ISO9001/ISO14001
コンサルティング・研修


解説・論評
 
    実務の視点    規格要求事項の解釈
目  次
MSS 共通テキスト
定義・上位構造
13
実務の視点 解説
ISO9001:2015
変更点と移行対応
15 実務の視点 解説
ISO14001:2015
変更点と移行対応
14 2015年改定の要点
ISO14001
規格の論理と用語
ISO9000/14000
英語で読み解く
ISO9000/14000
実務の視点による
ISO9001:2008
解説
よく見られる
誤った取組み
ISO9001/14001
この方がよくわかる
ISO14001:2004
実務の視点による和訳
規格と認証の利用
ISO9001/14001 事例研究
改定の要点
ISO14001:2004
10 改定の要点
ISO9001:2000
11 改定の要点
ISO9001:2008
 

2015年版 ISO9001
関連情報
論評
組織主導の規格解釈
 
13 実務の視点による     ISO9001: 2015   解説
  +  変更点と移行対応a2
31/31d
組織の利益のための規定解釈
-組織の立場からは、構造・用語・文章は大幅変更、 趣旨の変更は 皆無-
 
手間暇かけない 改定対応
-組織の実務を2015年版規定でどのように解釈するか-

 
 解説書   「実務の視点 解説    ISO9001 2015年版」   H28.6.27 発行 
ページ  と “規格の論理と用語”ページ を基礎とした本格的解説書
有償頒布中    

 
  4 章 2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
 62.   4.1   組織及びその状況の理解  
 63.   4.2   利害関係者のニーズ及び期待の理解    
 20.   4.3   品質マネジメントシステムの適用範囲の決定 
 66.   4.4   品質マネジメントシステム及びそのプロセス
(54)
(55)
(13)
(58) 
(H27.11.4)
(H27.11.22)
(H27.11.23)
(H27.11.24)
  5 章 2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
 65.   5.1.1   リーダーシップ及びコミットメント  
 67.   5.1.2   顧客重視     
 68.   5.2.1   品質方針の確立      
 69.   5.2.2   品質方針の伝達     
 22.   5.3    組織の役割、責任及び権限
(57)
(59)
(60)
(61)
(15)

(H27.11.15)
(H27.11.25)
(H27.11.27)
(H27.11.27)
(H27.11.28)
  6 章 2015年版
2015年版
2015年版
 64.   6.1   リスク及び機会への取組み                
 12.   6.2   品質目標及びそれらを達成するための計画策定       
 23   6.3   変更の計画
(56)
(5) 
(16)
(H27.11.9)
(H27.11.9)

(H27.11.29)
  7 章 2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
 
 24.   7.1.1    資源  一般   
 70.   7.1.2  人         
 25.   7.1.3   インフラストラクチャー    
 26.   7.1.4   プロセス運用の環境
 27.   7.1.5   監視、測定のための資源
 71    7.1.6   組織の知識 
 28.   7.2    力 量  
 29.   7.3    認 識  
 30.   7.4    コミュニケーション
 31.   7.5.1   文書化した情報    一般
 33.   7.5.2   作成及び更新  
 34.   7.5.3   文書化した情報の管理
(17) 
(62)
(18)
(19)
(20)
(63)
(21)
(22) 
(23)
(24)

(25)

(26)
 (H27.12.6)
(H27.12.14)
(H27.12.14)

 (H27.12.15)
(H27.12.15)
(H27.12.14)
(H27.12.14)
(H27.12.14)
(H27.12.17)
(H27.12.27)
(H28.1.20)
H28.1.20)
 
  8 章 2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
 40.   8.1    運用の計画及び管理
 41.   8.2.1  顧客とのコミュニケーション
 42.   8.2.2  製品及びサービスに関する要求事項の明確化
 43.   8.2.3  製品及びサービスに関する要求事項のレビュー
 44.   8.2.4  製品及びサービスに関する要求事項の変更 
 45.   8.3.1  製品及びサービスの設計・開発 一般 
 46.   8.3.2  設計・開発の計画
 47.   8.3.3  設計・開発へのインプット
 48.   8.3.4  設計・開発の管理
 49.   8.3.5  設計・開発からのアウトプット
 50.   8.3.6  設計・開発の変更
 51.   8.4.1  外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理   一般
 52.   8.4.2  管理の方式及び程度
 53.   8.4.3  外部提供者に対する情報
 54.   8.5.1  製造及びサービス提供の管理
 55.   8.5.2  識別及びトレーサビリティ
 56.   8.5.3  顧客及び外部提供者の所有物
 57.   8.5.4  保存
 58.   8.5.5  引渡し後の活動
 59.   8.5.6  変更の管理
 60.   8.6    製品及びサービスのリリース
 61.   8.7    不適後なアウトプット
(32)
(33)
(34)
(35)
(36)
(37)

(38)
(39)
(40)
(41)

(42)

(43)
(44)
(45)
(46)
(47)
(48)
(49)
(50)
(51)
(52)
(53)
(H27.10.31)
(H27.10.31)
(H27.10.31)
(H27.10.31)
H27.10.31)
(H27.10.19)
(H27.10.19)
(H27.10.19)
(H27.10.19)
(H27.10.19)
(H27.10.19)
(H27.10.31)
(H27.10.31)
(H27.10.31)
(H27.11.19)

(H27.11.19)
(H27.11.19)
(H27.11.19)
(H27.11.19)
(H27.11.19)
(H27.11.20)
(H27.11.20)
  9 章 2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
2015年版
 17.   9.1.1   監視、測定、分析及び評価 一般    (パフォーマンス評価)
 19.   9.1.2   顧客満足
 35.   9.1.3   分析及び評価
 36.   9.2    内部監査
 72.   9.3.1   マネジメント レビュー  一般   
 73.   9.3.2   マネジメント レビュー  へのインプット  
 74.   9.3.3  マネジメント レビュー  からのアウトプット   
(10)
(13)
(27)

(28)
(64)
(65)
(66)
 (H27.12.17)
 (H27.12.17) (H27.12.21)
(H27.12.26)
(H27.12.19)
(H27.12.19)

(H27.12.19)
  10章 2015年版
2015年版
2015年版
 37.   10.1   改善   一般 
 38.   10.2   不適合及び是正処置

 39.   10.3   継続的改善 
(29)
(30)
(30)
(H27.12.25)
(H27.12.25)
(H27.12.25)
  9.     2つのPDCAサイクルの観点からの検討討                            -(2)    (H26.7.17)
  8.    マネジメントサイクルの観点からの検討                                     -(1)    (H26.7.4)
 
解説  何が変わるか 2015年版 ISO9001
 
110. 組織の実務を基礎とするISO9001 2015年版規格解釈    ―組織主導の規格解釈(8)   (H27.9.9)
      図. 組織の品質経営の実務を基礎とするISO9001 2015年版解釈 (製造・加工業の単純な事例)
32. 2015年版ISO9001 FDIS発行-見掛けの変更多数だが趣旨不変の2015年版がほぼ確定                      (H27.7.21)
 7. 2015年版ISO9001 DIS版で変わったこと-リスク規定大幅減、方法論復活、適用除外緩和、なお論理未整理(H26.6.11)
 6. 2015年版は品質改善成果重視の規格解釈に。審査には高負荷業務簡素化が可能‐ISO9000 DIS版新定義 (H26.5.28)
 5. ISO9001/CD 「リスク及び機会」は新しい概念・要求事項ではない ‐TC176改定説明第1報「リスク思考」  (H26.2.1)
 4. ISO9001/CD 新要求事項「知識」  (変更点の評価‐3)  (H25.9.27)
 3. ISO9001/CD 運用管理におけるリスクと予防処置  (変更点の評価‐2)  (H25.9.14)
 2. ISO9001/CD 新要求事項 「人的過誤による不適合が阻まれていること」  (変更点の評価‐1)      (H25.9.6)
 1. 2015年版の全体像判明-見掛けは全面改定、但し論理は不変(CD版でわかること)      (H25.7.17)
 
 
 
 74改定解説(2015年版):    9.3.3   マネジメント レビューからのアウトプット   -変更点と移行対応(66)
(1) 条項の趣意
 本項は、品質経営実績評価(9.3.2項)の結果として、組織を無限持続体として存続発展させるよう方向づけるという観点でトップマネジメントが出す結論に関する要件を規定している。
 

(2) 規定の趣旨
 マトップマネジメントは、マネジメントレビューによって、引き続く必要な顧客満足の状態の維持のために取り組むことが必要な課題を抽出し、そのためにとるべき経営施策を決めなければならない。この結論が組織の方向づけるものとして効果的であるためには、判断と決定は次のa)~c)の観点が含まれていなければならない。 ここに、a)は顕在又は潜在の問題への取り組みであり、b)は、品質方針及び組織の品質目標の変更を含む品質経営の業務実行の手はずの変更であり、c)は、資源の充足である。
 
マネジメントレビューの記録は、組織の品質経営の歴史を表すものとして維持しなければならない。
 
(3) 08年版からの変更点

  マネジメントレビューの結論が、08年版(5.6.3項)から表現を変えて規定されただけで、条文も似ており趣旨は全く変わっていない。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  何も変えることはない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上。
 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-74>
 
 73.  改定解説(2015年版):    9.3.2   マネジメント レビューへのインプット  -変更点と移行対応(65)
(1) 条項の趣意
  本項は、無限持続体として存続発展させるよう組織を方向づける結論(9.3.3項)を出すために、マネジメントレビュー活動で評価、検討することが必要な事項を規定している。
(2) 規定の趣旨
 効果的なマネジメントレビューであるためには、品質経営の実績に係わるa)~f)に関する情報を評価、検討しなければならない。
 
  ここに、a)は、以前のマネジメントレビューで決めた処置(9.3.3項)の実績の情報、b)は、顧客満足の追求に係わる組織と組織の置かれた状況に関する情報(4.1/4.2項)である。 c)は、当該期間の品質経営活動実績と業務実行の問題点の情報であり、1)は製品サービスに関する顧客の受けとめ方(9.1.2項)、2)は品質経営の業績としての実現した顧客満足の状態(9.1.3 b)項)、3)は製品サービス実現業務の日常管理の実績(9.1.3 a)項)、4)は改善の実績(10.2項)、5)は各業務実行管理の実績(9.1.1項)、6)は内部監査の監査プログラム実行の結論(9.2項)、7)は外部提供者の実績評価(8.4.2項)である。 さらに、d)は、各資源の充足管理(7章)に関する情報であり、e)は、特定の顧客満足の状態の実現のための業務目標計画進捗管理(6.2項)の情報であり、f)は改善の必要性(10.1項)に関する情報である。
 
(3) 08年版からの変更点

   マネジメントレビューにより評価する項目が、08年版(5.6.2項)と表現を変えて規定されただけで、必要な評価内容は変わっていない。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
   何も変えることはない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
   同上
 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-73>
 
 72改定解説(2015年版):   9.3.1  マネジメント レビュー   一般  -変更点と移行対応(64)
(1) 条項の趣意
 規格は、製品サービスの顧客満足§10の追求により組織の永続的な存続発展を図る品質経営§2.1の在り方を規定している。その基本要件は、あるべき顧客満足の状態に関する経営戦略§35.2を時代の変化に応じて適切に変更し、それを確実に実現させるという循環的活動§33として品質経営活動を行うことであり、規格の規定はこれを、品質経営製品サービス実現との2種類のプロセスアプローチ/PDCAサイクル§43.2の形で記述している。
 
  マネジメントレビューは、狙いの顧客満足の状態の確実な実現を図るマネジメントサイクル
§33に倣った品質経営のプロセスアプローチ/PDCAサイクルの中核となる活動であり、顧客満足追求に係わる時代の変化を把握して、変化に対応するために品質経営の戦略の変更を含む品質経営の手はずの変更と必要な処置を決めるために、あるサイクルと次のサイクルとの間でトップマネジメントが行う活動である。
 
  本項は、組織を無限持続体として存続発展させるよう方向づけるというマネジメントレビューの意義を明確にし、その定期的な実行の必要を規定している。
 
(2) 規定の趣旨
 組織は、9.3.2項と9.3.3項の要件を満たす マネジメントレビューの活動の手はずを整え、トップマネジメントは手はずに則って決められた必要な間隔で、9.3.2項に規定の品質経営活動の実績を評価、検討し、引き続く組織の存続発展を図るために必要な9.3.3項に規定の事項を含む結論を出さなければならない。 
 
(3) 08年版からの変更点

  共通テキスト化により単一条項となったのを、08年版と同じ3つの二次条項に分けて記述されており、この外形もマネジメントレビューの意図もその規定の趣旨も変わっていない。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  何も変えることはない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  トップマネジメントには、組織の収益目標の達成のためにどのような顧客満足の状態を実現させなければならないかの想いがあり、それが実現するように人や設備を配置し、それが実現するのかどうかの観点で製品の品質水準や業務実行の出来ばえに関心を持ち、問題を指摘し必要な対策を指示している。トップマネジメントが行なっているこのような顧客満足追求の管理の中の業績評価と新業績目標決定の枠組みを本項規定に照らして整理すればよい。 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-72>
 
 71改定解説(2015年版):     7.1.6   組織の知識  -変更点と移行対応(63)
(1) 条項の趣意
 本項は、効果的な品質経営に必要な資源のひとつとしての、効果的な業務実行に必要な知識が必要な業務に確実に適用され或いは用いられるように、必要な知識を充足管理することの必要を明確にし、その要件を規定している。注記には、規格の意図の「組織の知識」についての説明がある。
 
(2) 規定の趣旨
 組織は、品質経営に関連する業務が効果的に行われるように、それら業務の実行と管理のために必要な知識を特定し、それら知識を必要に応じて使用できるようにする手はずを整えなければならない。また、手はずに則って、必要な職務知識を要員に習得させ(7.2項)、必要な知識情報を要員が業務実行に使用できるようにしておかなければならない(7.5項)。さらに、品質経営に関連する知識の変化とその傾向に対応して必要となる知識を取得又は利用する手はずを整え、手はずに則って、必要に応じた知識を追加又は更新しなければならない。 
 
(3) 08年版からの変更点

  08年版の6.2項(人的資源)の職務能力の管理の規定に明示されていないが当然必要であった職務知識の充足管理の必要が、15年版の7.1.6項(組織の知識)で明示的規定となったに過ぎない。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  要員の配置と知識の管理の要件が変わった訳でなく、実務では改訂版の両条項の要件は満たされているはずであるから、何も変えることはない。但し、文書管理の中に知識情報の管理という観点が希薄な組織も少なくないから、文書体系の中に研究報告書のような内部の技術情報文書、ISO規格解説書や設備取り扱い説明書のような外部からの専門情報文書や図書が明確に織り込まれて管理されているかどうかを再確認するのがよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  既存の文書と記録の管理の手はずを知識情報の管理という観点で問題ないかどうか見直す。 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-71>
 
 70.改定解説(2015年版):   7.1.2 人々   -変更点と移行対応(62)
(1) 条項の趣意
 本項は、効果的な品質経営に必要な資源のひとつとしての要員の充足管理の必要とその要件を規定している。
 
(2) 規定の趣旨
組織は、品質経営に関連する業務が効果的に行われるように、それら業務の実行と管理のために必要な要員を特定し、配置する手はずを整え、手はずに則って要員を確保し、それぞれの業務実行場所に配置しなければならない。
 
(3) 08年版からの変更点

  08年版6.2.1項の、すべての業務にそれぞれの職務能力を持った要員を割り当てなければならないという趣旨の「職務能力を持った要員」を「必要な人々」に言い変えたものであり、規定の趣旨は新規なものではない。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  実態を品質マニュアルに記述すればよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-70>
 
 69.改定解説(2015年版):    5.2.2   品質方針の伝達  -変更点と移行対応(61)
(1) 08年版からの変更点
  品質方針の文書化と要員の理解に関する規定は08年版(4.2.1, 5.3)にもあり、表現の違いだけ。利害関係者への伝達は新規な規定だが、実務ではあったことであり、規定に特別な意図が籠められているということでもない。
 
(2) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を分割、移動するだけで何も変えることはない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上。 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-69>
 
 68.改定解説(2015年版):   5.2.1   品質方針の確立  -変更点と移行対応(60)
(1) 08年版からの変更点
  品質方針の定義は08年版と同じ、「トップマネジメントによって正式に表明された、品質に関連する組織の意図及び方向付け」であり、品質方針が経営戦略を意味することに変わりはなく、そのことは15年版では「品質方針は、組織の戦略的方向性を裏付けるものでなければならない」とその策定、見直しの方法論との関係で規定されたことにより、一層明確になった。箇条書きの項目と文章は08年版の5.3項(品質方針)の趣旨を引き継いでいる。
 
(2) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質方針を顧客満足追求の経営戦略として取り扱っている組織には、品質マニュアル記述も含めて何も変えることはない。この機会に、大抵の組織で品質マニュアルに表されている「品質方針」が実務の業務実行指針や日常管理の管理ポイントとの関係で適切かどうかの見直しをするのもよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  創業者の想いが社是や社訓のような形で明確にされている組織では、その中心は大抵の場合は製品サービスに関するものである。また、実際にトップマネジメントや管理者は頭の中に一定の考えがあり、それに基づいて業務実行を指揮し、方向づけており、その考えに基づいて業務の手順や管理基準が決められている。これらの中の製品品質と顧客対応に関して基準となる考え方を整理し、理念や品質基本方針としてまとめ、或いは、社是や社訓のままで整理する。さらに、どのトップマネジメントも年度の収益見通しを持っており、その達成のための売上とコストに関する目途があり、そのために製品品質と顧客対応に関してもこうしなければならない、こうでなければならない、このようにするという腹積もりがある。これを整理して何の実現のために何をするかにまとめて年度品質方針、重点取組み事項とその狙いとして明確にすればよい。前年と同じように仕事をすればよいなら、そのような品質方針とすればよい。不必要な改善に労力を投入することは組織の存続発展の道筋を示す規格の意図ではない。
 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-68>
 
 67.改定解説(2015年版):  5.1.2  顧客重視  -変更点と移行対応(59)
(1) 08年版からの変更点
  組織の存続発展に必要な顧客満足の状態を適切に決め、その確実な実現を図るように品質経営の各業務の実行を管理するトップマネジメントの責任を規定しているという点で一部の文章表現も含めて08年版から変化はない。15年版では管理の観点を詳細に明示的に規定されているだけで、趣旨は全く変わっていない。
 
