ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
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ISO9001:9001 解説:    10.1   改善  一般
- 変更点と移行対応 (29) -
<31e-01-37>
 
 
0.1 概要   こちら
   
0.2実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  
   
実績 ⇔パフォーマンス$31;   実績評価 ⇔パフォーマンス評価$31;   修正処置 ⇔修正$48-1;  
    製品サービス ⇔製品及びサービス$8.1;      製品サービスの実現(活動) ⇔製品及びサービスの提供$41.4;  
    製品サービス実現の計画(活動) ⇔運用の計画$28-2;      品質経営、品質経営活動 ⇔品質マネジメント$19-0;    
    品質経営体制
⇔品質マネジメントシステム$19-1-1;    品質経営体制の計画 ⇔品質マネジメントシステムの計画$19-1-1;
   
   
1. 規定条文     (JIS Q 9001: 2015)
10. 改善
10.1 一般
組織は,顧客要求事項を満たし、顧客満足を向上させるために、改善の機会を明確にし、選択しなければならず、また、必要な取組みを実施しなければならない。
 
これには、次の事項を含めなければならない。
a) 要求事項を満たすために、並びに、将来のニーズ及び期待に取り組むための、製品及びサービスの改善
b) 望ましくない影響の修正、防止又は低減
c) 品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性の改善
 
  注記  改善には、例えば、修正、是正処置、継続的改善、現状を打破する変更、革新及び組織再編が含まれ得る。
[08年版 関連規定]
8. 測定、分析及び改善
8.1 一般
組織は、次の事項のために必要となる監視、測定、分析及び改善のプロセスを計画し、実施しなければならない。
a) 製品要求事項への適合を実証する。; b) 品質マネジメントシステムの適合性を確実にする。;
c) 品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善する。
これには、統計的手法を含め、適用可能な方法、及びその使用の程度を決定することを含めなければならない。
   
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
 規格は、製品サービスの顧客満足§10の追求により組織の永続的な存続発展を図る品質経営§2.1の在り方を規定している。その基本要件は、あるべき顧客満足の状態に関する経営戦略§35.2を時代の変化に応じて適切に変更し、それを確実に実現させるという循環的活動§33として品質経営活動を行うことであり、規格の規定はこれを、品質経営製品サービス実現との2種類のプロセスアプローチ/PDCAサイクル§43.2の形で記述している。
 
  規格では、狙いの顧客満足の状態を確実に実現させるための品質経営のプロセスアプローチ/PDCAサイクルにおいて、業務が品質経営体制の計画(6.1項)又は製品サービス実現の計画(8.1項)で決められた通りに行われ、決められた通りの結果を確実に出すようにする業務実行管理の活動の中の、実績評価(9章)で、決められた通りではないと判定された業務結果或いは製品サービスに関して必要な処理をすることを「改善」の活動と位置づけている。10章は効果的な品質経営活動に必要な改善の活動を取り上げ、狙いの顧客満足の状態を確実に実現させるという観点で効果的であるための要件を規定している。
 
  本項は、業務実行管理の活動の中の改善の活動が効果的であるための要件を、決められた通りでないと判定されたすべての業務或いは製品サービスの改善の処置或いは活動に当てはまる共通的な表現で規定している。
   
 
(2) 論理及び用語
① 業務実行管理§28.1
  決められた通りに業務を行い、決められた結果を確実に出すようにする実務の業務実行管理の活動は一般に、必要な結果が得られたどうかを判定する実績評価の活動と、決められた通りでないと判定された業務結果を正すように処理する活動と、問題の再発を防止する活動とから成る。
 
  規格では、前者は プロセスアプローチ/PDCAサイクルの管理/Cに相当する「実績評価」の活動(9章)として、また、後二者はプロセスアプローチ/PDCAサイクルの継続的改善/Aに相当する「改善」の活動(10章)として表わされている。
 
② パフォーマンスの改善§28.3
  JIS和訳「パフォーマンスの改善」は、その「パフォーマンス」が「実績」である$31から「実績の改善」である。また、規格の「改善」は「実績を高める活動」と定義#38-1されており、定義上では「実績の改善」と「改善」は同義語である。さらに、規格の「実績」は、狙いの業務結果が出ているのかどうかの観点での実績のことである§11.1。規格の意図の「実績の改善」は、業務結果又は製品サービスの質自体を高めることではなく、実績たる業務結果が狙いの業務結果となるように業務結果の質を高めることである。
 
