ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
31 ISO9001: 2015 改定解説:       7.5.1   文書化した情報  一般
- 変更点と移行対応 (24) -
<31e-01-31>
 
 
0.1 概要   こちら

   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  (英語解釈 抜粋)
 
品質経営 ⇔品質マネジメン$19-0;   品質経営体制 ⇔品質マネジメントシステム$19-1-1;
   
   
1. 規定条文    (JIS Q 9001: 2015)
7.5 文書化した情報
7.5.1  
一般
  組織の品質マネジメントシステムは,次の事項を含まなければならない。
 
a) この国際規格が要求する文書化した情報
b) 品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した,文書化した情報
 
  注記  品質マネジメントシステムのための文書化した情報の程度は,次のような理由によって,
         それぞれの組織で異なる場合がある。
    a) 組織の規模,並びに,活動,プロセス,製品及びサービスの種類
   b) プロセス及びその相互作用の複雑さ
   c) 人々の力量
 
[08年版 関連規定]
4.2 文書化に関する要求事項
4.2.1 一般

  品質マネジメントシステムの文書には、次の事項を含めなければならない。a) 文書化した、品質方針及び品質目標の表明; b) 品質マニュアル; c) この規格が要求する“文書化された手順”及び記録; d) 組織内のプロセスの効果的な計画、運用及び管理を確実に実施するために、組織が必要と決定した記録を含む文書
  注記1:この規格で“文書化された手順”という用語を使う場合には、その手順が確立され、文書化され、実施され、維持されていることを意味する。一つの文書で、一つ又はそれ以上の手順に対する要求事項を取り扱ってもよい。“文書化された手順”の要求事項は、複数の文書で対応してもよい。; 注記2:品質マネジメントシステムの文書化の程度は、次の理由から組織によって異なることがある。: a) 組織の規模及び活動の種類; b) プロセス及びそれらの相互関係の複雑さ; c) 要員の力量; 注記3:文書の様式及び媒体の種類は、どのようなものでもよい。組織は、製品要求事項への適合を達成するために必要な作業環境を明確にし、運営管理しなければならない。
   
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
  品質経営活動は多数の人々による様々な業務の集まりであり、狙いの顧客満足の状態を確実に実現する効果的な品質経営活動であるためには、各業務を体系的で組織的に実行することが必要であり、これには人の記憶と口頭連絡に代えて業務実行に文書を用いることが効果的である。
 
  本項は、品質経営活動の効果的な実行を支えるのに必要な基盤のひとつとして、体系的で組織的な業務実行を可能にするのに必須の決まりと意思疎通情報の文書化の手はずの確立の必要を規定し、必要な文書化の範囲を概念的に規定している。なお、規格の他の関連条項では、すべての組織に必要な個々の文書化対象を具体的に規定している。また、注記には、文書化の範囲に関する規格の意図が説明されている。
   
 
(2) 論理及び用語
① 文書化した情報§7
  『文書化した情報』とは「組織が管理し維持する必要がある情報及びそれを含む媒体」と定義#6されるから、「情報及びそれを保持する媒体」と定義#6pされている08年版の『文書』そのものである。共通テキス解説FAQ (18)では、近年はデータや文書と記録が電子媒体に保持されていることが多いので用語「文書化した情報」を造語したと説明している。すなわち、「文書化した情報」は08年版の「文書」の共通テキス化に伴う言い換えに過ぎない。
 
  規格の『文書』とは、何かの物理的手段で保持されて、業務に使用する情報のことである。最も普通の文書は情報が紙の上に文章を主体に図表や絵や写真で表現されたものであるが、規格では紙の上でなく電子計算機の画面や投射スクリーン、キャンバス、看板、シールなどに表示された場合も文書である。製品見本や合否限界見本のように、ある物の情報が現物そのもので表される場合はその現物も文書である。電子計算機内ハードディスク、フロッピーディスク、CD、USBメモリも情報を保持している場合は文書である#6p-1。簡単に言えば、業務の情報が人間の頭脳以外に保持されている状態であれば、文書である。
 
