに測定した結果の妥当性を損なうものであるか否かを明確にし、必要に応じて、適切な処置をとらなければならない。
[08年版 関連規定]
7.6 監視機器及び測定機器の管理
  定められた要求事項に対する製品の適合性を実証するために、組織は、実施すべき監視及び測定を明確にしなければならない。また、そのために必要な監視機器及び測定機器を明確にしなければならない。組織は、監視及び測定の要求事項との整合性を確保できる方法で監視及び測定が実施できることを確実にするプロセスを確立しなければならない。
  測定値の正当性が保証されなければならない場合には、測定機器に関し、次の事項を満たさなければならない。
a)定められた間隔又は使用前に、国際又は国家計量標準にトレーサブルな計量標準に照らして校正若しくは検証、又はその両方を行う。そのような標準が存在しない場合には、校正又は検証に用いた基準を記録する(4.2.4参照)。 b) 機器の調整をする、又は必要に応じて再調整する。 c) 校正の状態を明確にするために識別を行う。 d) 測定した結果が無効になるような操作ができないようにする。 e) 取扱い、保守及び保管において、損傷及び劣化しないように保護する。
  さらに、測定機器が要求事項に適合していないことが判明した場合には、組織は、その測定機器でそれまでに測定した結果の妥当性を評価し、記録しなければならない。組織は、その機器、及び影響を受けた製品すべてに対して、適切な処置をとらなければならない。校正及び検証の結果の記録を維持しなければならない(4.2.4参照)。 規定要求事項にかかわる監視及び測定にコンピュータソフトウェアを使う場合には、そのコンピュータソフトウェアによって意図した監視及び測定ができることを確認しなければならない。この確認は、最初に使用するのに先立って実施しなければならない。また、必要に応じて再確認しなければならない。
  注記:意図した用途を満たすコンピュータソフトウェアの能力の確認には、通常、その使用の適切性を維持するための検証及び構成管理も含まれる。    
 
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
  本項は、製品・サービスの合否判定のための情報を検知する監視測定活動で使用する、計測器を含む監視測定手段が必要な情報検知能力を有し、そのような監視測定手段が使われることを確実にするための要件を規定している。
   
(2) 論理及び用語
① 監視、測定のための資源§23
  決められた通りに業務を行い決められた結果を確実に出すための業務実行管理の業務の中心は、業務実績の情報を収集し、これを狙いの業務結果に照らして評価して決められた通りかどうかを評価、判定する実績 評価の活動(9.1.1項)である。規格では業務実行管理の業務を、監視、測定、分析、評価という要素業務に分類しており$28、この内の『監視』と『測定』は合わせて、実績 評価のための業務実行状況や業務結果を表す情報を検知、収集することを意味する。また、規定で明確にされているように、本項の『監視』と『測定』は、実績 評価の内の製品・サービスの実績 評価、すなわち、合否判定のための情報検知の活動のことである。この情報を検知する手段は、08年版(7.6)では「監視測定用具 」と表されていたが、15年版では経営資源として整理されたことから「監視、測定のための資源」となった。
  
  製品・サービスの合否判定のための情報検知の手段である監視測定用具 又は監視測定用資源とは、製造業中心に書かれていた94年版(4.11)の「検査、測定及び試験装置」が00年版(7.6)ですべての業種業態の製品の合否判定に適用可能な情報検知手段に拡大された表現である。これには94年版の計測器だけでなく、例えば人の五感、カメラや顕微鏡、アンケート調査票やチェックリスト、シミュレーションのソフトウェア等々の製品・サービスの検査その他の合否判定のために用いられる手段が含まれる。
  
② 計測器の管理§38
  計測器は一般に、使用によってその性能や機能を劣化させる。 計測器の機構上必然の自然の性能変化は、計量管理用語では「経年変化」と呼ばれ、これに対して計測器の機能や性能を使用目的に必要な水準に維持するために行なう活動は「計量確認」と呼ばれる。08年版ではこれを「測定機器がその用途のための必要条件を満たすことを確実にするのに必要な一連の操作」と定義し、一般に、校正又は検証、必要な調整又は修理、並びに、その後の再校正、再検証を含み、更に必要なら封印や標識をつけることも含まれると説明している#37p。効果的な品質経営業務のためとして本項に規定される『測定機器』の管理の要件が、計量計測管理の国際標準の用語と方法論に依拠しているとして、規定の意図を読み取る必要がある。
  
③ 製品及びサービス
  規格の対象であり商品としての製品は、15年版では『製品』と『サービス』とに区別して表現されている。すなわち、08年版では『製品』は「業務実行の結果」として定義され、この『製品』が『サービス』『ソフトウェア』『ハードウェア』『素材製品』に分類#13-1pできるとされていた。実務的には、多くの『製品』が複数の製品分類から成る。例えば、自動車は、ハードウェア本体とソフトウェアの取扱説明書、素材製品の冷却液、サービスの販売員による便宜から成るが、本体が支配的要素であるので普通はハードウェア製品とされる#13-2p
  
