ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
21 ISO9001 改定解説(DIS):   4.4  品質マネジメントシステム及びそのプロセス
- 変更点と移行対応 (14) -
<31e-01-21>
 
 
0.1 概要   こちら

 
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  (英語解釈 抜粋)
 
業務 ⇔プロセス$2経営管理 ⇔マネジメント $19 ;  経営管理体制 ⇔マネジメントシステム$19-1;  
 
製品サービス ⇔製品及びサービス$8.1;  品質経営(活動) ⇔品質マネジメント$19-0;  
   品質経営体制
⇔品質マネジメントシステム$19-1-1;     要件 ⇔要求事項$1
 
 
1. 規定条文 (SL共通テキストJIS仮訳又は山田秀・須田晋介の私訳; これらのない部分は筆者のJIS的和訳)
4.4.1 組織は、この規格の要求事項に従って、必要なプロセス及びそれらの相互作用を含む、品質マネジメントシステムを確立し、実施し、維持し、かつ、継続的に改善しなければならない。
 
  組織は、品質マネジメントシステムに必要なプロセス及びそれらプロセスの組織全体にわたる適用を決定しなければならない。また、次の事項を実施しなければならない。
 
a) これらプロセスに必要なインプット、及び、これらのプロセスから期待されるアウトプットを明確にする。
b) これらプロセスの順序及び相互作用を明確にする。
c) これらプロセスの効果的な運用及び管理を確実にするために必要な判断基準及び方法(監視、測定及び関連するパフォーマンス指標を含む)を決定し、適用する。
d) これらプロセスに必要な資源を明確にし、及び、それが利用できることを確実にする。
e) これらプロセスに関する責任及び権限を割当てる。
f) 6.1の要求事項に従って決定したとおりにリスク及び機会に取り組む。
g) これらプロセスを評価し、これらのプロセスの意図した結果の達成を確実にするために必要な変更を実施する。
h) これらのプロセス及び品質マネジメントシステムを改善する。
 
4.4.2 組織は、必要な程度まで、次の事項を行わなければならない。
 
a) プロセスの運用を支援するための文書化した情報を維持する。
b) プロセスが計画どおりに実施されたと確信するための文書化した情報を保持する。
 
[08年版 関連規定]
4.1 一般要求事項 (4. 品質マネジメントシステム)
  組織は、この規格の要求事項に従って、品質マネジメントシステムを確立し、文書化し、実施し、維持しなければならない。また、その品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善しなければならない。組織は、次の事項を実施しなければならない。
a) 品質マネジメントシステムに必要なプロセス及びそれらの組織への適用を明確にする。;  これらのプロセスの: b) 順序及び相互関係を明確にする。;  c) 運用及び管理のいずれもが効果的であることを確実にするために必要な判断基準及び方法を明確にする。;  d) 運用及び監視を支援するために必要な資源及び情報を利用できることを確実にする。;  e) これらのプロセスを監視し、適用可能な場合には測定し、分析する。;  f) これらのプロセスについて、計画どおりの結果を得るため、かつ、継続的改善を達成するために必要な処置をとる。 組織は、これらのプロセスを、この規格の要求事項に従って運営管理しなければならない。要求事項に対する製品の適合性に影響を与えるプロセスをアウトソースすることを組織が決めた場合には、組織はアウトソースしたプロセスに関して管理を確実にしなければならない。これらのアウトソースしたプロセスに適用される管理の方式及び程度は、組織の品質マネジメントシステムの中で定めなければならない。
 
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
   ISO9001規格は、組織の事業の存続発展のために必要な顧客満足を追求する効果的な品質経営活動の在り方の規範である。規格の意図する真に効果的な品質経営活動は、その一連の業務ないし業務実行の手はずの集合体としての品質経営体制の下で、それぞれの業務が管理された状態で人々が協働する体系的で組織的な活動である。
 
