ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
68 ISO9001:2015 改定解説    5.2.1   品質方針の確立
- 変更点と移行対応 (60) -
<31e-01-68>
 
 
0.1
概要   こちら

   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  (英語解釈 抜粋)
 
実績評価 ⇔パフォーマンス評価$31;    製品サービス ⇔製品及びサービス$8.1;
   製品サービスの実現 ⇔運用$8;    品質経営(活動) ⇔品質マネジメント$19-0;
  品質経営体制の計画 ⇔品質マネジメントシステムの計画$19-1-1;
   
   
1. 規定条文
5.2  方 針
5.2.1  品質方針の確立
トップマネジメントは,次の事項を満たす品質方針を確立し、実施し、維持しなければならない。
 
a) 組織の目的及び状況に対して適切であり、組織の戦略的な方向性を支援する。
b) 品質目標の設定のための枠組みを与える。
c) 適用される要求事項を満たすことへのコミットメントを含む。
d) 品質マネジメントシステムの継続的改善へのコミットメントを含む。
[08年版 関連規定]
5.3 品質方針
トップマネジメントは、品質方針について、次の事項を確実にしなければならない。 a) 組織の目的に対して適切である。;
b) 要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善に対するコミットメントを含む。;
c) 品質目標の設定及びレビューのための枠組みを与える。; e) 適切性の持続のためにレビューされる。
   
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
  規格は、製品サービスの顧客満足の追求により組織の永続的な存続発展を図る品質経営の在り方を規定している。その基本要件は、あるべき顧客満足の状態に関する経営戦略を明確にし、時代の変化に応じて適切に変更し、それを確実に実現させるというプロセスアプローチ/PDCAサイクル(4.4項)による循環的活動として、品質経営活動を行うことである。
 
  本項は、組織の存続発展を図る品質経営においては、顧客満足の追求に関する経営戦略を確立し、品質経営の業務の実行の指針として品質方針として明確にすることが必要であること、及び、その品質方針が品質経営の業務指針として効果的であるための要件を規定している。
   
(2) 論理及び用語
① 経営戦略§35.2
  経営論では、経営管理§35.1はその存立の目的に沿って組織を存続発展させる活動であり、どのように存続発展を図るのかは、組織のあるべき姿とそこに到達するための道筋或いは方策を表す経営戦略として明らかにされる。経営戦略は、組織の事業を取り巻く外部環境に組織の潜在能力を適応させることにより決定される。組織が無限持続体として継続的に存続発展を目指すなら、時代により変化する外部環境と組織の業務能力に見合って経営戦略を見直し変更しなければならない。経営戦略は経営理念§35.4或いは経営方針§35.5として明らかにされ、経営目標§35.6はその特定期間での到達点である。
 
  経営論では、経営管理の活動を、戦略を明確にし、業務の手はずを整え、その実行を管理し、その結果で戦略の意図する業績を挙げ、これにより組織目的を達成するという形を繰返す循環的活動としての、例えば計画‐リード‐統合という マネジメントサイクル§33と捉え、この繰り返しを通じて組織の無限持続体として存続発展を図ると考える。
   
② 品質方針§3
  規格では マネジメントサイクル§33を、品質方針及び組織の品質目標(5.2項)―品質経営体制の計画(6.1項) ―製品サービス実現 (8章) ―実績評価(9.1項) ―マネジメントレビュー(9.3項)から成るPDCA/プロセスアプローチ サイクルとして表している。品質方針は組織の経営方針§35.5の一部であり、顧客満足追求に関する組織の経営戦略§35.2を表わす。顧客満足§10.1とは不良品を出さないことを含み、顧客に製品サービスを買ってもらう又は取引を続けてもらうために顧客に抱いてもらう必要がある組織と製品サービスに対する好感、満足感、安心感、信頼感等の状態や程度のことである。
 
  品質方針は、どのような製品サービス、どのような対応が期待できる組織として顧客の目に映らなければならないかということについてのトップマネジメントの想いと認識を反映したものである。品質方針は品質経営の業務実行に関する指針として、或いは、要員の行動規範として機能する。
 
