ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
54 ISO9001:2015 改定解説    8.5.1  製造及びサービス提供の管理
- 変更点と移行対応 (46) -
<31e-01-54>
 
 
0.1
概要   こちら

   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  
 
業務 ⇔プロセス$2;   サービス活動(実行) ⇔サービスの提供$48-1;   職務能力 ⇔力量$67;
   製品サービス
⇔製品及びサービス$8.1;   製造及びサービス活動 ⇔製造及びサービスの提供$25;  
   実績評価
⇔パフォーマンス評価$31;      製品サービスの実現(活動) ⇔製品及びサービスの提供$41.4;  
   製品サービス実現の計画(活動)
⇔運用の計画$28-2;     有用性 ⇔妥当性$46;    有用性判定 ⇔妥当性確認$46;
   
   
1. 規定条文
8.5 製造及びサービス提供
8.5.1 製造及びサービス提供の管理
  組織は、製造及びサービス提供を、管理された状態で実行しなければならない。
 
  管理された状態には、次の事項のうち、該当するものについては、必ず、含めなければならない。
 
a) 次の特性事項を定めた、文書化した情報を利用できるようにする。
1) 製造する製品、提供するサービス、又は実施する活動の特性。
2) 達成すべき結果
b) 適切な監視及び測定のための適切な資源を利用できるようにし、かつ、使用する。
c) プロセス又はアウトプットの管理基準、並びに製品及びサービスの合否判定基準を満たしていることを検証するために、適切な段階で監視及び測定活動を実施する。
d) プロセスの運用のために、適切なインフラストラクチャ及び環境を使用する。
e) 必要な適格性を含め、力量を備えた人々を任命する。
f) 製造及びサービス提供のプロセスで結果として生じるアウトプットを、それ以降の監視又は測定で検証することが不可能な場合には、製造及びサービス提供に関するプロセスの、計画した結果を達成する能力について、妥当性を確認し、定期的に妥当性を再確認する。
g) ヒューマンエラーを防止するための処置を実施する。
h) リリース、顧客への引渡し及び引渡し後の活動を実施する。
 
[08年版 関連規定]
7.5.1 製造及びサービス提供の管理
組織は、製造及びサービス提供を計画し、管理された状態で実行しなければならない。管理された状態には、次の事項のうち該当するものを含めなければならない。 a) 製品の特性を述べた情報が利用できる。 b) 必要に応じて、作業手順が利用できる。 c) 適切な設備を使用している。 d) 監視機器及び測定機器が利用でき、使用している。 e) 監視及び測定が実施されている。 f) 製品のリリース、顧客への引渡し及び引渡し後の活動が実施されている。
7.5.2 製造及びサービス提供に関するプ口セスの妥当性確認
製造及びサービス提供の過程で結果として生じるアウトプットが、それ以降の監視又は測定で検証することが不可能で、その結果、製品が使用され、又はサービスが提供された後でしか不具合が顕在化しない場合には、組織は、その製造及びサービス提供の該当するプロセスの妥当性確認を行わなければならない。 妥当性確認によって、これらのプロセスが計画どおりの結果を出せることを実証しなければならない。 組織は、これらのプロセスについて、次の事項のうち該当するものを含んだ手続きを確立しなければならない。 a) プロセスのレビュー及び承認のための明確な基準; b) 設備の承認及び要員の適格性確認; c) 所定の方法及び手順の適用; d) 記録に関する要求事項(4.2.4参照); e) 妥当性の再確認
   
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
  成約又は受注して顧客に引渡す製品サービス を組織の狙いの顧客満足の状態(5.2項)の実現に適うものとするためには、製品サービス 実現の計画8.1項)で決めた通りの製品サービス を実現させなければならない。 8.5項は、これを確実にするために必要な製造及びサービス活動に関する管理項目とそれぞれの管理の要件を規定している。
 
  本項は、決められた通りの製品サービス を実現させ顧客に引渡すことを確実にするように、製造及びサービス活動の各業務の実行を管理しなければならないこと、及び、それら業務実行の管理が効果的であるための要件を規定している。
   
 
(2) 論理及び用語
① 製造及びサービス提供§25
  JIS和訳「製造及びサービス提供」の「サービス提供」は英文“service provision”の直訳であるが、15年版では「サービス」は「製品」と並んで事業商品の種類を表し§8.1、この場合は「製品の製造」に対応するサービスという商品を生み出す活動であるから、「サービス活動」又は「サービス活動の実行」がよい$48-1
 
  自動車が動くようになった、依頼の品物が届けられた、納税申告が代行され、また、ホテル や レストラン で顧客が睡眠をとり、食事をし、時間を過ごすことができたという状況や事実が「サービス」であり、この実現のために行った分解や修理、荷分けや輸送、計算や申告書作成、また、案内や給仕或いはベッドメイキングが、それぞれの「サービス活動」である§8.2
 
