ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
29 ISO9001: 2015 解説:    7.3   認 識
- 変更点と移行対応 (22) -
<31e-01-29>
 
 
0.1 概要   こちら

   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  (英語解釈 抜粋)
 
業務 ⇔プロセス$2;  業務実行 ⇔プロセスの運用$8-1;   顧客のニーズと期待 ⇔顧客要求事項$1-2-2;
 品質経営 ⇔品質マネジメント$19-0;  職務能力 ⇔力量$67;
   
   
1. 規定条文     (JISQ9001:2015)
7.3 認 識
  組織の管理下で働く人々は,次の事項に関して認識をもたなければならない。
a) 品質方針
b) 関連する品質目標
c) 品質パフォーマンスの向上によって得られる便益を含む品質マネジメントシステムの有効性に対する自らの貢献
d) 品質マネジメントシステム要求事項に適合しないことの意味
 
[08年版 関連規定]
6.2.2 力量、教育・訓練及び認識
  組織は、次の事項を実施しなければならない。 d) 組織の要員が、自らの活動のもつ意味及び重要性を認識し、品質目標の達成に向けて自らがどのように貢献できるかを認識することを確実にする。  
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
 組織は、存続発展に必要と決めた狙い顧客満足の状態を確実に実現させるためには、要員がその実現の必要性の認識をトップマネジメントと共有し、その実現が自分の委ねられた業務で決められた結果を確実に出すかどうかに関係しているとの認識の下に、決められた業務 結果を確実に出すように、意欲的で責任ある業務取り組みを行なう状況を組織内に創り出し、維持することが必要である。
   
  本項では、品質経営活動の効果的な実行を支えるのに必要な基盤のひとつとして、真に効果的な業務実行に繋がる要員の職務に対する認識の確立の必要を規定している。
 
(2) 論理及び用語
① 認識$16
  「認識」の英文は“awareness”であり、気がついている、受けとめている(102)、また、何かが存在し、重要であることを知っている(101)という意味である。「認識」は規定には存在しなかった94年版でも用語と概念と意義が指針規格(138)で明確にされており、「適切な業務遂行の利益と不十分な業務結果が他の人々や顧客満足、操業コスト、組織の業績に与える悪影響を認識させる」ことであると説明されていた。00年版では人的資源の要素として「力量、教育・訓練及び認識」の条項(6.2.2)に規定化され、15年版では独立した条項となった。
 
  「認識」の概念、すなわち、何を認識することかの表現は各版で異なるが、いずれの版でも規格の意図は要員が委ねられた業務、つまり、要員が果さなければならない職務、或いは、責任権限(5.3項)に対する認識のことである。規格の意図の要員の職務の認識とは、要員が委ねられた業務に何を期待されているのか、また、それら業務が組織の全体の活動と組織の業績、つまり、狙いの顧客満足の実現をどのように支えているのかを理解し、以て自らが組織に欠くことのできない、重要な業務を委ねられていると感得することである。
 
② 認識の意義$16.1.2
  94年版指針規格(138)では、要員の「やる気(motivation)」が「認識」から生まれるという規格の考え方を明確にし、00年版では、この「やる気」を組織の目標達成への要員の参画意識として表現し、その意義を「人々を組織の目標達成に参画させることが、人々の能力を全面的に引き出して組織の利益のために資さしめることを可能とする」と説明(131)している。15年版(付属書B: B.4項)では「効果的、効率的に経営を行なうには、すべての階層のすべての人々を巻き込むことが必要」としている。
 
  要員が組織の一員としての意識を高め、職務を認識することを通じて要員に「やる気」が育まれ、要員が組織の狙いの顧客満足の状態の実現を自分の問題と捉えて職務を遂行する状況、つまり、要員が組織の経営目標の達成に参画する状況が生まれることが期待される。
 
  組織がその存続発展に必要な狙いの顧客満足の状態を確実に実現させるためには、関連する各業務のそれぞれが定められた通りに実行され、定められた通りの結果が確実に出るように実行されなければならない。これには、すべての要員が定められた手はずに従って業務を行うことのできるそれぞれの職務能力を持っているだけでは十分ではなく、組織の狙いの顧客満足の状態の確実な実現に参画意識を持って、手はずの意図を理解し組織が真に必要とする結果を出すように意欲的で責任ある業務取り組みを行なうことが必要である。
 
  この「認識」の規定は1970~1980年代の日本製品の優れた品質の背景に第一線要員の能力とやる気を育む日本的な人間尊重の経営$16.2があると洞察されたことに端を発し、規格では職務能力(7.2項)の規定と共に曲折を経て15年版で最終的に確立した概念である$16.3
 