(2) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  全く何も変える必要はない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  顧客に製品サービスを買ってもらい又は取引を続けてもらう存在であるためにどのような組織にならなければならないか、そのような組織であるためにどのように組織の業務が行なわれなければならないかということに関するトップマネジメントの頭にある想いと、いつも気にしている製品サービスに関連する顧客の評価項目を、洗い出してみる。そして、それら業務の実行と実績をどのように管理しているかを考えて、管理項目と管理方法を整理し、規格の該当する条項の規定に当てはめてみるとよい。多くは、日常管理項目の中に含まれてトップマネジメントとしてもその実績を何らかの方法で掌握しているはずである。 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-67>
 
 66.改定解説(2015年版):   4.4  品質マネジメントシステム及びそのプロセス -変更点と移行対応(58)
(1) 08年版からの変更点
  08年版の4.1項(品質マネジメントシステム 一般要求事項)が共通テキストSL導入のために、本項に移動して記述されている。中身は08年版と全く同じ又は類似した規定条文もあるように単なる条文表現の変更である。ただし、08年版の末尾のアウトソースについて特別な説明の規定が無くなり、文書化と記録保存の必要性の説明に代わっている。
 
(2) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル(4.1)の記述を移動するだけで、何も変える必要はない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  原理の説明の規定であるから、品質保証体系図を作成するなど規定に対応して何かをするというのではなく、これを良く理解して規格の規定を解釈するようにすればよい。 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-66>
 
 65.改定解説(2015年版):  5.1.1  リーダーシップ及びコミットメント   一般  -変更点と移行対応(57)
(1) 08年版からの変更点
   トップマネジメントが品質経営の最高責任者であるとする改訂版の定義は08年版の定義をそのまま継承しており、規格の意図におけるトップマネジメントの役割と責任は08年版(5.1 経営者のコミットメント)から何らの変更もないと理解するのが自然である。
 
  内容的にも、5.1項の記述をそのまま、表現を変えて表したか、意図の明示化である。08年版に含まれていなかったのはd)だけである。逆に08年版5.1項のa)の顧客のニーズと期待の重要性の周知、d)のマネジメント レビューの実行の規定がなくなったが、これらがトップマネジメントの責任でないということではない。要するに、08年版5.1項と15年版5.1.1項の規定の見掛けの違いは、規定表現上の違いであり、トップマネジメントの責任が変わった訳ではない。
 
 
(2) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  トップマネジメントの役割と責任は何ら変わっていないので、何も変える必要はない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  トップマネジメントは、自らが決め実行を指揮している、製品品質と顧客対応に関する組織の業務とその実行方法に、規格の規定を適用する。品質文書・記録と呼んだり、その一部を環境文書・記録として用いるという形をやめて、すべてを全社の文書・記録とする。品質方針・目標、品質目標達成計画書はそれぞれ基本又は年度全社方針・目標、業務目標達成計画書の一部とし、手順書作成、承認、配布は管理責任者の業務ではなくそれぞれの業務担当部門の業務とする。ISO9001事務局は廃止してその業務は品質保証担当部門の一業務とし、日常業務でISO用語を使用せず、ISO教育はやめる。ISO内部監査講習に人を派遣せず、管理責任者は通常の内部監査技法の勉強をする。 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-65>
 
 64.改定解説(2015年版):  6.1  リスク及び機会への取組み   -変更点と移行対応(55)
(1) 08年版からの変更点
➀ 6.1.1項(リスク及び機会の決定)
  08年版でもマネジメント レビューによる品質方針、目標を含む品質経営体制の変更の必要を内外の事情の変化(品質経営体制に影響を及ぼす可能性のある変化:5.6.2 f))に鑑みて評価検討して対応すべき課題を抽出と特定すべきことが明確に規定されている、実務ではこの種の事情の変化に不確実性が付随するのは常識であるから、08年版でもリスクと機会の概念は実際に適用されてきた。15年版ではマネジメントレビューの結論の取り組むべき課題を「取り組む必要のあるリスク及び機会」、「処置」を「リスク及び機会への取組み」と言い換えただけである。
② 6.1.2項(リスク及び機会への取組みの計画)
  08年版(5.4.2)では「品質目標を満たすように品質経営体制の計画活動を行う」、15年版は「リスク及び機会に取り組む処置を計画する」である。規格の論理では「リスク及び機会に取り組む処置」の狙いの結果は「品質目標」であるから、「品質目標を満たすよう計画する」も「処置を計画する」も同じことである。
 
(2) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  既に本4.1、4.2項の規定を満たした情報の日常的な収集と分析が行われているはずであるから、何も変えることはない。年度品質目標のどれが「機会への取組み」でどれが「リスクへの取組み」か、を審査員に説明できればよい。しかし、マネジメントレビューで評価、検討している事柄(5.6.2項)が、組織の品質経営の戦略である品質方針と組織の品質目標の見直しに必要な外部環境と組織の能力を表すものとして必要、十分であるかどうかについて再検討してみるのも有意義であろう。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  どのトップマネジメントも年度の収益見通しを持っており、その達成のための売上とコストに関する目途があり、そのために製品品質と顧客対応に関してもこうしなければならない、こうでなければならない、このようにするという腹積もりがある。トップマネジメントのこのような想いは外部環境と組織の能力に関するトップマネジメントの認識と、このようなことが実現できる、見過ごせばこんなことが起きてしまうというような判断に基づいているはずである。これを整理して何の実現のために何をするかにまとめて例えば年度品質目標に明確にすればよい。なぜそうしなければならないかの判断に至る思考過程が6.1.1項である。審査のために必要として、誰にも成算がなくトップマネジメントも資源を投入してまでは達成を期待していない品質改善活動は、このようなトップマネジメントの腹積もりには存在しないのではないだろうか。 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-64>
 
 63.改定解説(2015年版):  4.2  利害関係者のニーズ及び期待の理解  -変更点と移行対応(55)
(1) 08年版からの変更点
  マネジメントレビュー(5.6.1)による品質方針と品質目標の見直し変更の基礎として評価分析すべき事項は、08年版では「品質経営体制に影響を及ぼす可能性のある変化」であったが(5.6.2 f))、15年版では「品質経営体制に関連する外部及び内部の事情」に変わり(9.3.2 b)項)、共通テキストの採用のためにそれらの情報収集の必要が、4.1項と4.2項に分けて明示的に規定されることになった。表現の違いと規定の明示化だけの問題である。
 
(2) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアルに実態を記述するだけでよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  頭の中は変える必要がなく、収集する情報の整理の際に抜けのないようにすればよい。 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-63>
 
 62.改定解説(2015年版):  4.1   組織及びその状況の理解  -変更点と移行対応(54)
(1) 08年版からの変更点
   08年版ではマネジメントレビュー(5.6.1)により「品質方針及び品質目標の変更の必要性の評価を行わなければならない」との規定があり、そのために評価分析すべき事項としてのマネジメント レビューへのインプット(5.6.2)のひとつのf)項に「品質経営体制に影響を及ぼす可能性のある変化」が規定されている。
 
  これが15年版では「品質経営体制に関連する外部及び内部の事情」に変わり(9.3.2 b)項)、どのような事情の監視が必要かを決定し、その情報を収集、分析することが、本項で明示の規定となった。15年版は規定表現の変更だけであり、経営戦略を組織の外部環境と組織の能力の変化に適応させるよう見直し変更するという規定の趣旨は全く変わっていない。なお、08年版でも顧客満足業績に関する情報についてのみは、情報の監視と入手及び分析の必要が明示的に規定されている(8.2.1)。
 
(2) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  08年版でもマネジメントレビュー(5.6項)を行うために本4.1、4.2項の規定のような情報の日常的な収集と分析が行われているはずであるから、何も変えることはない。しかし、マネジメントレビューで評価、検討している事柄(5.6.2項)が、組織の品質経営の戦略である品質方針と組織の品質目標の見直しに必要な外部環境と組織の能力を表すものとして必要、十分であるかどうかについて再検討してみるのが有意義であろう。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  実際にトップマネジメントや管理者の頭の中にあってそれに基づいて業務実行を指揮し、方向づけており、又は、業務基準の中に反映されている製品品質と顧客対応についての組織の実際の考え方を整理して、それを品質方針とすることが必要である。次にこのような品質方針を決めた背景の事情を外部環境と組織の能力とに分けて改めて考えてみる。
 
  組織の継続的な存続発展のためには、それらの事情が今後変化すれば、新たな製品品質や顧客対応が必要になるのであるから、それら事情の変化を把握するための事項を選択し、その情報の収集、分析の方法を決める。それらの情報は恐らく、トップマネジメントや管理者がいつも関心を持ち、気にかけ、又は、定期会議に報告させている類の情報と一致するはずだ。
 
  それらの情報の組織としての収集と分析、報告の手はずを明確にし、今後確実に実行されるよう管理の手はずを整えることが移行対応である。あわてて特別な情報収集の手順を決めることはない。これらの情報は何も特別なものではなく、規格の他の条項の規定に関係するものであるから、それらを満たす中で情報の収集、分析の方法、責任者が明らかになる。 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-62>

 61.改定解説(2015年版):  8.7  不適合なアウトプットの管理 -変更点と移行対応(53)
8.7.1   組織は、要求事項に適合しない アウトプット が誤って使用されること又は引き渡されることを防ぐために、それらを識別し、管理することを確実にしなければならない。
 
  組織は、不適合の性質、並びに、それが製品及びサービスの適合に与える影響に基づいて、適切な是正処置をとらなければならない。これは、製品の引渡し後、サービスの提供中又は提供後に検出された、不適合な製品及びサービスにも適用されなければならない。
 
  組織は、次の一つ又はそれ以上の方法で、不適合な アウトプットを処理しなければならない。
 
a) 修正
b) 製品及びサービスの分離、散逸防止、返却又は提供停止
c) 顧客への通知
d) 特別採用による受入の正式な許可の取得
 
  不適合な アウトプット に修正を施した場合ときには、要求事項への適合を検証しなければならない。
 
8.7.2   組織は、次の事項を行った文書化した情報を保持しなければならない。
 
a) 不適合の記載
b) とった処置の記載
c) 取得した特別採用の記載
d) 不適合に関する処置について決定を下す権限をもつ者の特定
 
 
(1) 条項の趣意
  本項は、契約又は注文に対して顧客に引渡す製品サービス が組織の狙いの顧客満足の状態(5.2項)の実現に適うものであることを確実にするためには、製造及びサービス活動 (8.5項)において発生した狙いの通りでない中間的及び最終の製品サービス を、また、顧客で検出された顧客に受け入れられない製品サービス を処理、管理することが必要であること、及び、その処理と管理の要件を規定している。
 
① 論理及び用語
  JIS和訳「アウトプット」の英文は“output”であり、日本語では「出力」である(110)。元来は電気的制御分野の用語であるが、今日では「人又は物によりつくり出される何かの量」など「機械や電算機により生み出される何か(電力、エネルギー、情報など)」の意味(103)でも用いられている。規格では「プロセスの結果」と定義#39されているが、これは「業務」「業務実行」の意味$2であるJIS和訳「プロセス」が「入力を出力に変換する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動」と定義されていること#1と軌を一にする。すなわち、JIS和訳「アウトプット」は、業務の出力であるから「業務出力」であり、定義の通り「業務実行の結果」のことを指す。
 
  08年版では、業務実行の結果は「製品」と定義されているが#13p、業務実行の結果そのものを表す場合には用語「業務出力」が「設計・開発からの業務出力」のように用いられている。15年版の定義#39では、業務実行の結果は「業務出力」として、この用語を「設計・開発からのアウトプット」(8.3.5項)のように業務実行の結果そのものを表す場合と、業務実行の結果としての「製品サービス」を表す場合の両方で用いている。規定表現において厳密な区別があるとは思えないが、一般に最終製品サービス に近い形の業務結果には用語「製品サービス」が用いられ、また、最終製品サービスから遠い形の素材、部品、半製品などのような業務結果たる製品サービス と業務結果そのものを表す場合には用語「業務出力」が用いられ、両方を表す場合も「業務出力」が用いられているように見える。
 
  「不適合」とは、定義#5-2では必要条件を満たしてしていないということであり、業務実行管理における実績評価(9.1.1項)の活動によって、決められた必要な結果ではないと判定された業務結果の状態を指す。
 
  JIS和訳「修正」は、08年版では「不適合を除去する処置」と定義#42pされているから「修正処置」の意味である。修正処置は、検出され或いは発生した不適合の状態を正す処置であり、08年版指針規格では、発生した不適合製品がそのまま顧客に引渡されることのないようにするための修正処置の具体的例として、手直し、修理、再格付け、廃棄を挙げている。
   
  規格の「是正処置」は、検出された不適合、又は、その他の検出された望ましくない状況の原因を除去するようにとられる処置」と定義され、再発防止の処置である。
 
② 規定の趣旨
  組織は、製造及びサービス活動 (8.5項)における製品サービス の合否判定の活動(8.6項)によって不合格と判定された不合格製品サービス の取扱いと処理を含む管理の手はずを整え、手はずに則って発生した不合格製品サービス がそのまま顧客に引き渡され又は顧客の用に供されることのないように不合格品製品サービス を取扱い、処理しなければならない。この手はずには、顧客で検出された不合格製品サービス を含む顧客に受け入れられない製品サービス の取扱いと処理も含めなければならない。この処理には、必要により問題の再発を防止する処置(10.2項)を含めなければならない。
 
  これらの取扱いと処理の手はずが効果的であるためには、手はずには8.7.1項のa)~d)が含まれていなければならない。a)は決められた通りでない状態を正す処置であり、b)は不合格製品サービス や顧客に受け入れられない製品サービス がそのまま使用され、顧客に引渡され、又は、顧客の用に供されないための処置であり、c),d)は顧客との意思疎通のための処置である。
 
  発生し又は検出された不合格製品サービス や顧客に受け入れられない製品サービス、 及び、とった処置に関する、8.7.2項のa)~d)に関する文書化された情報を保持しなければならない。a)は不合格の、又は、顧客に受け入れられない理由、b)はとった処置、c)は顧客から得た許可、d)は処置の責任者である。
 
 
(2) 08年版からの変更点
  標題が異なるだけで、規定表現も似ており、規定の趣旨は08年版8.2.4項と全く同じ。
 
(3) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織  
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要はない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-61>(追って掲載予定)>

 60.改定解説(2015年版):    8.6   製品サービス の リリース   -変更点と移行対応(52)
組織は、製品及びサービスの要求事項を満たしていることを検証するために、適切な段階において、計画した取決めを実施しなければならない。
 
計画した取決めが問題なく完了するまでは、顧客への製品及びサービス の リリース を行ってはならない。 ただし、当該の権限をもつ者が承認し、かつ、顧客が承認したとき(該当する場合)は、この限りではない。
 
組織は、製品及びサービスのリリースについて文書化した情報を保持しなければならない。これには、次の事項を含まなければならない。
 
a) 合否判定基準を伴った、適合の証拠
b) リリースを正式に許可した人(人々)に対するトレーサビリティ
 
 
(1) 条項の趣意
  個々の契約又は注文に対して製品サービス実現の計画で決めた通りの製品サービス (8.1 a)項)を顧客に引き渡すことを確実にするために、製品サービス 実現の計画で決めた通りに製品サービス合否判定の活動(8.1 b)項)を行わなければならない。組織は、製品サービス合否判定の活動の手はずを整え、手はずに則って決められた合否判定活動を行い、決められた通りでない製品サービス、つまり、不良品が顧客に引渡されることのないようにしなければならない。
 
  本項は、これを確実にするための効果的な製品サービスの合否判定活動の実行に関する要件を規定している。
 
① 論理及び用語
  JIS和訳「リリース」の英文は“release”であり、規格では「あるものを保持されていた場所から出す」という意味で用いられている。英国の00年版解説書では「リリース活動は、所定の業務が完了したか、次の段階又は次の業務プロセスに移ってよいかどうかを判断する局面で行なわれる」と、その意義と特徴が説明されている。8.6項の「製品サービス のリリース」は、合否判定 により合格した製品サービス を合否判定 活動から外に出すという意味であり、実務的には顧客に引渡してもよい合格品と見做す、或いは、合格品として取り扱うということである。
 
  JIS和訳「検証」の英文“verification”は、あることが正しく又は適切かどうかの観点で調査する、又は、それを実証することを意味する。規格の定義では「規定された要件が満たされていることを客観的証拠を用いて実証すること」であり、「要件が満たされている」は「適合している」ということであるから、「適合性の実証」という意味である。一方、品質管理用語では“verification”は「製品が特有の必要条件に適合しているかどうかを判定する活動」を指すから、「適合性の判定」であり、実務的には「合否判定」である。
 
  JIS和訳「計画した取り決め」の英文は“planned arrangement”であり、“arrangement”は「手はず」であり、規格用語としては「計画する」や「計画を策定する」の計画活動で整えた手はずのことを意味する。8.6項の場合は、製品サービス のJIS和訳「検証」に関して製品サービス実現の計画 (8.1 b)項)で整えられた手はずのことである。すなわち、「計画した取り決めを実施する」とは、製品サービス実現の計画 で決められている段階と方法、合否判定基準の通りの合否判定を行うということである。
 
  JIS和訳「要求事項」は、英文でも規格の定義でも「要求」ではなく「必要」という意味であり、「製品及びサービスの要求事項」とは、組織が満たさなければならない製品サービス としての必要条件という意味での「製品サービス 要件」のことである。これは、顧客のニーズと期待を満たし、狙いの顧客満足の状態を実現に資する製品サービス であるために組織が満たすことが必要な製品サービス の条件である。具体的には、製品サービス の必要な仕様と品質及びその他必要事項のことである。
 
② 規定の趣旨
  製品サービス 実現の計画8.1項)で決められた通りの製品サービス を顧客に引渡すことを確実にするために、製品実現の計画で決められた通りの製造及びサービス活動の段階と方法で、製品サービス 合否判定の活動を行わなければならない。決められた合否判定の活動が問題なく完了するまでは、製品サービス を顧客に引渡してもよい合格品として扱ってはならない。但し、責任者及び可能なら顧客が承認すれば、この限りではない。
 
  合否判定基準に合格したという証拠、及び、最終的に合格判定した要員を追跡できる情報を含む合否判定 活動関する文書化した情報を保持しなければならない。
 
 
(2) 08年版からの変更点
  08年版(8.2.4)で「製品の監視及び測定」として品質経営のプロセスアプローチ/PDCAサイクルの管理/Pに位置づけられているのが、本来の製品サービス実現の業務として位置づけが明確になった。規定の趣旨は不変であり、規定も用語表現が異なるだけでほぼ同じである。
 
(3) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要はない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-60>(追って掲載予定)>

 59.改定解説(2015年版):  8.5.6   変更の管理  -変更点と移行対応(51)
組織は、製造又はサービス提供に関する変更を、要求事項への継続的な適合を確実にするために必要な程度まで、レビューし、管理しなければならない。
 