  実務的には、顧客満足の追求に関して究極的にどのような組織であることを目指すのかの経営基本方針としての品質方針と、中、短期或いは年度の組織の事業収益の確保の必要のために実現すべき具体的な顧客満足の状態に関する経営実行方針としての品質方針があるが、規格の規定では両者を明確に区別して記述されていない。
 
  また、94年版では品質目標を含む品質方針には品質目標を含むと規定され(4.1.1項)、00年版指針規格(131)ではトップマネジメントの役割として「品質方針及び品質目標の設定と維持」が明記されているように、顧客満足の状態の狙いの到達点を表す組織の品質目標は品質方針と一体である。規格では、品質方針と一体で品質経営の業績目標である「品質目標」(5.2項)と、その実現のための各業務の業務目標としての「品質目標」(6.2項)が区別されずに記述されている。
 
③ 組織の目的§35.3
  どの組織にも創業の目的があり、それを追求するために事業活動を行っている。これは、経営用語では「経営体の目的」又は「経営目的」と表される。この「目的」は英語では“purpose”であり、目的、意図、達成することになっている何か、という意味である。経営目的とは、組織の経営によって到達したい点(ゴール)、挙げたい成果を示すものであるが、経営の目的は自分さえよければいいというようなものであってはならず、社会を構成する機関としての目的でなければならず、社会にどのように貢献するのか、どのような社会の実現に努めるのかというような経営目的でなければならない(55)
 
  経営論では経営管理は事業組織を無限持続体として存続発展させる活動であり、組織を取り巻く外部環境に組織の有する潜在能力を適応させながら創業の目的を達成していく過程であるとされる。この過程は、経営戦略を策定し、その実現のための業務の手はずを整え、業務実行を管理して戦略の実現を図り、さらに変化する内外の事情に応じて戦略を見直し変更するという循環的活動として認識され、マネジメントサイクルと呼ばれる。
 
  規格は、品質経営の活動を、顧客満足の追求に関する経営戦略としての品質方針及び組織の品質目標(5.2項)の見直し変更を核とする、マネジメントサイクルに倣ったプロセスアプローチ/PDCAサイクルの繰り返しによって、いつの時代でも必要な狙いの顧客満足の状態を維持する活動とみなして書かれている。
 
  この循環活動の核は、マネジメントレビューの活動(9.3項)であり、組織の存続発展に必要な顧客満足の状態の狙いと経営施策を決め、その実績と時代の変化を評価して、品質方針及び組織の品質目標の変更を含む対応処置を決める。これら必要な対応のための経営施策たる処置(9.3.3項)を決め、これを品質方針及び組織の品質目標(5.2項)に反映させて、品質経営体制の計画(6.1項)により処置の実行の手はずを、関連する業務の狙いとしての品質目標 (6.2項)の達成の手はずという形で整える。日常の業務実行では、各業務が手はずで決められた通りに行われ、決められた通りの結果が出るように管理して(9.1.1項)、狙いの顧客満足の状態の確実な実現を図る。さらに、これら実績を時代の変化と共にマネジメントレビューで評価する。
 
  時代の変化への対応は、組織の顧客満足の追求に影響を及ぼす事業環境と組織の業務能力の変化(4.1/4.2項)、及び、放置した場合に予想される事態に鑑みて、良い事態を活用し、悪い事態を回避又はその影響を最小化するという観点で決める。
 
 
    
(3) 規定要旨
  トップマネジメントは、品質経営の業務実行の指針として品質方針を明確にし、その狙いの顧客満足の状態の実現を図り、また、変化する外部環境と業務能力(4.1,4.2項)に応じて見直し、変更しなければならない(9.3.1項)。
 
  品質方針が、品質経営の指針として効果的なものであるためには、その内容はa)~d)のようでなければならない。ここに、a)は、品質方針が実際に組織の存続発展に繋がる効果的な経営戦略を表していなければならないということであり、b)は、実現の必要な顧客満足の状態を示す具体性のある表現で品質方針を記述しなければならないということである。c), d)は、顧客満足追求の品質経営を全うするというトップマネジメントの経営公約の表明に関する。
 
