ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
67 ISO9001:2015 改定解説    5.1.2   顧客重視
- 変更点と移行対応 (58) -
<31e-01-67>
 
 
0.1
概要   こちら

   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  (英語解釈 抜粋)
 
製品サービス ⇔製品及びサービス$8.1;   品質経営(活動) ⇔品質マネジメント$19-0;
  品質経営体制 ⇔品質マネジメントシステム$19-1-1;
   
   
1. 規定条文
5.1.2  顧客重視
トップマネジメントは、次の事項を確実にすることによって、顧客重視に関するリーダーシップ及びコミットメントを実証しなければならない。
a) 顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を明確にし、理解し、一貫してそれを満たしている。
b) 製品及びサービスの適合、並びに、顧客満足を向上させる能力に影響を与え得る、リスク及び機会が決定し、取り組んでいる。
c) 顧客満足の向上の重視が維持されている。
 
[08年版 関連規定]
5.2 顧客重視
顧客満足の向上を目指して、トップマネジメントは、顧客要求事項が決定され、満たされていることを確実にしなければならない(7.2.1 及び8.2.1 参照)
   
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
  本項は、組織の健全な存続発展には、トップマネジメントが顧客重視の行動を貫くことが必要であること、及び、そのために品質経営活動において トップマネジメントが直接的に関わり又は指揮しなければならない事項を規定している。
   
(2) 論理及び用語
① トップマネジメント§14.1
  「トップマネジメント」は、日本では経営者、経営トップと呼ばれ、経営用語では株式会社における最高経営層のことであり、代表取締役、取締役会のメンバーの取締役から構成される(54)。 規格では「最高位で組織を指揮し、管理する個人又はグループ」と定義され#53、経営層の一員である品質経営の最高責任者のことである。一般には社長を指すが、役付取締役がこの任にあたることもある。また、事業所が独自の品質経営体制の下に運営されている場合は、通常は事業所長、時に、品質問題を主管する副所長がトップマネジメントと見做される。
 
② リーダーシップ§14.2
  「リーダーシップ」は英文の“leadership”のJIS和訳であり、リーダーたる状態、リーダーとしての立場、或いは、特定組織の指導層という意味の他、リーダーとしての能力、良いリーダーとして持つべき本質的なものという意味がある(101)。多数の人々が協働する組織では、人々の組織への想いに違いがあり、組織と又は人々相互間の利害関係が一致せず、組織の目的や目標の理解も一様でなく、勤労意欲、能力も様々である。経営論では、このような組織に内在する本質的困難を克服して、組織の永続的な存続発展に向けて人々を動機づけ、導くために必要な経営機能が「リードする」と言い、トップマネジメント以下の管理者が人々を「リードする」能力が リーダーシップである。
 
③ コミットメント§14.3
  JIS和訳「コミットメント」の英文は“commitment”であり、94年版(4.1.1)では「責務」と和訳されていたが、00年版から「コミットメント」になった。英語の“commitment”は、日本語ではぴったり対応する言葉はなく、一般に何かを行なうことの約束、誓約であり、この他に義務、責務、責任、確約、公約、言質など様々な言葉が当てられることがある$29。同じく「約束」と和訳される“promise”との違いについて、“promise”の普通の意味の「約束」を越えて、本人の心にとって絶対に破ってはいけないという意味の「約束」であるとの説明がある(40)
 
  規格の文脈では、絶対に成し遂げなければならないという信念に基づく決意を以て何かに取り組む状況のことを意味し、組織の維持発展のために品質経営の実行に職を賭す覚悟で取組むという自らへの誓約であり、そのことに関する組織内外への経営公約である。
 
④ 顧客要求事項、法令・規制要求事項
  JIS和訳「要求事項」の英文は“requirement”であり、「必要条件」「要件」である$1。「顧客要求事項」は組織が顧客に対して満たすべき必要条件という意味であり、規格は「要求事項」を「ニーズ若しくは期待」と定義#18しているから「顧客のニーズ若しくは期待」が適当である§41.2。 「法令・規制要求事項」は“statutory and regulatory requirements”であり、それぞれの定義から「法的要件」#18-1、「規制条件」#18-2であるから、簡単には「法規制」である。
 
⑤ 顧客満足§10.1
  規格の「顧客満足」は「顧客の期待が満たされている程度に関する顧客の受けとめ方」と定義されおり#17製品サービスに対する顧客満足とは、顧客が製品サービスをどの程度気に入ったかであり、製品サービスの機能や性能やその品質が自分の想いのニーズや期待にどの程度合致したと顧客が感じたかであり、これが顧客の次の購買行動を左右する。「顧客満足」の本質は次も製品サービスを買い或いは取引を継続するかどうかの顧客の判断に係わる顧客の想いのことである。
 
  品質経営で実現を図るのは、個々の製品サービスを受け取り、使用又は利用した顧客が次も買おうと思う程に製品サービスを気に入ってもらうことだけではなく、その積み重ねによって組織とその製品サービスに対する顧客或いは市場の良い評価を確立することである。すなわち、規格の「顧客満足」とは、不良品を出さないことを含み、顧客に製品サービスを買ってもらう又は取引を続けてもらうために顧客に抱いてもらう必要がある組織と製品サービスに対する好感、満足感、安心感、信頼感の状態や程度のことである。
 