  規格は、このような品質経営活動の在り方を、品質経営体制を構成する各業務の実行と管理に関する要件として規定している。ここに、これら業務とは規格の各条項の標題に対応する業務のことであり、これら業務の在り方に対する要件は、プロセスアプローチと呼ばれる品質経営活動の方法論に基づいて記述されている。
 
  本項は、規格の意図する効果的な品質経営のための品質経営体制の在り方の基本をプロセスアプローチ論に沿って、しかし一般的な表現で規定している。規格の他の条項では、品質経営体制を構成する各業務についてのそれぞれの固有の要件を、同じくプロセスアプローチ論に立った、かつ、具体的な表現で規定している。
 
(2) 論理及び用語
① ISO9001規格の効用§1
  規格は、顧客満足の追求を通じて組織の事業の継続的な発展を図る効果的な品質経営の在り方に関する国際標準である。規格は4~10章の各条項で効果的な品質経営に必要な業務を取り上げ、その実行に関する要件を規定している。これら要件は、世界の品質保証活動の専門家が、品質で成功を納めた世界の企業の体験から学び、最先端の且つ成功実績があるとして合意した業務要素と手法を整理し、体系化して表されたものである(10)
 
  規格の規定の有用性は成功企業の実績で証明されており、組織が規定の要件を満たして品質経営を行なえば、不良品を顧客に引渡さないことを含む必要な顧客満足の状態を一貫して実現し、時代の変化にも対応して市場競争を勝ち抜き、無限持続体として存続発展することができる。
 
② 品質マネジメント§2
  JIS和訳「品質マネジメント」の英文は“quality management”であり、“management”は日本語では経営又は経営管理であるから、品質に関する経営管理の意味の「品質経営」である#19-0である。ここに、品質とは顧客満足の意味であり§1.4、規格の品質経営とは、組織の経営管理活動のひとつの側面、或いは、一部としての顧客満足の追求に係わる経営管理の活動である。品質経営の活動は、組織が必要な売上をあげるための前提となる製品サービスに対する必要な顧客満足の在り方を決めて、その確実な実現を図ることが目的である。
 
③ 品質マネジメントシステム§2
  JIS和訳「システム」の英文は“system”であり、「結びつけられている、或いは、一緒に機能している一連の物事や装置の部品など」の意味(101)であり、規格では「相互に関連する又は相互に作用する要素の集まり」と定義される#20。日本語では体制、体系、枠組みである#3から、JIS和訳「品質マネジメントシステム」とは、それに則って品質経営の活動が行なわれるように整えられた品質経営の体制のことである。
 
  この品質経営体制は、組織の全体の経営管理体制の中の品質経営に係わる部分のことであり、組織の経営管理体制に融合して含まれる顧客満足の追求に必要な一連の要素の集まりを指す。品質経営体制の要素とは実務的には、品質経営のための組織構造、要員の責任分担、業務手順、用いる文書、使用設備、情報伝達手段等々である。
 
  規格のプロセスアプローチの概念では、この要素を顧客満足の追求に関連する一連の業務であるとし、規格の各条項はこれら一連の業務に相当する。規格では品質経営体制とは、狙いの結果及び業務実行方法を決め必要な資源を用意することも含む品質経営に必要な、相互に関係する業務と業務実行の手はずの有機的集合体と見做される。
 
④ プロセス
  JIS和訳「プロセス」の英文は“process”であり、「特定の結果を出すために行なわれる一連の事柄」を意味し$2、日本語では作業(109)、仕事(110)である。規格でも「入力を出力に変換する相互に関連する又は作用する一連の活動」と定義される#1。すなわち、組織内で次々と関連を持ちながら価値を付加していく活動としての人々の仕事のことであり、「業務」が適当な日本語である。
 
  事業組織の業務は一般に、人事、経理、営業、品質管理、製造など機能部門別に管理されて行なわれているが、それぞれの業務は組織の存続発展に必要な業績を挙げるために、他の機能部門の業務とつなぎ合わされて部門横断的に行なわれている(2)。 機能部門内の個々の業務も「プロセス」ではあるが、規格が「プロセス」 と言う場合は組織の特定の業績を実現するために分野横断的に行なわれる一連の業務の集まりのことを指していることが多い。
 
