ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
62 ISO9001:2015 改定解説:   4.1    組織及びその状況の理解  
           
- 変更点と移行対応 (54) -
<31e-01-62>

 

0.1 概要
  こちら

 
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  (英語解釈 抜粋)
 外部及び内部の事情 ⇔外部及び内部の課題#65;   組織の置かれた状況 ⇔組織の状況§63;  
  製品サービス ⇔製品及びサービス$8.1;   品質経営(活動) ⇔品質マネジメント$19-0;  
  品質経営体制
⇔品質マネジメントシステム9-1-1  

 
1. 規定条文     
4. 組織の状況
4.1 組轍及びその状況の理解
組織は、組織の目的及び戦略的な方向性に関連し、かつ、その品質マネジメントシステムの意図した成果を達成する組織の能力に影響を与える、外部及び内部の課題を明確にしなければならない。
 
組織は、これら外部及び内部の課題に関する情報を監視し、レビューしなければならない。
 
注記1 課題には,検討の対象となる,好ましい要因又は状態,及び、好ましくない要因又は状態が含まれ得る。
注記2 外部の状況の理解は、外部の状況の理解は,国際,国内,地方又は地域を問わず,法令,技術,競争,市場,文化,社会及び経済の環境から生じる課題を検討することによって容易になる。
注記3 内部の状況の理解は,組織の価値観,文化,知識及びパフォーマンスに関する課題を考えることによって容易になる。
[08年版 関連規定]
5.6.1 マネジメント レビュー 一般
トップマネジメントは、組織の品質マネジメントシステムが、引き続き、適切、妥当かつ有効であることを確実にするために、あらかじめ定められた間隔で品質マネジメントシステムを レビュー しなければならない。このレビューでは、品質マネジメントシステムの改善の機会の評価、並びに品質方針及び品質目標を含む品質マネジメントシステムの変更の必要性の評価も行わなければならない。
5.6.2 マネジメント レビューへのインプット
マネジメント レビュー へのインプットには、次の情報を含めなければならない。  f) 品質マネジメントシステムに影響を及ぼす可能性のある変更;
 
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
  4章は、規格の品質経営体制に係わる全般的な要件を規定している。
 
  規格は、製品サービスの顧客満足の追求により組織の永続的な存続発展を図る品質経営の在り方を規定している。その基本要件は、あるべき顧客満足の状態に関する経営戦略を明確にし、時代の変化に応じて適切に変更し、それを確実に実現させるというプロセスアプローチ/PDCAサイクル(4.4項)による循環的活動として、品質経営活動を行うことである。
 
  この循環活動としての品質経営の活動においては、トップマネジメントが マネジメント レビュー(9.3項)によって時代の変化を把握、評価して、組織の維持発展に必要な顧客満足の状態の継続的維持という観点で、経営戦略の見直し変更を含み、変化に対応する。
 
  本項は、4.2項と合わせて、このような品質方針及び組織の品質目標の見直し変更の検討を効果的に行うために、その検討の基礎としなければならない内外の事情の変化の情報に関して、情報の内容及び情報の収集と取り扱いについての要件を規定している。
  
(2) 論理及び用語
➀ 無限持続体としての組織§35.2
  経営論では経営管理は事業組織を無限持続体として存続発展させる活動であり、組織を取り巻く外部環境に組織の有する潜在能力を適応させながら創業の目的を達成していく過程であるとされる。どのように適応させるかは、組織の将来像としてのあるべき姿とそこに到達するための道筋或いは方策を示す経営戦略として明らかにされる。
 
  この戦略は一般に経営方針として表され、特定期間での到達度は経営目標として表される。組織が永続的に存続発展するためには、外部環境と組織の能力の変化に合わせて経営戦略、経営目標を見直し、常にその時代の適切なものであるように必要な変更を行い、設定した経営目標の達成を図るように業務を行い、以て必要な業績を挙げ続けなければならない。
 
② 品質方針、品質目標の定期見直し
  規格の品質経営は、組織の存続発展に必要な顧客満足の状態の実現維持を図る組織の経営管理活動の一部或いは一側面である。この顧客満足とは不良品を出さないことを含み、顧客に製品サービスを買ってもらう又は取引を続けてもらうために顧客に抱いてもらう必要がある組織と製品サービスに対する好感、満足感、安心感、信頼感の状態や程度のことである。
 
