ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
35 ISO9001: 2015 解説    9.1.3 分析及び評価
- 変更点と移行対応 (27) -
<31e-01-35>
 
 
0.1 概要   こちら
   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  (英語解釈 抜粋)
 
実績 ⇔パフォーマンス$31;  実績評価 ⇔パフォーマンス評価$31;   品質経営活動 ⇔品質マネジメント$19-0;
   
   
1. 規定条文 (FDIS英和対訳版JIS和訳、SL共通テキストJIS仮訳又は山田秀・須田晋介私訳、筆者のJIS的和訳)
9.1.3 分析及び評価
組織は,監視及び測定からの適切なデータ及び情報を分析し、評価しなければならない。
 
分析の結果は、次の事項を評価するために用いなければならない
 
a) 製品及びサービスの適合
b) 顧客満足度
c) 品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性
d) 計画が効果的に実施されたか
e) リスク及び機会への取り組みの有効性
f) 外部提供者のパフォーマンス
g) 品質マネジメントシステムの改善の必要性
 
  注記 データを分析する方法には、統計的手法が含まれ得る。
 
[08年版 関連規定]
8.4 データ分析
組織は、品質マネジメントシステムの適切性及び有効性を実証するため、また、品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善の可能性を評価するために適切な データ を明確にし、それらの データ を収集し、分析しなければならない。この中には、監視及び測定の結果から得られた データ 並びにそれ以外の該当する情報源からの データ を含めなければならない。データ の分析によって、次の事項に関連する情報を提供しなければならない。 a) 顧客満足(8.2.1参照); b) 製品要求事項への適合(8.2.4参照); c) 予防処置の機会を得ることを含む、プロセス及び製品の、特性及び傾向(8.2.3及び8.2.4参照); d) 供給者(7.4参照)    
 
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
 本項は、業務実行管理における実績評価の活動(9.1.1項)において、実績の適否又は合否の判定を正しく行うためには収集した実績情報を分析した上で評価し、判断することが必要であることを規定し、無限持続体としての存続発展を図る品質経営活動において必要な実績評価の視点を規定している。
   
(2) 論理及び用語
① 業務実行管理§28.1
  決められた通りに業務を行い決められた結果を確実に出すための実務の業務実行管理の活動は一般に、業務結果の情報を収集、把握し、これを狙いの結果の許容範囲を示す管理基準に照らして評価し、必要な結果が得られたどうかを判定する実績の合否判定の活動と、決められた最終的な業務結果を確実に出すようにするための不合格となった業務結果や製品を処理する活動と、問題の再発を防止する活動とから成る。
 
  規格では、この業務実行管理の活動をそれぞれ、JIS和訳「パフォーマンス評価」の実績評価$31(9.1.1項)、不適合の処置(10.2項)、是正処置(10.2項)として表している。実績評価の活動で業務の結果が管理基準を満たしているかどうか比較評価することは規格では、実績#54が品質目標#22を満たしているかどうかを比較評価することである。さらに規格は、実績評価の活動を、「監視」「測定」「分析」「評価」という4段階の活動、或いは、4種類の要素業務を次々に行なう活動とみなして規定を記述している(9.1.1項)。
 
② 分析及び評価§28.2
  「分析」の英文は“analysis”であり、物事をより深く理解するために詳細に検討又は調査することを意味する(101)。管理業務の実務では、分析はしばしば解析と呼ばれ、複雑に絡み合った物事をその成分、要素、側面に分解し、相互関係を明らかにしたり、問題の本質、実体を明らかにすることである。
 
  規格では、94年版の統計的手法の適用の規定(4.20)が無くなったことに関連して、00年版で業務実行管理における管理図法など統計的手法の使用を含む品質管理手法の必要を規定するために、「データ分析」の活動が監視、測定により収集した情報の評価、判断の活動として導入された(8.4)。この「データ分析」の意義について、品質マネジメントの原則(131)で「データ及び情報の分析と評価に基づく意思決定が望ましい結果を生むことを確実にする」と説明されており、この趣旨は15年版の品質マネジメントの原則でも継承されている。
 
  「評価」の英文は“evaluation”であり、十分に考えて物事の量、価値又は品質に関する考えを明確にすることを意味(101)し、日本語では「善悪・美醜などの価値を判じ、定めること」の意味(103)の「評価」である。 英語の“evaluation”も日本語の「評価」も、判定や判断をすることが主意である。業務実行管理の実務では業務の進行状態や結果が定められた通りかどうかの判定や判断を行なうことである。
 
  15年版規格の用語では『分析及び評価』は、業務実行管理の活動において「監視」「測定」によって収集し把握した情報を分析して、業務実績或いは出来ばえの実体を把握し、これに基づいて狙いの業務結果の通りであるかどうかを評価し判定することを意味する。
 