  規格における業務とは上記③の品質経営体制を構成する業務のことであり、品質経営体制はJIS和訳「プロセスのシステム」であるとも表現される(0.3.1項)。また、規格の各条項の標題は品質経営体制を構成するそれぞれの業務を指している。
 
⑤ プロセスアプローチ§43.2
  「プロセスアプローチ」とは業務実行主体の取り組みという規格の意図の品質経営活動の方法論のことである。プロセスアプローチを規格は、品質経営に必要な業務とそれらの相互関係を決めて、それら業務を有機的集合体として実行し、管理するという経営管理の方法論であると説明し、これにより狙いの顧客満足の状態を効果的、効率的に実現できるとその意義を説明している(0.3.1)。
 
  プロセス アプローチによる品質経営の活動では、すべての業務がそれぞれの狙いの結果を出すことにより、その総合的結果として品質経営の業績目標としての狙いの顧客満足の状態が実現するとして、各業務の目標決定及び実行と、顧客満足の状態の狙いの決定と実現の両方を、それぞれのプロセスアプローチサイクルによって管理する。
 
  プロセス アプローチは、品質管理の用語であったPDCAサイクルを経営管理活動にも採り入れ、計画‐履行‐管理‐継続的改善のサイクルに置き換えたものであり、00年版TC176指針(2)では、今日の多くの組織で実際に業務が行なわれる様そのものを表す実務的な概念であると説明している。規格では、プロセス アプローチサイクルを、継続的改善の枠組み、及び、体系的で組織的な経営管理活動の枠組みというふたつの意味合いで用いている。
 
⑥ 要求事項§41
  JIS和訳「要求事項」の英文は“requirement”である。これは必要条件、必要事項を意味する英語であり、規則や契約上に関しては、要件、条件、基準などの日本語が当てられる$1。規格では「要件」であり、規格では3種類の「要件」が存在する。ひとつは、「必要とする」という意味で用いられる動詞“require”であり、他のふたつは、規定(Provision)の分類とそれぞれの表現方法を定めたISO規格作成規則(17)による「要件」と、JIS和訳「顧客要求事項」など修飾語のついた「要件」である。
 
  前者の「要件」は、規格の目的の実現にはこれを満たさなければならないという性格の規定であることを意味し、要件を規定する規格では条文は「・・・しなければならない」と記述される。ISO9001規格の標題の「品質経営体制要件」の「要件」は、この規格の規定の性格の種類としての「要件」を意味する。すなわち、ISO9001は効果的な品質経営体制であるための要件を規定しているということを表している。従って、規定の条文に「この国際規格の要件に従って・・・」云々と記述されている場合は、「この国際規格の規定に従って・・・」という意味である。
 
  後者の「要件」は、規格の定義#18に従うと「必要とされるもの、望まれるもの」の意味の「要件」である。一般には「~に関する要件」と理解すればよいが、「顧客要求事項」の場合は「顧客のニーズと期待」の方が規格の意図に沿う日本語である§8.2
 
   
(3) 規定要旨
  事業の存続発展のために顧客満足の向上を目指す組織、又は、現に顧客のニーズと期待を満たす製品を一貫して供給する能力を有することを証明せんとする組織(1.1項)は、ISO9001規格が規定に定める要件を満たして品質経営を行なうことが必要である。
 
  規格の意図の品質経営の活動は、トップマネジメントが決めた狙いの顧客満足の状態を、関連するすべての業務が決められた通りに実行され、決められた業務結果を出すことにより確実に実現させるという体系的で組織的な活動である。このような効果的な品質経営活動を行うためには、狙いの顧客満足の状態の実現のために実行し管理しなければならない業務を決め、それら業務についてa)~h)の手はずを整えなければならない。ここに、a)~e)は各業務に必要な手はずであり、f)~h)はそれらの実行と管理の手はずである。また、これらの手はずには、手順を規定した文書と業務実績の記録(7.5項)を必要な程度に作成及び保管する手はず(7.5項)を含めなければならない。
 
