ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
55 ISO9001:2015 改定解説    8.5.2   識別及びトレーサビリティ
- 変更点と移行対応 (47) -
<31e-01-55>
 
 
0.1
概要   こちら

   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応
 
業務 ⇔プロセス$2;    業務実行 ⇔プロセス$2;    業務出力 ⇔アウトプット#39;     合否判定 ⇔検証$47;
   サービス活動(実行) ⇔サービスの提供$48-1;   識別できるようにする ⇔識別する$14;
   製造及びサービス活動 ⇔製造及びサービスの提供$25;   製品サービス ⇔製品及びサービス$8.1;  
   製品サービス実現の計画
⇔運用の計画$28-2;   必要条件 ⇔要求事項$1
   
   
1. 規定条文
8.5.2 識別及びトレーサビリティ
  製品及びサービスの適合を確実にするために必要な場合、組織は、アウトプットを識別するために、適切な手段を用いなければならない。
 
  組織は、製造及びサービス提供の全過程において、監視及び測定の要求事項に関連して、アウトプットの状態を識別しなければならない。
 
  トレーサビリティが要求事項となっている場合には、組織は、アウトプットについて一意の識別を管理し、トレーサビリティを可能とするために必要な文書化した情報を保持しなければならない。
[08年版 関連規定]
7.5.3  識別及びトレーサビリティ
必要な場合には、組織は、製品実現の全過程において適切な手段で製品を識別しなければならない。 組織は、製品実現の全過程において、監視及び測定の要求事項に関連して、製品の状態を識別しなければならない。 トレーサビリティが要求事項となっている場合には、組織は、製品について一意の識別を管理し、記録を維持しなければならない(4.2.4参照)。
注記: ある産業分野では、構成管理(configuration management)が識別及びトレーサビリティを維持する手段である。
   
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
  本項は、製造及びサービス活動の業務実行管理(8.5.1項)を効果的に行うためには、外部提供の製品サービスの受入れ(8.4項)から組織で実現させた製品サービスの顧客への引き渡し、さらに、引き渡し後の活動を含む製造及びサービス活動の全工程で、製品サービス を個々に識別できることが必要であること、及び、そのための効果的な手はずの要件を規定している。
   
 
(2) 論理及び用語
① アウトプット§8.3
  JIS和訳「アウトプット」の英文は“output”であり、日本語では「出力」である(110)。元来は電気的制御分野の用語であるが、今日では「人又は物によりつくり出される何かの量」「機械や電算機により生み出される何か(電力、エネルギー、情報など)」の意味(103)でも用いられている。規格では「プロセスの結果」と定義#39されているが、これは「業務」「業務実行」の意味$2であるJIS和訳「プロセス」が「入力を出力に変換する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動」と定義されていること#1と軌を一にする。すなわち、JIS和訳「アウトプット」は、業務の出力であるから「業務出力」であり、定義の通り「業務実行の結果」のことを指す。
 
  08年版では、業務実行の結果は「製品」と定義されているが#13p、業務実行の結果そのものを表す場合には用語「業務出力」が「設計・開発からの業務出力」のように用いられている。15年版の定義#39では、業務実行の結果は「業務出力」として、この用語を「設計・開発からの業務出力」(8.3.5項)のように業務実行の結果そのものを表す場合と、業務実行の結果としての「製品サービス」を表す場合の両方で用いている。規定表現において厳密な区別があるとは思えないが、一般に最終製品サービス に近い形の業務結果には用語「製品サービス」が用いられ、また、最終製品サービスから遠い形の素材、部品、半製品などのような業務結果たる製品サービス と業務結果そのものを表す場合には用語「業務出力」が用いられ、両方を表す場合も「業務出力」が用いられているように見える。
 
② 監視及び測定の要求事項
  規格の「監視」と「測定」は、決められた通りに業務を行い、決められた結果を確実に出すようにする業務実行管理の活動(9.1.1項)において、決められた通りであるかどうかを「評価」する合否判定のために必要な情報を検知することとその中身を確定することを意味する§28。「監視及び測定」は両者を合わせて、業務実行の進捗や結果に関する情報を取得する活動であり、日本語では「監視測定」である。また、JIS和訳「要求事項」の英文は“requirement”であり、この場合は「必要条件」の意味である$1
 