② 文書化の意義§7.1
  多数の要員が協働する組織において、業務上の決まりや実績のすべてが人々の記憶としてだけ存在、維持され、指示、連絡や報告のすべてが口答で行なわれるだけの状態であれば、言い間違い、聞き間違い、見間違い、記憶違い、記憶の薄れによる誤認や誤解は避けられず、誤作業が生じ、誤った判断を生むことが日常茶飯事となる。
 
  文書化は人の記憶や口答伝達がもたらす誤りとそれによる業務実行の不首尾を防ぎ、組織の狙いの結果を確実に実現させる体系的で組織的業務実行の基礎である。 決まりを文書化し、文書に基づいて人々を教育し、文書によって作業を指示し、文書に表現された定めに従って業務を行なうことによって、誰でもいつでも、違った相手とも協働して、同じ所定の結果を出すことができる。
 
  今日ではどの組織の実務でも様々な文書が用いられている。多数の要員が協働する組織では、また、組織の外部との間の業務では、文書を用いることの大切さが程度の差こそあれ普通に認識されている。規格の「手順の文書化」の概念は、世界の品質優良組織に共通の文書化という経営管理手法とその重要性をISO9001執筆者が洞察した結果に基づき初版で導入された。狙いの顧客満足の状態を確実に実現させる品質経営 活動の在り方を規定する規格においては、体系的で組織的な業務実行と共にそれを支えるために不可欠な文書化は、効果的な品質経営 活動の基本要件と見做されている。
 
③ 文書体系§7.3
  94年版(4.2.1)では、作成し使用する種々の文書を「文書体系」として整理するよう規定し、指針規格(133)おいて、品質マニュアルを頂点とし、文書化された手順を第二階層、作業手順書、書式、報告書などその他の品質文書を第三階層とする三階層構造の文書体系を典型例として示していた。00年版以降は規定では文書体系に言及しないものの、上記指針規格を継承したISO/TR10013:2001 (品質マネジメントシステムの文書類に関する指針)(137)の同じ三階層構造の文書体系と文書類型に則った、品質マニュアル(4.2.2)、文書化された手順(4.2,1)、作業手順書(7.5.1)の作成、使用の規定があり、加えて 「(4.2.4参照)」として19種類の記録文書の必要を規定している。
 
  15年版ではすべての文書は「文書化した情報」と表現され、特定の文書類型、文書名も現れないが、上記の指針規格ISO/TR10013:2001が規格書巻末の参考図書一覧表に挙げられているから、15年版もこの指針規格の三階層構造の文書体系と文書類型に拠っていることになる。この上で、「文書化した情報」の定義の注記#6-2は、文書化した情報には、①関連する業務を含む経営管理体制、②組織の業務実行のために作成された情報(文書類)、③達成された結果の証拠(記録)を表すものがあり得ると説明している。①は品質マニュアルのことであるから、これを頂点として第二、第三階層の文書類に記録が加わった文書体系も継承されていると考えることができる。
 
④ 文書と記録§7.2
  実務においては、文書は業務実行の指示或いは業務実行の方法や基準を示す指示書、手順書のような文書と業務結果或いは物事の実態を表す業務記録、報告書などの記録とも呼ばれる文書とに分けて認識され、使用されている。08年版では「記録」は「文書」の一部であり、「達成した結果を記述した、又は、実施した活動の証拠を提供する文書」である#8p。これ以外の『文書』すなわち狭義の「文書」については、それらを表す総称も、定義もない。
 
  15年版ではすべての文書(広義)が「文書化した情報」と表現されるが、これは共通テキスト採用による表現上の問題であり (11)、業務実行に係わる「文書(狭義)」と業務結果に係わる「記録」という文書類型の概念がなくなった訳ではない。TC176(12)は、15年版では08年版の「文書化された手順」と「記録」とが「文書化した情報を維持する」「文書化した情報を保持する」と言う規定表現によって区別したと説明している。
   
⑤ 品質マニュアル§7.4
  『品質マニュアル』は「組織の品質経営体制を規定する文書」と定義される文書#14p-1であり、品質経営をどのように行うのか、その枠組みである品質経営の業務体系はどのようなものであるかを表した文書のことである。文書の性格では、業務の規範を定める手順書とは違って物事の大要をまとめて見やすくした「要覧」である。ISO9001の前身の品質保証規格の時代に、組織が規格を遵守していることを説明した文書として、顧客から購買条件として提出を求められていた文書に端を発するものと考えられる。
 
