ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
39
ISO9001:9001 解説:    10.3   継続的改善
- 変更点と移行対応 (31) -
<31e-01-39>
 
 
0.1
概要   こちら

   
0.2実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  
   
実績 ⇔パフォーマンス$31;    実績評価 ⇔パフォーマンス評価$31;    修正処置 ⇔修正#42p;  
    製品サービス ⇔製品及びサービス$8.1;    品質経営 ⇔品質マネジメント$19-0;    
   品質経営体制 ⇔品質マネジメントシステム$19-1-1;
   
   
1. 規定条文     (JIS Q 9001: 2015)
10.3 継続的改善
組織は,品質マネジメントシステムの適切性、妥当性及び有効性を継続的に改善しなければならない。
 
組織は、継続的改善の一環として取り組まなければならない必要性又は機会があるかどうかを明確にするために、分析及び評価、並びに、マネジメント レビュー からのアウトプットを検討しなければならない。
 
[08年版 関連規定]
8.5.1 継続的改善
組織は、品質方針、品質目標、監査結果、データの分析、是正処置、予防処置及びマネジメントレビューを通じて、品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善しなければならない。
   
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
  マネジメントレビュー(9.3項)は、狙いの顧客満足の状態の確実な実現を図る品質経営のプロセスアプローチ/PDCAサイクル§43.2の中核となる活動であり、あるサイクルと次のサイクルとの間でトップマネジメントが、顧客満足追求に係わる時代の変化を把握して、変化に対応するために戦略§35.2の変更を含む品質経営の手はずの変更と必要な処置を決める。これは、品質経営の必要な狙いの顧客満足の状態の実現に係わる繰り返しの改善の処置であり、規格の意図では「品質経営体制の継続的改善」の処置である。   
 
(2) 論理及び用語
① 改善§12.1
  「改善」は、物事をより良いものにすること(101)という意味であり、規格では「実績を高める活動」と定義される#38-1。 規格の「改善」とは、決められた通りに業務を行い決められた結果を確実に出すようにする業務実行管理の活動において、実績評価(9.1.1項)によって狙いの通りでないと判定された業務結果によって最終的な業務結果や製品サービスが狙いの通りでなくなること、そして、その結果として狙いの顧客満足の状態の実現に支障が来たすことになるのを防ぐために、その業務結果に対してとる処置のことである。この処置として規格は、修正処置と是正処置(10.2項)、継続的改善(10.3項)を挙げている。
 
② 継続的改善§12.3
  「継続的改善」は規格の「改善」の方法論のひとつであり、定義によると「改善」を反復的に行うことである#38。この「反復的活動」が品質経営のプロセスアプローチ/PDCAサイクルの繰り返しを意味し、「継続的改善」は日常的な業務実行管理で生じた問題への対応ではなく、品質方針と組織の品質目標(5.2項)との結びつきの中で行われる戦略的な問題対応としての「改善」である。これは、規格の品質経営の枠組みでは、マネジメント レビューによる狙いの顧客満足の状態の実現とそのための各業務の実績評価と問題点の抽出(9.3.2項)、それに基づく経営施策の決定(9.3.3項)と、それへの取り組み(6.1.2項)のことである。
 
③ 品質マネジメントシステム§2.1
  規格の概念では、JIS和訳「品質マネジメント」の「品質経営 」は組織の存続発展に必要な顧客満足を追求する経営管理活動の一部であり、この品質経営活動は業務の手順や方法の明確化、要員の配置や設備の用意など狙いの顧客満足の状態を実現させるように整えられた手はずに則って行なわれる。規格ではこのように品質経営のために整えられた一連の手はずが「品質経営体制」、手はずを整える活動が「品質経営体制の計画」(6.1項)であるが、JISはそれぞれ「品質マネジメントシステム」「品質マネジメントシステムの計画」と和訳している。
 
④ 品質マネジメントシステムの適切性、妥当性及び有効性の継続的改善§12.3
  JIS和訳「適切性、妥当性、有効性」は英文では“suitability, adequacy, effectiveness”である。“suitability”は目的にあっているかどうかであり、ふさわしいとか適当とかに関し$24、“adequacy”は十分であるとか不足がないとかの意味である$23。“effectiveness”は意図した通りの結果が得られるかどうかであり$25、規格では「活動が計画通りに実行されて、計画通りの結果が得られた程度」と定義される#4。すなわち、「品質マネジメントシステムの適切性、妥当性及び有効性」とは、品質経営の業務の実行の手はずが、組織の存続発展に必要な顧客満足の状態の確実な実現を図るという目的に適当であるか、実現を図るために不足なく十分であるか、そして、実際に実現を目指して業務が行われ、実現しているかということである。
 