 
(4) 実務の視点の解釈
  経営戦略としての品質方針は例えば、業界一の高品質、顧客のあらゆるニーズに対応、顧客第一のサービス、高機能高性能製品、生活に密着した製品、というような目指す顧客満足の状態を概念的に表わさし、社是、理念、基本方針の一部となる。この概念的な狙いの顧客満足の状態は、過去の年度実行方針等の実績の積み重ねの結果で、より具体的な業務指針として組織内の共通認識となっている。例えば苦情発生率をある水準で管理しているなら、基本方針の「業界一の高品質」が不良品を出さないという形で日常管理の基準として具体化され、その実現が図られているということである。
 
  年度実行方針としての品質方針は、製品品質の抜本的安定化、平均納期の短縮、特定の新機能製品の投入、特定顧客層向けの品揃え強化、品質保証体制の再構築、というように戦術的で具体的に表し、方針に基づく施策は通常は年度業務計画の形で推進、管理される。
     
   
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型←実態を規定に沿って記述
  トップマネジメントは、品質基本方針を基礎として毎年度の初めに、前年度の期末業績検討会の結論(9.3.2項)に基づいて年度品質方針とその実現のための年度重点的取組み事項を決める。
 
  年度品質方針では、変化する外部環境と業務能力(4.1,4.2項)への対応を含めて実現を目指す特定の狙いの顧客満足の状態を明確にする。また、これを含む狙いの顧客満足の状態の確実な実現のために期末業績検討会で決めた処置を年度重点的取組み事項として、その取り組みの狙いの結果を決める。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
① 組織の目的と状況 → 組織の目的及び組織の置かれた状況
  「状況」は“context of organization”であり、4.1/4.2項の「組織の置かれた状況」を指す。経営戦略は組織の創業の目的を実現するように組織の置かれた状況、すなわち、外部環境と組織の潜在能力を勘案して決定される。「組織の目的及び組織の置かれた状況」と和訳することによって、品質方針が顧客満足追求に関する経営戦略であることが疑問の余地なく明白になる。
   
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
  品質方針の定義は08年版と同じ、「トップマネジメントによって正式に表明された、品質に関連する組織の意図及び方向付け」であり、品質方針が経営戦略を意味することに変わりはなく、そのことは15年版では「品質方針は、組織の戦略的方向性を裏付けるものでなければならない」とその策定、見直しの方法論との関係で規定されたことにより、一層明確になった。箇条書きの項目と文章は08年版の5.3項(品質方針)の趣旨を引き継いでいる。 
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質方針を顧客満足追求の経営戦略として取り扱っている組織には、品質マニュアル記述も含めて何も変えることはない。この機会に、大抵の組織で品質マニュアルに表されている「品質方針」が実務の業務実行指針や日常管理の管理ポイントとの関係で適切かどうかの見直しをするのもよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
 創業者の想いが社是や社訓のような形で明確にされている組織では、その中心は大抵の場合は製品サービスに関するものである。また、実際にトップマネジメントや管理者は頭の中に一定の考えがあり、それに基づいて業務実行を指揮し、方向づけており、その考えに基づいて業務の手順や管理基準が決められている。これらの中の製品品質と顧客対応に関して基準となる考え方を整理し、理念や品質基本方針としてまとめ、或いは、社是や社訓のままで整理する。さらに、どのトップマネジメントも年度の収益見通しを持っており、その達成のための売上とコストに関する目途があり、そのために製品品質と顧客対応に関してもこうしなければならない、こうでなければならない、このようにするという腹積もりがある。これを整理して何の実現のために何をするかにまとめて年度品質方針、重点取組み事項とその狙いとして明確にすればよい。前年と同じように仕事をすればよいなら、そのような品質方針とすればよい。不必要な改善に労力を投入することは組織の存続発展の道筋を示す規格の意図ではない。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 品質方針を組織の目的や状況を考慮して適切に設定し、必要により改善すること、品質目標を品質方針に対して適切に設定することが示されている*Q39
 
(2) 08年版から変わっているとする解釈
② 5.2.1項で品質方針の適切性を08年版より詳細に明示的に要求。a)の『状況』の追加は幅広い視点を要求*Q5
③ 改訂版の品質方針は、マネジメントの基本原則としてのトップマネジメントの目標設定、戦略計画の作成、明日のための意思決定という役割に相当する*Q17。
 
   
     
7. 予想される極端な審査要求
    
     
H26.12.7(修H27.3.12)  H27.11.27(2015年版)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所