ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
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ISO9001:2015  改定解説(2015年版):    10.2   不適合及び是正処置
- 変更点と移行対応 (30) -
<31e-01-38>
 
 
0.1
概要   こちら

   
0.2実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  
 
修正処置 ⇔修正#42P;    品質経営 ⇔品質マネジメント$19-0;   品質経営体制 ⇔品質マネジメントシステム$19-1-1;  
   
   
1. 規定条文   (JIS Q 9001: 2015)
10.2 不適合及び是正処置
10.2.1  
苦情から生じたものを含め、不適合が発生した場合、組織は、次の事項を行わなければならない。
a) その不適合に対処し、該当する場合には、必ず、次の事項を行う。
  1) その不適合を管理し、修正するための処置をとる。
  2) その不適合によって起こった結果に対処する。
b) その不適合が再発又は他のところで発生しないようにするために、次の事項によって、その不適合の原因を除去するための処置をとる必要性を評価する。
  1) その不適合をレビューし、分析する。
  2) その不適合の原因を明確にする。
  3) 類似の不適合の有無、又は、それが発生する可能性を明確にする。
c) 必要な処置を実施する。
d) とった全ての是正処置の有効性をレビューする。
e) 必要な場合には、計画の策定段階で決定したリスク及び機会を更新する。
f) 必要な場合には、品質マネジメントシステムの変更を行う。
 
是正処置は、検出された不適合のもつ影響に応じたものでなければならない。
 
10.2.2 組織は、次に示す事項の証拠として、文書化した情報を保持しなければならない。
a) 不適合の性質及びそれらに対してとったあらゆる処置
b) 是正処置の結果
[08年版 関連規定]
8.2.3 プロセスの監視及び測定
計画どおりの結果が達成できない場合には、適切に、修正及び是正処置をとらなければならない。
8.5.2 是正処置
組織は、再発防止のため、不適合の原因を除去する処置をとらなければならない。 是正処置は、検出された不適合のもつ影響に応じたものでなければならない。 次の事項に関する要求事項を規定するために、“文書化された手順”を確立しなければならない。 a) 不適合(顧客からの苦情を含む)の内容確認; b) 不適合の原因の特定; c) 不適合の再発防止を確実にするための処置の必要性の評価; d) 必要な処置の決定及び実施; e) とった処置の結果の記録; f) とった是正処置の有効性の レビュー
   
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
 本項は、業務実行管理の中の実績評価(9.1.1項)で、決められた通りでないと判定された業務結果によって狙いの顧客満足の状態の実現に支障を来さないようにそれらを処理する必要と、処理が効果的であるための要件を、すべての不適合に当てはまる共通的表現で規定している。
   
(2) 論理及び用語
① 不適合§29.1
  「不適合」とは、定義#5-2では必要条件を満たしてしていないことであり、本項では業務実行管理における実績評価(9.1.1項)の活動によって、決められた必要な結果が得られていないと判定された業務結果の状態を指す。但し、これには様々な状況や態様があるから、品質経営の業務における何であれ決められた必要な状態ではない物事の状態のこと、つまり、実務では何であれ業務に関連する不良や異常のことと理解するのがよい。
 
② 修正§29.2
  JIS和訳「修正」の定義は15年版では存在しないが、08年版では「不適合を除去する処置」と定義#42pされており、「修正処置」の方が適切である。修正処置は、検出され或いは発生した不適合の状態を正す処置であり、処置の狙いは、不適合によって最終的な業務結果或いは製品及びサービスが狙いの通りでなくなることを防ぎ、そして、その結果として狙いの顧客満足の状態の実現に支障が生じるようになるのを防ぐことにある。08年版指針規格(131)では、発生した不適合製品がそのまま顧客に引渡されることのないようにするための修正処置の具体的例として、手直し(3.6.7)、修理(3.6.9)、再格付け(3.6.8)、廃棄(3.6.10)を挙げ、それぞれを定義している。
 
  規格では、発生した不適合製品・サービス(8.7項)と内部監査の不適合指摘(9.2.2項)に関して修正処置をとる必要のあることが特に明示的に規定されている。
 
③ 是正処置§29.2
  発生した不適合の悪影響の除去や緩和の観点からの不適合への対応だけでは、同じ問題が繰り返される可能性が残る。 再発を防止するためには、問題発生の原因に対応する処置が必要である。 規格はこの処置を「検出された不適合、又は、その他の検出された望ましくない状況の原因を除去するようにとられる処置」と定義#40し、「是正処置」と呼んでいる。
 
  この定義によると、 是正処置は、再度の発生を防止するだけではなく、二度と発生させないことを確実にする処置であり、問題を解決し、或いは、組織からその問題をなくする処置である。しかし実務的には、どんな問題も絶対に再発させないというような再発防止への取り組みは合理的ではない。問題の原因の追求と原因を除去する程度と方法は再発防止の必要な程度に応じて適当なものとすることが大切である。
 