③ やる気の醸成の方法論$16.1.3
  要員に職務を認識させ、やる気を育み、組織の狙いの顧客満足の状態の実現に参画させるために組織がとる必要がある施策に関しては、各版の指針規格で規格の考え方が説明されている。すなわち、組織がどの階層の要員も組織にとって不可欠な存在であることを認識し(131)、要員を個人として尊重すること (B.4項)を基本として、要員に組織の経営戦略、経営方針と目標、事業構造の変化と発展、改善活動の実行、創造と変革の必要性、組織の社会的重要性を理解させること(132)、或いは、人々が知識と能力を共有できる制度、適切な表彰又は報酬体系、専門能力評価制度、人々の満足度やニーズと期待の評価、指導や実技指導(152)を行なうこと、或いは、要員の能力を正しく評価し、相応の権限を委譲し、専門性と知識を育ませるよう業務を委ねること(B.4項)である。
 
  すなわち、自分が組織の一員であり、組織の存続発展に必要な顧客満足の状態の実現という観点で自分が組織から期待され、そのための業務の効果的実行に関して組織から気遣われているという要員の受け止め方を形成することに繋がる心理的な作業環境(7.1.4項)を組織が整えることが必要であり、要員が参画の機会を得ることが出来、また、それを通じて潜在能力を開花させることが出来るような業務の委ね方をしなければならない。
    
(3) 規定要旨
  組織は、要員がその職務に対する認識を育むよう、a)~d)を必要に応じて理解させる手はずを整え、手はずに則ってそれらを理解させ、それらの理解を通じて、要員が職務に対する認識を確立することを確実にしなければならない。 a),b)は狙いの顧客満足の状態がどのようなものか、c)は要員の業務実行が狙いの顧客満足の状態の実現にどう関係しているか、d)は決められた通りに業務を行なうことの必要性、をそれぞれ意味する。
 
(4) 実務の視点の解釈
 例えば、必要な顧客満足の状態の狙いを組織と共有する要員が製品の食品に異物を混入させることはあり得ず、万一気付いたなら検査員でなくともその出荷を防ぐ行動をとる。例えば、受注又は受け入れ作業の真の目的を理解する要員ならは、注文書の製品の寸法がいつもと違っているようだとか、受け入れた加工用素材の色調がいつもと違っているとかに気付き、或いは、職務能力と認識のある原料装入要員なら悪意で大量の犬肉が混入された牛肉に気付かずそのままハンバーグ製造機に装入することはなく、顧客や組織の損失を防止できる。例えば、クレームを個人の責任として原因を追及しても自分に不都合なことは言わないし、効果的な再発防止対策は生まれない。
     
 
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型←08年版と全く同じ
 すべての要員が自らの業務実行が狙いの顧客満足の実現にどのように関係し重要であるかを認識し、それを自分の問題と捉え、意欲と職責意識を持って業務に取り組む状況を組織内に確立し維持することに努める。
 
  このために、要員の意欲に働きかける心理的作業環境(7.1.4項)を整え、要員には会社動向を含む業務に関連する情報を伝達し(5.3項)、要員が必要に応じて入手できるよう文書と記録の管理体制を整え(7.5項)、要員が持てる能力を発揮できるように業務を与え(7.2項)、要員の想いや意見を吸上げて必要な対応をとる。
 
  部門長は、重要な局面において必要で効果的と判断される場合には、特定の狙いの意識づけ教育を行なう。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
 ―
   
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
 共通テキスト化により資源条項(7.1項)から独立した条項となり、08年版6.2.2 d)項の「認識」が単独条項となり、認識の対象の記述が変更されたが、規定の趣旨は08年版と全く同じ。規定が教育訓練と切り離されたことにより、認識の概念が適切に整理された。
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
 奴隷を鞭打って働かせるより、給料を払って働き易い環境を整える方が費用対効果の点でも組織に得策であることは常識である。近年新聞沙汰になり組織に大きな損害をもたらした悪意が絡む不祥事はほぼすべて、外注の要員や派遣社員、アルバイト又は不遇退職者など組織の業績を自分のものと考えにくい立場の人々である。つべこべ言わずに言われたことをやればよいと、何も教えずないで、あれこれ指図をして仕事をやらせているような組織は今どき存在しない。どのトップマネジメントトップも要員の組織への帰属意識と業務意欲の醸成を図るためにとってきた施策や考え方があるから、これを整理すればよい。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 共通テキストにないb)項の追加は、自身が目標設定にも配慮するというQMS固有の要求*Q5
(2) 08年版から変わっているとする解釈
① 品質マネジメントシステムの取り決めを守らない時に起こるリスクの重大性についての意識づけが追加された*Q17
② 独立箇条となり、強化された。内容はマネジメントシステムに関わることに特化している*Q33
 
   
     
7. 予想される極端な審査要求

    
     
H27.6.28   H27.12.14(2015年版)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所