組織は、変更のレビューの結果、変更を正式に許可した人々及びレビューから生じた必要な処置を記載した、文書化した情報を保持しなければならない。
 
 
(1) 条項の趣意
  本項は、製造及びサービス活動(8.5.1項)の手はずを変更する場合は、製品サービス実現の計画(8.1項)で決められた通りの製品サービス を顧客に引き渡すことを確実にするように変更作業を管理することが必要であること、及び、その管理の要件を規定している。
 
① 論理及び用語
  TC176の変更説明(18)によると、品質経営の業務が組織の経営戦略を支えるという観点から15年版では変更管理に関する規定が強化されている。このため、製品サービス要件 (8.2.4項)と設計開発(8.3.6項)、品質経営体制 (6.3項)の手はずの変更に加えて、製品サービス実現 (8.1項)、製造及びサービス活動(8.5.6項)の手はずの変更に関しても、変更の管理の要件が規定されている。
 
  JIS和訳「変更」の英文は“change”であり、この場合は「変更すること」を意味する(101)。規格の意図の変更管理は、実務的には変更作業の管理であり、変更作業により意図しない混乱や問題を起こさずに、必要な変更を実現させるよう変更作業の実行を管理することである。変更管理の程度は、管理しない場合に起きる可能性のある混乱や問題の大きさに対応したものでなければならない。変更作業とは例えば、手順書の改訂、要員の新業務方法の要員への徹底又は習得訓練、新機器の購入などであり、変更の手はずには新しい業務方法を何時又はどの対象から適用するのかが含まれる。
 
  JIS和訳「レビュー」の英文は“review”であり、この場合は「必要なら変えるという意図を持って行う検討」を意味し$22、規格では「あるものが所定の目標達成の観点で適当か、十分か、効果的かを判定すること」と定義#11されている。また、「要求事項」は“requirement”で、必要事項、必要条件、要件、条件という意味であり、本項の「要求事項」は文脈から、製造又はサービス活動により実現させるべき狙いの製品サービスとしての必要条件のことである。JIS和訳「要求事項への適合」とは、製造又はサービス活動で実現させた製品サービスの適合性であり、狙いの通りの製品サービスであることを意味する。
 
  本項の変更管理に関する「変更をレビューする」とは、本来の狙いの製品サービスが得られるかどうかの観点で変更内容と変更作業に問題がないかどうかを検討することである。
 
② 規定の要旨
  製造及びサービス活動の開始後の特定の製品サービス製造及びサービス活動の手はずを変更する場合は、変更作業の混乱によって必要な狙いの通りの製品サービスとならない結果を招くことを避けなければならない。組織は、このことを確実にするために、変更作業に問題がないかどうかを必要な程度に検討し、その通りに変更作業が行われるよう管理しなければならない。変更作業の検討結果ととった処置、及び、その最終決定者の記録を保持しなければならない。
  
 
(2) 08年版からの変更点
  08年版にはなかった新規定であるが、規定内容は08年版の5.4.2項の変更管理の範疇である。15年版の変更管理の強調という改訂方針に沿って独立した条項となった。
 
(3) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織  
  08年版で5.4.2項の変更管理に含めていた変更で該当するものがあれば、品質マニュアルの8.5.6項に記述すればよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-59>(追って掲載予定)>

 58.改定解説(2015年版):   8.5.5   引渡し後の活動   -変更点と移行対応(50)
  組織は、製品及びサービスに関連する引渡し後の活動に関する要求事項を満たさなければならない。
 
  要求される引渡し後の活動の程度を決定するに当たって、組織は、次の事項を考慮しなければならない。
 
a) 法令・規制要求事項
b) 製品及びサービスに関連して起こり得る、望ましくない結果
c) 製品及びサービスの性質、用途及び意図した耐用期間
d) 顧客要求事項
e) 顧客からのフィードバック
 
  注記 引渡し後の活動には、保証状況(warranty provisions)、メンテナンスサービスのような契約義務、及び、リサイクル又は最終廃棄のような付帯サービスの下での活動が含まれ得る。
 
(1) 条項の趣意
  本項は、成約又は受注して顧客に引渡す製品サービス が組織の狙いの顧客満足の状態(5.2項)の実現に適うものであることを確実にするためには、引渡し後の製品サービス に生じた顧客のニーズと期待に応じる活動が必要であること、及び、その活動の要件を規定している。
 
① 論理及び用語 
  「引渡し後の活動」の英文は“post-delivery activity”であり、製品サービスを顧客に引渡した後に組織が製品サービスの品質ないし狙いの顧客満足の状態の実現に関連して行う活動である。
 
  94年版では、製品サービスを顧客に供給する組織の事業活動を、製造、据え付け、付帯サービスの3つの活動から成るとし、「付帯サービス」は顧客に納入した製品の補修、設備保全、補給部品供給などのサービス活動を意味するものと受けとめられてきた。 00年版では製造、据え付け、付帯サービスという区分を廃して、すべての製品サービスについて「製造及びサービス活動」と一括表され(7.5.1項)、事実上これに続く活動としての「引渡し後の活動」という新しい概念が導入されている。
 
  00年版が不良品を出さないだけでなく顧客のニーズと期待を満たす製品サービスの提供を主意とするように拡大変化したことから、「引渡し後の活動」は「製造及びサービス活動」によりつくり又は生み出された製品サービスが組織の狙いの顧客満足の状態の実現に資するものであることを支える手段としての活動とであると考えるのが妥当である。これについて00年版では、製品使用相談や要員訓練、技術支援、苦情の受付や処理、品質保証契約による求償への対応活動を例示する解説があり、15年版の注記(8.5.5項)では、製品品質の保証制度、保守サービス契約、製品の廃棄処理事業としての活動が挙げられている。
 
  JIS和訳「要求事項」の英文の“requirement”は必要事項、必要条件、要件、条件という意味であり、規格で修飾語付きで用いられる「要求事項」は、定義により「ニーズ若しくは期待」という意味である。 「引渡し後の活動に関する要求事項」は、組織の狙いの顧客満足の状態の実現のために組織が満たすべき「引渡し後の活動に関する必要条件」という意味であり、実務的にはどのような引渡し後活動が必要か、引渡し後活動はどのようでなければならないかということである。
 
  同様に、「法令・規制要求事項」は、組織が満たすべき「法令・規制に関する必要条件」という意味であり、実務的には法令・規制に定めのある引渡し活動は何か、どのように引渡し後活動を行わなければならないかということである。「顧客要求事項」は、組織が満たすべき「顧客に関する必要条件」の意味であり、実務的には組織の製品サービスが売れるために満たさなければならない顧客の想いのニーズと期待の-ことである。
 
  JIS和訳「要求される」の英文は“are required”であり、これは「~が必要である」「~を必要としている」の意味である。規定の「要求される引渡し後の活動」は、誰に要求されるでもない、組織の判断による「必要な引渡し後の活動」の程度という意味である。
 
  「フィードバック」は英文では“feedback”である。これは、物や仕事の出来ばえの良さについての情報というような意味で広く使われているが、元々は機械の運転制御の用語であり、「修正や調節のために出力を入力に戻すこと」を意味する。「顧客からのフィードバック」は品質経営の業務実行の手はず(入力)の結果である顧客満足の実績(出力)を指し、実務的には製品サービスに対する顧客満足度の実態が、組織の狙いの顧客満足の状態と比較してどのようなものか、将来的にどのようになるのかということである。
 
② 規定の要旨

  顧客に製品サービスを引渡した後に生じることが予想される製品サービスの使用又は利用に関わる顧客のニーズと期待に応える活動の手はずを整え、手はずに則って問題に対応して、製品サービスに対する狙いの顧客満足の状態(5.2項)の確実な実現を支えなければならない。
 
  製品サービス引渡し後の顧客による製品サービス使用又は利用を支援する活動の種類と内容は、a)~e)の観点から組織の狙いの顧客満足の状態の実現のために必要で十分なものでなければならない。b),c)は製品サービスの種類の観点、d),e)は顧客の要求又は推定される必要性、a)は法規制の定めの観点からの顧客支援活動の必要性を意味している。
 
 
(2) 08年版からの変更点
  引渡し後の活動のあるべき姿の明示的規定であり、08年版の引渡し後の活動の内容の変更ではない。
 
 
(3) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織  
 
品質マニュアル記述は追加又は変更(適用除外の明記)が必要だが、引渡し後の活動について何も変える必要はない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-58>(追って掲載予定)>

 57.改定解説(2015年版):  8.5.4    保存   -変更点と移行対応(49)
  組織は、製造及びサービス提供を行う間、要求事項への適合を確実にするために必要な程度に、アウトプットを保存しなければならない。
 
  注記 保存に関わる考慮事項には、識別、取扱い、汚染防止、包装、保管、伝送又は輸送、及び、保護を含めることができる。
 
(1) 条項の趣意
  本項は、個々の契約又は注文に対して製品サービス実現の計画(8.1項)で決めた通りの製品サービス を顧客に引き渡すことを確実にするためには、製造及びサービス活動(8.5.1項)の各段階での決められた通りの業務結果としての中間的又は最終の製品サービス の状態が、以降の顧客への引渡しまでの間に損なわれることのないようにする管理が必要であること、及び、その管理の要件を規定している。
 
① 論理及び用語
  JIS和訳「アウトプット」の英文は“output”であり、日本語では「出力」である。規格では「プロセスの結果」と定義#39されており、ここにJIS和訳「プロセス」は「業務」「業務実行」のことである。従って、「アウトプット」は業務の出力のことであり、「業務出力」であり、定義の通り「業務実行の結果」のことである。
 
  08年版では、業務実行の結果は「製品」と定義され用語「業務出力」は業務実行の結果そのものを表す場合に用いられているが、15年版では業務実行の結果は「製品サービス」ではなく「業務出力」と定義され#39、用語「「業務出力」は、設計・開発からのアウトプット(8.3.5項)、マネジメント レビューからのアウトプット(9.3.3項)のように業務実行の結果そのものを表す場合と、購買品、半製品、最終製品サービス などの製品サービスを表す場合の両方で用いられている。
 
  15年版でも規定記述において「業務出力」は業務実行の結果のことであり、「製品サービス」の意味でもある。 厳密な区別があるとは思えないが、一般に最終製品サービスに近い形の業務結果には用語「製品サービス」が、また、最終製品サービスから遠い形の業務結果の場合や両方を意味する場合には用語「業務出力」が用いられているように見える。
 
  JIS和訳『保存』は英文では“preservation”であり、元の良い状態を維持するという意味である。08年版(7.5.5)では「製品の保存」が「内部処理から指定納入先への引渡しまでの間、要件 への適合を維持するように製品を保存する」ことであったから、「業務出力の保存」は、外部提供の製品サービスの受け入れから組織の製品サービスの顧客への引渡しの完了までの間の各段階の、それまでの業務結果としての半製品、製品サービスが決められた通りのものであるという状態を維持することを意味する。この手段としての、識別、取扱い、汚染防止、包装、保管、伝送又は輸送、保護は、15年版では注記に記載されるだけとなった。
 
  JIS和訳「識別」の英文は“identification”であり、「識別できるようにする」活動を意味する$14。これは、製品の状態の損傷、劣化を防止するためには、その必要がある半製品、製品サービスの性質や特徴を間違いなく見分けることができるようにすることを指す。94年版(4.15.4)の規定の包装 の「表示(marking)」に対応する。
 
  「取扱い」は“handling”であり、人手や機械で半製品、製品サービスの位置や場所を変えることであり、この製品の取扱いにおいては損傷又は劣化を防ぐことのできる方法を用いることが必要である。15年版では、組織の外部、或いは、他の製造及びサービス活動の行われる場所への半製品や製品サービスの移動の取り扱いは「伝送又は輸送」と表現される。
 
  「汚染防止」は、15年版で08年版の「保護」の中から分離された概念である。「取扱い」や「保管」「伝送又は輸送」中の製品サービスの汚染を防止する処置であり、油汚れ、水濡れなどの防止の処置が該当すると受けとめてよい。
 
  「包装」は、94年版(4.15.4)の「包装(packing)、梱包(packaging)及び表示)」の活動の総称であったが、00年版で「表示」が「識別」になったから、「包装」と「梱包」を意味する概念となった。
 
  「保管」は“storage”であり、製品の損傷、劣化、紛失、盗難に対する物理的な安全確保と環境或いは雰囲気の影響からの保護のための設備や物理的な領域、空間を適用することを意味する。
 
  「保護」は“protection”であり、94年版(4.15.5, 4.15.6)の最終検査に合格した製品を以降の顧客の手元に引渡すまでの間の品質の維持に関する「保存(preservation) 」と「引渡し(delivery) 」の規定の趣旨がひとつの用語となって00年版で登場した。顧客への製品サービスの引渡しを含む製造及びサービス活動の一連の業務を通じた、自然の、又は、不測の、或いは、製品の特性に起因して発生する製品の損傷、劣化の防止の処置を意味する。
 
② 規定の要旨
  組織は、製造及びサービス活動(8.5.1項)によってつくり込んで得た各段階の中間的又は最終の製品サービス に対して必要な保存の処置をとる手はずを整えなければならない。また、手はずに則って、中間的又は最終の製品サービスの状態が以降に損なわれることのないよう必要な保存の処置をとり、決められた狙いの製品サービス だけが顧客に引渡されることを確実にしなければならない。
 
  製品サービスの保存の処置には注記で示されるようなものがある。
 
 
(2) 08年版からの変更点
  規定表現が汎用化のため簡素になっただけで、規定の趣旨は08年版7.5.4項と全く変わっていない。
 
(3) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織  
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-57>(追って掲載予定)> 修11.20

 56.改定解説(2015年版):   8.5.3  顧客又は外部提供者の所有物  -変更点と移行対応(48)
  組織は、顧客又は外部提供者の所有物について、それが組織の管理下にある間、又は組織がそれを使用している間は、注意を払わなければならない。
 
  組織は、使用するため又は製品及びサービスに組み込むために提供された顧客又は外部提供者の所有物の識別、検証及び保護・防護を実施しなければならない。
 
  顧客若しくは外部提供者の所有物を紛失若しくは損傷した場合、又は、その他これらが使用に適さないと判明した場合には、組織は、その旨を顧客又は外部提供者に報告し、発生した事柄について文書化した情報を保持しなければならない。
 
  注記 顧客又は外部提供者の所有物には、材料、部品、道具、設備、顧客の施設、知的財産、個人情報などを含まれ得る。
(1) 条項の趣意
  本項では、組織が狙いの顧客満足の状態(5.2項)を確実に実現するためには、その支障とならないように顧客及び外部提供者の所有物を管理する必要があること、及び、その管理の要件を規定している。
 
① 論理及び用語
  規格で管理の必要が規定される顧客の所有物とは、顧客へ製品を供給する取引に関係して組織が顧客から支給され又は貸与され又は預かる資産のことであり、顧客がその所有物を組織に使用、利用させるのは、それによって顧客が受取る製品サービスが顧客の必要とするものであることを確実にするのに必要と考えるからである。
 
  顧客の意図と異なる又は異なる状態の顧客所有物を使用し、意図と異なる使用、保持をした場合には、顧客の意図の製品サービスをつくりあげることはできない。また、誤った使用のしかたによって顧客所有物を損傷したり、顧客所有物の加工をし損じた場合には顧客財産を棄損したことになり、さらに、顧客情報の流出により顧客の事業に打撃を与えることになる。
 
  今日のマーケッティング論においては、顧客が組織の製品サービスを買う、或いは、取引をしようとする際の判断基準は、その製品サービスに対する好感や信頼感だけでなく、組織全体に対する好感や信頼感が含まれるとされる。この観点から組織による顧客所有物の取り扱いに関する顧客の受けとめや評価は、規格の意図の顧客満足に影響を及ぼす。
 
  08年版の「購買」は15年版では「外部提供者より業務と製品サービスが提供される」と表現される。これは、同一組織内の異なる経営管理体制にある下部組織の間で、或いは、資本的に関連する組織間で品質保証に係わる機能が分担され、「購買」では言い表されない状況が多くなったからと説明されている。
 
  外部提供者の所有物の管理は08年版までには見られなかった規定であるが、15年版ではCD版から導入され、そのまま正式の規定となった。しかし、この規定の導入の目的や意義についてTC176も日本の国内委員会も何も説明していない。外部提供者の所有物の使用の場面は実務では リース 設備の使用など想定は容易であるが、組織によるこの使用や取り扱いの例えば不首尾が、組織や製品サービスに対する顧客の評価である顧客満足に悪影響を及ぼす状況は思いつかない。このようなことがあるなら、顧客所有物と同様に「大事に扱う」ことが必要であろう。
 
② 規定の要旨
  製造及びサービス活動(8.5.1項)で使用し又は製品サービスに織込むために、預かった、貸与された、又は、支給された顧客所有物は、紛失、損傷又は使用に適さない状態にして顧客に損害や迷惑を与えることのないよう、大事に扱わなければならない。組織は、顧客所有物を他と識別できるようにし、その受け入れ、使用、保管の手はずを整え、それに則って管理し、問題が発生すれば顧客に報告しなければならない。また、問題の記録を維持しなければならない。
 
  製造及びサービス活動で外部提供者の所有物を使用し、その管理の出来ばえが組織の顧客のニーズと期待への対応に関する顧客の受けとめ方に影響する場合は、顧客所有物と同様の管理を適用しなければならない。
 
 
(2) 08年版からの変更点
  見掛け上、管理対象に外部提供者の所有物が加わったが、管理の要件の趣旨は08年版7.5.4項と変わらず、規定文章もほとんど同じである。
 
(3) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織  
  管理が必要な外部提供者の所有物がない限りは、品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-56>(追って掲載予定)> 修11.20

 55.改定解説(2015年版):    8.5.2  識別及びトレーサビリティ   -変更点と移行対応(47)
(1) 08年版からの変更点
  趣旨は08年版と全く同じである。規定条文も、識別できるようにする対象が08年版の「製品」から「アウトプット」に変わっただけで、ほとんど変わっていない。
 
(2) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-55>
   
 54.改定解説(2015年版):  8.5.1  製造及びサービス提供の管理  -変更点と移行対応(46)
(1) 08年版からの変更点
  08年版の7.5.1(製造及びサービス提供の管理)と7.5.2項(同プロセスの妥当性確認)を合わせて単独の条項に書き直された。「プロセスの妥当性確認」の手順の規定が完全に抜け落ちたが、その意図の記述は残っており、7.5.1項の規定はほぼそのままであり、従って規定の趣旨は変わっていない。
 
(2) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を統合するだけで何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上
 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-54>
 
 53.改定解説(2015年版):  8.4.3  外部提供者に対する情報     -変更点と移行対応(45)
組織は、外部提供者に伝達する前に、要求事項が妥当であることを確実にしなければならない。
 
