ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
71 ISO9001:2015 改定解説    7.1.6 組織の知識
- 変更点と移行対応 (64) -
<31e-01-71>
 
 
0.1
概要   こちら

   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  
 
外部及び内部の事情 ⇔外部及び内部の課題#65;  職務能力 ⇔力量$67;
  品質経営(活動) ⇔品質マネジメント$19-0; 品質経営体制 ⇔品質マネジメントシステム$19-1-1;
      
   
1. 規定条文 (JIS Q 9001:2015)
7.1.6  組織の知識
  組織は、プロセスの運用に必要な知識、並びに、製品及びサービスの適合を達成するために必要な知識を明確にしなければならない。
 
  この知識を維持し、必要な範囲で利用できる状態にしなければならない。
 
  変化するニーズと傾向に取り組む場合、組織は、現在の知識を考慮し、必要な追加の知識及び要求される更新情報を得る方法又はそれらにアクセスする方法を決定しなければならない。
 
  注記1 組織の知識は、組織に固有な知識であり、それは一般的に経験によって得られる。それは、組織の目標を達成するために使用し、共有する情報である。
  注記2 組織の知識は、次の事項に基づいたものであり得る。
      a) 内部情報源(例えば、知的財産、経験から得た知識、失敗から学んだ教訓及び成功プロジェクト、文書化していない知識及び経験の取得及び共有、プロセス、製品及びサービスにおける改善の結果)
      b) 外部情報源(例えば、標準、学界、会議、顧客又は外部の提供者からの知識収集)
事項に取り組む必要のあるリスク及び機会を決定しなければならない。
 
[08年版 関連規定]
6.2 人的資源
6.2.1 一般
製品要求事項への適合に影響がある仕事に従事する要員は、適切な教育、訓練、技能及び経験を判断の根拠として力量がなければならない。
   
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
  本項は、効果的な品質経営に必要な資源のひとつとしての、効果的な業務実行に必要な知識が必要な業務に確実に適用され或いは用いられるように、必要な知識を充足管理することの必要を明確にし、その要件を規定している。注記には、規格の意図の「組織の知識」についての説明がある。
   
(2) 論理及び用語
① 組織の知識§20.1
  JIS和訳「組織の知識」の英文は“organizational knowledge”であり、経営用語では、要員が業務実行で蓄積した暗黙知を形式知化し、組織内で共有して、業務に使用している組織としての知識のことであり、日本語では「組織知」である。組織知は、個人知の対局にある概念であり、人が変わっても継続して組織内に存続し、継承される知識である。規格はこれを、組織の経営目標の達成のために用いられ、組織内で共有される情報のことであり組織に特有の知識であると説明している。組織知は要員の経験に加えて、外部の知識情報から形成される。
 
② 職務知識§20.2
  規格では、要員がある業務を決められた通りに行い決められた結果を出すことができることを、「職務能力 $67がある」と言う(7.2項)。 ここに、職務能力は、「知識と専門性$38を活用して所定の結果を出す能力」と定義されるが#3、 この「知識」は当該業務を決められた通りに行い決められた結果を出すために要員が知っておかなければならないことであるから「職務知識」である。また、「専門性」は、職務知識に基づいて頭が働き、言葉を生み出し、身体や手指を動かして、実際に当該業務を決められた通りに行い決められた結果を出すことができるかどうかの、要員の能力のことである。
 
  職務知識は、基本的に組織知から成り、形式知として文書に表され、保存され、利用される。そのような文書には例えば、業務の規範を定める文書、各業務の方法、基準を定める手順書、業務実行の結果とその管理の記録、発生した問題の原因調査の記録や新技術の開発記録、各種の報告書がある。
 
  業務実行に用いる職務知識は、必要な職務能力を備えさせるための教育訓練(7.2項)によって要員に習得され、一般に、根幹部分は記憶され、詳細部分は関連文書又はその内容を要員が利用できるようにして、職務知識が業務実行に確実に用いられるようにする。
 