  規格では、この品質経営の活動を、経営戦略を時代に適合させつつ組織目的の達成を図るというマネジメントサイクル§33の考えを基礎としながら、品質経営の活動をプロセスアプローチ/PDCAサイクルの繰り返しによる、必要な狙いの顧客満足の状態の確実な実現を図る活動として表している。
 
  組織が永続的に存続発展するには、品質経営では、組織の経営戦略の一環としてのあるべき顧客満足の状態とその実現のための道筋或いは方策を決め、経営方針、経営目標の一部としての品質方針及び組織の品質目標(5.2項)として表さなければならない。また、定期的にマネジメントレビュー(9.3項)を行って、外部環境と組織の能力の変化に対応して品質方針及び組織の品質目標を見直し変更し、そのような時代の状況に合った顧客満足の状態の実現を図らなければならない。
 
③ 組織の状況§19.1
  JIS和訳「組織の状況」は英文では“context of the organization”であるが、「状況」の“context”は、何かが存在し又は起きる状態、環境、あるものの周囲の)状況などを意味する英語であり、何かの状況ではなく、その中に何かが存在している状況、或いは、何か取り巻く状況ということである$63
 
  規格の定義では「組織の目標設定及び達成の取組みに影響する内外の事情」であり#51、この概念は「組織の事業環境(business environment)」や「組織環境(organizational environment)」と呼ばれることもあるとの注釈が付されている#51-1。 同定義によると、規格の意図のJIS和訳「組織の状況」は、組織の事業活動に影響を及ぼす組織の内外の事情のことであり、その中で事業活動が行われている組織の事業活動に係わる環境のことである。従って「組織の状況」ではなく、組織の内外の事情という意味での「組織の置かれた状況」である。
 
  指針規格(155)では、規格の意図の「組織の置かれた状況」が、「組織の目的、目標、持続可能性に影響する要因」のことであるとし、内部要因として組織の理念、文化、知識、業績を挙げ、外部要因として法的、技術的、競争、市場、文化的、社会的、経済的の各環境を挙げている。
 
  上記の定義に引用されている経営用語の「組織環境」は、例えば「組織を取り巻き、組織の業績、操業、資源に影響を及ぼす強制力又は制度から成る」と定義され、影響要因は内部要因と外部要因に分けられるとされる。内部要因は、とりわけ要員の業務姿勢に関係し、組織文化、組織理念、経営者の行動様式などであり、外部要因は、事業の機会と脅威の決定に関係し、顧客、世論、経済の状態、政府による規制、競争などである(99.6)
 
  このように、規格の意図の「組織の置かれた状況」は、経営論で経営戦略の決定§35.2の基礎となる組織の外部環境と組織の有する能力の状況のことであり、規格では品質方針及び組織の品質目標(5.2項)の見直し変更の基礎となる下記④の「外部及び内部の事情」のことである。
 
  なお、経営分析の分野などで“organizational context”を、組織を取り巻く様々なものや状況、情勢とのつながりの観点での組織の有り様といった意味で用いられている場合もある。この場合は「組織の特質」と和訳するのがよい。規格の4章の構成に鑑みると、4章の標題のJIS和訳「組織の状況」の“organizational context”は「組織の特質」の意味で用いられているようにも考えられる。
 
④ 外部及び内部の課題§19.2
  JIS和訳「課題」は英文では“issue”であり、これは議論や話合いの主要な題目という意味であり、共通テキスト概念説明文書(16)でも重要な話題、議論や討論する問題、変化する周囲の状況のことであると説明されている。取り組むべき問題という意味(113)の「課題」や、問題があるという意味の「問題」ではなく、話題や題目の事柄の意味の「問題」のことである$65。さらに、条文からは、上記③の組織と組織の置かれた状況がどのようなものであるかに関する「問題」のことであることが明らかであるから、「課題」ではなく「事情」が合っており、JIS和訳「外部及び内部の課題」は「外部及び内部の事情」のことである。
 