組織は、次の事項に関する要求事項を、外部提供者に伝達しなければならない。
a) 提供するプロセス、製品及びサービス
b) 次の事項についての承認
1) 製品及びサービス
2) 方法、プロセス及び設備
3) 製品及びサービスのリリース
c) 必要な適格性を含む、人々の力量
d) 組織と外部提供者との相互作用
e) 組織が適用する、外部提供者のパフォーマンスの管理及び監視
f) 組織又はその顧客が外部提供者の施設での実施を意図している検証又は妥当性確認活動
 
(1) 規定の趣旨
  本項は、外部提供者の業務及び製品サービスの管理の手はず(8.4.1項)の一環として、組織が必要と決めた製品サービスを確実に受け取るために、明確にして外部提供者に伝達し、遵守を要求しなければならない外部委託条件に関する要件を規定している。
 
  外部提供者に委ねた業務及び製品サービスを管理する手はず(8.4.1項)の一環として、組織が必要とする業務が実行され必要な製品サービスを確実に受け入れることができるように、外部提供者に遵守を求める必要条件を決定し、供給者に伝達する手はずを整えなければならない。外部提供者に遵守を求める必要条件には、外部提供者に委ねる業務及び製品サービスに関係するa)~f)を必要により含めなければならない。また、手はずに則って、これら外部提供委託条件を抜けなく決定し、「外部提供者に対する情報」として明確にしなければならない。
 
  a)は、外部提供者に委ねる業務、製品サービスの仕様と品質及びその他の必要事項であり、b)は業務結果或いは製品サービスを組織が受入れるための条件であり、c)は外部提供者の要員の職務能力に関する必要条件であり、d)は組織と外部提供者との情報交換の手はず(7.4項)であり、e)は供給者が受容すべき組織による管理の活動の内容であり、f)は提供される業務及び製品サービスについて外部提供者の施設で、組織又は顧客が実施する製品サービスの合否判定又は有用性判定の活動の計画である。
 
 
(2) 08年版からの変更点
  08年版7.4.2項(購買情報)に7.4.3項の供給者での受入検査を合わせたもので表現は異なるが、規定の趣旨は不変。
 
(3) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織  
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上。ただし、この機会に、供給者に委ねた製品が組織の狙いの通りのものであり、不良品が混入していないことを確実にする管理を、8.4項の規定に照らして見直すのもよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-01>(追って掲載予定)>

 52.改定解説(2015年版):    8.4.2   管理の方式及び程度    -変更点と移行対応(44)
組織は、外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが、顧客に一貫して適合製品及び適合サービスを引き渡す組織の能力に悪影響を及ぼさないことを確実にしなければならない。
 
組織は次の事項を行わなければならない。
a) 外部から提供されるプロセスが、組織の品質マネジメントシステムの管理の範囲内に留まっていることを確実にする。
b) 外部提供者へ適用することを意図した管理、及び、結果として生じるアウトプットへ適用することを意図した管理の両方を定める。
c) 次の事項を考慮に入れる。
  1) 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが、顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を一貫して満たす組織の能力に与える潜在的な影響
  2) 外部提供者によって適用される管理の有効性
d) 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが要求事項を満たすことを確実にするために必要な検証又はその他の活動を明確にする。
 
(1) 規定の趣旨
  本項では、外部提供者の業務及び製品サービスの管理の手はず(8.4.1項)における、外部提供者と外部提供の業務及び製品サービスの管理の狙いとその管理の手はずが効果的であるための要件を規定している。
 
  製品サービス実現の計画 (8.1項)で顧客のニーズと期待に適うとして決めた仕様と品質及びその他の必要事項の製品サービスを確実に実現し顧客に引き渡すために、外部提供者に委ねた業務及び製品サービスを管理する手はず(8.4.1項)の一環として、c)に応じた方式と程度のa)、b)、d)の管理活動の手はずを、整えなければならない。また、手はずを整えた管理活動によって、委託条件(8.4.3項)を満たさない外部提供者による業務や外部提供の製品サービスが、組織の製品サービスに織込まれ、或いは、組織の製品サービスの実現の活動の一部として使用されないことを確実にしなければならない。
 
  a)は外部提供者に委ねた業務実行が、組織の品質経営体制の決められた考え方や手法に沿ったものであるようにする管理であり、b)は外部提供者の業務実行とその結果の製品サービスの管理の活動であり、d)は個々の外部提供の製品サービスの委託条件に対する合否判定の活動である。
 
 
(2) 08年版からの変更点
  08年版7.4.1項の管理の方式と程度の規定を独立させ、8.4.3項とに分けた7.4.3項とを合わせて、管理の狙いとその観点の規定として表したものであり、文章は変わり、詳しくなっているが規定の趣旨は同じである。
 
 
(3) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織  
 
品質マニュアル記述を分割するだけで、何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-01>(追って掲載予定)>

 51.改定解説(2015年版):    8.4.1  外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理    一般
                                                                       -変更点と移行対応(44)
(1) 08年版からの変更点
   08年版の購買、購買製品、供給者という表現が「外部からの提供」「プロセス、製品、サービス」「外部提供者」に変わっただけで、8.4.1項の規定と趣旨は、管理の方式と程度の規定が8.4.2項に独立したことを除き、全く同じであり、文章もほとんど変わっていない。
 
(2) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を分割するだけで、何も変える必要ない
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上。 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-51>
 
 50.改定解説(2015年版):  8.3.6   設計・開発の変更  -変更点と移行対応(42)
組織は、要求事項への適合に悪影響を及ぼさないことを確実にするために必要な程度までの、製品及びサービスの設計・開発の間又はそれ以降に行われた変更を識別し、レビューし、管理しなければならない。
組織は、次の事項に関する文書化した情報を保持しなければならない。
 
a) 設計・開発の変更
b) レビューの結果
c) 変更の許可
d) 悪影響を防止するための処置
 
 
(1) 条項の趣意
   組織は、設計開発 活動の手はず(8.3.1項)の一環として、設計開発の結果が顧客のニーズと期待に適うとして決めた製品サービス要件8.2.2項)を満たすことを確実にするための設計管理の手はずを整え、手はずに則って効果的に設計開発活動を管理しなければならない。設計管理の方法論としては米国食品医薬品局(FDA)制定の医療機器に関する設計管理規定に定められている9種の管理要素が事実上の世界標準となっており、規格の8.3.28.3.6項は、これに沿って規定されている。本項は、効果的な設計管理要素としての特定の製品及びサービスの仕様と品質水準の変更の管理に関する要件を規定している。
 
① 論理と用語
  JIS和訳「設計・開発の変更」は94年版(4.4.9)で「設計変更(design changes)」と表現され、「設計変更(design change)及び設計修正(design modification)」を対象としていたように、設計開発活動中と設計開発後の両方の製品サービスの設計の変更の管理が規格の意図である。
 
  設計開発活動の過程では一般に、デザイン・レビュー(8.3.4項)によって目標の変更が不可避又は好都合と判断された場合に設計開発目標(8.3.2項)を変更する必要が生じる。また、とりわけ設計開発期間が長い場合は、顧客の意向が変更されたり、適用される法規制が変更されたりすることで、設計開発目標を見直し、変更しなければならないことも起き得る。
 
  設計開発後の製品サービス の提供において生じた品質上の問題、コスト や製造又はサービス活動実行上 (8.5項)の問題が生じた場合に、また、顧客の要求が変更され(8.2.3.1 a)項)、適用法規制が改正( 8.2.3.1d)項)されても、更に、対象顧客層や国、地域の変更、拡大を図る場合(8.2.3.1 b)項)にも、長期間を経て顧客のニーズや期待或いは市場の情勢に変化が起きそうな場合(9.3.2 e)項)にも、既存の製品サービス の仕様の見直し、変更が必要になる。さらに、原材料や部品の調達上(8.4項)の都合や、組織の製造及びサービス活動実行 上の状況変化により、それらに関連する製品サービス の仕様或いは機能や性能を見直す必要が生じることもある。
 
  実務では、これらの製品サービス 仕様の変更の必要性については、それぞれの業務の責任者により必要が認識され、変更が提議され、必要な検討の後に変更を決定する。それらの必要を満たす構造や機能などの製品サービス の仕様と品質水準を直ちに決めることに技術的不確定要素があるなら、設計開発活動が必要となる。どのような変更の場合も、顧客のニーズと期待を満たすという観点で製品サービス要件を決め、これを製品サービスの具体的な仕様と品質水準に変換する活動であるから、変更を適切に行うためには設計管理の手法を必要に応じて適用しなければならない。
   
② 規定要旨
  組織は、設計開発の結果(8.3.5項)が製品サービス要件8.2.2項)を満たすことを確実にするための設計管理の手はずの一環として、設計開発途次及び設計開発後に製品サービスの仕様と品質水準及びその他の事項に係わる変更を行うための手はずを整えなければならない。手はずでは、変更の必要を特定すること、必要性を判定すること、変更の活動に適用する設計管理の手法を決めることに関する手順と責任者を明確にしなければならない。
 
  組織は、手はずに則って、放置すると狙いの顧客満足の状態の実現に悪影響を及ぼす又は及ぼす可能性のあるという観点から変更の必要を特定し、必要な製品サービスの狙いの仕様と品質水準及びその他の事項の変更を行わなければならない。実施した変更に関してa)~d)の記録を保持しなければならない。
 
(2) 改定版品質マニュアル(外部説明用)のひな型←08年版と全く同じ
  設計開発中の製品サービスの設計開発目標の変更は必要性の特定から実行まですべて、当該の設計開発活動の実行管理の問題として処理する。
  定常生産中の製品サービスの仕様と品質に係わる受注から製造、顧客での使用に至る問題に基づく変更の必要性は、それぞれの業務担当部門からの提議を受けて品質部門が決定し、経営戦略上の新製品又は既存製品の変更(9.3.2項)はトップマネジメントが決定する。変更が製品製造可能範囲内なら製品仕様決定手順(8.2.2項)に従って変更を行い、製品製造可能範囲外なら必要な変更を設計目標(8.3.3項)の変更に反映して、部分設計としての設計開発活動(8.3.2項)によって、製品サービスの必要な事項を変更する。
 
(3) 08年版からの変更点
  規定表現に違いがあるが、規定の趣旨は08年版の7.3.7項と同じ。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-50>(追って掲載予定)

 49.改定解説(2015年版):  8.3.5   設計・開発からのアウトプット   -変更点と移行対応(41)
組織は、設計・開発からのアウトプットが、次のとおりであることを確実にしなければならない。
 
a) インプットで与えられた要求事項を満たす。
b) 製品及びサービスの提供に関する以降のプロセスに対して適切である。
c) 必要に応じて、監視及び測定の要求事項、並びに、合否判定基準を含むか、又は、それらを参照している。
d) 意図した目的並びに安全で適切な提供に不可欠な、製品及びサービスの特性を規定している。
 
組織は、設計・開発からのアウトプットについて文書化した情報を保持しなければならない。
 
 
(1) 条項の趣意

  組織は、設計開発 活動の手はず(8.3.1項)の一環として、設計開発の結果が顧客のニーズと期待に適うとして決めた製品サービス要件8.2.2項)を満たすことを確実にするための設計管理の手はずを整え、手はずに則って効果的に設計開発活動を管理しなければならない。設計管理の方法論としては米国食品医薬品局(FDA)制定の医療機器に関する設計管理規定に定められている9種の管理要素が事実上の世界標準となっており、規格の8.3.28.3.6項は、これに沿って規定されている。本項は、効果的な設計管理要素としての設計開発 結果の管理に関する要件を規定している。
 
① 論理と用語
  JIS和訳「アウトプット」の英文は“output”であり、元来は電気的制御分野の用語で、日本語では「出力」であるが、今日一般には「人又は物によりつくり出される何かの量」「機械や電算機により生み出される何か(電力、エネルギー、情報など)の意味であり、規格では「業務の結果」と定義されている。JIS和訳「設計・開発からのアウトプット」は「設計開発の結果」のことである。
 
  規格では「設計開発」も品質経営のひとつの業務であり、規格の業務は「入力を出力に変換する活動」、設計開発という業務は「必要条件製品サービス の特性に変換する活動」とそれぞれされる。実務的には、入力は機能や性能に関する必要条件によって表わされ、出力たる設計開発の結果は、それらを実現できる製品サービス の具体的な機構や構造であり、構造特性の水準と許容範囲で表わされる。設計開発の結果として、製造又はサービス活動実行により製品サービス を実現し顧客に引き渡すべき製品サービス の具体的な仕様と品質水準及びその他の付帯事項が決まる。
 
② 規定要旨
  組織は、設計開発の結果(8.3.5項)が製品サービス要件8.2.2項)を満たすことを確実にするための設計管理の手はずの一環として、設計開発 結果の管理の手はずを整え、手はずに則って必要な内容の設計開発 結果を確実に出さなければならない。
 
  設計開発の結果の製品サービス の具体的な仕様と品質水準及びその他の必要事項は、設計開発条件(8.3.3項)を満たしたものでなければならず、設計開発の結果には、b)~d)の情報が含まれていなければならない。設計開発の結果に関する情報の記録を作成し保持しなければならない。
 
(2) 改定版品質マニュアル(外部説明用)のひな型←08年版と全く同じ
  概略設計の結果は、製品の基本仕様を表示した概略製品図で表す。部分設計、全面設計の設計結果は、製品の具体的な仕様と品質水準及びその他付帯事項は、必要な品質仕様と寸法、公差をも明記した製品図、部品図、組立図で表す。また、設計報告書に、製造や検査、試験、取り扱い、包装、輸送の方法、原材料や部品の購入、外注先の能力に関する特別な事項や必要条件を、必要により明記にする。また、製品包装に表示する事項を明確にする。
  設計開発結果の製品の機能と性能及びその他の必要事項は、それらが設計開発目標(8.3.3項)のそれぞれの項目の必要条件を実際に満たしていることを判断できるような形で、設計品質確認書に表す。
 
(3) 08年版からの変更点
  規定の趣旨は08年版7.2.3項と同じであり、規定文章もほとんど変わっていない。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-49>(追って掲載予定)

 48.改定解説(2015年版):   8.3.4   設計・開発の管理   -変更点と移行対応(40)
組織は、次の事項を確実にするために、設計・開発プロセスの管理を適用しなければならない。
 
a) 達成するべき結果を定める。
b) 設計・開発の結果の要求事項を満たす能力を評価するために、レビューを行う。
c) 設計・開発からのアウトプットが、インプットの要求事項を満たすことを確実にするために、検証活動を行う。
d) 結果として得られる製品及びサービスが、指定された用途又は意図された用途に応じた要求事項を満たすことを確実にするために、妥当性確認活動を行う。
e) レビュー又は検証及び妥当性確認の活動中に明確になった問題に対して必要な処置をとる。
f) これらの活動についての文書化した情報を保持する。
 
注記 設計・開発のレビュー、検証及び妥当性確認は、異なる目的をもつ。これらは、組織の製品及びサービスに応じた適切な形で、個別に又は組み合わせて行うことができる。
 
(1) 条項の趣意

  組織は、設計開発 活動の手はず(8.3.1項)の一環として、設計開発の結果が顧客のニーズと期待に適うとして決めた製品サービス要件8.2.2項)を満たすことを確実にするための設計管理の手はずを整え、手はずに則って効果的に設計開発活動を管理しなければならない。設計管理の方法論としては米国食品医薬品局(FDA)制定の医療機器に関する設計管理規定に定められている9種の管理要素が事実上の世界標準となっており、規格の8.3.28.3.6項は、これに沿って規定されている。本項は、効果的な設計管理要素としての設計開発活動の業務実行管理に関する要件を規定している。
 
① 論理と用語
  JIS和訳「レビュー」の英文“review”は「見直し」であり、この場合は「必要なら変えるという意図をもって行う検討」ということを意味する。 規格は「レビュー」を「あるものが所定の目標達成の観点で適当か、十分か、効果的かを判定すること」と定義しており、『設計開発のレビュー』ではこの「あるもの」が設計開発活動ということであるから、『設計開発のレビュー』とは、設計開発 活動をこのまま進めることにより、設計開発条件(8.3.3項)を満たす設計開発の結果(8.3.5項)を出すことができるかどうか判断することを意味する。
 
  規格の「設計開発のレビュー」は、1950~1960年代に一発勝負で失敗の許されないミサイルや宇宙ロケットの開発や打上げに係わる製品サービス の信頼性確保の必要から生み出された設計管理の手法であり、日本では1970年代に「デザインレビュー(DR)」として普及が図られ、1990年代には世界で標準的設計管理の方法論として定着しした。
 
  また、JIS和訳「検証」の英文“verification”は、あることが正しく又は適切かどうかの観点で調査する、又は、それを実証することを意味する$47。規格の定義では「規定された要件が満たされていることを客観的証拠を用いて実証すること」であり、「適合性の実証」という意味である。一方、品質管理用語では「製品サービス が特有の要件に適合しているかどうかを判定する活動」を指し、「適合性の判定」であり、実務的には「合否判定」である。
 
  設計開発活動の管理要素としてのJIS和訳「設計・開発の検証」は、日本の設計管理論では「品質確認」と呼ばれ、設計開発の結果(8.3.5項)が設計開発条件 (8.3.3項)を満たしているかどうかを判定する適合性判定の活動であり、設計開発結果の合否判定の活動である。
 
  さらに、JIS和訳「妥当性確認」の英文は“validation”であり、何らかの根拠に基づいて有効、有用、許容可能なものとする、或いは、そのことを証明する、表明するという意味であり、日本語では無理がなく適切であるという意味の「妥当性」よりは「有効性」の意味である。一方、規格は『妥当性確認』の定義で『妥当性』を「特定の意図された使用又は適用に関する要件が満たされていること」としているから、あるものがその使用や適用の目的に適うかどうかであり、使用や適用の目的に関する有効性であり、「目的実現性」とも言うべき意味であるから、日本語では「有用性」がよい。
 
  規格の用語「有効性(effectiveness)」は実際に効果がある、効用があるという観点の有効性であるのに対して、有用性は、~だから~であるとの確立した論理に基づいて「効力がある」という観点の有用性である。さらに、JIS和訳「妥当性確認」の「確認」の由来の英文定義における“confirmation”は「実証」と言う意味であるから、「妥当性確認」の適切な和訳日本語は「有用性の実証」であり、管理活動の実態に照らすと「有用性の判定」が適当である。規格の意図の有用性の判定 とは、製品サービス が使用される場合には狙いの通りに機能性能が発揮され、或いは、業務が実行される場合は狙いの決められた結果が出るという意味での製品サービス或いは業務実行の有用性を、確立した論理に基づいて評価判定することである。
 
