ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
73 ISO9001:2015 改定解説        9.3.2  マネジメントレビューへのインプット  
- 変更点と移行対応 (65) -
<31e-01-73>
 

0.1 概要   こちら
   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  
 
外部及び内部の事情 ⇔外部及び内部の課題#65;    業務 ⇔プロセス$2; 実績 ⇔パフォーマンス$31;
  組織の置かれた状況 ⇔
組織の状況§63;   品質経営(活動) ⇔品質マネジメント$19-0;   入力 ⇔インプット#1 ;
  履行 ⇔実施$4
      
   
1. 規定条文
9.3.2  マネジメント レビューへのインプット
マネジメントレビューは,次の事項を考慮して計画し、実施しなければならない。
 
a) 前回までのマネジメントレビューの結果とった処置の状況
b) 戦略的な方向性を含めた、品質マネジメントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化
c) 次に示す傾向及び指標を含めた、品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に関する情報
  1) 顧客満足及び密接に関連する利害関係者からのフィードバック
  2) 品質目標が満たされている程度
  3) プロセスのパフォーマンス、並びに、製品及びサービスの適合
  4) 不適合及び是正処置
  5) 監視及び測定の結果
  6) 監査結果
  7) 外部提供者のパフォーマンス
d) 資源の妥当性
e) リスク及び機会への取り組みの有効性(6.1参照)
f) 改善の機会
 
[08年版 関連規定]
5.6.2 マネジメント レビューへのインプット
マネジメント レビューへのインプットには、次の情報を含めなければならない。
a) 監査の結果; b) 顧客からのフィードバック; c) プロセスの成果を含む実施状況及び製品の適合性; d) 予防処置及び是正処置の状況; e) 前回までのマネジメント レビューの結果に対するフォローアップ; f) 品質マネジメントシステムに影響を及ぼす可能性のある変更;
g) 改善のための提案
   
 
2. 条項の意図
(1) 趣意
  本項は、無限持続体として存続発展させるよう組織を方向づける結論(9.3.3項)を出すために、マネジメントレビュー活動で評価、検討することが必要な事項を規定している。
   
(2) 論理及び用語
① マネジメントレビュー§6
  一般的な経営用語には「マネジメントレビュー」は存在せず、規格のマネジメントレビューは、品質経営活動の実績たる顧客満足の状態の実現の程度(9.1.2項)を、その狙いの顧客満足の状態に照らして評価して品質経営活動の業績を確定するために、過去の一定期間の品質経営活動の実績を見直すことを意味する。
 
  マネジメントレビューは、品質経営活動の実績としての狙いの顧客満足の状態の達成度を評価し判断する活動であるが、その目的は当該期間の業績を確定することだけでなく、この業績の達成に関係した業務実行の能力の実態を明らかにし、さらに、顧客満足追求に影響を及ぼした、或いは、その可能性が見込まれる組織の内外の現実の及び潜在的な事情(4.1/ 4.2項)を把握し、これらに基づいて次の期間の狙いの顧客満足の状態とその実現に必要な経営施策(6.1項)を決めることにある。すなわち、経営論のマネジメントサイクルにおける組織目的の達成度評価と次のサイクルのための経営戦略見直しを行うことに相当する。
 
  マネジメントレビューは、実務的には、一般に1年を単位とする組織の経営管理活動の期末に行なわれている実績の総括活動であり、貨幣的実績の場合は「決算」と呼ばれる。規格の品質経営活動の決算では、当該年度の品質経営の実績と問題点を体系的に評価し、結論として次年度の品質方針及び組織の品質目標(5.2.1項)と、その実現のための取り組みを決める。評価すべき品質経営の実績がJIS和訳「マネジメントレビューへのインプット」、結論が同「マネジメントレビューからのアウトプット」である。このような品質方針及び組織の品質目標の見直し変更とその確実な実現の繰り返しにより、常に時代に合った顧客満足の状態を維持し、組織の永続的な存続発展を確かなものとする。規格は、このようなマネジメントレビューによる品質方針及び組織の品質目標の定期的な見直しの意義を、JIS和訳「組織の品質マネジメントシステムが,引き続き,適切,妥当,かつ有効で更に組織の戦略的な方向性と一致していることを確実にする」ことと表現している。
 