    
(3) 規定要旨
  組織は、効果的な品質経営のために、a), b)の情報を文書化しなければならない。ここに、a)は、ISO9001規格がすべての業種業態、規模の組織に文書化が必要として規定している情報のことであり、b)は、品質経営の業務を効果的に行なうために文書化が必要な情報という意味であり、規格の意図の文書化の意義がそのまま規定として表わされたものである。
 
 
(4) 実務の視点の解釈
  多数の要員が協働する体系的で組織的な業務実行には、論理や想い、規範や規則、結果や事実、実態を文書で表すことが不可欠である。ものの考え方や重要だが細かい点ほど、要員の理解にばらつきが生じ、覚えるのが困難で、忘れられ易いから文書化することが大切である。常時行う業務の手順、当たり前のことは、文書化しなくても問題は起きない。滅多に行わない業務の手順、滅多に想起しない原理原則、難しいことこそ文書化することが必要である。文書の内容の重複を防ぎ、内容変更の手間や関係者への周知徹底の手間を最小限にし、多数の文書から必要な内容が書かれた文書が容易に抽出できるようにする工夫が、文書体系を明確にして文書化することである。文書化の程度や範囲は、読まれる頻度が高いかどうかではなく、文書化の目的と作成、保管の手間との均衡で決める。
     
 
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型←08年版とほぼ同じ
 業務が決められた通りに実行され、必要な結果が確実に出るという効果的な業務実行のための基礎として、業務の規範や基準を文書化し、文書で業務実行を指示し、文書を用い参照して業務を行い、業務の実行結果を文書に表し、文書に表される事実に基づいて業務上の判断を行なう事が出来るよう文書体系を整え、業務関係情報を文書化する。文書に記述する範囲と詳しさは、文書化の目的に応じた必要な程度とする。
     

文書種別

文書の機能、規定の性格

要覧

特定の業務体制を説明

品質マニュアル、電気工作物保安規程

規範文書

原則、基準、条件、方法を規定

規定、業務要領書・作業手順書

指示文書

特定の実務の実行や実行条件を指示

業務目標計画書、業務連絡・依頼書

便宜文書

規定通りの業務実行の確実化のため使用

製作指示書、原料発注書、監査計画書、書式、

その他

外部文書(品質要求書、設備取扱説明書..)、参考図書(技術書籍、講習会資料..)、対外文書(官庁届出書、特許申請書..)、標識(安全標識..)、個人文書

記録文書

業務実行の結果を記す

検査記録、議事録、事故調査書、技術報告書



3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
   ―  
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
 規定の趣旨が業務を効果的に行なうために必要な情報の文書化であることには変わりがないので、08年版とは規定表現の違いだけである。文書化の規定が無くなった特定の文書をどうするかは、b)項の業務の効果的な実行に必要かどうかの組織の判断であるが、それら文書が業務の効果的実行に必要であるから08年版の規定となっていたとすると、この点でも08年版と15年版の文書化の規定の違いは表面的なものに過ぎないことは明らかである。
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
 何も変える必要はない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
 今日、どの組織も組織内外の業務に様々を紙の文書、記録を用いており、一部を電子データ化して利用している。これらを文書の性格、作成や使用の目的に応じて組織に適当な文書体系に整理して見ることでよい。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 品質マニュアル、記録、手順書など全部を「文書化した情報」として表現*Q39
 
(2) 08年版から変わっているとする解釈
① 規格要求の裏返し、観念的な要件記述だけ、実際の手順を含んでいない等の役に立たない08年版の品質マニュアルなら不要というのが品質マニュアルの規定がなくなった背景*Q32*33*26
② 品質マニュアルは要求されなくなった*Q17
③“マニュアル”“文書化された手順”の作成要求はない。それ以外は08年版と大きく変わらない*Q39 
   
     
7. 予想される極端な審査要求

          
H27.7.18(修7.26)
禁無断転載  (個人的使用のための複写歓迎)
サニーヒルズ コンサルタント事務所