  業務実行の手はずが狙いの業務結果を出すのに適当でなく又は十分でなければ、また、業務が手はずに則って狙いの業務結果を出すように効果的に行われなければ、必要な狙いの業務結果は得られず、必要な狙いの顧客満足の状態は実現しない。また、品質方針が真の顧客のニーズと期待に対応するものでなければ、所定の通りに業務が実行されて狙いの組織の想いの顧客満足の状態が実現したとしても、製品サービスは顧客に受け入れられず、組織の存続発展に必要な売上又は取引額を挙げることができない。
 
  「品質経営体制が適当で十分で有効であるための継続的改善」は、事業を取り巻く内外の事情の変化(4.1, 4.2項)にもかかわらず、組織が顧客のニーズと期待及び適用される法規制を満たす製品を一貫して提供する能力を維持することができるように、必要な狙い顧客満足の状態の決定とその実現の支障となる業務実行の手はずの問題点を抽出し、経営課題としてその解決に取り組み、問題を解決することを意味する。
 
  これは、規格の品質経営の枠組みでは、マネジメント レビュー(9.3項)よる品質方針及び組織の品質目標(5.2項)の見直し変更と、それに基づく経営施策の決定(9.3.3項)と、それへの取り組みの決定(6.1.2項)と業務目標と実行計画(6.2項)への展開による「改善」の活動である。なお、このことは、規格の他の部分では「品質経営体制の有効性の継続的改善」「品質経営体制の継続的改善」とも表されている。
   
   
(3) 規定要旨
  JIS和訳「機会」は“opportunity”だから「可能性、見込み」であり$9、本項の場合は問題対応が可能かどうかという意味での「改善の可能性」である。「明確にする」は“determine”であるから「評価し決定する」であり$6、「検討する」は“consider”だから「考慮する」の方がよい。この日本語を用い、また、条文の意図に沿って条文解釈をすると、第2条文は「継続的改善の一環として取り組まなければならない必要又は可能性があるかどうかを判断するためには、マネジメント レビューによる分析及び評価の結果と結論を考慮しなければならない」である。
 
  組織が存続発展に必要な顧客満足の状態の決定とそれを確実に実現する品質経営の能力を保持し続けるように、品質経営の業務実行の手はずが適当で十分で有効であるかどうかを評価し、問題点を抽出し、経営課題としての取り組みが必要で、かつ、取り組み可能な問題対応策を決めなければならない。この問題対応が継続的改善に適当で十分で有効なものであるためには、マネジメント レビューによる問題の分析、評価とその結果としての結論(9.3.2項)を基礎としたものでなければならない。
 
 
(4) 実務の視点の解釈
  例えば、A年末のマネジメント レビューではA年に発生したある重大苦情に対する厳重な再発防止対策が効果的だったことを確認したが、同時にこれが他の複数の苦情の再発防止対策をかいくぐって発生したとの認識により、品質管理機能と要員の充実を翌B年の重点取り組み経営施策に決めた。例えば、B年末のマネジメントレビューでは、B年の苦情対応への顧客の好評価を確認したが、一方で顧客新製品開発への競合X社の参画姿勢が顧客に好評という営業情報から、部品技術者の顧客開発部門との接触を強化するという経営施策を翌C年の重点取り組み事項とした。また例えば、C年末のマネジメント レビューでは、顧客の2年後の中国進出により国内生産は高級品中心となるとの見通しと、C年実績でも高級品向け部品の組織内での良品率が低いという実態の認識から、翌D年は製品品質の抜本的向上を年度品質方針として諸経営施策をとることを決定した。
     
 
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型 ←08年版8.5.1の書き直し
  変化する事業環境において事業の継続した維持発展を図るため、必要な顧客満足の状態を確実に実現させる品質経営の能力の継続的な強化に努める。このために取り組みが必要な経営課題を的確に抽出し、有効性、効率性の高い対応経営施策を決定できるよう、期末業績検討会(9.3項)での議論と検討の充実に努める。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)

 
   
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
  表現の違いだけであり、規定の趣旨は08年版8.5.1項と全く同じ。08年版では継続的改善の方法論を品質経営のプロセスアプローチ/PDCAサイクルの形で記述していたのが、15年版では継続的改善を業務実行管理での不良、異常への対応処置としての「改善」の一種として記述している。
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を新規定表現に合わせて変えるだけでよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
 経営者が常に考え、打ち出して来た事業環境変化に対応する経営施策の決め方を、抜けなく、より効果的な検討、決定ができるという観点で規格の規定に照らして見直せばよい。
 
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 顧客の要求、内部外部の課題などの経営環境が変化するので、マネジメントシステムを継続的に改善する必要がある*Q39。
(2) 08年版から変わっているとする解釈
① 用語は同じだが、新しい要求事項と認識すべき*Q17
② 分析及び評価の結果とマネジメント レビューのアウトプットを継続的改善の対象とするか検討することが求められる*Q38
 
   
     
7. 予想される極端な審査要求
    
     

H27.9.6(H27.12.25   :2015年版)
禁無断転載  (個人的使用のための複写歓迎)
サニーヒルズ コンサルタント事務所