  設計結果の有用性判定は、設計レビュー と共に、米国の軍需産業と航空宇宙産業の高価で複雑な製品の、使用時の間違いない機能性能の発揮と故障の防止といった信頼性、爆発や不慮の事故における乗員や操作員に対する安全性に関する問題を防止する設計管理の方法論として開発され、1990年代半ばになって世界の各界の設計管理の方法論として取り入れられ、世界標準として定着した。日本では「品質確認」の一環として、製品使用上の不測の問題の発生防止の観点で行われている。
 
② 規定要旨
  組織は、設計開発の結果(8.3.5項)が製品サービス要件8.2.2項)を満たすことを確実にするための設計管理の手はずの一環として、設計開発活動の業務実行管理の手はずを整え、手はずに則って、設計開発 活動を計画(8.3.2項)の通りに行い決められた結果(8.3.5項)を確実に出すように、設計開発活動の業務実行管理を行わなければならない。効果的な業務実行管理であるためには、狙いの設計開発 結果である設計開発の目標(8.3.3項)を明確にすること、及び、狙いの設計開発 結果を確実に出すために必要に応じて、設計開発途次で必要により設計開発活動の方向づけを行うこと、設計開発 結果の合否判定有用性判定を含む品質確認を行うことが必要である。
 
(2) 改定版品質マニュアル(外部説明用)のひな型←08年版の関連条項の記述を整理すればよい
  設計活動の実行には、設計区分に応じて次の業務実行管理手法を適用する。
 ◆デザインレビュー

設計区分

実施時点

評価の観点

記録

責任

概略設計

設計終了後

設計結果に問題がないか

引合検討書

設計部門長

部分設計

設計開始前

設計目標が適切か

設計品質確認書

設計部門長

全面設計

設計開始前

設計目標が適切か

設計品質確認書

設計チームリーダー

合否判定と有用性判定の終了後

設計結果に問題がないか

 ◆品質確認(設計結果の合否判定)

設計区分

実施時点

基準、方法

記録

責任

概略設計

設計終了後

同種製品の設計と対比して評価判定

引合検討書

設計担当者

部分設計

設計終了後

設計目標の全項目を、設計要領書の技術基準に定めた方法と合否判定基準により評価判定

設計品質確認書

設計部門長

全面設計

設計終了後

設計品質確認書

設計チームリーダー

 ◆品質確認(設計製品の有用性判定)

設計区分

実施時点

対象

基準、方法

記録

責任

概略設計

部分設計

合否判定後

設計部分

設計要領書の技術基準に定めた項目、基準、方法により評価判定

設計品質確認書

設計部門長

全面設計

合否判定後

製品全体

設計品質確認書

設計チームリーダー

 
(3) 08年版からの変更点
  08年版の7.3.4, 7.3.5, 7.3.6項を合わせて、これを中心に業務実行管理の要件としてひとつの条項に整理したものであり、規定文章が異なるだけで趣旨は変わっていない。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアルの記述の再編のみで何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上だが、合否判定と有用性判定の実状を見直すのもよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-48>(追って掲載予定)

 47.改定解説(2015年版):   8.3.3  設計・開発へのインプット  -変更点と移行対応(39)
組織は、設計・開発する特定の種類の製品及びサービスに不可欠な要求事項を明確にしなければならない。組織は,次の事項を考慮しなければならない。
 
a) 機能及びパフォーマンスに関する要求事項
b) 以前の類似の設計・開発活動から得られた情報
c) 法令・規制要求事項
d) 組織が実施することをコミットメントしている標準又は規範(codes of conduct)
e) 製品及びサービスの性質に起因する失敗の起こり得る結果
 
インプットは、設計・開発の目的に対して適切で、漏れがなく、曖昧でないものでなければならない。 
設計・開発へのインプット間の相反は、解決しなければならない。
組織は、設計・開発へのインプットに関する文書化した情報を保持しなければならない。
 
 
(1) 条項の趣意

  組織は、設計開発 活動の手はず(8.3.1項)の一環として、設計開発の結果が顧客のニーズと期待に適うとして決めた製品サービス要件8.2.2項)を満たすことを確実にするための設計管理の手はずを整え、手はずに則って効果的に設計開発活動を管理しなければならない。設計管理の方法論としては米国食品医薬品局(FDA)制定の医療機器に関する設計管理規定に定められている9種の管理要素が事実上の世界標準となっており、規格の8.3.28.3.6項は、これに沿って規定されている。本項は、効果的な設計管理要素としての設計開発条件の管理に関する要件を規定している。
 
① 論理と用語
  JIS和訳「インプット」の英文は“input”であり、元来は電気的制御分野の用語で、日本語では「入力」であるが、今日では「仕事や プロジェクト の完遂のために投入される時間、知識、考え等」の意味で広く用いられ言葉である。規格では所与の業務結果を出すために用意し提供するものを指す。
 
  規格では「設計開発」も品質経営のひとつの業務であり、業務は「入力を出力に変換する活動」であり、設計開発という業務は「必要条件を製品サービス の特性に変換する活動」と定義されるから、設計開発 業務の入力とは、設計開発活動が満たさなければならない必要条件である。実務的には設計開発条件のことであり、設計開発の結果が満たすべき製品サービス の機能や性能とその他に関する目標、及び、この達成のために満たすことが必要な業務規範としての設計開発業務の方法、手法や基準などを意味する。
 
② 規定要旨
  組織は、設計開発の結果(8.3.5項)が製品サービス要件8.2.2項)を満たすことを確実にするための設計管理の手はずの一環として、設計開発条件の管理の手はずを整え、手はずに則って契約又は注文毎に設計開発条件を決めなければならない。
 
  効果的に設計開発を行うためには、設計開発条件はa)~e)の観点から検討し、抜けなく決めなければならない。決めた設計開発条件は、相互に矛盾があってはならず、製品サービス要件を満たす製品サービスの具体的な仕様と品質水準及びその他の付帯事項を決めるという設計開発活動の目的を果すために十分で、抜けがなく、明瞭でなければならず、記録を残しておかなければならない。
   
(2) 改定版品質マニュアル(外部説明用)のひな型←08年版と全く同じ
  営業部門は、概略設計の依頼には顧客指定の製品仕様及びその他の要求を明確にした引合検討書を用いる。部分設計と全面設計の依頼には、設計工期と顧客の意図など注文の特別な事情を明確にした設計計画書を用い、これに製品仕様と品質に関する契約条件を明確にした引合検討書とその他の契約関係文書、及び、概略設計の結果の見積製品仕様書を添付する(8.2.2項)。
  設計部門では、受け取った情報の顧客指定又は契約条件の製品仕様と品質の必要条件から、製品が持つべき機能と性能の条件及びその他の必要事項を設計目標として決める。これには、考慮すべき製品の機能性能に関係する事項、製品の使用性に関係する事項、及び、製品製造に関係する事項を一覧表で定めた設計目標決定基準書を用いる。
 
(3) 08年版からの変更点
  規定の趣旨は08年版7.2.2項のままであり、規定文章もほとんど変わっていない。d)とe)は、08年版のd)の「設計開発に不可欠なその他の要件」の具体的記述化。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要はない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-47>(追って掲載予定)

 46.改定解説(2015年版):  8.3.2  設計・開発の計画   -変更点と移行対応(38)
設計・開発の段階及び管理を決定するに当たって,組織は,次の事項を考慮しなければならない。
 
a) 設計・開発活動の性質,期間及び複雑さ
b) 要求されるプロセス段階。適用される設計・開発のレビューを含む。
c) 要求される,設計・開発の検証及び妥当性確認活動
d) 設計・開発プロセスに関する責任及び権限
e) 製品及びサービスの設計・開発に必要な内部資源及び外部資源
f) 設計・開発プロセスに関与する人々の間のインターフェイスの管理の必要性
fg) 設計・開発プロセスへの顧客及びユーザーの参画の必要性
h) 以降の製品及びサービスの提供に関する要求事項
i) 顧客及びその他の密接に関連する利害関係者によって期待される,設計・開発プロセスの管理レベル
j) 設計・開発の要求事項を満たしていることを実証するために必要な文書化した情報
 
 
(1) 条項の趣意

  組織は、設計開発 活動の手はず(8.3.1項)の一環として、設計開発の結果が顧客のニーズと期待に適うとして決めた製品サービス要件8.2.2項)を満たすことを確実にするための設計管理の手はずを整え、手はずに則って効果的に設計開発活動を管理しなければならない。設計管理の方法論としては米国食品医薬品局(FDA)制定の医療機器に関する設計管理規定に定められている9種の管理要素が事実上の世界標準となっており、規格の8.3.28.3.6項は、これに沿って規定されている。本項は、効果的な設計管理要素としての設計開発の計画の管理に関する要件を規定している。
 
① 論理と用語
  JIS和訳「計画」の英文は“planning”であり、将来行なうことの用意万端、手はずを整えることを意味する。 「計画」の結果の手はずは一般に関連の手順書に表されるが、一定の期間で完遂するようになっている特定の業務の計画の結果は、手段と日程を明確にした実行計画書の形で表される。8.3.1項のJIS和訳「設計・開発プロセスの確立」は、品質経営体制の計画(6.1項)の一環として設計開発活動の手はずを整えることを意味し、本項の「設計開発の計画」は個々の製品サービス設計開発活動の効果的、効率的実行のための設計開発の実行計画を意味する。
 
② 規定要旨
  組織は、設計開発の結果(8.3.5項)が製品サービス要件8.2.2項)を満たすことを確実にするための設計管理の手はずの一環として、設計開発の計画の手はずを整え、手はずに則って契約又は注文毎に設計開発 活動の実行計画を策定しなければならない。
 
  効果的な実行計画であるためには、b)~e)と j)が明確になっており、f)、g)の方法が決まっており、計画の詳しさはa)、h)、i)に応じたものとなっていなければならない。ここに、b)~e)とj)は、設計開発の段階と適用する設計実行管理の手法、用いる資源、作成する記録であり、f)、g)は内外の関係者との連携の方法であり、a)とh)は設計開発の複雑さ、i)は管理に対する顧客の期待の程度である。
 
  設計開発活動は、この実行計画に則って行わなければならず、設計開発活動の進行に伴って目標の達成のために必要が生じれば計画を変更しなければならない。
 
(2) 改定版品質マニュアル(外部説明用)のひな型
  設計部門は、営業部門から製品の設計を依頼された場合、及び、設計の変更が必要な場合は、設計区分に応じて設計計画を策定し、文書化する。

設計区分

設計開発の程度

設計の依頼文書

設計計画の文書

設計体制

概略設計

見積もりのための基本仕様の概略設計

引合検討書

引合検討書

設計部門内

部分設計

基本仕様が概略指定されている。

設計計画書

設計計画書

設計部門内

全面設計

製品仕様について一切の指定がない

設計チーム設置

  概略設計の場合は同種製品の設計を参考にし、また、部分設計と全面設計の場合は、材料部品規格書の標準材料部品仕様と設計要領書に定めた手順と技術基準に従って設計を行う。
 
(3) 08年版からの変更点
  08年版7.3.1項の趣旨がそのまま、規定文章もほとんどそのままで、記述されている。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  同上
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-41>(追って掲載予定)

 45.ISO9000:2015 改定解説:  8.3.1  製品及びサービスの設計・開発 一般   -変更点と移行対応(37)
組織は,以降の製造又は製品及びサービスの提供を確実にするために適切な設計・開発プロセスを確立し,実施し,維持しなければならない。
 
(1) 条項の趣意

  規格の設計開発は、顧客のニーズと期待を満たすとして決定した製品サービス要件(8.2.2項)を、引き続く製品サービス実現 の一連の業務に必要な程度に具体的な製品サービスの仕様と品質及びその他の事項の形に変換する活動である。8.3項では、設計開発 活動の手はずを整えることの必要 (8.3.1項)と、設計開発の結果が製品サービス要件を満たすことを確実にするための設計管理要素の在り方(8.3.28.3.6項)を規定している。本項は、設計開発 活動の手はずを整え、設計開発の一連の業務を手はずに則って効果的に実行すべきことを規定している。
 
① 論理と用語
  組織の事業として顧客に引き渡す財貨は、初版以来「製品」と表されてきたが、15年版では「製品及びサービス」と表されることとなった。これは、「製品」と「サービス」と言う意味ではなく、事業製品を意味する呼称であるから、日本語では「製品サービス 」と表現するのが適当である。
   
  JIS和訳「製品及びサービス の提供」の英文は“provision of products and services”であり、1章(適用範囲)では、事業活動として製品サービス を顧客に提供するという意味で用いられているが、8.1項の条文では、08年版の「製品実現」の代わりに用いられている表現である。規格の意図では、組織内で受注から製造又はサービス活動の実行によって製品サービスをつくり又は生み出して顧客に引き渡す活動を意味するから、「製品サービスの実現」と表すのが適当である。
 
  また、JIS和訳「設計・開発」は英文では“design and development”であるから、日本語では「設計開発」である。08年版では「必要条件を製品サービス業務経営管理体制の、規定された特性又は仕様文書に変換する一連のプロセス」、15年版では「あるものに関する必要条件を、より詳細な必要条件に変換する一連の業務」とそれぞれ定義されるが、設計開発の概念は同じである。ここに、製品サービス の仕様や品質を具体的定量的に表す指標が「特性」であり、「必要条件」「あるものに関する必要条件」は、顧客のニーズと期待に適う製品サービスであるために組織が満たすべき必要条件という意味の製品サービス要件(8.2.2項)を指す。
 
② 規定要旨
  顧客のニーズと期待を満たすとして決定した製品サービス 要件(8.3.2項)が、製品サービス の特性、実務的には、仕様と品質を具体的、定量的に表すものでなければ、そのままではこの製品サービスの製造又はサービス活動実行を行うことができない。一般には、顧客のニーズと期待は製品サービス の機能や性能特性で表され、また、製品サービス 要件もそれらをより具体化した程度であるとすると、設計開発によって、それら機能や性能を発揮する製品サービス の構造や機構、構成材料の種類、寸法や形状、構成部品仕様や組立て手段等々の、製品サービス の構造特性、或いは、仕様と品質水準を決めることが必要である。このことが、08年版定義の「要件の特性又は仕様文書への変換」であり、15年版の「必要条件の詳細必要条件への変換」である。
 
  顧客のニーズと期待に適うとして決めた製品サービス要件(8.2.2項)が、製品サービス 実現 業務に必要な程度まで具体的、詳細でない場合には、設計開発 活動によって具体的な製品サービスの仕様と品質水準及びその他の必要事項という形で明確にしなければならない。設計開発活動は、設計開発の結果の製品サービスの仕様と品質水準が、製品サービス要件を確実に満たすものであるように行わなければならない。
 
  このために、組織は、品質経営体制の計画 (6.1項)の一環として、設計開発活動の効果的な実行のための手はずを確立し、この手はずに基づいて個々の契約又は受注に対する設計開発活動を行わなければならない。
 
(2) 改定版品質マニュアル(外部説明用)のひな型
  新規顧客から、又は、新規品の引合いを受け、製品製造可能範囲を逸脱する場合は顧客指定の製品仕様及びその他の要求を基本にして、過去の同種製品を参考にして概略設計を行う。受注が決定した場合は、成約条件を基本として材料部品規格書及び設計要領書に基づいて詳細製品設計を行う。
 
(3) 08年版からの変更点
  08年版7.3.1項(設計・開発の計画)の冒頭文章を、94年版4.4.1項(設計管理 一般)と同趣旨で独立させたものであり、条項は新規だが単なる記述上の変更に過ぎない。表現の違い
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を移動させるだけでよい
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  品質マニュアル記述を移動させる。また、08年版7.3項を適用している範囲を見直すのもよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-45>(追って掲載予定)

 44.ISO9000:2015 改定解説   8.2.4  製品及びサービスに関する要求事項の変更  -変更点と移行対応(36)
8.2.4  製品及びサービスに関する要求事項の変更
製品及びサービスに関する要求事項が変更された場合ときには,組織は,関連する文書化した情報を変更することを確実にしなければならない。また,変更後の要求事項が,関連する要員人々に理解されていることを確実にしなければならない。
 
 
(1) 条項の趣意

  本項は、成約又は受注した後に必要となった製品サービスの仕様や品質及びその他必要事項の変更を、問題を起こさず円滑に行うための要件を規定している。
 
① 論理と用語
  事業製品を表す用語としては初版以来「製品」と表されてきたが、15年版では「製品及びサービス」と表されることとなった。これは英文では “products and services”であるが、「製品」と「サービス」と言う意味ではなく、事業製品を意味する呼称であるから、日本語では「製品サービス 」と表現するのが適当である。
 
  JIS和訳「要求事項」は、英文でも規格の定義#18でも「要求」ではなく「必要」という意味であり、「製品及びサービスに関する要求事項」「製品及びサービスの要求事項」のどちらも、組織が満たさなければならない製品サービス としての必要条件という意味での「製品サービス要件」のことである$1-2-4。製品サービス要件とは簡単に言えば、どのような製品サービスでなければならないかということである。
 
② 規定要旨
  組織は、成約又は受注した後に必要となった製品サービスの狙いの仕様と品質及びその他必要事項の変更を行う場合の手はずを整えなければならない。また、手はずに則って必要な対象範囲の製品サービスについて変更を行って、変更された仕様と品質及びその他必要事項の製品サービスとして顧客に引渡すことを確実にしなければならない。この手はずが効果的であるためには、関連する文書を修正する手はず、及び、関係する要員に変更を理解させる手はずを含めなければならない。
 
(2) 改定版品質マニュアル(外部説明用)のひな型08年版の記述をそのまま移動
  注文内容、納入内示、納入指示の変更の要求には柔軟に対応する。変更は文書で受け付け、口頭の場合は文書化して顧客に確認する。注文進捗管理業務の関係する帳票を書き換え、再発行し、必要なら顧客図面を差し替えることを含めて、新たな製造指示、製造済み製品処置など円滑な変更の処置をとる。
 
(3) 08年版からの変更点
  08年版7.7.2項の製品サービス要件の変更に関する規定を、本項に独立記述したものであり、規定記述もほぼそのままである。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  08年版7.7.2項の品質マニュアル記述を移動すればよい 。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織

  受注後の注文変更にきちっと対応できる状態にあるか、変更の記録が残っているかを見直せばよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-44>(追って掲載予定)>  修 11.20