  本項の「実績の改善」は、決められた通りに業務を行い決められた結果を確実に出すようにする業務実行管理の活動において、実績評価(9.1.1項)によって不合格と判定された業務結果に対して、それによって最終的な業務結果や製品サービスが狙いの通りでなくなること、そして、その結果として狙いの顧客満足の状態の実現に支障を来すことになるのを防ぐために、必要な処置をとることを意味する。
 
  実務では、実績評価で不合格と判定された業務結果は一般に不良、異常と呼ばれ、例えば再加工、補修などにより狙いの業務結果の状態に修正するか、例えば後工程の条件を特別に変えて最終的な業務結果の時点で狙いの業務結果が得られるようにするか、例えば半製品の降格、振替え、廃棄などにより最終的な業務結果の適否、合否に影響を及ぼさないようにする等の処置をとる。その上で必要により問題の再発を防止する処置をとる。
 
  規格では、実績評価で不合格と判定された業務結果は不適合(10.2.1 a)項)であり、不適合とその悪影響を無くする処置をとることが「改善」である。この「改善」の方法論としては、修正処置 #42pと是正処置#40(10.2項)、及び、継続的改善#38(10.3項)の活動が規定されている。
 
③ 品質マネジメントシステムの有効性の改善§28.3
  JIS和訳「品質マネジメントシステム」は「品質経営体制」であり$19-1-1、狙いの顧客満足の状態を実現させるように整えられた業務の手順や方法、要員の配置や設備の用意などの手はずの集まりである§2品質経営の業務はこれら手はずに則って行われる。「有効性」は定義#4から、どの程度に手はずの通りに業務が行なわれて手はずの通りの結果が得られたかという意味であり、「品質経営体制の有効性」とは、品質経営体制の手はずに則って行われた品質経営の業務がどの程度に手はずの通りに実行されたか、狙いの業務結果が得られたかという観点からの手はずの有効性を意味する§11.3。ある業務の実績が狙いの業務結果の通りでないとすると、その業務の手はずが有効でなかったということである。
 
  「品質経営体制の有効性の評価」は、決められた通りに業務を行い、決められた結果を確実に出すようにする業務実行管理の活動において、品質実績の評価に基づく業務実行の手はずの適否或いは合否の評価、判定を行うことであり(9.1.1項)、「品質経営体制の有効性の改善」とは見出された問題の手はずに対して、狙いの業務結果を確実に出すようにその質を高める「改善」の処置をとることである。すなわち、実務的には、不合格と判定された業務結果である不良や異常の原因となる手順や資源など業務実行の手はずの不備や問題点を改善することである。
   
  「不適合」とは、定義#5-2では必要条件を満たしてしていないことであり、本項では業務実行管理における実績評価(9.1.1項)の活動によって、決められた必要な結果が得られていないと判定された業務結果の状態を指す。但し、これには様々な状況や態様があるから、品質経営の業務における何であれ決められた必要な状態ではない物事の状態のこと、つまり、実務では何であれ業務に関連する不良や異常のことと理解するのがよい。
 
   
(3) 規定要旨
  JIS和訳「改善の機会」の英文は“opportunity for improvement”であり、どこをどのように改善できるかという意味での「改善の可能性」「改善の余地」のことであり$9-1、「改善の機会を明確にし、選択しなければならない」は、不適合とその悪影響を無くするための改善の処置を検討し、適切な処置を決めるという意味である。
 
  組織が品質経営活動によって、必要な狙いの顧客満足の状態を確実に実現させるためには、決められた通りに業務を行い決められた結果を確実に出すための業務実行管理の活動を効果的に行わなければならない。業務実行管理では、実績評価の活動(9.1.1項)において狙いの通りでないと判定された業務結果或いは製品サービス、すなわち、規格では「不適合」、実務では「不良や異常」が原因となって狙いの顧客満足の状態の実現に支障が来されることのないように、それら不適合ないし不良や異常に対して適切な改善の処置をとらなければならない。
 
