ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
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ISO9001: 2015  改定解説:     7.2   力 量
- 変更点と移行対応 (28) -
<31e-01-28>
 
 
0.1 概要   こちら

   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  (英語解釈 抜粋)
 
職務能力 ⇔力量$67;    実績 ⇔パフォーマンス$31;     実績評価 ⇔パフォーマンス評価$31;
   専門性 ⇔技能$38; 品質経営(活動) ⇔品質マネジメント$19-0;    品質経営体制 ⇔品質マネジメントシステム$19-1-1;
   履行 ⇔実施$4

   
   
1. 規定条文 (JISQ9001:2015)
7.2 力 量
  7.2 力量
組織は、次の事項を行わなければならない。
 
a) 品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に影響を与える業務をその管理下で行う人(又は人々)に必要な力量を明確にする。
b) 適切な教育、訓練又は経験に基づいて、それらの人々が力量を備えていることを確実にする。
c) 該当する場合には、必ず、必要な力量を身に付けるための処置をとり、とった処置の有効性を評価する。
d) 力量の証拠として、適切な文書化した情報を保持する。
 
  注記  適用される処置には、例えば、現在雇用している人々に対する、教育訓練の提供、指導の実施、配置転換の実施などがあり、また、力量を備えた人々の雇用、そうした人々との契約締結などもあり得る。
[08年版 関連規定]
6.2.1 一般
製品要求事項への適合に影響がある仕事に従事する要員は、適切な教育、訓練、技能及び経験を判断の根拠として力量がなければならない。
6.2.2 力量、教育・訓練及び認識
組織は、次の事項を実施しなければならない。
a) 製品要求事項への適合に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量を明確にする。; b) 該当する場合には(必要な力量が不足している場合には)、その必要な力量に到達することができるように教育・訓練を行うか、又は他の処置をとる。;
c) 教育・訓練又は他の処置の有効性を評価する。; e) 教育、訓練、技能及び経験について該当する記録を維持する。
   
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
 組織の存続発展に必要と決めたな顧客満足の状態の実現には、要員がそのための業務を決められた通りに実行し決められた通りの結果を出すことが必要であり、組織はそのような職務能力を持った要員にそれぞれの業務を委ねることが必要である。本項では、品質経営活動の効果的な実行を支えるのに必要な基盤のひとつとして、必要な職務能力を持った要員の充足管理の必要とその要件を規定している。 注記には、不足する職務能力の充足方法が例示されている。
   
   
(2) 論理及び用語
① 力 量§5
  JIS和訳『力量』の英文は“competence”であり、これは「何かを満足に、又は必要な程度に行う能力」の意味であり$67、一般事業用語では「ある仕事を満足に行う能力」のこと(118)である。規格の定義では「知識と専門性を活用して所定の結果を出す能力」である#3。すなわち、規格では、ある業務を決められた通りに行い決められた狙いの結果を確実に出すことのできる能力としての業務能力のことであり、業務遂行力のことである。この業務とは各要員に責任及び権限 (5.3項)として委ねられた業務であり、業務を行うことはその職務を果たすことであるから、規格の品質経営の文脈では「職務能力」のことである。
 
  日本語の「力量」は「人の能力の大きさの度合い」又は「人の能力の大きいこと」を意味(113)し、「力量がある」は優秀であることを意味するが、規格の意図の「職務能力がある」とは手際や出来ばえの良い、悪いとは無関係で、与えられた業務結果を確実に出すことができるかどうかの問題である。『力量』とは誤訳に近い、不適切な和訳日本語である。
 
② 職務能力の意義$15.1
  『職務能力』は、1970~1980年代の日本製品の優れた品質の背景に第一線要員の能力とやる気があることが認識されたことに端を発し、『認識』と共に紆余曲折を経つつ規格で確立した概念である§15.2。はじめは品質不良防止が狙いであり、教育訓練の必要という形で規定化されていたが、15年版で与えられた職務を確実に果たせる職務能力を持った要員にすべての業務に配置することの必要が明確な規定表現となった。「職務能力のある要員」とは、実務的には上位者がいちいち指図し、行動を監視せずとも、身につけた職務知識と専門性を発揮して決められた手順に従って確実に決められた業務結果を出すことのできる要員のことである。
 
  規格の品質経営では、関連するすべての業務が所定の通りに行われ、所定の結果が出た総合的結果として、狙いの顧客満足の状態が実現する。影響の大きさは同じでないにしろ、どのひとつの業務も所定の結果を出さなければ、結果的に組織の狙いの顧客満足の状態の実現に支障を来すことになる。従って、どの業務にもそれぞれの業務に対する職務能力がある要員をあてることが必要である。
 
③ 品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性§11.3
  JIS和訳「品質マネジメントシステム」「パフォーマンス」は、その英文からそれぞれ「品質経営体制$19-1-1」「実績$31」である。それに則って品質経営活動が行われる品質経営体制とは、品質経営活動の効果的な実行のために整えられた業務実行の手はずの集まりである。また、規格の「実績」は、狙いの業務結果がでているかどうかの観点の実績であり、品質目標の達成度のことである。
 
  規格の表現では、品質経営体制に則って品質経営活動を行うことは「品質経営体制の履行」であり、品質経営活動の実績は「品質経営体制の実績」である。すなわち、JIS和訳「品質マネジメントシステムのパフォーマンス」は、品質経営活動の実績であり、狙いの顧客満足の状態がどの程度実現したかである。「有効性」は「活動が計画通りに実行されて、計画通りの結果が得られた程度」と定義されるから#4、JIS和訳「品質マネジメントシステムの有効性」は、実現した顧客満足の状態の程度に鑑みて、品質経営の各業務がどの程度決められた通りに実行されたかである。
 