  規格では、内部監査の不適合指摘 (9.2.2項)に対する是正処置の必要が特に明示的に規定されている。
 
④ 予防処置§29.2
  『予防処置』は起きることが予見される不適合を抽出してその発生を未然に防ぐ処置のことである。 08年版ではこれを「起こり得る不適合又はその他の望ましくない起こり得る状況の原因を除去するようにとられる処置」と定義#41し、用語の定義に「予防処置は発生を未然に防止するためにとるのに対し、是正処置は再発を防止するためにとる」との注釈を付して、是正処置との違いを明確にしている。
 
  是正処置も予防処置も、品質保証活動の実用的指針として作成された規格初版において、不良品防止の管理の当時の世界の最良慣行のひとつとして導入された概念、手法である。しかし、00年版では、マネジメントレビュー(9.3項)による経営判断に基づく経営施策をも含む品質経営のあらゆる問題への対応処置のことと理解されることにもなり、15年版では共通テキスト化により、内外の事情の評価 (4.1項)と取り組むべき リスク及び機会の決定(6.1項)の両規定で代替したとして予防処置の規定がなくなった§29.3
 
  同時に、08年版(8.4 c))の業務実行と製品の特性の傾向管理と予防処置という、業務実行管理の普遍的な管理手法の規定もなくなった。しかし、予防処置の用語も概念も是正処置の定義の注記#40-1に残されていることから、規定がなくなったのは規定表現の汎用化がさらに進められた15年版では予防処置が必須ではない業種や業界が少なくないと判断された結果であると考えるしかない。
      
   
(3) 規定要旨
  決められた通りに業務を行い決められた通りの結果を確実に出すための業務実行管理においては、実績評価(9.1.1項)によって決められた通りでないと判定された業務結果に対して、それが原因となって狙いの顧客満足の状態の実現に支障を来すことのないように適切な改善の処置をとらなければならない(10.1項)。このような狙いの通りでない業務結果とは、実務では不良や異常のことであり、規格では「不適合」と呼ぶ。
 
   組織は業務実行管理で検出又は発生した不適合な業務結果ないし不良や異常を処理する手はずを整え、手はずに則って狙いの顧客満足の状態の実現に支障をきたさないようにそれらを適切に処理しなければならない。手はずが効果的であるためには、処理にはa)項の1),2)の処置が含まれなければならない。1)は不良や異常が狙いの顧客満足の状態の実現に悪影響を及ぼすことを防ぐための修正処置であり、2)は発生した不良や異常が既に及ぼした悪影響を緩和し又は最小限化し、或いは、悪影響の更なる拡大を抑制する処置である。
 
  また、組織は検出又は発生した不適合な業務結果ないし不良や異常の再発を防止する手はずを整え、手はずに則って必要な範囲で必要な程度の再発を防止する是正処置をとらなければならない。是正処置が効果的であるためには、手はずにはb)~f)項を含めなければならない。g),f)項は是正処置として採用した手順や資源、その狙いの業務結果を品質経営の活動が依拠する品質経営体制の手はずに織り込むこと、実務的には是正処置として決めた業務実行の手はずの標準化を意味する。
 
  さらに、組織は、効果的な不良や異常の処理の証拠として、また、不良や異常に関連する業務実行の改善検討のための情報として、不良や異常、その処理の実績の記録を維持しなければならない。
 
   
(4) 実務の視点の解釈
  表面検査で見出した異物付着欠陥を手直しして合格品とするのは修正処置であり、ベルトコンベアの損耗部分を取り替えてその損耗片が製品に付着することを無くするのは是正処置である。しかし、ベルトコンベアの損耗が設備寿命内で進行するなら、損耗部分の取り替えは修正処置であり、損耗のないベルト材質に変えることが是正処置である。実務では、損耗の少ないベルト材質の採用有無での、日常点検でのベルト損耗の監視を再発防止対策とするのが合理的であることが多い。
     
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型
  管理基準を満たさない業務結果又は製品と半製品の処理は、それらを業務実行の手順上必然の、また、統計的管理上あり得る「不良」と、あってはならない「異常」とに区別して行う。
 
  不良は管理基準に定めた方法で、異常は異常管理票を発行し、それぞれによって狙いの顧客満足の状態の実現に支障を来すことのないように、また、既に及ぼした悪影響を緩和し又は最小限化し、悪影響の更なる拡大を抑制するように処理する。異常には必要により再発防止管理規定に基づく再発防止の処置をとり、処置を既存の業務手順に織り込む。
 
  不良と異常の発生と処理実績に関する記録を維持する。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
 ―    
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
 共通テキスト化により08年版8.5.2項(是正処置)に不適合の処理が追加記述されたものであり、是正処置についても記述の変更だけで趣旨は変わっていない。
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
 品質マニュアルの一部書き換えでよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
 問題発生時の処置を修正処置と是正処置に区別して必要な程度に合理的に行うことでよい。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 08年版から趣旨不変。予防処置の箇条は削除されたが、10.2.1のb)で水平展開が要求されている*Q36
② 08年版の不適合製品の管理と是正処置を合体させた条項*Q17
③ 類似の不適合への対応、必要な場合は決定したリスク及び機会の更新、品質マネジメントシステムの変更が求められる*Q39*Q39
 
(2) 08年版から変わっているとする解釈
― 
   
     
7. 予想される極端な審査要求
    
     

H27.9.1(H27.12.25   :2015年版)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所