 43.ISO9000:2015 改定解説      8.2.3  製品及びサービスに関する要求事項のレビュ  -変更点と移行対応(35)
8.2.3 製品及びサービスに関する要求事項のレビュー
8.2.3.1 組織は,顧客に提供する製品及びサービスに関する要求事項を満たす能力をもつことを確実にしなければならない。組織は,製品及びサービスを顧客に提供することをコミットメントする前に,次の事項を含め,レビューを行わなければならない。
 
a) 顧客が規定した要求事項。これには引渡し及び引渡し後の活動に関する要求事項を含む。
b) 顧客が明示してはいないが,指定された用途又は意図された用途が既知である場合,それらの用途に応じた要求事項
c) 組織が規定した要求事項
d) 製品及びサービスに適用される,追加の法令・規制要求事項
e) 以前に提示されたものと異なる,契約又は注文の要求事項
 
組織は,契約又は注文の要求事項が以前に定めたものと異なる場合には,それが解決されていることを確実にしなければならない。
顧客がその要求事項を書面で示さない場合には,組織は,顧客要求事項を受諾する前に確認しなければならない。
 
注記   インターネット販売などの幾つかの状況では、注文ごとの正式なレビューは実用的でない。その代わりとして、レビューには、カタログなどの関連製品が含まれる。
 
8.2.3.2 組織は,該当する場合には,必ず,次の事項に関する文書化した情報を保持しなければならない。
a) レビューの結果
b) 製品及びサービスに関する新たな要求事項
 
(1) 条項の趣意

  規格では、どのような製品サービスであるかは、組織が製品サービスに関して満たすべき必要条件という意味の製品サービス要件で表される。製品サービス要件の決定手はず(8.2.2項)に則って個々の契約又は注文に対して決めた製品サービス要件は、顧客のニーズと期待を満たし狙いの顧客満足の状態(5.2項)の実現に適う製品サービス に対応するものでなければならない。
 
  本項は、顧客との取引において製品サービスに関する顧客の意向を誤って受け取り、又は、顧客のニーズと期待を誤って理解し、或いは、組織の製造及びサービス活動(8.5項)の能力を誤って認識して、狙いの顧客満足の状態の実現に支障を来すような製品サービスの提供を顧客に約束することのないようにするために、応札又は成約や受注の前に契約又は注文の製品サービス要件を点検し見直すことが必要であること、及び、そのような点検見直しの要件を規定している。
 
① 論理と用語
  事業製品を表す用語としては初版以来「製品」と表されてきたが、15年版では「製品及びサービス」と表されることとなった。これは英文では “products and services”であるが、「製品」と「サービス」と言う意味ではなく、事業製品を意味する呼称であるから、日本語では「製品サービス 」と表現するのが適当である。
 
  JIS和訳「要求事項」は、英文でも規格の定義でも「要求」ではなく「必要」という意味であり、「製品及びサービスに関する要求事項」「製品及びサービスの要求事項」のどちらも、組織が満たさなければならない製品サービス としての必要条件という意味での「製品サービス要件」のことである。製品サービス要件とは簡単に言えば、どのような製品サービスでなければならないかということである。
 
  さらに、JIS和訳『レビュー』 の英文“review”は、それでよいのかどうかを評価するという意味で「見直す」ことであり、「製品及びサービスに関連する要求事項のレビュー」は「製品サービス要件の見直し」の意味である。これは94年版(4.3)のJIS和訳「契約内容の確認」の流れを汲む規定であり、応札又は引受けようとする契約、注文に決めた或いは決められた製品サービス要件に間違いがないかどうかを点検するという意味の「見直し」である。94年版の契約内容のえい見直しと違って15年版では、製品サービスの仕様と品質が顧客のニーズと期待を満たして決められているかどうかの点検も製品サービス要件の見直しの対象でなければならない。
 
② 規定要旨
  組織は、個々の契約又は注文の内容を点検、見直す手はずを整え、手はずに則って決められている製品サービス要件を点検し見直して、狙いの顧客満足の状態(5.2項)の実現に適う製品サービス に対応する製品サービス要件であることを確実にするよう必要な処置をとらなければならない。
 
  点検によって間違いを効果的に検出するためには、a)~e)を点検しなければならない。a), b)は、顧客のニーズと期待が正しく製品サービス要件としての製品サービスの狙いの仕様と品質に反映されているかどうか、d)は必要な法規制が遵守されているかどうか、c)は組織の製品サービス実現の業務の都合が考慮されているかどうかということである。 e)は、顧客の意向表明の誤りを抽出することである。
 
  また、文書化されていない顧客の意向は顧客に確認して文書化し、顧客に関係する間違いは顧客と共に解決しなければならない。点検の結果は、後日の問題に備えて文書に記述し、記録を維持しなければならない。
組織は、提案又は提供しようとする製品サービス の製造又はサービス活動実行の能力を保持していなければならない。
 
(2) 改定版品質マニュアル(外部説明用)のひな型 08年版の一部記述変更でよい
◆ 新規注文に対する製品仕様と品質の決定
  新規顧客、新規品の初めての受注に際しては、注文帳票の記載を引合検討書など契約関係文書(8.2.2項)の記載と突き合わせて、相違がないことを確認する。設計が必要でない場合は、継続注文と同じ取り扱いとする。設計が必要な場合は、顧客の意図、ニーズと期待、用途の特殊性及び特別に配慮すべき事項を必要により明確にした設計計画書(8.3.2項)を発行し、設計部門に製品設計を依頼する。
◆ 継続注文の内容の確認
  注文は、ファクス又は顧客の電算機システムの端末からの出力による顧客の書式の注文帳票で受け付ける。口頭の注文には「受注メモ」を発行し、顧客に確認する。注文確認要領に基づき注文帳票の内容を確認し、記述の欠如やいつもと異なる内容があれば、顧客に照会する。これらの照会と確認の内容及び確認相手を注文帳票にメモ書きする。確認し適切に処理した注文帳票に基づいて製品種類別に生産管理カードを発行し、製造部門に製造を依頼する。
 
(3) 08年版からの変更点
  08年版7.2.1、7.2.2項が全体の趣旨を変えることなく、8.2.28.2.3項に再編、記述されている。この結果、7.2.1項の製品サービス要件の決定の方法論の規定が、顧客のニーズと期待が正しく製品サービス要件に反映されているかどうかの点検項目としての規定になった。他は、08年版の7.2.2項の趣旨と規定表現がほぼそのまま残された。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を一部変えるだけでよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  口頭注文や注文帳票の記入欠落に対応し、また、注文帳票には明記されない顧客との合意事項や組織で追加している特別な配慮が間違いなく反映されるようになっているか見直せばよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-43>(追って掲載予定)  修 11.20

 42.ISO9000:2015 改定解説     8.2.2  製品及びサービスに関する要求事項の明確化  -変更点と移行対応(34)
8.2.2  製品及びサービスに関する要求事項の明確化
顧客に提供する製品及びサービスに関する要求事項を明確にするとき,組織は,次の事項を確実にしなければならない。
 
a) 次の事項を含む,製品及びサービスの要求事項が定められている。
  1) 適用される法令・規制要求事項
  2) 組織が必要とみなすもの
b) 組織は,提供する製品及びサービスに関する主張を満たすことができる。
 
(1) 条項の趣意

  本項は、狙いの顧客満足の状態の実現に適う製品サービス であることを確実にするために、それぞれの契約又は注文に対して顧客に引き渡そうとする製品サービス に関する基本的要件を規定している。
 
① 論理と用語
  事業製品を表す用語としては初版以来「製品」と表されてきたが、15年版では「製品及びサービス」と表されることとなった。これは英文では “products and services”であるが、「製品」と「サービス」と言う意味ではなく、事業製品を意味する呼称であるから、日本語では「製品サービス 」と表現するのが適当である。
 
  JIS和訳「要求事項」は、英文でも規格の定義でも「要求」ではなく「必要」という意味であり、「製品及びサービスに関する要求事項」「製品及びサービスの要求事項」のどちらも、組織が満たさなければならない製品サービス としての必要条件という意味での「製品サービス要件」のことである。製品サービス要件とは簡単に言えば、どのような製品サービスでなければならないかということである。
 
  品質経営の在り方を示す規格では、この製品サービス要件とは、顧客要件、つまり、顧客のニーズと期待を満たし、狙いの顧客満足の状態の実現に資する製品サービスであるために組織が満たすことが必要な製品サービスの条件である。実務的には製造又はサービス活動により顧客に引き渡す予定の製品サービス として必要な製品サービスの仕様と品質に関する必要条件のことであり、08年版では製品実現の計画でこれをJIS和訳「製品に対する品質目標及び要求事項」として明らかにするように規定されている。
 
② 規定要旨
  JIS和訳「明確化」「明確にする」の英文は“determine”であり、「評価し決定する」である。「定められている」は“be defined”であり、「明確にされている」である。
 
  組織が事業の維持発展に必要な顧客満足の状態を実現させるためには、顧客のニーズと期待を満たす製品サービス を顧客に引き渡さなければならない。このためには、契約又は注文のそれぞれ対してどのような製品サービス を提案するか又は提供するかを決定する場合、a)、b)が明確になっていなければならない。
 
  a)は、製品サービス に関して組織が満たさなければならない製品要件の決定に関し、提案又は提供しようとする製品サービスの仕様や品質が顧客のニーズと期待を満たし、法規制を遵守したものであるということ、b)は、そのような製品を製造し又はサービス活動を行う能力を持っているということを、それぞれ指す。
 
(2) 改定版品質マニュアル(外部説明用)のひな型08年版の一部記述変更でよい
  新規顧客からの、又は、新規品の引合いを受けた場合、引合検討書の顧客指定の製品仕様及びその他の要求を基本にして、製品製造可能範囲内なら製品仕様決定手順に従って見積製品仕様を決定する。また、製品製造可能範囲外なら過去の同種製品を参考にして概略設計(8.3.2項)を行って見積製品仕様を決定する。
 
  成約した場合は、製品の製品仕様と品質に関する契約条件を引合検討書に明確にする。これを含み、見積書や交渉による追加や変更事項の記録など契約関係文書を決められた区分と方法で整理して保管する。
 
  製品仕様決定手順は、標準製品仕様、法規制を包含した用途別特殊仕様、顧客別配慮事項、及び、標準包装及び輸送仕様から成る。新規品の契約に含まれる特別な条件を、必要により製品仕様決定手順の各基準に織り込む。また、狙いの顧客満足の状態の実現に資する製品という観点から適宜見直す。
 
(3) 08年版からの変更点
  08年版7.2.1、7.2.2項が全体の趣旨を変えることなく、8.2.28.2.3項に再編、記述されている。この結果、7.2.1項の顧客要件を満たす製品サービス要件の決定の方法論の明示的規定が無くなって、本項は7.2.1項の標題を引き継ぎながら、7.2.1、7.2.2両項の趣旨の中の製品サービス要件 に決定に関する基本的要件を集約して規定する条項となった。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を一部変えるだけでよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  製品サービスの品質、加工や納入や注文受付方法を含み、顧客の評価を意識して注文に対して組織が特別に配慮していることが、実際に抜けなく適用できるようになっているか、特に、特定の製品サービスにのみ適用する配慮がその通りに確実に適用されるようになっているかを見直せばよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-42>(追って掲載予定 ) 修 11.20

 41.ISO9000:2015 改定解説    8.2.1  顧客とのコミュニケーション   -変更点と移行対応(33)
8.2 製品及びサービスに関する要求事項
8.2.1 顧客とのコミュニケーション
顧客とのコミュニケーションには、次の事項を含めなければならない。
 
a) 製品及びサービスに関する情報の提供
b) 引合い、契約又は注文の処理。これらを含む。
c) 苦情を含む、製品及びサービスに関する顧客からのフィードバックの取得
d) 顧客の所有物の取扱い又は管理
e) 関連する場合には、不測の事態への対応に関する特定の必要事項の確立
 
(1) 条項の趣意
  本項では、製品サービス に対する顧客満足を確実にするために、顧客の意向を受けとめ、必要な情報を顧客に伝える情報交換の活動が必要であること、及び、その情報交換活動を行うべき5つの分野を規定している。
 
① 論理と用語
  『コミュニケーション』は英文では“communication”であり、情報の交換、或いは、それによって考えや意思を共有することを意味し、TC176指針では「情報交換」である。規格では日本語の「情報交換」と「情報伝達」の両方の意味で使われている。
組織の存続発展に必要な顧客満足の状態の狙いを決めてその確実な実現を図る品質経営活動では、組織の要員は顧客や供給者など外部の組織とも連携して様々な業務を行なっている。品質経営活動が真に効果的なものであるためには、関連する顧客との間の業務の実行において、業務実行と実行結果に関する情報交換が、時宜を得て適切な方法、方式で行なわれなければならない。
 
  例えば、製品サービス に関する不適切な、誤った情報交換により、顧客が意に沿わない又は期待と異なる製品サービスを買ってしまい、或いは、買った製品の誤った使用で事故を起こしたりすることになれば、例え製品サービス の機能性能が組織の意図の通りのもので、欠陥がなくても、顧客不満足の状態が起きる。顧客満足の状態の実現には、組織が顧客の想いを正しく把握してそれを満たす製品を顧客に引渡すこと、また、顧客が製品を正しく理解し、使用することが必要である。これには、双方が製品について必要とする情報を相互に発信し、受け取ることができ、双方の想いや理解を一致させることができるような状況が必要である。
 
  また、顧客との情報交換活動は組織と顧客との接点で行われる。接点で行われる業務の結果も組織とその製品サービスに関する好感や信頼等の顧客の受けとめ方に影響を及ぼす。この意味で情報交換活動の結果は組織の提供する製品サービスの一部である。製品サービスの顧客満足を追求して健全な事業の維持発展を図る組織は、情報交換活動の顧客満足に対する間接及び直接のふたつの影響に対応することが必要である。
 
② 規定要旨
  組織が製品サービスに対する顧客ニーズと期待を正しく把握し、そのニーズと期待が満たされるように製品サービスが使用され又は受け入れられることを確実にするために、必要な顧客との情報交換の活動の手はずが整え、必要に応じて手はずに則ってそれぞれの顧客との接点業務において情報交換を行わなければならない。効果的な情報交換活動であるためには、情報交換の手はずの中には、顧客の製品サービスに対する受けとめ方にとりわけ大きな影響を及ぼすa)~e)の接点業務の手はずを含めなければならない。
 
  a)は製品情報の開示、b)は営業活動、c)は顧客のニーズと期待の把握、d)は顧客所有物の管理(8.5.3)における意思疎通、e)は不測の事態への対応に関連する情報交換活動である。
 
(2) 改定版品質マニュアル(外部説明用)のひな型 08年版のまま
  顧客別に営業担当者を割り当て(6.2.1項)、その顧客とのすべての接点業務に責任をもたせる。接点業務の実行の手はずはそれぞれに関連する業務の手はずに含む。顧客訪問と顧客来訪時の儀礼、行動、環境など顧客との対応に関する指針を定める。製品引渡し業務に関する顧客の要求を輸送外注組織の要員が聞き取り又は文書を受領することを含む、顧客との接点業務に係わる規則を輸送外注組織との品質協定書に含めて、その履行を管理する(8.4項)。
  製品カタログは年度版として、ウェブサイトに搭載し、定常顧客に配付する。年度内での製品の投入又は仕様変更があれば、その都度ウェブサイトの製品カタログを更新し、特定製品カタログで定常顧客に説明する。
 
(3) 08年版からの変更点
  08年版7.2.3項と趣旨不変で、記述もa)~c)はほとんど同じである。d)は8.5.3項の重複記述であり、e)は08年版8.3 d)の顧客で発生した不適合製品の影響に対する処置の概念の記述を拡大したものであろう。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を必要なら一部書き直し、それ以外は何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  トップマネジメントの想い描く顧客の組織への評価を確立するのに影響すると思われる接点業務が、トップマネジメントの想いの通りに行われているかを見直せばよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-41>(追って掲載予定)

 40.ISO9000:2015 改定解説   8.1  運用の計画及び管理  -変更点と移行対応(32)
(1) 08年版からの変更点
   8章では、契約又は注文に対して製品を製造し、サービス活動を行って、それら製品サービス を顧客に引き渡すのに直接関係する業務を取り上げ、製品サービス が組織の狙いの顧客満足の状態の実現に適うものであることを確実にするように、それらの業務を行うための要件が規定されている。組織は品質経営体制の計画 (6.1項)の一環として、必要な手順を確立し資源を用意してこれら業務実行の手はずを整え、手はずに則って効果的にそれぞれ業務を行わなければならない。
 
  規格では、製造及びサービス活動(8.5項)を中心に成約又は受注から製品サービス を顧客に引き渡すまでの一連の業務は「製品サービス実現」の活動であり、個々の契約又は注文に対して製品サービス実現の一連の業務の手はずを整える活動は「製品サービス実現の計画」の活動である。
 
  本項では、個々の契約又は注文に対して、顧客に引渡す製品サービスが組織の狙いの顧客満足の状態の実現に適うものであることを確実にするように製品サービス実現の計画を行わなければならないこと、及び、効果的な製品サービス実現の計画であるための要件を規定している。
 
  組織は、成約又は受注した個々の製品サービス について、それら製品サービス の実現のために必要な業務とそれら業務の実行の手はずを整え、手はずに則ってそれら業務を実行し、それら業務が決められた通り実行され決められた結果が確実に出るように業務実行を管理しなければならない。
 
  それら製品サービス 実現の業務と手はずが、狙いの顧客満足の状態の実現に資する製品サービス を確実に実現させるのに効果的なものであるためには、また、手はずに則って業務が効果的に行われるためには、製品サービス 実現の計画には、a)~e)項を含めなければならない。
 
  a)は製品サービスの狙いの仕様と品質及びその他必要事項であり、b)~c)は、そのような製品サービスを実現するのに必要な業務と業務方法であり、d)はそれら業務の実行管理の方法であり、e)は保持すべき業務実行と製品サービスの記録である。
これら業務を外注し、又は、製品サービス を外部から購入する場合は、それら外注先、購入先の業務及びその結果として組織が受取る製品サービス製品サービス実現の計画で決めた通りであることを確実にするための管理 (8.4項)を、製品サービス実現の業務に含めなければならない。
   
  製品サービス 実現の業務の手はずを変更する場合は、変更作業が他の業務の実行と結果に悪影響を及ぼし、狙いの顧客満足の状態の実現に支障を来すような状況を避けなければならない。組織は、このことを確実にするために、変更作業の手はずを整え、その通りに変更作業が行われるよう変更作業の実行を管理しなければならず、決められた通りでない変更が行われた場合には、それによる変更の狙いに対する悪影響を評価し、必要な処置をとらなければならない。
 
 
(2) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  受注してから製品の製造、サービス活動の実行の方法をどのように決めて、それをどのように生産やサービス活動の要員に伝えているのか、トップマネジメントの想いの製品サービス が顧客に引き渡されるようになっているのか見直せばよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-40>