② マネジメントレビュー への インプット
  規格ではマネジメント レビュー も品質経営体制に必要な業務(4.4.1)項)であり、「業務」は「入力を使用して所期の結果を生み出す相互に関連する又は作用する一連の活動」と定義されるから#1、マネジメント レビューはJIS和訳「インプット」の「入力」たる品質経営の実績の情報(9.3.2項)を使用して、「所期の結果」たる結論(9.3.3項)を生み出す活動であると表される。
 
  マネジメントレビューでは、狙いの顧客満足の実現の程度という品質経営の業績目標の達成度とそれに伴う業務で生じた問題、及び、その原因を体系的に総合的に見直し検討し、変化する顧客満足に係わる外部環境の情報と合わせて評価し、顧客満足の追求に関して対応する必要のある課題を抽出し、それら課題への取り組みのための経営施策を決めなければならない。この結論を正しく出すために評価する必要のある品質経営の実績に係わる情報は、①達成した顧客満足の状態や程度、②品質マネジメントの業務の実績と狙いの結果を出す能力、③顧客満足の追求の関連する事業環境の変化の3種に大別できる。
 
③ 外部及び内部の課題§19.2
  JIS和訳「外部及び内部の課題」の「課題」は英文では“issue”であり、これは話題や題目の事柄という意味の「問題」のことであり$65、共通テキスト概念説明文書(16)でも、“issue”が、組織にとって重要な話題(topics)とか、議論や討論する問題(problems)、又は、変化する周囲の状況のことであると説明されている。単なる話題や題目という意味の「問題」のことであるが、問題があるとかないという意味の「問題」にも受けとめられるので適当な和訳語とは言えない。一方、規格条文の点では、組織と組織の置かれた状況§19.1.1がどのようなものであるかに関する「問題」のことであるから、「事情」が適当である。すなわち、JIS和訳「外部及び内部の課題」は「外部及び内部の事情」のことである。
 
  様々な「事情」の中から取組まなければならない課題を抽出するというのが物事の論理である。規格の品質経営では、 トップマネジメントは、変化する「外部及び内部の事情」の中から取り組まなければならない課題を抽出するという経営判断を行い、課題に対応する経営施策を決定する。規格ではこのような「課題」は6.1.1項で「取り組む必要のあるリスク及び機会」、また、経営施策は6.1.2項で「リスク及び機会に取り組む処置」と、それぞれ表現され、これらは9.3.3項のマネジメントレビューの「決定と処置」として決められる。
 
④ 外部及び内部の事情の意義§19.2
  「外部及び内部の事情」は、組織と組織の置かれた状況§19.1.1がどのようなものであるかに関して組織が日常的に把握しておかなければならない内外の事情のことである。規格の意図の「外部及び内部の事情」とは、組織の品質経営活動に影響を及ぼす要因たる「組織の置かれた状況」の中身のことである。
 
  一方、経営論では、経営戦略は、組織の外部環境と組織の有する能力とを適合させることによって決めるとされる。この外部環境とは、政治、経済などの一般環境、顧客や市場などの事業環境、政府やひ供給者などの組織間環境を合わせた事業体としての組織を取り巻く環境であり、組織の能力とは、様々な業務能力、技術力や専門性、設備力、組織風土、立地など組織がどのような価値を生み出す能力を持っているかである§35.2
 
  規格の「外部及び内部の事情」と経営論の「外部環境と組織の能力」は、どちらも経営戦略の見直し変更の基礎となり、全体として同じ概念である。規格の「外部の事情」「外的な状況」は経営論の「外部環境」に、「内部の事情」「内的な状況」は「組織の能力」に、それぞれ凡そ相当すると考えてよい。
 
  規格の品質経営のプロセスアプローチ/PDCAサイクルでは、トップマネジメントがマネジメント レビュー(9.3項)によりこの「外部及び内部の事情」(9.3.2 b)項)を基礎として品質方針及び組織の品質目標(5.2.1項)の見直し検討を行う。これは、マネジメントレビューにより検討すべき事項として「品質経営体制に関連する外部及び内部の事情の変化」 (9.3.1 b)項)と表され、08年版(5.6.2 f)) では「品質経営体制に影響を及ぼす可能性のある変化$19-1-1」と表されている。
 