  94年版までは1970~80年代に世界を席巻した日本製品を念頭に不良品を出さないことが顧客満足とみなされていた(1章)が、世界的に品質が向上した時代を背景に改訂された00年版からは、売れるか売れないかは顧客が製品サービスが自分の想いのニーズや期待にどの程度合致したと感じるかどうかで決まるとする当時確立し始めていたマーケティング論の顧客満足の概念に沿ったものとなった。
 
    
(3) 規定要旨
  組織は、事業の健全な維持発展を図るために顧客満足を追求する品質経営に継続的に取り組まなければならない。トップマネジメントは、品質経営において顧客重視の原則が貫かれるよう統率力を発揮しなければならず、組織内の業務実行をそのように方向づけることに職を賭して取り組まなければならない。
 
  トップマネジメントは、組織の存続発展に必要な顧客満足の追求に向けての品質方針及び組織の品質目標(5.2項)を決め、その達成のための品質経営体制を整える (5.1.1項)だけでなく、品質経営の各業務が必要として決めた狙いの顧客満足の状態の実現を目指して行われることを確実にするよう、自らa)~c)項の観点の管理を行なわなければならない。
 
  a)は、個々の契約又は注文に対す製品サービスが組織の狙いの顧客満足の状態に適うように決められ(8.2.2項)、そのように顧客に受けとめられているかどうか(9.1.2項)であり、b)は、将来に実現が必要な顧客満足の状態への対応の処置が決めた通りに実行されているかどうか(6.2項)であり、c)は、組織内で業務の実行に顧客重視の思考や行動が浸透しているかどうか(7.3項)である。
 
 
(4) 実務の視点の解釈
  組織がISO9001規格の規定に従って品質経営を行なうのは、顧客に気に入られて製品サービスを組織が必要なだけ買ってもらえるような組織であり続けるためである。規格の「顧客満足」は、顧客が今後も買いたい又は取引を続けたいと思うような顧客の組織と製品サービスに対する好感、満足感、安心感、信頼感の状態や程度のことである。組織が顧客満足を追求するのは顧客のためではなく、組織自身のためである。
     
   
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型←基本的に08年版の5.2項と同じでよい
  トップマネジメントは、顧客満足の追求を基礎として事業の健全な維持発展を図るという経営責任の一環として、顧客本位経営を効果的に行なう責任を全うする。
 
  トップマネジメントは、品質経営の業務が品質方針(5.2項)に決めた狙いの顧客満足の状態の実現に向けて行われるよう、品質保証機能担当部長(5.3項)に日常業務の実行を統率させて、その報告を通じて、及び、月例業務検討会(7.4項)と期末業績検討会(9.3項)を主宰して管理する。
 
  部門長は、重大なクレームなど、狙いの顧客満足の状態に反する大きな問題を把握した場合は速やかにトップマネジメントに報告する。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
顧客要求事項 → 顧客のニーズ若しくは期待 (誤解の回避)
  顧客要求事項と和訳されたことから顧客の要求を満たすことが顧客満足という誤解が生まれている
   
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
  組織の存続発展に必要な顧客満足の状態を適切に決め、その確実な実現を図るように品質経営の各業務の実行を管理するトップマネジメントの責任を規定しているという点で一部の文章表現も含めて08年版から変化はない。15年版では管理の観点を詳細に明示的に規定されているだけで、趣旨は全く変わっていない。 
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
 全く何も変える必要はない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
 顧客に製品サービスを買ってもらい又は取引を続けてもらう存在であるためにどのような組織にならなければならないか、そのような組織であるためにどのように組織の業務が行なわれなければならないかということに関するトップマネジメントの頭にある想いと、いつも気にしている製品サービスに関連する顧客の評価項目を、洗い出してみる。そして、それら業務の実行と実績をどのように管理しているかを考えて、管理項目と管理方法を整理し、規格の該当する条項の規定に当てはめてみるとよい。多くは、日常管理項目の中に含まれてトップマネジメントとしてもその実績を何らかの方法で掌握しているはずである。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈

 
(2) 08年版から変わっているとする解釈
① 08年版より「要求事項を理解させる」「リスク及び機会への取り組み」が追加されている*Q38。
② リスクと機会の評価や自社能力の再確認などトップマネジメントが自ら行なうべき内容が明快になった*Q17。
③ 顧客重視を構成する項目として、08年版では要求事項の決定と満足だったのが、15年版では一貫した要求事項への適合、適合のリスクへの対処、顧客満足向上が明示されている。
 
   
     
7. 予想される極端な審査要求
① 顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項の一覧表
 
 
H27.2.11  修11.25(2015年版)

H26.9.1(9.2、9.22表記則修正)  H27.11.9(2015年版)
禁無断転載  (個人的使用のための複写歓迎)
サニーヒルズ コンサルタント事務所