ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
63 ISO9001:2015 改定解説  4.2   利害関係者のニーズ及び期待の理解
- 変更点と移行対応 (55) -
<31e-01-63>
 
 
0.1
概要   こちら

   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  (英語解釈 抜粋)
 
外部及び内部の事情 ⇔外部及び内部の課題$65;   顧客のニーズと期待 ⇔顧客要求事項$1-2-2;
  製品サービス ⇔製品及びサービス$8.1;  品質経営 ⇔品質マネジメント$19-0;
  品質経営体制
⇔品質マネジメントシステム$19-1-1;
   
   
1. 規定条文
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
次の事項は、顧客要求事項並びに適用される法令・規制要求事項を満たした製品及びサービスを一貫して提供する組織の能力に影響又は潜在的影響を与えるため、組織は、これらを明確にしなければならない。
 
a) 品質マネジメントシステムに密接に関連する利害関係者
b) 品質マネジメントシステムに密接に関連するそれらの利害関係者の要求事項
 
組織は、これら利害関係者及びそれらの関連する要求事項に関する情報を監視し、レビューしなければならない。
 
[08年版 関連規定]
5.6.1 マネジメント レビュー   一般
トップマネジメントは、組織の品質マネジメントシステムが、引き続き、適切、妥当かつ有効であることを確実にするために、あらかじめ定められた間隔で品質マネジメントシステムを レビュー しなければならない。このレビューでは、品質マネジメントシステムの改善の機会の評価、並びに品質方針及び品質目標を含む品質マネジメントシステムの変更の必要性の評価も行わなければならない。
5.6.2 マネジメント レビューへのインプット
マネジメント レビュー へのインプットには、次の情報を含めなければならない。; f) 品質マネジメントシステムに影響を及ぼす可能性のある変更;
5.2 顧客重視
顧客要求事項の向上を目指して、トップマネジメントは顧客要求事項が決定され、満たされていることを確実にしなければならない。
7.2.1 製品に関連する要求事項の明確化
組織は、製品に適用される法令・規制要求事項を明確にしなければならない。
   
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
  本項は、品質方針及び組織の品質目標(5.2項)の効果的な見直し変更の検討の基礎としなければならない組織の外部及び内部の事情の変化の情報(4.1項)の中に、利害関係者のニーズと期待の変化の情報を含めなければならないことを明確にしている。
   
(2) 論理及び用語
① 外部及び内部の課題
  JIS和訳「課題」は英文では“issue”であり、これは議論や話合いの主要な題目という意味であり、共通テキスト概念説明文書(16)でも“important topics”(重要な題目)である。取り組むべき問題という意味(113)の「課題」ではなく、注目すべき問題という意味であるから、日本語としては「外部及び内部の事情」が適当である$65
 
  様々な「事情」の中から取組まなければならない「課題」を抽出するというのが道理である。規格では トップマネジメントは、変化する「外部及び内部の事情」の中から取組まなければならない「課題」を抽出するという経営判断を行い、「課題」に対応する経営施策を決定する責任がある。規格ではこのような「課題」は6.1.1項で「取り組む必要のあるリスク及び機会」、また、経営施策は6.1.2項で「リスク及び機会に取り組む処置」と、それぞれ表現される。
 
  さらに、この「外部及び内部の事情」の変化とは、規格ではマネジメント レビューで評価すべき「品質経営体制に関連する外部及び内部の事情の変化」のことであり(9.3.1 b)項)、08年版(5.6 f)) の「品質経営体制に影響を及ぼす可能性のある変化」のことである。すなわち、経営論における経営戦略の見直し検討の基礎となる外部環境と組織の能力の変化§35.2のことである。規格では、これを基礎としてトップマネジメントが品質方針及び組織の品質目標(5.2項)の見直し検討を行う。
 
② 利害関係者
  規格では利害関係者とは、組織の決定や活動が影響を及ぼす相手と、組織の方が影響を受ける相手#61のことであり、例として顧客、所有者、組織内の人々、提供者、銀行家、規制当局、組合、パートナー、社会が挙げられている#61-1。経営論では、組織の事業活動を進める上で主体的に関係を持たなければならない関係者のことを指し、組織の戦略や経営目標の決定は、これら関係者に及ぼし、又は、及ぼされる様々な影響を考慮し、組織と利害関係者の利害を調整することと見做される(54)
 