⑤ 品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性§11.3
  JIS和訳「品質マネジメントシステム」「パフォーマンス」は、その英文からそれぞれ「品質経営体制$19-1-1」「実績$31」である。それに則って品質経営活動が行われる品質経営体制とは、品質経営活動の効果的な実行のために整えられた業務実行の手はずの集まりである。また、規格の「実績」は、狙いの業務結果がでているかどうかの観点の実績であり、品質目標の達成度のことである。
 
  規格の表現では、品質経営体制に則って品質経営活動を行うことは「品質経営体制履行」であり、品質経営活動実績は「品質経営体制の実績」である。すなわち、JIS和訳「品質マネジメントシステムのパフォーマンス」は、品質経営活動実績であり、狙いの顧客満足の状態がどの程度実現したかである。「有効性」は「活動が計画通りに実行されて、計画通りの結果が得られた程度」と定義されるから#4、JIS和訳「品質マネジメントシステムの有効性」は、実現した顧客満足の状態の程度に鑑みて、品質経営の各業務がどの程度決められた通りに実行されたかである。
 
    
(3) 規定要旨
  効果的なマネジメントレビューであるためには、品質経営の実績に係わるa)~f)に関する情報を評価、検討しなければならない。
 
  ここに、a)は、以前のマネジメントレビューで決めた処置(9.3.3項)の実績の情報、b)は、顧客満足の追求に係わる組織と組織の置かれた状況に関する情報(4.1/4.2項)である。 c)は、当該期間の品質経営活動の実績と業務実行の問題点の情報であり、1)は製品サービスに関する顧客の受けとめ方(9.1.2項)、2)は品質経営の業績としての実現した顧客満足の状態(9.1.3 b)項)、3)は製品サービス実現業務の日常管理の実績(9.1.3 a)項)、4)は改善の実績(10.2項)、5)は各業務実行管理の実績(9.1.1項)、6)は内部監査の監査プログラム実行の結論(9.2項)、7)は外部提供者の実績評価(8.4.2項)である。 さらに、d)は、各資源の充足管理(7章)に関する情報であり、e)は、特定の顧客満足の状態の実現のための業務目標計画進捗管理(6.2項)の情報であり、f)は改善の必要性(10.1項)に関する情報である。
 
 
(4) 実務の視点の解釈

     
   
(5) 改定版品質マニュアル(外部説明用)ひな型← 08年版の5.6.2項のままでよい
  業績目標の達成度は、実現した顧客満足の状態(9.1.2項)を品質方針と比較して評価する。品質経営の業務能力の実態は、業績管理の基の各部門の日常管理業務における管理項目(6.2.1項)の業務実績の分析(9.1.3項)、及び、内部監査の結果(9.2項)から評価する。品質方針(5.2項)の見直し検討の基礎となる外部環境の変化と業務能力の問題点は、収集した情報(4.1/4.2項)の分析結果に基づいて評価する(9.1.3項)。
 
  これら評価に用いる情報は、トップマネジメントが決め、期末業績検討会(9.3.1項)の議事録書式に明確にする。
     
     
3. 必要な読み替え(規格の意図の正しい理解のために)
① 外部及び内部の課題 → 外部及び内部の事情$65
   
     
4. 改訂版の変更点(08年版規定からの変化)
    マネジメントレビューにより評価する項目が、08年版(5.6.2項)と表現を変えて規定されただけで、必要な評価内容は変わっていない。
     
     
5. 改訂版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  何も変えることはない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上。
   
   
6. 公表された改定版解釈
(1) 08年版から変わってないとする解釈
① 08年版の5.6に対応:Q5
② 品質マネジメントシステムの変更の推進、改善の優先事項を指揮するトップマネジメントの役割を踏まえた要求事項が構成されている*Q39

 
(2) 08年版から変わっているとする解釈
① 基本的に変わっていないが、議題が増えている:Q17 
   
     
 
7. 予想される極端な審査要求
    
     

H27.1.21(修3.12)  H27.12.19(2015年版)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所