ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
34 ISO9001: 2015  改定解説     7.5.3  文書化した情報の管理
- 変更点と移行対応 (26) -
<31e-01-34>
 
 
0.1 概要   こちら

   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  (英語解釈 抜粋)
 
品質経営*⇔品質マネジメント$19-0;  
   
   
1. 規定条文 (SL共通テキストJIS仮訳又は山田秀・須田晋介の私訳; これらのない部分は筆者のJIS的和訳)
7.5.3 文書化した情報の管理
7.5.3.1   品質マネジメントシステム及びこの国際規格で要求されている文書化した情報は,次の事項を確実にするために,管理しなければならない。
 
a) 文書化した情報が,必要なときに必要なところで,人手可能かつ利用に適した状態である。
b) 文書化した情報が十分に保護されている(例えば,機密性の喪失,不適切な使用及び完全性の喪失からの保護)
 
7.5.3.2  文書化した情報の管理に当たって,組織は,該当する場合には, 必ず,次の行動に取り組まなければいけない。
 
a) 配付,アクセス,検索及び利用。
b) 読み易さが保たれることを含む, 保管及び保存。
c) 変更の管理(例えば,版の管理)
d) 保持及び廃棄
 
  品質マネジメントシステムの計画及び運用のために組織が必要と決定した外部からの文書化した情報は,必要に応じて,特定し,管理しなければならない。
 
  適合の証拠として保持する文書化した情報は、意図しない改変から保護しなければならない。
 
  注記 アクセスとは,文書化した情報の閲覧だけの許可に関する決定,又は、文書化した情報の閲覧及び変更の許可及び
  権限に関する決定を意味し得る。
 
[08年版 関連規定]
4.2.3 文書管理
品質マネジメントシステムで必要とされる文書は、管理しなければならない。ただし、記録は文の一種ではあるが、4.2.4 に規定する要求事項に従って管理しなければならない。次の活動に必要な管理を規定するために、“文書化された手順”を確立しなければならない。d) 該当する文書の適切な版が、必要なときに、必要なところで使用可能な状態にあることを確実にする。;e) 文書は、読みやすくかつ容易に識別可能な状態であることを確実にする。; f) 品質マネジメントシステムの計画及び運用のために組織が必要と決定した外部からの文書を明確にし、その配付が管理されていることを確実にする。; g) 廃止文書が誤って使用されないようにする。また、これらを何らかの目的で保持する場合には、適切な識別をする。
4.2.4 記録の管理
要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの効果的運用の証拠を示すために作成された記録を、管理しなければならない。 組織は、記録の識別、保管、保護、検索、保管期間及び廃棄に関して必要な管理を規定するために、“文書化された手順”を確立しなければならない。記録は、読みやすく、容易に識別可能かつ検索可能でなければならない。
   
 
2. 条項の意図
(1) 主題
 本項は、品質経営 の業務の効果的実行を図る手段として文書と記録が用いられるために必要な、文書と記録の取り扱いに関する要件を規定している。
   
(2) 論理及び用語
① 文書化した情報§7
  『文書化した情報』とは「組織が管理し維持する必要がある情報及びそれを含む媒体」と定義#6されるから、「情報及びそれを保持する媒体」と定義#6pされている08年版の『文書』そのものである。共通テキス解説FAQ (18)では、近年はデータや文書と記録が電子媒体に保持されていることが多いので用語「文書化した情報」を造語したと説明している。すなわち、「文書化した情報」は08年版の「文書」の共通テキス化に伴う言い換えに過ぎない。
 
  規格の『文書』とは、何かの物理的手段で保持されて、業務に使用する情報のことである。最も普通の文書は情報が紙の上に文章を主体に図表や絵や写真で表現されたものであるが、規格では紙の上でなく電子計算機の画面や投射スクリーン、キャンバス、看板、シールなどに表示された場合も文書である。製品見本や合否限界見本のように、ある物の情報が現物そのもので表される場合はその現物も文書である。電子計算機内ハードディスク、フロッピーディスク、CD、USBメモリも情報を保持している場合は文書である#6p-1。簡単に言えば、業務の情報が人間の頭脳以外に保持されている状態であれば、文書である。
 
② 文書と記録§7.2
  実務においては、文書は業務実行の指示或いは業務実行の方法や基準を示す指示書、手順書のような文書と業務結果或いは物事の実態を表す業務記録、報告書などの記録とも呼ばれる文書とに分けて認識され、使用されている。08年版では「記録」は「文書」の一部であり、「達成した結果を記述した、又は、実施した活動の証拠を提供する文書」である#8p。これ以外の『文書』すなわち狭義の「文書」については、それらを表す総称も、定義もない。
 