  JIS和訳「監視及び測定の要求事項」は「監視測定に関する必要条件」であり、どの工程、どの時点で、どのような方法でどんな情報を取得しなければならないという観点からの監視測定 活動に関する必要条件のことを指す。これに関連しての規定の「業務出力の状態」とは製造業中心の94年版(4.12)では「実施した試験・検査についての製品の適合又は不適合」と表現されているように、製品サービス実現の計画 (8.1項)で決められた業務実績の合否判定の結果の合否のことである。
 
③ 識別§32
  JIS和訳「識別する」の英文は“identify”である。これには「特定」「発見」「区別」の3つの意味があり$14、08年版TC176指針(6)では「物事が何であるかをはっきりさせること」と説明されている。トレーサビリティに関連して用いられている本項の規定では、ある物事を他の物事と「区別」することであり、「見分けることができるようにする」である$14。すなわち、日本語では「見分ける」ことを意味(113)する「識別する」ではなく、「見分けることができるようにする」の「識別できるようにする」が正しい和訳である。
規格の意図の「識別できるようにする 」とは簡単に言えば、識別できるようにしておかなければならない物事に名前をつけるか、製品サービスの場所を区別することである。
 
④ トレーサビリティ§32
  JIS和訳「トレーサビリティ」の英文は“traceability”であり、「由来や原因をたどって調べる(101)」の“trace”が由来であり、今日では「トレーサビリティ」と呼ばれることが多いが、「履歴追跡性」「追跡可能性」である。規格では「あるものの履歴、使われ方又は所在を追跡できること」と定義#33され、材料や部品の入手先、製品実現工程の履歴、配送方法や引渡し後の製品の所在を明らかにすることを含むと説明されている#33-1
   
   トレーサビリティが例えば、ある製品がどんな購買品を使用して、どのような製造及びサービス活動実行の工程で、どのような要員が、どの設備を使ってどの工程条件で製品サービスを実現し、どのような検査や試験で合否判定されて……というように履歴を追跡できることであるとすると、まず、組織で多数使用され又は存在する製品サービス、設備、工程、文書等々の関連する物事のそれぞれに、他の同種の物事と見分けられるような名前がつけられていることが必要である。「トレーサビリティ」と「識別できるようにする 」とは異質の概念ではあるが、トレーサビリティ の確立には関連する物事が識別できるようになっていることが不可欠であるという意味で両者には密接な関連がある(21)
 
    
(3) 規定要旨
  組織は、製造及びサービス活動(8.5.1項)の全工程で、それぞれの段階、時点での個々の製品サービスが同種の他のものと見分けることが出来るようにする手はずを整え、手はずに則って個々の製品サービスとその状態を他と混同することのない状況を維持しなければならない。
 
  この手はずでは、製品サービスを見分けられるだけでなく、業務実行管理で行う業務実績の評価判定(9.1.1項)の結果の合否もわかるようになっていなければならず、また、必要なら、個々の製品サービスについて製造及びサービス活動の履歴を遡及調査できるように、製品サービス を唯一無二の形で識別できるようになっていなければならない。
 
 
(4) 実務の視点の解釈

     
   
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型 ←08年版と全く同じ
 製品が顧客で問題を起こした場合に関係のある製品の範囲の特定と原因究明が可能な程度と単位で、購買品、半製品、最終製品に識別名称を付け、これと注文の識別名称を用いて、購買、加工、検査、保存、納入の指示及び実績の記録を行う。製品の設計識別名称は設計変更により図番の孫番を変化させる。購入品には購入先の付けた識別名称と受入れ月日を用いる。各工程では、業務結果が管理基準又は合否判定基準を満たしていることを確認して合否の記録をしてから、作業又は半製品、製品を次工程に引き継ぐ。
 
  製造履歴の記録の保管期間は、顧客対応に必要な期間を最短として決める。外注先による業務の履歴の記録と外注先での保管の範囲と期間は、品質協定書に定めて外注先と合意する。購入先での製品サービスに係わる記録と保管は購入先の実態を認める。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
識別する → 識別できるようにする$14 (単純な誤訳)
   
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
 趣旨は08年版と全く同じである。規定条文も、識別できるようにする対象が08年版の「製品」から「アウトプット」に変わっただけで、ほとんど変わっていない。
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
 品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 08年版と大きく変わらない*Q39
② 08年版とほとんど同じ*Q17
③ 08年版と趣旨は変わらない*Q36
 
(2) 08年版から変わっているとする解釈

 
   
     
7. 予想される極端な審査要求
    
     
H27.11.19(修11.20)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所