  すなわち、JIS和訳「製造及びサービス提供」は、製品の実現のための製品の製造と、サービスの実現のためのサービス活動実行という意味の「製造及びサービス活動」のことである。なお、15年版の製造及びサービス活動 には、08年版と同様に リリース、顧客への引渡しと引渡し後の活動も含まれる。
 
② リリース§25
  JIS和訳「リリース」の英文“release”は、「あるものを保持されていた場所から出す」という意味(101)であり、例えば、ハードウェアや素材製品の「出荷」、ソフトウェア製品たる新聞の「発行」や書籍の「出版」、新作映画の「公開」、音楽CDの「発売」に相当する。
 
③ 引渡し§25
  「引渡し」の英文は“delivery”であり、「物や手紙を宛先の人々のところに持っていく」という意味であり(101)、日本語では「配達、配送、納品、引渡し、送り届け、発送、送付」などである(109)。 規格では、「リリース」が製品を組織から外に出すことであるのに対して、出した製品を顧客に引渡し、顧客の使用に供することである。例えば、商品の手渡し、配達、輸送などであるが、機械の据付けもこれに含まれる。
 
④ 引渡し後の活動§25
  「引渡し後の活動」の英文は“post-delivery activity”であり、製品を顧客に引渡した後に組織がこの製品の品質ないし顧客満足に関して行う活動である。 94年版(4.15)が「付帯サービス」として規定していた顧客に納入した製品の補修、設備保全、補給部品供給などのサービス活動はこれに含まれる。また、製品使用相談や要員訓練、技術支援、苦情の受付や処理、品質保証契約による求償への対応活動もこれに相当する(23)。
 
⑤ 監視及び測定§28
  規格は、決められた通りに業務を行い、決められた結果を確実に出すようにする実務の業務実行管理の活動を、実績評価の活動(9章)と改善の活動(10章)に分けており、実績評価は、業務結果の情報を収集、把握し、これを狙いの結果の許容範囲を示す管理基準に照らして評価し、必要な結果が得られたどうかを判定する活動である。
 
  規格はさらに、実績評価の活動を「監視」「測定」「分析」「評価」という4種類の要素業務を次々に行なう活動とみなして記述している(9.1項)。ここに、基準に照らして合否を「評価」するために必要な業務実績に関する情報を検知することが「監視」であり、その中身を確定することが「測定」である。「監視及び測定」は実務的には一体の活動であり、両者を合わせて業務実行の進捗や結果に関する情報を取得する活動であるから、日本語では「監視測定」がよい。
 
⑥ プロセス、アウトプット、製品及びサービスの検証§30
   JIS和訳「検証」の英文“verification”は、あることが正しく又は適切かどうかの観点で調査する、又は、それを実証することを意味する$47。規格の定義では「規定された要件が満たされていることを客観的証拠を用いて実証すること」であり#28、「要件が満たされている」は「適合している」ということ#5であるから、「適合性の実証」という意味である。一方、品質管理用語では“verification”は「製品が特有の必要条件に適合しているかどうかを判定する活動」を指す#28-2から、「適合性の判定」であり、実務的には「合否判定」である。
 
  規格のJIS和訳「検証」の「合否判定の活動」は、業務実行管理§28.1において管理基準又は合否判定基準に照らして業務実行又は結果の合否を評価し判断する活動である。これは規格では、監視測定§28.2によって合否判定対象の物事に関する情報を取得し、分析してその実体を把握し、それを狙いの結果を意味する管理基準又は合否判定基準に照らして合否を評価し判定する活動と表現される。この評価、判定の活動がJIS和訳「検証」の「合否判定」の活動である。
 
  ここに、「プロセス」は英文から「業務実行」であり$2、「アウトプット」は定義#39により「業務実行の結果」であり、「製品サービス」は顧客に引き渡すことを意図した製品サービス実現業務のそれぞれの結果§8.1のことである。
 
⑦ プロセスの妥当性の確認§31
  JIS和訳「妥当性確認」の英文は“validation”であり、何らかの根拠に基づいて有効、有用、許容可能なものとする、或いは、そのことを証明する、表明するという意味であり$46、日本語では無理がなく適切であるという意味の「妥当性」よりは「有効性」の意味である。規格は『妥当性確認』の定義#29で『妥当性』を「特定の意図された使用又は適用に関する要件が満たされていること」としているから、あるものがその使用や適用の目的に適うかどうかであり、使用や適用の目的に関する有効性であり、「目的実現性」とも言うべき意味であるから、日本語では「有用性」がよい。
 
  また、同じ有効性を意味する「活動が計画通りに実行されて、計画通りの結果が得られた程度」と定義#4される用語“effectiveness”の「有効性」は、実際に効果がある、効用があるという観点の有効性であるが、用語“validation”の場合は、~だから~であるとの確立した論理に基づいて有効である、効力があると考えることができるという意味での論理に基づく有効性である。すなわち、論理的に推定できる有用性という意味である。
 