  15年版では、この製品分類はそのままで、商品としての製品を表す場合に、製品分類のソフトウェア、ハードウェア、素材製品が支配的な場合は『製品』であり#13、製品分類のサービスが支配的な場合は『サービス』と呼ばれる#12こととなった。この結果の用語「製品及びサービス」は、とりわけサービス業にも適用可能な規定表現の汎用化という15年改定の趣旨が反映された表現であり、規格の意図では「製品及びサービス」というよりは「製品・サービス」であると考えられる。また、規格の規定の意図の製品(製品及びサービス)が、組織が顧客向けに意図し、又は、顧客から必要とされた製品(製品及びサービス)であるということも08年版(1.1 注記)から変わっていない(1章 注記1)。規格の規定記述が「製品」から「製品及びサービス」になったことは、規格解釈や規格取り組みに何の影響を与えるものではない。
  
 
(3) 規定要旨
7.1.5.1項(監視測定手段の充足管理)
  組織は、製造及びサービス活動(8.5.1項)の一連の業務の結果の半製品や最終製品サービスの合否判定を行うために必要な情報検知の方法を決め、必要な場所や場面で使用できるようにする手はずを整えなければならない。また、手はずに則って それぞれの情報検知の必要を満たす機能、性能を持つ監視測定手段を用意し(a))、それらの機能、性能発揮できる状態にあるよう管理しなければならない(b))。
 
7.1.5.2項(計測器の管理)
  監視測定手段が計測器であり、正しい測定結果を確実に得るために必要な場合には、計測器はa)~c)を満たして管理しなければならない。
 
  ここに、a)は、国際標準の不確かさの概念と計量確認手法$38に準拠した計測器の機能や性能の経年劣化を管理する方法論である。組織は、経過劣化をする計測器については、国際的計量確認体制の下で必要な校正、検証をしなければならず、結果の記録を維持しなければならない。b)は、必要な校正、検証をした計測器かどうかを見分けることができるようにすることであり、c)は、必要な校正、検証をした計測器の機能や性能を維持するように計測器を取り扱わなければならないということである。
 
  また、不良計測器を用いて製品サービスの合否判定を行ったことが事後に判明した場合は、それに起因する不良品が顧客に引渡され又は使用されないよう適切な処置をとらなければならない。
   
 
(4) 実務の視点の解釈
 例えば主尺目盛1mmで副尺19mmのノギスの分解能は0.05mmであるが、測定精度は±0.2mmであるから、これを用いて公差が±0.1mmの物体の寸法品質を保証できない。指示値が真の値から狂っているマイクロメーターで直径を測定して仕上げた留め金棒では、顧客で対応する穴にはまらないかユルユルで機能を果たさないというようなことが置き得る。計測器の種類や使用頻度によって機能性能の経時変化速度は異なるから、全計測器一律の校正頻度では無駄、又は、計測品質に不安。定期校正又は検証で想定外の狂いが見つかった場合は、狂った計測器により間違った合否判定を行ない、不良品を作り、顧客に引き渡した可能性があるから、大変なこと。狂った計測器を廃棄し又は適切に校正したで済む問題ではない。
     
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型←08年版と全く同じ
 すべての計測器は番号で識別し、現物に識別表示票を貼付する。設備に付属する計測器は、設備管理の一環として管理する。
  
  測定に必要な精度の計測器が間違いなく使用されるよう、使用工程を明確にする。計測器に必要な精度は精度比で管理する。計測器毎に精度比の管理基準を決め、これを維持することを確実にするための校正の方式と間隔を定める。計測器は使用前に異常のないことを確認する。
 
 日常点検で異常が発見され、または、校正時の点検で測定値と真の値が管理基準の精度比を超えた場合は、当該計測器でそれ以前に測定した製品の品質を再評価し、必要な処置をとる。異常な計測器は使用されないよう隔離する。
 
 表面疵限界見本、色調見本を劣化のないように管理し、必要により更新する。検査員の疵検出能力維持のための研修を年次教育訓練計画(7.2項)に織り込んで実施する。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
  ―   
     
   
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
 表現の違いだけであり、規定の趣旨は08年版(7.6項)と全く同じ。電算機ソフトウェアの管理に関する直接的規定がなくなったが、趣旨は監視測定手段全体の管理の要件に含まれて記述されている。
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  顧客の苦情の多くが検査での不良陥見落としや不良判定ミスとみなされる組織では特に、検査員教育、検査方法や記録のとりかた等の改善に努められ、常識として試験機や測定機器の定期校正が実施されている。15年版移行を機に、これらの情報検知手段の現行の管理の手順を、検査の適切さに影響を及ぼす情報検知手段を広く規格の規定の趣旨に沿って見直し、影響の大きさに応じて強化又は緩和して整理するのがよい。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 校正の必要性が明確になった。自社校正の記録でよい*Q17
② CD版より08年版(7.6)に近づいてきている*Q5

(2) 08年版から変わっているとする解釈

 
   
     
7. 予想される極端な審査要求

    
     

H27.5.26(修5.28)  H27.12.15(2015年版)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所