  どのISOマネジメントシステム規格も、その取り扱う経営分野における利害関係者のニーズと期待に効果的に応える分野経営の在り方を示すものであるから、それぞれに組織が慮る必要のある利害関係者のニーズと期待を明確にしている。規定の趣旨からは4.2項は4.1項に包含される重複規定であるが、組織が特定の利害関係者を慮る必要のあることを明確にするために4.2項が設けられ、共通テキストで「利害関係者のニーズと期待」という共通的表現が用いられたものと受けとめてよい。
 
  ISO9001規格の品質経営で慮らなければならないのは、組織の顧客満足の追求に関係するニーズと期待を持つ利害関係者である。規格では、組織が顧客満足の追求により永続的な維持発展を図るために「顧客のニーズと期待及び適用される法規制を満たした製品サービスを一貫して提供する」ことが必要と明確にされている(1章a)項)。このことから、組織が主体的に関係を持たなければならない利害関係者とは顧客と規制当局である。
    
 
(3) 規定要旨
  組織の狙いの顧客満足の状態の在り方とその実現に影響を及ぼす外部及び内部の事情の変化に関する情報(4.1項)の一環として、必要な利害関係者及びそのニーズと期待の変化に関わる情報を特定し、日常的に収集し、分析する手はずを整えなければならない。また、手はずに則って情報を収集し、他の外部及び内部の事情の変化と合わせて、組織の維持発展に必要な顧客満足の状態の継続的維持という観点で、変化する状況に対して対応が必要かどうかを検討しなければならない。
 
 
(4) 実務の視点の解釈

     
   
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型←08年版(5.6.2 f))の実態を記述
  期末総合検討会(9.3項)による品質方針(5.2項)の見直し検討の基礎として収集、分析する外部環境の変化に関係する情報(4.1項)に、顧客のニーズと期待の変化、及び、法規制の制定改訂の情報を含める。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
① 利害関係者のニーズと期待の理解→ 利害関係者のニーズと期待の認識$64
   
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
  マネジメントレビュー(5.6.1)による品質方針と品質目標の見直し変更の基礎として評価分析すべき事項は、08年版では「品質経営体制に影響を及ぼす可能性のある変化」であったが(5.6.2 f))、15年版では「品質経営体制に関連する外部及び内部の事情」に変わり(9.3.2 b)項)、共通テキストの採用のためにそれらの情報収集の必要が、4.1項と4.2項に分けて明示的に規定されることになった。表現の違いと規定の明示化だけの問題である。
       
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
 品質マニュアルに実態を記述するだけでよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  頭の中は変える必要がなく、収集する情報の整理の際に抜けのないようにすればよい。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 文章は新規だが、要件は08年版の序文0.1に含まれている。QMSが組織の存在する環境に影響されることもリスクにも言及されている。製品及びサービスが利害関係者のニーズと期待<要求事項>を満たさなければならないとは書かれていない。規格の意図は不変*Q9
② 4章全体の組織と取り巻く状況の考慮の必要の規定は、多かれ少なかれ明らかな常識を明示的にしたもの*Q13
③ QMSの適用範囲を決める際に考慮すべき条項。やっていると思われる点が要求事項として明示されている*Q11
① 08年版の作業環境と全く同じ*Q17
② 08年版の6.4と等価な要求。一般的な表現としてこのようなタイトルに*Q5
 
(2) 08年版から変わっているとする解釈
① QMSに密接に関連する利害関係者とそれら利害関係者の要求事項を明確にする*Q35
② 顧客のみを見ると社会的に受け入れられない製品サービスになる可能性がある。利害関係者のニーズと期待を理解した上で品質マネジメントシステムの構築が必要。利害関係者の要求事項のすべてが組織の要求事項ではない*Q39
③ SL採用により追加された。すべての利害関係者ではなく、密接に関連する利害関係者を明確にする*Q38
 
   
     
7. 予想される極端な審査要求
① 利害関係者とそれぞれの要求の一覧表、それぞれに関連して監視する情報、監視の方法、責任者の一覧表
② これら一覧表の定期的見直しと変更、及び、その記録
    
     
H26.7.29(修・追8.18, 8.19 )  9.1(構造全面変更);9.2(表記則修正); 10.4(構造微修正); H27.3.12(マニュアル記述修正)  
3.13(改:変更点の説明に08年版5.6.2 f)項の存在が欠落していた);  11.23(独立、2015年版に)  
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サニーヒルズ コンサルタント事務所