  顧客満足の追求による事業の永続的な維持発展を図る組織は、整えたこれら品質経営体制の一連の業務の手はずに則って、品質経営活動をプロセスアプローチサイクルの循環活動として行い、業務実行とその手はずの問題を正し、必要な狙いの顧客満足の状態を確実に実現する能力を継続的に高めていかなければならない。
 
(4) 実務の視点の解釈
  例えばクレーム件数など種々の指標とする品質業績の目標が年度方針・目標又は慣例として決っており、その達成を図る関連業務が、その手順を目標達成計画書に決め又は既存の手順書を用いて日常的に行われている。管理者の日常管理業務は、部門内の業務が決められた通りに行われ、決められた結果を出すようにPDCAサイクルで管理することであり、トップマネジメントは例えば月次品質会議で、管理者の日常管理結果の業務実績を評価し問題対応を指示して品質業績の達成を管理する。期末には情勢の変化に対応して品質業績目標を変更する。管理者とトップマネジメントが業務目標と業績目標のそれぞれにPDCAサイクルを回すのは大抵の組織の普通の姿である。
 
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型 ←08年版(4.1項)のままでよい
  事業の存続発展の根本要素である製品に対する顧客満足を追求するために、JIS Q 9001/ISO9001規格に準拠した品質経営体制を確立し、これを関連する業務の実行の手はずの形で品質マニュアルに表す。この品質経営体制の下で関連業務を体系的で組織的に行い、一貫して顧客のニーズと期待を満たす製品を供給する組織として顧客からの認知と信頼が得られることを目指す。
 
  事業活動では外部から様々な製品サービス の供給を受けている。品質経営体制にはこれら製品サービス、及び、その購入先、外注先の必要な管理の手はずを含んでいる。
 
  この品質経営体制に関連する業務の多くは生産、環境、労働安全衛生、財務など他の経営管理分野にも関係している。どの業務の手はずも、関連するすべての経営管理分野の必要を満たし、業務実行によってすべての狙いの業務結果を一体的に出すことができるように整えられている。
 
 
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
① 品質マネジメントシステム → 品質経営体制$19-1-1 (規格を現場中心の品質改善の仕組みの規定とする誤解の原点)
② 要求事項 → 要件$1 (組織の発展のための規定を、組織を縛るための規格の要求とする誤った規格解釈の原点)
③ プロセス → 業務 $2 (規格と組織の実務を乖離させる原点)
 
 
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
  08年版の4.1項(品質マネジメントシステム 一般要求事項)が共通テキストSL導入のために、本項に移動して記述されている。中身は08年版と全く同じ又は類似した規定条文もあるように単なる条文表現の変更である。ただし、08年版の末尾のアウトソースについて特別な説明の規定が無くなり、文書化と記録保存の必要性の説明に代わっている。
 
 
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル(4.1)の記述を移動するだけで、何も変える必要はない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組
  原理の説明の規定であるから、品質保証体系図を作成するなど規定に対応して何かをするというのではなく、これを良く理解して規格の規定を解釈するようにすればよい。
 
 
6.公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 品質マネジメントシステムとして具備すべき事項がa)~h)であるのに対して、具体的な進め方が箇条5以降に記述されている*Q39
② プロセスアプローチ採用のために不可欠な特定の要求事項を含んでいる。アウトソースに関する要求事項は、8.1で示されている*Q38
 
(2) 08年版から変わってないとする解釈
① f)として6.1に規定のリスクへの対応が要求されている:Q5
② プロセスアプローチに関する要求事項が追加された:Q27
③ パフォーマンス指標の設定が求められている*Q36 
 
 
7. あるかも知れない極端な審査要求
① プロセスオーナー、プロセスのインプットとアウトプット、プロセスの判断基準、パフォーマンス指標を明記したプロセスの一覧表
 
 
H27.3.7(修:3.8)  11.24(2015年版)  1.22(条文修正)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所