  また、設備図面や設備取扱い説明書、外部委託した設備点検記録、専門図書、規格書、法律書などは職務知識或いはそれに繋がる外部知識情報である。新知識の普段の取得のために、業界紙、専門誌や学会発表論文、講習会資料などを利用して、新知識又は知識データを外部から取得する。これは規格では、品質経営体制の見直し検討に用いるための外部及び内部の事情の変化に関する情報の日常的な収集、分析(4.1項)の一環の活動である。
   
    
(3) 規定要旨
  組織は、品質経営に関連する業務が効果的に行われるように、それら業務の実行と管理のために必要な知識を特定し、それら知識を必要に応じて使用できるようにする手はずを整えなければならない。また、手はずに則って、必要な職務知識を要員に習得させ(7.2項)、必要な知識情報を要員が業務実行に使用できるようにしておかなければならない(7.5項)。さらに、品質経営に関連する知識の変化とその傾向に対応して必要となる知識を取得又は利用する手はずを整え、手はずに則って、必要に応じた知識を追加又は更新しなければならない。
 
 
(4) 実務の視点の解釈
  要員が習得すべき知識は、業務手順書、業務基準書、業務指示書などに表されており、職場や指導者の暗黙知と合わせて実地訓練や業務実行を通じて取得させる。このような業務で直接使用する知識の背景や根拠となる基礎的又は専門的知識の情報は、業務実績記録やその分析記録、調査報告、問題対応報告、検討会議事録、顧客情報、業界情報などの形で管理する。また、外部知識は、設備取扱説明書、購入品仕様書、規格書、法律書、学術論文、専門書、専門雑誌、業界紙誌、講習会参加、コンサルタント起用などの形で取得し、関連する文書を保持管理する。
     
   
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型←08年版品質マニュアル(6.2)文章を参考に組織の実態を記述すればよい
 業務実行に直接必要な知識は規範文書及び指示文書に表す。これらの基になる内部の知識情報は記録文書、外部からの知識情報は外部文書、さらに、業務で参考にする外部作成の文書は参考図書として、それぞれ管理する(7.5.1項)。品質経営に関係する知識情報は、外部環境に関する情報(4.1, 4.2項)に含めて日常的に収集、分析する。
 
  要員が業務実行に必要な知識は、職務能力(7.2項)の一環として職場配置教育訓練により要員に習得させ、業務実行においては必要な知識を表す文書を必要により使用できるようにする。製品製造の各業務の詳細条件は製品随伴カードに表す。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)

   
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
   08年版の6.2項(人的資源)の職務能力の管理の規定に明示されていないが当然必要であった職務知識の充足管理の必要が、15年版の7.1.6項(組織の知識)で明示的規定となったに過ぎない。
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
 要員の配置と知識の管理の要件が変わった訳でなく、実務では改訂版の両条項の要件は満たされているはずであるから、何も変えることはない。但し、文書管理の中に知識情報の管理という観点が希薄な組織も少なくないから、文書体系の中に研究報告書のような内部の技術情報文書、ISO規格解説書や設備取り扱い説明書のような外部からの専門情報文書や図書が明確に織り込まれて管理されているかどうかを再確認するのがよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
 既存の文書と記録の管理の手はずを知識情報の管理という観点で問題ないかどうか見直す。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈

 
(2) 08年版から変わっているとする解釈
① 知識とは固有技術のこと。品質マネジメントシステム、プロセス、製品の適合性、顧客満足のために必要な固有技術を決定し、ニーズと傾向の変化に応じて追加の固有技術を入手又はアクセスする方法を決定する*Q1
③ 新条項。ナレッジマネジメントの概念が根底にある。組織の知識とは過去の経験から得た知識をデータベース化したもの。7.2項とは区別する必要がある。但し、日本企業には情報と知識の管理の手段があるので特段の対応不要*Q17
④ 組織が必要とする固有な知識(技術)の管理を要求している*Q38
⑤ 人々の力量確保+組織としての知識の確保が必要。変化する顧客や利害関係者のニーズと期待と市場などの傾向の変化に取り組む場合にどのような知識が必要かの明確化を要求*Q38
 
   
     
7. 予想される極端な審査要求
① 必要な知識の一覧表。この一覧表への各知識の維持と利用の方法の明確化。
    
     

H26.10.20   H27.12.14(2015年版)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所