  規格の文脈から「外部及び内部の事情」は、組織と組織の置かれた状況がどのようなものであるかに関するして組織が日常的に把握しておかなければならない内外の事情のことであり、規格の意図の「外部及び内部の事情」とは、組織の品質経営活動に影響を及ぼす要因たる「組織の置かれた状況」の中身のことであり、組織の置かれた状況の外的、内的の各要素のそれぞれの状況のことである。
 
  規格の品質経営活動では トップマネジメントは、変化する「外部及び内部の事情」の中から取組まなければならない「課題」を抽出するという経営判断を行い、「課題」に対応する経営施策を決定する。規格ではこのような「課題」は6.1.1項で「取り組む必要のあるリスク及び機会」、また、経営施策は6.1.2項で「リスク及び機会に取り組む処置」と、それぞれ表現される。
 
  また、この「外部及び内部の事情」の変化とは、規格ではマネジメント レビューで評価すべき「品質経営体制に関連する外部及び内部の事情の変化」のことであり(9.3.1 b)項)、08年版(5.6 f)) の「品質経営体制に影響を及ぼす可能性のある変化」のことである。すなわち、経営論における経営戦略の見直し検討の基礎となる外部環境と組織の能力の変化§35.2のことである。規格では、これを基礎としてトップマネジメントが品質方針及び組織の品質目標の見直し検討を行う。
 
 
(3) 規定要旨
  組織は、マネジメントレビュー(9.3項)により品質方針及び組織の品質目標(5.2項)を含む品質経営体制の見直し検討に用いることが必要な、変化する外部及び内部の事情に関する情報(9.3.1 b)項)を特定し、日常的に収集し、分析する手はずを整えなければならない。また、手はずに則って情報を収集し、組織の維持発展に必要な顧客満足の状態の実現という観点から対応が必要かどうか分析評価しなければならない。
 
 
(4) 実務の視点の解釈
  多くの組織では経営理念に近い品質基本方針があり、文書化されていなくともその実践を通じて品質基本方針やその精神が各種の業務の方法や基準に反映されている。大抵の組織では品質基本方針を基礎として、事業環境の変化と組織の業務能力の実態に照らして必要と考えられる重点取り組み事項を決めて、年度方針、年度目標としてこれに取り組むという形をとっている。このためにトップマネジメントは影響を受け、対応が必要になる可能性のある事業環境の変化には常に関心を持ち、或いは、そのような情報が組織として収集される体制を整えている。
 
 
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型 ←08年版の移動と書き直し
  期末総合検討会(9.3項)による品質方針(5.2項)の見直し検討の基礎として必要な外部環境の変化と業務能力の問題点に関係する情報を日常的に収集し、必要に応じて分析する(9.1.3項)。
 
  これらの情報はトップマネジメントが決め、期末総合検討会の議事録書式に明確にする。重要な内容又は緊急の対処が必要と考えられる変化や問題点の情報は、月例業務検討会(7.4項)でのトップマネジメントの評価に供する。
 
 
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
① 組織の状況 → 組織の置かれた状況(4.1項標題)、組織の特質(4章標題)$63
② 外部及び内部の課題 → 外部及び内部の事情$65
③ 組織とその状況の理解 → 組織とその置かれた状況の認識$64
 
 
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
  08年版ではマネジメントレビュー(5.6.1)により「品質方針及び品質目標の変更の必要性の評価を行わなければならない」との規定があり、そのために評価分析すべき事項としてのマネジメント レビューへのインプット(5.6.2)のひとつのf)項に「品質経営体制に影響を及ぼす可能性のある変化」が規定されている。これが15年版では「品質経営体制に関連する外部及び内部の事情」に変わり(9.3.2 b)項)、どのような事情の監視が必要かを決定し、その情報を収集、分析することが本項で明示の規定となった。15年版は規定表現の変更だけであり、経営戦略を組織の外部環境と組織の能力の変化に適応させるよう見直し変更するという規定の趣旨は全く変わっていない。なお、08年版でも顧客満足業績に関する情報についてのみは、情報の監視と入手及び分析の必要が明示的に規定されている(8.2.1)。
 
 
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  08年版でもマネジメントレビュー(5.6項)を行うために本4.1、4.2項の規定のような情報の日常的な収集と分析が行われているはずであるから、何も変えることはない。しかし、マネジメントレビューで評価、検討している事柄(5.6.2項)が、組織の品質経営の戦略である品質方針と組織の品質目標の見直しに必要な外部環境と組織の能力を表すものとして必要、十分であるかどうかについて再検討してみるのが有意義であろう。
 