  しかし、本項規定では「品質経営に関連する業務を行う人々」という意味で「品質経営体制の実績及び有効性に影響を及ぼす業務」という表現が用いられているに過ぎない。これは、資源としての要員の配置の必要を規定する7.1.2項(人々)では「品質経営体制の効果的な履行及びその業務の実行と管理のために必要な人々」と表現されている。これら表現の違いに絶対的な意味があるようには思えず、規格における他にも多数存在する表現の不統一の問題と考えてよい。
 
     
(3) 規定要旨
  組織は、品質経営の業務が必要な狙いの業務結果を確実に出すように、必要な職務能力を持った要員を組織内に保持するための、a)~d)の手はずを整え、手はずに則って、すべての業務にそれに必要な職務能力を持った要員を確実に割り当てなければならない。必要な職務能力がどのようなものか、或いは、要員がどのような職務能力を持つかは、要員の学校教育歴、職業訓練歴及び組織内外での職歴に基づいて評価し、決定しなければならない。
 
  ここに、a)は、個々の業務に必要な職務能力がどのようなものかを決めること、b)は、各要員がどのような業務の職務能力を持っているかを明確にすること、c)は、組織に不足する職務能力を充足する方法、d)は、要員の持つ職務能力の評価に関係する記録の維持である。
 
 
(4) 実務の視点の解釈
 例えば、立ちん坊の日雇い労働者による土木工事では親方が仕事を細かく指示し、指図し、行動と出来ばえを監視する必要がある。例えば、単純な書庫整理の一時的業務はアルバイトの高校生に委ねる。普通の加工作業には普通科高校新卒者を、電算機システム部門のプログラマーには専門学校情報処理科履修者、経理事務には簿記専門学校卒者を当てて、導入教育と中短期のOJT訓練をした後に職場に配置する。電子製品の開発部門には電子工学専攻の学卒者、簡単な機械設計業務には工業高校新卒者を採用し、導入教育とその後の一定期間の指導者付き実務研修を経て開発、設計チームの一員となる。中途採用時に経験者歓迎を唱えるのは、未経験者より採用後の教育訓練期間が短くて済むからである。ISO規格認証取得のための体制整備のための専門能力は一時的な必要であるから、通常はコンサルタントを雇う。新設の電算機システムの運用と管理を専門企業にアウトソースするのは、組織内でその職務能力を醸成、保持することが不経済であるからである。
     
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型 ←08年版6.2項の記述を本項と7.3項に分割すればよい
 すべての業務は、その業務を手はずに則って実行し、必要な業務結果を確実に出す能力である、当該業務に関する職務能力を有する者に割り当てる。管理者の職務能力は人事考課と役職者教育により、必要で十分であることを確実にする。
 
  業務の種類、性格及び専門性の水準で決められた学歴と履修科目の必要条件を満たして要員に新たな業務を担当させる場合には、新卒、中途採用又は組織内異動の区分毎に、要員の学歴、入社前職歴、社内の業務経験、履修した特定の教育訓練、保持する特別な資格や免許類を判断の基準として必要な方式、期間の教育訓練を受けさせる。特殊な業務については、職務能力を有することを社内資格付与によって明確にする。
 
  部門長は、担当業務を適当な職務区分に分割し、各要員が職務能力を持つ職務区分を明確にする。これは『職務能力表』に記録し、要員の職務能力に変更があった場合にはこれを更新する。 部門長は、部門内に必要な職務能力を持つ必要な人数の要員を維持するよう、要員補充、異動、及び、教育訓練を計画的に行なう。
   
  事業の拡大、設備の拡充などで新たな職務能力と要員が必要となり、又は、特定の業務の出来栄えの改善が必要と判断されて対象要員に必要な専門的知識や技能に関する教育訓練を行った場合には、当該教育訓練の担当者がそれにより各要員が狙いの職務能力を習得したこと確認する。特殊な専門性や設備の必要な業務、或いは、一過性の業務については外部サービスを購入することがある(7.4項)。
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
① 力量→ 職務能力$67 (誤訳に近い、不適切な和訳日本語)     
     
 
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
 共通テキスト化のために資源条項(7.1項)から独立した条項となり、08年版6.2.1項と6.2.2項とが単一の条項7.2項となったが、規定の文章もよく似ており、規定の趣旨は08年版と全く同じ。“competence”の定義の変更により、「力量」ではなく「職務能力」であることがより明確になった。
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
 日本の普通の企業では、素性の不明な者を雇用していきなり現場に放り込んで作業をさせるようなことはない。要員投入の必要があれば、その業務に応じた学歴と職歴を基本条件として選考し、法令で定められるものを含み雇用形態に応じた程度の導入教育をし、持っていると考えられる職務能力に応じて不足を補う教育訓練を行なった後に一人前として、しかし指導者を明確にして業務に当たらせる。これは、新しい仕事に就く要員が怪我をせず事故を起こさずに,必要な業務結果を確実に出すことを期待しているからである。15年版移行を機にこれらの処置や手順がその狙いに対して必要で十分かどうかを規格の規定の意図に照らして見直してみるのもよい。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 組織が個人の力量を確保するための事項を要求している。*Q39
(2) 08年版から変わっているとする解釈
①『力量』は「業務達成能力」のこと。各人の技能と能力を明らかにすることが求められている。「組織の管理下で業務を行なう人」は雇用関係に関係なく対象とすべき範囲は広い。*Q17
 
   
     
7. 予想される極端な審査要求
    

H27.6.3  H27.12.14(2015年版)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所