  さらに、定義#29よりJIS和訳「妥当性確認」の適切な日本語は「有用性の実証」であり、JIS和訳「検証」の場合と同じく、管理用語としては「有用性の判定」の方が適当であり、「有用化」の意味で用いられることもある。
 
  有用性判定という論理に基づく合否判定の手法は、製造業の工程保証とも呼ばれる工程の実行管理に基づく無試験無検査での合否判定という品質管理、品質保証の手法を基礎とし、同じ考えで開発された設計結果の製品の使用時における信頼性や安全性の問題を防止する設計管理の方法論と共に、規格に導入されたものである。
 
  JIS和訳「プロセスの妥当性確認」は「業務実行の有用性の判定」の意味であり、製品サービスの実体に関する監視測定情報により合否判定するのでなく、業務の実績に関する監視測定情報を用いて決められた通りに業務が行われたかどうかを評価判定することによって、その結果の製品サービスが決められた通りであるかどうかを判断する合否判定の手法のことである。このためには、必要な製品サービスを生み出すために必要で十分な業務実行の方法と条件が明確になっていなければならない。このことが「業務実行の有用化」である。
 
    
(3) 規定要旨
  組織は、製造及びサービス活動の業務の実行管理の手はずを整え、手はずに則って製品サービス実現の計画(8.1項)で決めた通りに業務を行い、決めた通りの結果を出し、決めた通りの狙いの製品サービスを実現させ顧客に引渡すことを確実にするよう、製造及びサービス活動の業務の実行を管理しなければならない。この業務実行管理が効果的であるためには、可能ならa)~h)の状態で製造及びサービス活動の業務が行われることを確実にしなければならない。
 
  a)は文書による業務指示、業務実行への手順書の利用であり、b)、d)は必要な資源(監視測定手段、物的資源と作業環境)の用意であり、e)は必要な職務能力を持つ要員の配置であり、c)、f)は業務実行の結果が狙いの通りかどうかの合否判定の実行であり、g)は業務実行の手順を決める際に考慮すべき事項であり、h)は管理が必要な業務の範囲に関する。
 
 
(4) 実務の視点の解釈
  業務実行管理では、要員の実行すべき業務とその必要な結果を明確にし、これを確実に実現する業務実行の手はずを整え、手はずに則って業務を行わせ、実際にその通りに業務が実行されて、狙いの結果が出ているかどうかを監視し、それらの合否を判定し、業務が定められた通りに実行されず又は結果が狙いの通りでない場合を検出する。結果の製品サービスを検査で合否判定できない場合は、これをこの条件で行えば確実にこの結果が出ると考えられる業務実行の実績を特に念入りに確認して、この結果で製品サービスの合否を判定する。
     
   
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型 ←08年版の7.5.1と7.5.2項の記述をそのまま統合
 作業の実行指示は、各作業に応じた作業指示帳票によって行う。作業者は、作業方法と管理基準、半製品と製品の合否判定の方法と合否判定基準など作業に必要なすべての事項を、作業指示帳票と関連する文書(加工図面、製品図面、規定、作業手順書)によって知ることができる。作業で用いる文書は、作業者が必要に応じて閲覧できる形で配付、保管、電算機画面表示する。
 
  業務の結果の異常が以降の検査で検出できない場合、又は、顧客で使用されるまで製品の異常が顕在化しない場合は、予め有効性を確認した方法と管理基準で業務を行い、その通りに実行されたことを客観的証拠によって評価して、記録に残し製品の合否を判断する。購入品、外注品の受入検査、試験はしない。購入品は、信頼ある購入先の品質証明書の確認により受け入れる。外注品は業務条件を定めた品質協定書の遵守の監視の下での外注先の検査合格証の確認により受ける。
 
  部門長は、作業の職務区分毎に職務能力を持つ要員を配置する。作業者は決められた始業前点検により業務を正常に行うことができる状況を確保する。決められたことをすべて行い、結果が管理基準又は合否判定基準を満たしていることを確認していない限りは、作業又は製品を次工程に引き継がない。あいまいなこと、異常の可能性があれば、作業をしない。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
サービス提供 → サービス活動(の実行) $48-1
プロセスの妥当性確認 → 業務実行$2の有用性判定$46;
 
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
  08年版の7.5.1(製造及びサービス提供の管理)と7.5.2項(同プロセスの妥当性確認)を合わせて単独の条項に書き直された。「プロセスの妥当性確認」の手順の規定が完全に抜け落ちたが、その意図の記述は残っており、7.5.1項の規定はほぼそのままであり、従って規定の趣旨は変わっていない。 
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
 品質マニュアル記述を統合するだけで何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 妥当性確認の記録が不要となった*Q17
 
(2) 08年版から変わっているとする解釈
① ヒューマンエラーの項目は新規要求。サービス業では特に重要として追加。人に係わる項目も追加*Q39
 
   
     
7. 予想される極端な審査要求

    
     

H27.11.18 修11.20
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サニーヒルズ コンサルタント事務所