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
   実際にトップマネジメントや管理者の頭の中にあってそれに基づいて業務実行を指揮し、方向づけており、又は、業務基準の中に反映されている製品品質と顧客対応についての組織の実際の考え方を整理して、それを品質方針とすることが必要である。次にこのような品質方針を決めた背景の事情を外部環境と組織の能力とに分けて改めて考えてみる。
   組織の継続的な存続発展のためには、それらの事情が今後変化すれば、新たな製品品質や顧客対応が必要になるのであるから、それら事情の変化を把握するための事項を選択し、その情報の収集、分析の方法を決める。それらの情報は恐らく、トップマネジメントや管理者がいつも関心を持ち、気にかけ、又は、定期会議に報告させている類の情報と一致するはずだ。
   それらの情報の組織としての収集と分析、報告の手はずを明確にし、今後確実に実行されるよう管理の手はずを整えることが移行対応である。あわてて特別な情報収集の手順を決めることはない。これらの情報は何も特別なものではなく、規格の他の条項の規定に関係するものであるから、それらを満たす中で情報の収集、分析の方法、責任者が明らかになる。
 
 
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 文章は新規だが、要件は08年版の序文0.1に含まれている。QMSが組織の存在する環境に影響されることもリスクにも言及されている。製品及びサービスが利害関係者のニーズと期待<要求事項>を満たさなければならないとは書かれていない。規格の意図は不変*Q9
② 4章全体の組織と取り巻く状況の考慮の必要の規定は、多かれ少なかれ明らかな常識を明示的にしたもの*Q13
③ QMSの適用範囲を決める際に考慮すべき条項。やっていると思われる点が要求事項として明示されている*Q11
 
(2) 08年版から変わっているとする解釈
③ 従来の顧客・法的要求事項、各種資源、力量のみならずステークホルダーのニーズと期待を含めた要求事項をQMSのインプットとすること、及び、これらが将来どう変わっていくかを考慮することが求められている*Q7。
④ 組織とその状況、利害関係者のニーズと期待の理解を踏まえた適用範囲の決定、QMSの構築が要求される。これらの理解は繰り返し行うことが必要*Q10。
⑤ 組織の置かれた状況は新規要件。これを考慮することにより、組織に合った品質マネジメントシステムの設計と実行が可能となる*Q8。
⑥ 品質マネジメントシステムの焦点が純粋の内部事情から外部要素に当てられるように方法論が変更された*Q6
⑦ 「内部、外部の課題を明確にする」とは、経営戦略を立てることが要求事項として明確になったということ*Q14
⑧ QMSの計画策定の際とQMSの開発のインプットとして役に立つ課題と要件の決定が要求されている*Q15
⑨ 外部的と内部的なコンテキストの作成が必要。これには外部と内部の課題一覧表がよい。利害関係者には顧客、供給者、社員、株主、地域社会を含めなければならない。それを明確にしなければならない*Q17
⑩SL採用による新規箇条。品質マネジメントシステムの計画の際に、組織の置かれた状況の理解が求められている。課題には好ましい事、好ましくない事の両方が考えられる*Q35
① SL採用による新規箇条。品質マネジメントシステムの計画の際に、組織の置かれた状況の理解が求められている。課題には好ましい事、好ましくない事の両方が考えられる*Q35。
② 組織の現状にマッチしたマネジメントシステムの構築のために追加*33
 
 
7. 予想される極端な審査要求
① 内部及び外部の課題の一覧表と、それぞれに関連して監視する情報、監視の方法、責任者の一覧表
② 利害関係者とそれぞれの要求の一覧表、それぞれに関連して監視する情報、監視の方法、責任者の一覧表
③ これら一覧表の定期的見直しと変更、及び、その記録

 
H26.7.29(修・追8.18, 8.19 )  9.1(構造全面変更);9.2(表記則修正); 10.4(構造微修正); H27.3.12(マニュアル記述修正)  
3.13(改:変更点の説明に08年版5.6.2 f)項の存在が欠落していた);  11.4(2015年版に)  修 11.22, 11.27
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サニーヒルズ コンサルタント事務所