ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
30 ISO9001: 2015 解説    7.4   コミュニケーション
- 変更点と移行対応 (23) -
<31e-01-30>
 
 
0.1 概要   こちら

   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  (英語解釈 抜粋)
 
経営代行者 ⇔管理責任者$19-4;  情報交換、情報伝達 ⇔コミュニケーション(6) ; 品質経営 ⇔品質マネジメント$19-0;
      
   
1. 規定条文   (JIS Q 9001:2015)
7.4 コミュニケーション
  組織は,次の事項を含む,品質マネジメントシステムに関連する内部及び外部のコミュニケーションを決定しなければならない。
 
a) コミュニケーションの内容(何を伝達するか。)
b) コミュニケーションの実施時期
c) コミュニケーションの対象者
d) コミュニケーションの方法
e) コミュニケーションを行う人 
 
[08年版 関連規定]
5.5.3 内部コミュニケーション
  トップマネジメントは、組織内にコミュニケーションのための適切なプロセスが確立されることを確実にしなければならない。また、品質マネジメントシステムの有効性に関しての情報交換が行われることを確実にしなければならない。
 
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
  多数の人々が協働して共通の狙いの顧客満足の状態の実現を図る品質経営活動では、関係する人々の間で業務実行と結果に関する必要な情報が、相互に確実に伝達されることが不可欠である。
 
  本項は、品質経営活動の効果的な実行を支えるのに必要な基盤のひとつとして、組織内、及び、関連する外部との間の業務実行と結果に関する情報伝達、交換の手はずの確立の必要を規定し、手はずが効果的であるための要件を、すべての情報伝達、交換の活動にあてはまる共通的表現で規定している。なお、規格の他の関連条項では、特定の情報伝達、交換の必要とその要件を、本項規定を基礎にしてそれぞれの情報伝達、交換に特有の表現で規定している。
   
(2) 論理及び用語
① コミュニケーション§17
  『コミュニケーション』は英文では“communication”であり、情報の交換、或いは、それによって考えや意思を共有することを意味する言葉$21である。TC176指針(6)では「情報交換」のことと説明されているが、規格では情報交換、情報伝達の両方の意味で使われている。規格では情報伝達、情報交換することには“communicate”が使われており、JISは「周知」「伝達」と和訳している。
 
  規格は、効果的な品質経営の規範としてのPDCAサイクルに則った体系的で組織的な活動を意味するプロセスアプローチの考え方で書かれているが、規格における情報交換は、プロセスアプローチにおける「業務の実行$8-1及び監視を支えるのに必要な情報を利用できることを確実にしなければならない」(08年版 4.1 d))の「情報の利用」に相当する。これは15年版では、業務実行を支える「文書化された情報」と業務が決められた通りに行なわれたことを表す「文書化された情報」として表されている(4.4項)。
 
  なお、共通テキスト概念説明文書(16)では、情報伝達の方法、方式には口頭/文書、一方向/双方向、内部/内外間があり得るとされている(7.4)。
 
② 情報交換の意義§17-1
  組織の存続発展に必要な顧客満足の状態の狙いを決めてその確実な実現を図る品質経営活動には、組織の内外の様々な人々が直接間接に係わっており、組織内では多くの要員が協働し、また、顧客や供給者など外部の組織と連携して様々な業務を行なっている。品質経営活動が必要な顧客満足を確実に実現する真に効果的なものであるためには、人々の業務は相互に関連づけられて体系的で組織的に行なわれなければならず、そのためには関係する人々の間で業務実行と実行結果に関する情報交換が、時宜を得て適切な方法、方式で行なわれなければならない。
 
  また、人々が職務を認識(7.3項)し、やる気や参画意識を育むには、人々を知らされた状態に置くことが不可欠であるという点から、当該要員の業務実行に直接関係しない情報であっても、品質経営に係わる情報が必要な程度に伝達され、入手できることが大切である。
 
③ 規格の規定の情報交換
  08年版では狙いの顧客満足の状態の確実な実現を管理するための情報交換を「内部コミュニケーション」と呼び (5.5.3)、業務が決められた通りに実行され決められた結果が出ているかどうかという業務実績に関する情報交換が必要であると規定していた。加えて、この一環としての経営代行者とトップマネジメント間の情報交換(5.5.2)と、設計開発業務における関係者間の情報交換の必要 (7.3.1)が規定され、実質的に情報交換の場である「マネジメントレビュー」(5.6)の必要が規定されていた。
 
  また、トップマネジメントのリーダーシップとしての、顧客満足追求の重要性(5.1 a))、品質方針 (5.3 d))、責任権限(5.5.1)の組織内で周知徹底を図るための情報伝達の必要が規定されている。さらに、外部との情報交換として、製品の品質又は顧客満足に係わる顧客と接点での業務を「顧客とのコミュニケーション」(7.2.3)とし、また、供給者への購買情報の伝達(7.4.3)の必要を規定している。
 