③ パフォーマンス §11.1
  JIS和訳「パフォーマンス」の英文は“performance”であり、何かがどれ位首尾良く又は首尾悪く行なわれたかという意味であり$31、日本語ではずばり「実績」であり、場合によっては「業績」「成績」が適当である。08年版では「成果を含む実施状況」と和訳されていた(8.2.1)。
 
  実績とは単純には業務の実行の結果のことであるが、一般には達成すべき又は狙いの結果がどの程度達成されたかという意味での実績のことである。規格の「実績 」がこのような意味であることは、『目標』が「達成すべき結果」として#22、『実績』が「測定可能な結果」として#54、それぞれ定義されていることからも明らかである。「実績 」は「目標」の達成度であり、「目標」たる狙いや決められた結果と同じ指標又は表現で表される。
    
(3) 規定要旨
  業務実行管理が狙いの顧客満足の状態を確実に実現するという観点で効果的であるためには、その実績評価 の活動(9.1.1項)においては、収集した実績の情報を必要な程度に分析して、正しい実態を把握し、それに基づいて決められた結果が得られたどうかを評価し判定しなければならない。
 
  また、狙いの顧客満足の状態を確実に実現させる効果的な品質経営活動における業務実行管理では、a)~g)の観点から、狙いの業務結果を確実に出すように関係する業務実行を管理しなければならない。これらは、実務的には、a)は製品サービスの品質管理(8.6, 8.7項)、b)は品質経営の業績管理(9.1.2項)、c)はa),b)に関連しての品質経営の業務実行の手はずの管理(10.2項)、d)は手順や規則の遵守管理、e)は改善の品質目標の達成管理(6.2.2項)、f)は供給者の実績管理(8.4.2項)、g)は経営戦略の管理(9.3.3項)である。
 
(4) 実務の視点の解釈
 日常業務管理では例えば、①の粗加工部品の月別出来ばえ区分率を推移図に表し、②の最終製品は形状検査の月別形状不良種類別検査不良品率と矯正前後の形状水準を推移図に表し、③の始業前設備点検の異常項目別の月別異常検出率を推移図に表して、それぞれ、①粗加工能力、②形状制御能力、③設備保全、経年劣化状況が手はずで想定した通りであるか、どの手はずに問題があるかを検討する。また、例えば、業績管理の一環としての⑤供給者別加工成績の月別供給者別推移図や⑥月別原因別苦情発生推移図と顧客の組織に対する見方に係わる様々な営業情報を分析評価して、狙いの顧客満足の状態の実現や競合他組織との競争優位を判断する。
     
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型← 基本的に08年版の8.4項と同じでよい
 業績管理(9.1.2項)と日常業務管理(6.2項)の一環として行う業務実行管理の手はずにおいて、業務が決められた通りに行なわれ必要な業務結果が出ているかどうかを判断し、また、異常の発生の原因や異常に繋がる恐れのある問題を検出するために評価する情報を明確にする。この情報が客観的事実を表すものであることを確実にするために、必要により収集した情報を分析する。
 
  業務実行管理で必要な情報はトップマネジメントが決めて、それぞれ期末業績検討会(9.3項)、 月例業務検討会(7.4項)の議事録書式に表す。業務実行管理上の最終的な情報の評価と判断はそれぞれの場でトップマネジメントが行う。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
① パフォーマンス → 実績 (誤解の回避)
  規格の意図の“performance”は単純に「実績」であり、「パフォーマンス」と和訳する必要はない。既にこのことで、達成度、出来ばえというような意味の誤解が生れている。
     
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
 08年版(8.4)の規定でも「分析」と「評価」が業務実行管理の引き続く一連の活動として記述されており、規定の趣旨も08年版(8.4)と変わっていない。規定表現が変わっているだけ。
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
 何も変える必要はない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  組織内で日々に行われている業務の首尾や出来ばえに関する評価や判断が、客観的な事実に基づいて行われているようになっているか、見直せばよい。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 品質マネジメントの原則「dhima9.1.1にも共通テキストの分析評価の要求があり、本項は品質マネジメントシステム上の実施事項を詳細に要求している*39
(2) 08年版から変わっているとする解釈
① 分析に加えて評価も要求。分析、評価した結果のa)~g)のための使用が求められている*Q5
② 社内のどこかにある情報、データを活用せよと示唆されている*Q17
③ データ分析だけでなく評価も求められている。データを有効に活用していない組織が多いことに対応した改訂*Q24
 
   
     
7. 予想される極端な審査要求

    
H27.8.4   H27.12.21(2015年版)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所