 39改定解説(2015年版):  10.3   継続的改善     -変更点と移行対応(31)
(1) 条項の趣意
  マネジメントレビュー(9.3項)は、狙いの顧客満足の状態の確実な実現を図る品質経営のプロセスアプローチ/PDCAサイクル§43.2の中核となる活動であり、あるサイクルと次のサイクルとの間でトップマネジメントが、顧客満足追求に係わる時代の変化を把握して、変化に対応するために戦略§35.2の変更を含む品質経営の手はずの変更と必要な処置を決める。これは、品質経営の必要な狙いの顧客満足の状態の実現に係わる繰り返しの改善の処置であり、規格の意図では「品質経営体制の継続的改善」の処置である。   
 
(2) 規定趣旨
 JIS和訳「機会」は“opportunity”だから「可能性、見込み」であり$9、本項の場合は問題対応が可能かどうかという意味での「改善の可能性」である。「明確にする」は“determine”であるから「評価し決定する」であり$6、「検討する」は“consider”だから「考慮する」の方がよい。この日本語を用い、また、条文の意図に沿って条文解釈をすると、第2条文は「継続的改善の一環として取り組まなければならない必要又は可能性があるかどうかを判断するためには、マネジメント レビューによる分析及び評価の結果と結論を考慮しなければならない」である。
 
  組織が存続発展に必要な顧客満足の状態の決定とそれを確実に実現する品質経営の能力を保持し続けるように、品質経営の業務実行の手はずが適当で十分で有効であるかどうかを評価し、問題点を抽出し、経営課題としての取り組みが必要で、かつ、取り組み可能な問題対応策を決めなければならない。この問題対応が継続的改善に適当で十分で有効なものであるためには、マネジメント レビューによる問題の分析、評価とその結果としての結論(9.3.2項)を基礎としたものでなければならない。

   
(3) 08年版からの変更点

  表現の違いだけであり、規定の趣旨は08年版8.5.1項と全く同じ。08年版では継続的改善の方法論を品質経営のプロセスアプローチ/PDCAサイクルの形で記述していたのが、15年版では継続的改善を業務実行管理での不良、異常への対応処置としての「改善」の一種として記述している。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を新規定表現に合わせて変えるだけでよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  経営者が常に考え、打ち出して来た事業環境変化に対応する経営施策の決め方を、抜けなく、より効果的な検討、決定ができるという観点で規格の規定に照らして見直せばよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-39> 

 38改定解説(2015年版):  10.2  不適合及び是正処置   -変更点と移行対応(38)
(1) 条項の趣意
  本項は、業務実行管理の中の実績評価(9.1.1項)で、決められた通りでないと判定された業務結果によって狙いの顧客満足の状態の実現に支障を来さないようにそれらを処理する必要と、処理が効果的であるための要件を、すべての不適合に当てはまる共通的表現で規定している。
 
 
(2) 規定趣旨
  決められた通りに業務を行い決められた通りの結果を確実に出すための業務実行管理においては、実績評価(9.1.1項)によって決められた通りでないと判定された業務結果に対して、それが原因となって狙いの顧客満足の状態の実現に支障を来すことのないように適切な改善の処置をとらなければならない(10.1項)。このような狙いの通りでない業務結果とは、実務では不良や異常のことであり、規格では「不適合」と呼ぶ。
 
   組織は業務実行管理で検出又は発生した不適合な業務結果ないし不良や異常を処理する手はずを整え、手はずに則って狙いの顧客満足の状態の実現に支障をきたさないようにそれらを適切に処理しなければならない。手はずが効果的であるためには、処理にはa)項の1),2)の処置が含まれなければならない。1)は不良や異常が狙いの顧客満足の状態の実現に悪影響を及ぼすことを防ぐための修正処置であり、2)は発生した不良や異常が既に及ぼした悪影響を緩和し又は最小限化し、或いは、悪影響の更なる拡大を抑制する処置である。
 
  また、組織は検出又は発生した不適合な業務結果ないし不良や異常の再発を防止する手はずを整え、手はずに則って必要な範囲で必要な程度の再発を防止する是正処置をとらなければならない。是正処置が効果的であるためには、手はずにはb)~f)項を含めなければならない。g),f)項は是正処置として採用した手順や資源、その狙いの業務結果を品質経営の活動が依拠する品質経営体制の手はずに織り込むこと、実務的には是正処置として決めた業務実行の手はずの標準化を意味する。
 
  さらに、組織は、効果的な不良や異常の処理の証拠として、また、不良や異常に関連する業務実行の改善検討のための情報として、不良や異常、その処理の実績の記録を維持しなければならない。
 
 
 
(3) 08年版からの変更点
  共通テキスト化により08年版8.5.2項(是正処置)に不適合の処理が追加記述されたものであり、是正処置についても記述の変更だけで趣旨は変わっていない。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアルの一部書き換えでよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  問題発生時の処置を修正処置と是正処置に区別して必要な程度に合理的に行うことでよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-38>

 37改定解説(2015年版):  10.1   改善   一般    -変更点と移行対応(29)
(1) 条項の趣意
  規格は、製品サービスの顧客満足§10の追求により組織の永続的な存続発展を図る品質経営§2.1の在り方を規定している。その基本要件は、あるべき顧客満足の状態に関する経営戦略§35.2を時代の変化に応じて適切に変更し、それを確実に実現させるという循環的活動§33として品質経営活動を行うことであり、規格の規定はこれを、品質経営製品サービス実現との2種類のプロセスアプローチ/PDCAサイクル§43.2の形で記述している。
 
  規格では、狙いの顧客満足の状態を確実に実現させるための品質経営のプロセスアプローチ/PDCAサイクルにおいて、業務が品質経営体制の計画(6.1項)又は製品サービス実現の計画(8.1項)で決められた通りに行われ、決められた通りの結果を確実に出すようにする業務実行管理の活動の中の、実績評価(9章)で、決められた通りではないと判定された業務結果或いは製品サービスに関して必要な処理をすることを「改善」の活動と位置づけている。10章は効果的な品質経営活動に必要な改善の活動を取り上げ、狙いの顧客満足の状態を確実に実現させるという観点で効果的であるための要件を規定している。
 
  本項は、業務実行管理の活動の中の改善の活動が効果的であるための要件を、決められた通りでないと判定されたすべての業務或いは製品サービスの改善の処置或いは活動に当てはまる共通的な表現で規定している。
 
 
(2) 規定趣旨
  JIS和訳「改善の機会」の英文は“opportunity for improvement”であり、どこをどのように改善できるかという意味での「改善の可能性」「改善の余地」のことであり$9-1、「改善の機会を明確にし、選択しなければならない」は、不適合とその悪影響を無くするための改善の処置を検討し、適切な処置を決めるという意味である。
 
  組織が品質経営活動によって、必要な狙いの顧客満足の状態を確実に実現させるためには、決められた通りに業務を行い決められた結果を確実に出すための業務実行管理の活動を効果的に行わなければならない。業務実行管理では、実績評価の活動(9.1.1項)において狙いの通りでないと判定された業務結果或いは製品サービス、すなわち、規格では「不適合」、実務では「不良や異常」が原因となって狙いの顧客満足の状態の実現に支障が来されることのないように、それら不適合ないし不良や異常に対して適切な改善の処置をとらなければならない。
 
  これら改善の処置が効果的であるためには、処置を決める場合にa)~c)の観点を考慮しなければならず、処置は10.2項又は10.3項に則って行わなければならない。 a)は、狙いの仕様と品質の製品サービスを確実に実現させて顧客に引き渡すこと、b)は、当該の不良や異常に起因する新たな問題発生を防止すること、c)は、不良や異常の再発を防止することである。 JIS和訳「改善の機会」の英文は“opportunity of improvement”であり、どこをどのように改善できるかという意味での「改善の可能性」「改善の余地」のことであり$9-1、「改善の機会を明確にし、選択しなければならない」は、不適合とその悪影響を無くするための改善の処置を検討し、適切な処置を決めるという意味である。
 
 
(3) 08年版からの変更点
  規格の「改善」が狙いの通りでないとして見出された不適合な業務結果に対する処置であることには08年版も15年版も変わりがない。15年版では共通テキスト化によりプロセスアプローチ/PDCAサイクルの管理/Cと継続的改善/Aに相当する業務を9章と10章に分けて記述したため、08年版の8.1項の記述を9.1.1項と本項に分割したもの。すなわち、08年版8.1項の業務実行管理に関する規定の「のために必要となるのプロセスを計画し、実施しなければならない」の「改善」に関する部分を本項として独立させて、「改善」の必要性の規定の表現を変え、改善の観点を明示的に規定したものであり、規定の趣旨は不変。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
 08年版の8章の中の記述又はその背景の業務実行管理における「改善」の活動の実態を抜き出し、整理して記述すればよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  トップマネジメントが経営目標の狙いの顧客満足の状態の実現のために重要と考える業務が期待した出来ばえでないことが判明した時に、どのような場合にどのような処置をとることを考えているのか、或いは、どのような処置をとってきたのか、を整理すればよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-37>

 36改定解説(2015年版):  9.2  内部監査  -変更点と移行対応(28)
(1) 条項の趣意
  本項は、狙いの顧客満足を確実に実現させる効果的な品質経営であるために、 トップマネジメントによる統制活動としての内部監査活動の適用の必要を規定し、内部監査がその目的に沿って効果的なものであるための計画、実行とその管理に関する要件を規定している。
 
(2) 規定趣旨
9.1.1項

  組織は、a),b)を監査基準とする内部監査活動の手はずを整え、手はずに則って品質経営に関連する業務の手はずとその業務の実行の実態を調査し、狙いの顧客満足の状態の実現の可能性を評価判定し、そのための問題を抽出しなければならない。 ここに、a)は、整えられた品質経営の一連の業務の実行の手はずが組織の存続発展に必要な顧客満足の追求という観点で効果的であるかどうか、また、ISO9001認証取得組織なら品質経営の手はずが規格の要件を満たしているかどうかである。b)は、業務が実際にそれぞれ整えられた手はずの通りに行われているかどうかである。
 
9.1.2項
  その目的に沿った効果的な内部監査であるためには、内部監査の手はずは a)~f)の規定を満たして整えなければならず、その手はずに則って内部監査を行わなければならない。
 
  ここに、a)は、内部監査の活動を監査プログラムに基づいて行う必要の規定であり、内部監査の目的の観点で効果的であるための監査プログラムの作成の要件を規定している。また、b)、c)は、効果的な監査活動であるための要件の規定である。 d)、e)は、内部監査の目的を達成するための内部監査後に必要な活動に関する規定である。
 
 
(3) 08年版からの変更点
  用語の定義に変化はなく、規定表現も大きくは変わっておらず、規定の趣旨には全く変化はない。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  6.2.2項品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  本当に心配になっている点だけ、ちゃんと調べる能力のある者を選んで監査すればよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-36>

 35改定解説(2015年版):   9.1.3  分析及び評価   -変更点と移行対応(27)
(1) 条項の趣意
   本項は、業務実行管理における実績評価の活動(9.1.1項)において、実績の適否又は合否の判定を正しく行うためには収集した実績情報を分析した上で評価し、判断することが必要であることを規定し、無限持続体としての存続発展を図る品質経営活動において必要な実績評価の視点を規定している。
 
(2) 規定趣旨
 
業務実行管理が狙いの顧客満足の状態を確実に実現するという観点で効果的であるためには、その実績評価 の活動(9.1.1項)においては、収集した実績の情報を必要な程度に分析して、正しい実態を把握し、それに基づいて決められた結果が得られたどうかを評価し判定しなければならない。
 
 
また、狙いの顧客満足の状態を確実に実現させる効果的な品質経営活動における業務実行管理では、a)~g)の観点から、狙いの業務結果を確実に出すように関係する業務実行を管理しなければならない。これらは、実務的には、a)は製品サービスの品質管理(8.6, 8.7項)、b)は品質経営の業績管理(9.1.2項)、c)はa),b)に関連しての品質経営の業務実行の手はずの管理(10.2項)、d)は手順や規則の遵守管理、e)は改善の品質目標の達成管理(6.2.2項)、f)は供給者の実績管理(8.4.2項)、g)は経営戦略の管理(9.3.3項)である。
 
(3) 08年版からの変更点
  08年版(8.4)の規定でも「分析」と「評価」が業務実行管理の引き続く一連の活動として記述されており、規定の趣旨も08年版(8.4)と変わっていない。規定表現が変わっているだけ。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  何も変える必要はない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  組織内で日々に行われている業務の首尾や出来ばえに関する評価や判断が、客観的な事実に基づいて行われているようになっているか、見直せばよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-35>

 34.改定解説(FDIS):  7.5.3   文書化した情報の管理  -変更点と移行対応(26)
(1) 条項の趣意
  本項は、品質経営 の業務の効果的実行を図る手段として文書と記録が用いられるために必要な、文書と記録の取り扱いに関する要件を規定している。
 
(2) 規定趣旨
7.5.3.1項(取り扱い)

  組織は、文書化した情報、実務的には文書や記録、の取り扱いを管理する手はずを整えて、手はずに則って文書や記録を、a)~b)の状態に維持しなければならない。ここに、a)は、必要に応じて使用可能な状態にしておくことであり、b)は、決められた通りに使用され、損傷や損失がなく使用できるよう保護しておくことを意味する。
 
7.5.3.2項(取り扱い方法)
  文書や記録の取り扱いを管理する手はずには、その狙いの通りに管理するために、必要によりa)~d)項を含めなければならない。ここに、a)は、文書や記録の利用の方法に係わる手はずであり、b)は、文書や記録の保管に係わる手はずであり、c)は、変更管理の手はずであり、d)は、有効期間の管理の手はずである。
 
(3) 08年版からの変更点
 08年版の4.2.3(文書管理)と4.2.4(記録の管理)の規定を合わせて、文書と記録の区別をなくし、規定を7.5.2項(作成及び更新)と7.5.3項(文書化した情報)に再編成して記述したものである。15年版には機密性の保持と悪意に対する防御の観点の規定が追加されているが、前者は文書管理の普遍的な原則を明示的に規定したものに過ぎない。また、日本の組織には安定した社会情勢を背景に採用時の選別と人的作業環境(7.1.4項)と管理者の指導力によって悪意に基づく要員の行動は効果的に防止できているし、防止法としてはこれしかない。報道される不祥事はほとんど契約社員、外注企業社員が引き起こしている。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  4.2.3(文書管理)と4.2.4(記録の管理)に係わる品質マニュアル記述を再編成して書き直せばよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  移行を機会に、文書の作成、更新は、管理者がその職務としての業務結果を確実に出すための手段であるとの観点から、これを機会に必要な文書の作成、更新を発案し、発行し、必要な結果を出す責任者を明確にするとよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-34>

 33改定解説(2015年版):  7.5.2    作成及び更新  -変更点と移行対応(25)
(1) 条項の趣意
 
本項は、品質経営 の業務の効果的実行を図る手段としての文書化した情報、実務的には文書や記録、の作成、更新に係わる要件を規定している。
 
(2) 規定趣旨
 組織は、業務情報の文書化の手はずを整え、手はずに則って、品質経営の各業務を体系的で組織的に行なうために必要な情報を文書化し、それら文書化した情報、実務的には文書や記録、を必要に応じて更新しなければならない。この手はずでは、文書や記録及びそれらの作成又は更新に関するa)~c)を決めておかなければならない。
 
  ここに、a)は、どのような文書化した情報であるかを見分けられるようにする識別表示をどうするかであり、b)は、文書や記録の態様をどうするかである。c)のJIS和訳「適切性」「妥当性」は英文に従うと、文書の使用目的に照らして適当$23で十分$24であるかどうかという意味であり、同「レビュー」は問題がないか、変更が必要かどうかの観点から物事を再評価する$22という意味である。従ってc)は、誰がどのようにして文書化した情報の内容が適当で十分であることを確実にするのかということである。
 
(3) 08年版からの変更点
  08年版の4.2.3(文書管理)と4.2.4(記録の管理)の規定を合わせて、文書と記録の区別をなくし、規定を7.5.2項(作成及び更新)と7.5.3項(文書化した情報)に再編成して記述したものであり、規定表現は変わっていても文書と記録の管理の要件としては何も変わっていない。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  4.2.3(文書管理)と4.2.4(記録の管理)に係わる品質マニュアル記述を再編成して書き直せばよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  移行を機会に、文書の作成、更新は、管理者がその職務としての業務結果を確実に出すための手段であるとの観点から、必要な文書の作成、更新を発案し、発行し、必要な結果を出す責任者を明確にするとよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-33>

 32. 2015年版ISO9001 FDIS発行 -見掛けの変更多数だが趣旨不変の2015年版がほぼ確定
  付表  2015年版ISO9001 FDIS-DIS―08年版の比較
 
 
1. FDIS発行

  7月9日に賛否投票が始まったFDIS(最終国際規格原案)版の英語版を入手した。これまでのCD、DIS版の評価の延長線としてFDIS版のDIS版との違いを評価し、2015年版の2008年版から変更点を分析した。
 
2. DISからの変更点
 
DIS版から規定や注記が追加され、条項建てや標題、規定文章や注記の文章が各所で多数修正されている。特に、変化が目立つのが購買管理の新しい用語と定義や論理に適合させる表現の変更(8.4項)、設計開発の世界標準の方法論に復旧させるための規定表現の変更(8.3項)である。また、文字面規格解釈に影響を及ぼす可能性のある重要な規定表現の変更が多数ある。定義を改訂中のISO9000:2015に委ねられるとの3項の記述変更は規格使用者にとってうれしくない。全体としてDISからの変化は、論理の整理が不十分なまま、形の上ではCDからDISへの08年版に近づく改訂作業の流れに沿った表現変更である。
 
3. 2015年版の実体
 
これから次の段階IS(国際規格)版までは変更は表記上の変更に限られるのが通例であり、また、FDIS版が投票で否決されることはまずあり得ないから、2015年版はほぼ確定である。とすると、これで決まったと考えることができる。とするなら、 2008年版からの変化の本質は、共通テキストの採用と製造業の業務手法に由来する方法論の規定の汎用的表現化という改訂作業方針のため、条項構造が大きく変わり、規定の条文の文章や用語、表現が大きく変わっているが、効果的な品質経営であるための必要条件、或いは、効果的な品質経営を行おうとする組織が満たすべき要件は何も変わらないということになる。
 
  ISO9001規格が何を規定しているかを示している規格の適用範囲の両版の記述(1.1/1項)はほとんど一字一句変わっていない。規定の文章の文字面解釈では様々な変更点としてのいわゆる要求事項或いは規格の要求の変化を抽出することが可能であるが、顧客満足の追求によって事業の健全な発展を図ろうとする組織に対する指針として規定の意味するところ、つまり、規格の意図或いは規格の趣旨は、08年版と何も変わっていない。この評価は規格執筆者の改訂説明の真意と一致する。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-32>