  15年版では共通テキスト化により、組織内と外部との情報交換を単一条項で取り扱うISO14001の伝統的な記述方式となり、かつ、情報交換の普遍的な要素を羅列する抽象的表現の要件規定となった。この結果、08年版の個別の情報伝達の規定は15年版に継承されているが、「内部コミュニケーション」に規定されていた情報伝達の規定がなくなった。
 
  
(3) 規定要旨
  組織は、狙いの顧客満足の状態の実現を目指して、多様な業務を相互に関連づけ、外部組織とも連携し、多くの要員の協働によって品質経営を体系的で組織的に行なうために必要な情報連絡、交換の活動を特定し、そのためのa)~d)を含む手はずを整え、手はずに則って、必要な組織内部、及び、組織と外部組織との情報連絡、交換の活動を行わなければならない。
 
 
(4) 実務の視点の解釈
 実務の組織内情報交換、情報伝達は、指示、連絡、報告、説明、指導、教育訓練などの形をとる。例えば、生産計画情報は当日生産する製品の一覧であり、これを前日に生産指示書に明確にして現場責任者に配付という形で伝達され、それが生産指示となる。生産実績情報は生産した製品と合否判定結果の一覧であり、検査報告書に明確にして生産管理部門に提出という形で伝達し、生産報告とする。部門長のトップマネジメントへの毎月の品質実績報告は、検査不良率、苦情受付件数などの品質情報を定例書式で表して月末の業務検討会に提出するという形の情報伝達により行なわれる。新設備運転情報は、メーカーによる取扱説明書の説明と実地運転訓練という形で操業開始前に運転要員に伝達される。
     
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型←08年版(5.5.3)の記述に外部との情報交換の実態を追加記述。
① 業務実行の情報
  業務実行の指示、実績の報告は文書により行う。業務規範及び手順は文書化し、関係部門に配付する(7.5項)。 業務実行で生じ又は発見した異常に関する情報は抜けなく文書化(10.2項)し、必要により関係部門に伝達する。
 
② 業務実績管理の情報
  トップマネジメントは、品質経営の業績管理のために主要業務(6.2項)の実績と問題点の情報、及び、クレーム、顧客の動向、顧客の指摘や要望に関する情報などを評価する月例業務検討会を主宰する。同検討会で吟味すべき情報はトップマネジメントが決め、同検討会議事録書式に明らかにする。
 
  部門長は、月例業務検討会の情報、及び、部門内業務実績と問題点の情報を部門内で共有するために必要により、業務日報、始業前ミーティング、月例会議などの方法を用いる。
 
③ 外部との情報連絡
  官庁及び顧客との情報交換に関しては顧客の指定の内容、伝達方法、文書書式を優先する。供給者との情報交換には文書を用いる。遵守又は参照を求める業務手順など情報伝達を組織内文書の配付により行なうこともある。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
① コミュニケーション → 情報交換、情報伝達(6) (規格では経営資源が「資源と情報」と表わされており、業務上の情報の交換、伝達であり、人と人との心を通わすための「コミュニケーション」ではない)
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
 15年版では共通テキスト化により組織内と外部との情報交換を単一条項で取り扱うISO14001の伝統的な記述方式となる一方で、08年版の個別の情報伝達の規定はすべて15年版に継承されているから、規格の意図には変化が認められない。しかし、新「コミュニケーション」条項は情報交換の普遍的な要素を羅列する抽象的規定となり、08年版の「内部コミュニケーション」の規定が継承されていない。この結果、個別の情報伝達 規定以外の情報交換の対象が「品質マネジメントシステムに関連する情報交換」と無限に拡がって、組織が自分で対象を考えなければならなくなった一方で、08年版の業務実績管理に関する情報交換という世界標準の重要な情報伝達の必要を組織が自ら考え出さなければならなくなった。
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
 品質マニュアル記述に外部との情報交換の実態を追加記述するだけでよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
 トップマネジメントの想いの業績、業務の結果が確実に出るという観点で、及び、出るように管理するという観点で、業務の指示と結果の報告が適切な方法になっているかを、トップマネジメントの気になる業務について見直しすればよい。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 意思の伝達のこと*Q39
(2) 08年版から変わっているとする解釈
① 手順に従う必要性に関する従業員と管理者のコミュニケーション、従業員から管理者に向かってのコミュニケーションの効果的なプロセスを確立すること。外部コミュニケーションが追加された。供給者との関係を良好に保つためのコミュニケーション。原材料や部品メーカーとは公式行事として*Q17
② プロセスを明らかにするための資源としてのコミュニケーション。インフラやシステム、ツールという部分も含んでいる*Q23
③ 外部コミュニケーションも対象になり、利害関係者とのコミュニケーションが対象となる。他の箇条でも具体的に要求されている*Q38
 
   
     
7. 予想される極端な審査要求
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H26.7.29    H27.12.17(2015年版)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所