  15年版ではすべての文書(広義)が「文書化した情報」と表現されるが、これは共通テキスト採用による表現上の問題であり (11)、業務実行に係わる「文書(狭義)」と業務結果に係わる「記録」という文書類型の概念がなくなった訳ではない。TC176(12)は、15年版では08年版の「文書化された手順」と「記録」とが「文書化した情報を維持する」「文書化した情報を保持する」と言う規定表現によって区別したと説明している。
 
③ 文書管理と記録管理§7.3
  業務実行の指示或いは業務実行の規範又は基準として用いる文書は、内容が適当で正しく(7.5.2項)、要員が必要な時に必要な場所で使用できるようになっていなければならない。また、記録は事後或いは後日に使用するためにあり、使用する可能性のある間は保持しなければならず、使用しようとする要員が、必要な時に、必要な迅速さで抽出し、使用できるようになっていなければならない。
 
  このための管理の要素を15年版は、文書(狭義)については見分け方、判読可能、配付、誤使用防止に関して、記録については見分け方、損傷や劣化や紛失、保管期限に関して、それぞれの要件を規定している。15年版ではこれら要件を合わせて文書化した情報の管理の要件と規定しており、内容的には機密性と悪意に対する防御の観点の明示的規定が追加されている。
    
(3) 規定要旨
7.5.3.1項(取り扱い)
組織は、文書化した情報、実務的には文書や記録、の取り扱いを管理する手はずを整えて、手はずに則って文書や記録を、a)~b)の状態に維持しなければならない。ここに、a)は、必要に応じて使用可能な状態にしておくことであり、b)は、決められた通りに使用され、損傷や損失がなく使用できるよう保護しておくことを意味する。
 
7.5.3.2項(取り扱い方法)
文書や記録の取り扱いを管理する手はずには、その狙いの通りに管理するために、必要によりa)~d)項を含めなければならない。ここに、a)は、文書や記録の利用の方法に係わる手はずであり、b)は、文書や記録の保管に係わる手はずであり、c)は、変更管理の手はずであり、d)は、有効期間の管理の手はずである。
 
(4) 実務の視点の解釈
 作成、改訂された文書が必要な要員に確実に伝達されること、文書の最新版が紙又は電子ファイル内で確実に差し替えられることに関する手はずが大切。記録は使用する可能性のある期間だけ保管し、整理の方法と程度は使用する可能性に応じたものとし。保管期間の経過で使用の可能性の低下に応じた保管場所、方法を変える。
     
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型08年版の4.2.3項と4.2.4項の書き直しだけ
 規範文書、指示文書は発行元で原本を保管し、写しを必要な部門又は職場に配付する。配付された写しは当該部門、職場で保管する。必要により更に写しをとって使用場所に二次配付又は掲示する。部門長は、作成又は改定内容を関係要員に理解させた証を当該文書にメモ書きする。帳票の作成、承認、保管の方法は、当該帳票の使用を規定する手順の中で定められる。その他の文書は必要によりそれぞれの文書管理台帳で最新版、保管、維持を管理する。
 
  各記録文書の保管の方法、最小期間、責任者を記録管理台帳に明記にする。文書又は一括りの文書毎に、或いは、保管場所に何の記録であるかを明確にする。
 
  外部文書は業務の指示、指針として直接に使用しない。必要な事項は関連する手順に反映し、関連する文書に表す。文書と記録は要員が自由に複写できる。必要なら廃止文書を保管する。但し、業務実行には、正規に保管、配付、掲示されたものしか使用しない。文書と記録の機密区分、非常持ち出し区分を定め、管理する。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
―     
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
  08年版の4.2.3(文書管理)と4.2.4(記録の管理)の規定を合わせて、文書と記録の区別をなくし、規定を7.5.2項(作成及び更新)と7.5.3項(文書化した情報)に再編成して記述したものである。15年版には機密性の保持と悪意に対する防御の観点の規定が追加されているが、前者は文書管理の普遍的な原則を明示的に規定したものに過ぎない。また、日本の組織には安定した社会情勢を背景に採用時の選別と人的作業環境(7.1.4項)と管理者の指導力によって悪意に基づく要員の行動は効果的に防止できているし、防止法としてはこれしかない。報道される不祥事はほとんど契約社員、外注企業社員が引き起こしている。
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
 4.2.3(文書管理)と4.2.4(記録の管理)に係わる品質マニュアル記述を再編成して書き直せばよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
 移行を機会に、文書の作成、更新は、管理者がその職務としての業務結果を確実に出すための手段であるとの観点から、必要な文書の作成、更新を発案し、発行し、必要な結果を出す責任者を明確にするとよい。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 08年版と同じ*Q17
(2) 08年版から変わっているとする解釈
① 組織が内部管理策を用意し、それに基づいて管理*Q5
 
   
     
7. 予想される極端な審査要求
① 8章以外の。
    
     
H27.7.27,    2015年版(H28.1.20)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所