  これら改善の処置が効果的であるためには、処置を決める場合にa)~c)の観点を考慮しなければならず、処置は10.2項又は10.3項に則って行わなければならない。 a)は、狙いの仕様と品質の製品サービスを確実に実現させて顧客に引き渡すこと、b)は、当該の不良や異常に起因する新たな問題発生を防止すること、c)は、不良や異常の再発を防止することである。 JIS和訳「改善の機会」の英文は“opportunity of improvement”であり、どこをどのように改善できるかという意味での「改善の可能性」「改善の余地」のことであり$9-1、「改善の機会を明確にし、選択しなければならない」は、不適合とその悪影響を無くするための改善の処置を検討し、適切な処置を決めるという意味である。
 
 
(4) 実務の視点の解釈
  日常業務管理では例えば、①粗加工部品は外観・寸法管理基準に従った出来ばえ評価でA3水準に分類し、それぞれに応じた仕上加工条件を適用する。②最終製品は形状検査基準による評価による不良品は形状矯正機により矯正して良品となった場合は出荷する。③始業前の設備点検により異常を見出した場合は設備担当者が調査し、必要な処置をとる。④熱処理で温度異常警報が鳴った場合は、異常の程度と時間の記録を基に製品で特別な材質検査を行って不良品を排除する。また例えば、①の外観・寸法の出来ばえ区分、②の良品率、③の異常検出率、④の警報吹鳴回数の月別データの、過去の実績又は決められた基準に照らしての評価で、放置すると狙いの顧客満足の状態の実現や安定製造に支障を来す恐れがあると判断された場合には、原因を調査して製造基準の変更など必要な処置をとる。業績管理の一環としての⑤供給者別加工成績のデータや⑥月別原因別苦情発生のデータの評価により、狙いの顧客満足の状態の実現や競合他組織との競争優位上で問題が生じると判断される場合は、原因を調査し、必要な処置をとる。
     
 
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型 ←実態を記述
  管理基準を満たさない業務結果又は製品と半製品は、それによって狙いの顧客満足の状態の実現に支障を来すことのないように、あり得る「不良」とあってはならないに「異常」に区別して、それら自体及びそれらの原因に対して適切な処置をとる。
 
  トップマネジメントは、不良と異常の発生と処置の実績を、月例業務検討会(7.4項)で狙いの顧客満足の状態の実現に及ぼす影響の観点で、また、期末業績検討会(9.3項)で組織の業務実行能力の実態という観点で、それぞれ評価し、必要な処置を決める(10.2, 10.3項)。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
① パフォーマンスの改善 → 実績$31の改善
  「パフォーマンスの改善」という表現のため、「品質改善活動の成果」の意味に受けとめる誤解が拡がっている。
 
   
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
  規格の「改善」が狙いの通りでないとして見出された不適合な業務結果に対する処置であることには08年版も15年版も変わりがない。15年版では共通テキスト化によりプロセスアプローチ/PDCAサイクルの管理/Cと継続的改善/Aに相当する業務を9章と10章に分けて記述したため、08年版の8.1項の記述を9.1.1項と本項に分割したもの。すなわち、08年版8.1項の業務実行管理に関する規定の「…のために必要となる…のプロセスを計画し、実施しなければならない」の「改善」に関する部分を本項として独立させて、「改善」の必要性の規定の表現を変え、改善の観点を明示的に規定したものであり、規定の趣旨は不変。
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  08年版の8章の中の記述又はその背景の業務実行管理における「改善」の活動の実態を抜き出し、整理して記述すればよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織

 トップマネジメントが経営目標の狙いの顧客満足の状態の実現のために重要と考える業務が期待した出来ばえでないことが判明した時に、どのような場合にどのような処置をとることを考えているのか、或いは、どのような処置をとってきたのか、を整理すればよい。
 
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 適切な場合はプロセスや製品・サービスの改善を要求*Q27
② 規格の意図の改善を踏襲しているが、継続的改善以上の広範囲な改善手法を想定している*Q17
(2) 08年版から変わっているとする解釈
① 継続的改善の実施に当たって多くの改善の機会を探し、優先順位をつけて決定することが求められている。*Q24
② 改善活動は顧客要求事項を満たし顧客満足を向上させることが必要*Q38
③ 意図の結果が出たことの確認のため、類似不適合の出ない保証があるかの判断のために、とった処置、マネジメントシステムをそれぞれ評価することが要求されている*Q39。
 
   
     
7. 予想される極端な審査要求
    
     
H27.8.19(H27.12.25   :2015年版)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所