 31改定解説(2015年版):    7.5.1  文書化された情報 一般   -変更点と移行対応(24)
(1) 条項の趣意
  品質経営活動は多数の人々による様々な業務の集まりであり、狙いの顧客満足の状態を確実に実現する効果的な品質経営活動であるためには、各業務を体系的で組織的に実行することが必要であり、これには人の記憶と口頭連絡に代えて業務実行に文書を用いることが効果的である。
 
  本項は、品質経営活動の効果的な実行を支えるのに必要な基盤のひとつとして、体系的で組織的な業務実行を可能にするのに必須の決まりと意思疎通情報の文書化の手はずの確立の必要を規定し、必要な文書化の範囲を概念的に規定している。なお、規格の他の関連条項では、すべての組織に必要な個々の文書化対象を具体的に規定している。また、注記には、文書化の範囲に関する規格の意図が説明されている。
 
(2) 規定趣旨
   組織は、効果的な品質経営のために、a), b)の情報を文書化しなければならない。ここに、a)は、ISO9001規格がすべての業種業態、規模の組織に文書化が必要として規定している情報のことであり、b)は、品質経営の業務を効果的に行なうために文書化が必要な情報という意味であり、規格の意図の文書化の意義がそのまま規定として表わされたものである。
 
(3) 08年版からの変更点
  規定の趣旨が業務を効果的に行なうために必要な情報の文書化であることには変わりがないので、08年版とは規定表現の違いだけである。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  何も変える必要はない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  今日、どの組織も組織内外の業務に様々を紙の文書、記録を用いており、一部を電子データ化して利用している。これらを文書の性格、作成や使用の目的に応じて組織に適当な文書体系に整理し、その上で大事なことが文書化されていないか考えてみるとよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-31>

 30改定解説(2015年版):  7.4  コミュニケーション  -変更点と移行対応(23)
(1) 条項の趣意
  多数の人々が協働して共通の狙いの顧客満足の状態の実現を図る品質経営活動では、関係する人々の間で業務実行と結果に関する必要な情報が、相互に確実に伝達されることが不可欠である。
 
   本項は、品質経営活動の効果的な実行を支えるのに必要な基盤のひとつとして、組織内、及び、関連する外部との間の業務実行と結果に関する情報伝達、交換の手はずの確立の必要を規定し、手はずが効果的であるための要件を、すべての情報伝達、交換の活動にあてはまる共通的表現で規定している。なお、規格の他の関連条項では、特定の情報伝達、交換の必要とその要件を、本項規定を基礎にしてそれぞれの情報伝達、交換に特有の表現で規定している。
 
(2) 規定要旨 
  組織は、狙いの顧客満足の状態の実現を目指して、多様な業務を相互に関連づけ、外部組織とも連携し、多くの要員の協働によって品質経営を体系的で組織的に行なうために必要な情報連絡、交換の活動を特定し、そのためのa)~d)を含む手はずを整え、手はずに則って、必要な組織内部、及び、組織と外部組織との情報連絡、交換の活動を行わなければならない。
 『コミュニケーション』は、規格では情報交換、情報伝達の意味である。また、規格では情報伝達、情報交換することには“communicate”が使われており、JISは「周知」「伝達」と和訳している。プロセスアプローチにおける情報交換は、「業務の実行及び監視を支えるのに必要な情報を利用できることを確実にしなければならない」(08年版 4.1 d))の「情報の利用」に相当する。
 
(3) 08年版からの変更点
  15年版では共通テキスト化により組織内と外部との情報交換を単一条項で取り扱うISO14001の伝統的な記述方式となる一方で、08年版の個別の情報伝達の規定はすべて15年版に継承されているから、規格の意図には変更が認められない。しかし、新「コミュニケーション」条項は情報交換の普遍的な要素を羅列する抽象的規定となり、08年版の「内部コミュニケーション」の規定が継承されていない。この結果、個別の情報伝達規定以外の情報交換の対象が「品質マネジメントシステムに関連する情報交換」と無限に拡がって、組織が自分で対象を考えなければならなくなった一方で、08年版の業務実績管理に関する情報交換という世界標準の重要な情報伝達の必要を組織が自ら考え出さなければならなくなった。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述に外部との情報交換の実態を追加記述するだけでよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  トップマネジメントの想いの業績、業務の結果が確実に出るという観点で、及び、出るように管理するという観点で、業務の指示と結果の報告が適切な方法になっているかを、トップマネジメントの気になる業務について見直しすればよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-30>

 29.改定解説(2015年版):  7.3  認識  -変更点と移行対応(22)
(1) 条項の趣意
  組織は、存続発展に必要と決めた狙い顧客満足の状態を確実に実現させるためには、要員がその実現の必要性の認識をトップマネジメントと共有し、その実現が自分の委ねられた業務で決められた結果を確実に出すかどうかに関係しているとの認識の下に、決められた業務 結果を確実に出すように、意欲的で責任ある業務取り組みを行なう状況を組織内に創り出し、維持することが必要である。
 
  本項では、品質経営活動の効果的な実行を支えるのに必要な基盤のひとつとして、真に効果的な業務実行に繋がる要員の職務に対する認識の確立の必要を規定している。
本項では、品質経営の業務を効果的に行なうための人的資源の要素としての、職務に対する要員の認識の必要を規定している。
 
(2) 規定要旨
 組織は、要員がその職務に対する認識を育むよう、a)~d)を必要に応じて理解させる手はずを整え、手はずに則ってそれらを理解させ、それらの理解を通じて、要員が職務に対する認識を確立することを確実にしなければならない。 a),b)は狙いの顧客満足の状態がどのようなものか、c)は要員の業務実行が狙いの顧客満足の状態の実現にどう関係しているか、d)は決められた通りに業務を行なうことの必要性、をそれぞれ意味する。 
   
(3) 08年版からの変更点
  共通テキスト化により資源条項(7.1項)から独立した条項となり、08年版6.2.2 d)項の「認識」が単独条項となり、認識の対象の記述が変更されたが、規定の趣旨は08年版と全く同じ。規定が教育訓練と切り離されたことにより、認識の概念が適切に整理された。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  奴隷を鞭打って働かせるより、給料を払って働き易い環境を整える方が費用対効果の点でも組織に得策であることは常識である。近年新聞沙汰になり組織に大きな損害をもたらした悪意が絡む不祥事はほぼすべて、外注の要員や派遣社員、アルバイト又は不遇退職者など組織の業績を自分のものと考えにくい立場の人々である。つべこべ言わずに言われたことをやればよいと、何も教えずないで、あれこれ指図をして仕事をやらせているような組織は今どき存在しない。どのトップマネジメントトップも要員の組織への帰属意識と業務意欲の醸成を図るためにとってきた施策や考え方があるから、これを整理すればよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-29>

 28.改定解説(2015年版):  7.2  力 量   -変更点と移行対応(21)
(1) 条項の趣意
  組織の存続発展に必要と決めたな顧客満足の状態の実現には、要員がそのための業務を決められた通りに実行し決められた通りの結果を出すことが必要であり、組織はそのような職務能力を持った要員にそれぞれの業務を委ねることが必要である。本項では、品質経営活動の効果的な実行を支えるのに必要な基盤のひとつとして、必要な職務能力を持った要員の充足管理の必要とその要件を規定している。 注記には、不足する職務能力の充足方法が例示されている。
   
(3) 規定要旨
  組織は、品質経営の業務が必要な狙いの業務結果を確実に出すように、必要な職務能力を持った要員を組織内に保持するための、a)~d)の手はずを整え、手はずに則って、すべての業務にそれに必要な職務能力を持った要員を確実に割り当てなければならない。必要な職務能力がどのようなものか、或いは、要員がどのような職務能力を持つかは、要員の学校教育歴、職業訓練歴及び組織内外での職歴に基づいて評価し、決定しなければならない。
 
  ここに、a)は、個々の業務に必要な職務能力がどのようなものかを決めること、b)は、各要員がどのような業務の職務能力を持っているかを明確にすること、c)は、組織に不足する職務能力を充足する方法、d)は、要員の持つ職務能力の評価に関係する記録の維持である。
 
(3) 08年版からの変更点
  共通テキスト化のために資源条項(7.1項)から独立した条項となり、08年版6.2.1項と6.2.2項とが単一の条項7.2項となったが、規定の文章もよく似ており、規定の趣旨は08年版と全く同じ。“competence”の定義の変更により、「力量」ではなく「職務能力」であることがより明確になった。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  日本の普通の企業では、素性の不明な者を雇用していきなり現場に放り込んで作業をさせるようなことはない。要員投入の必要があれば、その業務に応じた学歴と職歴を基本条件として選考し、法令で定められるものを含み雇用形態に応じた程度の導入教育をし、持っていると考えられる職務能力に応じて不足を補う教育訓練を行なった後に一人前として、しかし指導者を明確にして業務に当たらせる。これは、新しい仕事に就く要員が怪我をせず事故を起こさずに,必要な業務結果を確実に出すことを期待しているからである。15年版移行を機にこれらの処置や手順がその狙いに対して必要で十分かどうかを規格の規定の意図に照らして見直してみるのもよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-28>

 27改定解説(2015年版):    7.1.5  監視、測定のための資源  -変更点と移行対応(20)
(1) 条項の趣意
   本項は、効果的な品質経営に必要な資源のひとつとしての、製品サービスの合否判定のための情報検知に使用する監視測定手段の充足管理の必要とその要件を規定している。
 
(2) 条項の趣意
7.1.5.1項(監視測定手段の充足管理)
  組織は、製造及びサービス活動(8.5.1項)の一連の業務の結果の半製品や最終製品サービスの合否判定を行うために必要な情報検知の方法を決め、必要な場所や場面で使用できるようにする手はずを整えなければならない。また、手はずに則って それぞれの情報検知の必要を満たす機能、性能を持つ監視測定手段を用意し(a))、それらの機能、性能発揮できる状態にあるよう管理しなければならない(b))。
 
7.1.5.2項(計測器の管理)
   監視測定手段が計測器であり、正しい測定結果を確実に得るために必要な場合には、計測器はa)~c)を満たして管理しなければならない。
 
  ここに、a)は、国際標準の不確かさの概念と計量確認手法$38に準拠した計測器の機能や性能の経年劣化を管理する方法論である。組織は、経過劣化をする計測器については、国際的計量確認体制の下で必要な校正、検証をしなければならず、結果の記録を維持しなければならない。b)は、必要な校正、検証をした計測器かどうかを見分けることができるようにすることであり、c)は、必要な校正、検証をした計測器の機能や性能を維持するように計測器を取り扱わなければならないということである。
また、不良計測器を用いて製品サービスの合否判定を行ったことが事後に判明した場合は、それに起因する不良品が顧客に引渡され又は使用されないよう適切な処置をとらなければならない。
 
(3) 08年版からの変更点
  表現の違いだけであり、規定の趣旨は08年版(7.6項)と全く同じ。電算機ソフトウェアの管理に関する直接的規定がなくなったが、趣旨は監視測定手段全体の管理の要件に含まれて記述されている。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要はない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  顧客の苦情の多くが検査での不良陥見落としや不良判定ミスとみなされる組織では特に、検査員教育、検査方法や記録のとりかた等の改善に努められ、常識として試験機や測定機器の定期校正が実施されている。15年版移行を機に、これらの情報検知手段の現行の管理の手順を、検査の適切さに影響を及ぼす情報検知手段を広く規格の規定の趣旨に沿って見直し、影響の大きさに応じて強化又は緩和して整理するのがよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-20>

 26改定解説(2015年版):  7.1.4  プロセス運用の環境  -変更点と移行対応(19)
(1) 条項の趣意
  本項は、効果的な品質経営に必要な資源のひとつとしての、要員の真に効果的な業務実行を促進する作業環境の充足管理の必要とその要件を規定している。注記には、規格の意図の作業環境の原因が例示されている。
 
(2) 規定要旨
 
JIS和訳「プロセス運用」は英文から、品質経営に関連する一連の業務の実行のことであり、簡単には「業務実行」である$8-1。また、同「製品サービスの適合を達成する」は規格の文脈では、顧客のニーズと期待を満たす製品サービスを顧客に提供することを指す。条文は「業務実行により製品サービスの適合を図るのに必要な環境を、特定し、用意し、維持しなければならない」である$70-2
 
  組織は、要員が品質経営の業務で必要な狙いの業務結果を真に確実に出す状況を確立するために必要な作業環境を特定し、整備する手はずを整え、手はずに則って、必要な作業環境を整え、維持されるように管理しなければならない。さらに、作業環境を見直し、必要と判断される作業環境を整備、強化しなければならない(9.3.3 c)項)。
 
(3) 08年版からの変更点
  表現の違いだけであり、規定の趣旨は08年版6.4項と全く同じ。注記の記述変更により規定の作業環境が物理的要因の作業環境に限られるという08年版での規定解釈が誤りであることが明確になった。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要はない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  改定を機に、人的要因の作業環境の実状を見直すのがよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-26>

 25.改定解説(2015年版):  7.1.3  インフラストラクチャー  -変更点と移行対応(18)
(1) 条項の趣意
  本項は、効果的な品質経営に必要な資源のひとつとしての物的資源の充足管理の必要とその要件を規定している。
   
(2) 規定要旨
  JIS和訳「プロセス運用」は英文から、品質経営に関連する一連の業務の実行のことであり、簡単には「業務実行」である$8-1。また、同「製品サービスの適合」は規格の文脈では、顧客のニーズと期待を満たす製品サービスを顧客に提供することを指す。条文は「業務実行により製品サービスの適合を図るのに必要なインフラストラクチャを、特定し、用意し、維持しなければならない」である$70-1
 
  組織は、品質経営に関連する業務が効果的に行われるように、それら業務の実行と管理のために必要な物的資源を特定し、必要な場所や場面で使用できるようにする手はずを整え、手はずに則って、必要な物的資源を用意し、それらが所定の機能、性能を発揮できる状態にあるように管理しなければならない。さらに、物的資源の必要性を見直し、必要と判断される物的資源を充足しなければならない(9.3.3 c)項)。
 
(3) 08年版からの変更点
  08年版の主要な物的資源を例示する規定が15年版では記述汎用化のために注記に移されたこと以外は文面のわずかな表現上の変更だけであり、規定の趣旨は08年版6.3項と全く同じ。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要はない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  移行を機に、本項が設備一覧表作成の必要の規定とする少なくない組織の誤った認識を正すのがよい。
このページの先頭へ 詳しくは<sub31e-01-25>

 24.改定解説(2015年版):   7.1.1  資源   一般   -変更点と移行対応(17)
(1) 条項の趣意
  7章標題はJIS和訳「支援」であるが、規格の文脈では「基盤」の方が適当であり#72品質経営活動の効果的な実行を支えるのに必要な基盤という意味である。規格の品質経営活動は、狙いの顧客満足の状態の確実な実現を図るために、必要な手順が確立し、その実行に必要な資源の用意を含む基盤が確立した品質経営体制の下で各業務を体系的で組織的に行なうことを基礎としている。組織は、品質経営体制の計画(6章)の一環として、品質経営活動を効果的に行うために必要な資源を含む基盤を確立しなければならない。7章では確立が必要な基盤と、それぞれの確立のための要件を規定している。
 
  規格は各条項でそれぞれの業務に関してどのような資源が必要か、どのように管理すべきかを規定しているが、本項ではこの内の資源の充足の管理に関する要件をすべての資源にあてはまる共通的表現で規定している。引き続く7.1.2~7.1.6項では各条項に共通的なそれぞれの特定の資源に関してそれぞれに特有の表現で資源の在り方の要件を規定している。
 
(2) 規定の趣旨
  条文は「必要な資源を特定し、用意しておく」と読むことが適当であり$37、これは必要な資源が業務で使用されることを確実にするための資源の充足をプロセスアプローチ/PDCAサイクルに則って管理することを意味している。
 
  組織は品質経営 活動の業務の実行によって、狙いの顧客満足の状態の実現に必要な狙いの業務 結果を出すために必要な資源を特定し、所定の能力又は機能を発揮して使用又は適用されることを確実にする手はずを整えなければならない。組織は、その手はずに則って必要な資源を用意し、必要な場所や場面で使用され、所定の能力または機能を発揮できるような状態にあるように管理しなければならない。さらに、資源の必要性を見直し、必要と判断される資源を充足しなければならない(9.3.3 c)項)。充足の必要を判断する際には a)を、また、充足の方法を検討する場合には b)を、それぞれ考慮しなければならない。
 
(3) 08年版からの変更点
  表現の違いだけで規定の趣旨は08年版6.1項と同じ。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  品質マニュアル記述を含み何も変える必要ない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  改定を機に、必要な資源が間違いなく充足されている状態を維持する責任者と枠組みを明確にするとよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-24>

 23.改定解説(2015年版):   6.3  変更の計画  -変更点と移行対応(16)
(1) 08年版からの変更点
  08年版の5.4.2の品質経営の手はずを整える活動( a)項)と手はずを変更する活動( b)項)の要件の規定の内の、b)項を独立させたものであり、変更管理の要点の記述が詳しくなったが、規定の意図には変更はない。なお、15年版では日常管理業務統率者(08年版管理責任者)の責任(5.3項)に対する変更作業の円滑な実行の管理の責任が明示されている。
 
(2) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  何も変えることはない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  仕事の仕方など組織の決まりを変える場合の決まりを明確にしておかないと、誰かが勝手に、また、行き当たりばったりに変えて混乱、事故、製品不良、損害を生じることもあり得る。変更頻度の高い決まりや重要な決まりの変更の決まりがどうなっているか見直し、適当な形で適当な程度に文書化する。規格の規定に従って業務の手はずを整えた場合は、このような状態が実現する。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-23>
 
 22.改定解説(2015年版):    5.3   組織の役割、責任及び権限  -変更点と移行対応(15)
(1) 08年版からの変更点
  SL(共通テキスト)の導入のため08年版の5.5.1項と5.5.2項が単一条項に集約されただけで、規定の趣旨は不変。規定表現も似ている。用語「管理責任者」は用いられていないが、多忙なトップマネジメントに代わって品質経営*の日常業務を統率する責任者の任命が必要という5.5.2項の意図は変わっていない。08年版の管理責任者は00年版では小企業ならトップマネジメントがこれを兼務する(20)と説明されるほど絶対に必要な職務であったが、15年版では実務の必要に応じて指名するという正常な規定になった。
 
(2) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  何も変えることはない。実務的には機能組織上で品質保証機能を担う部門の責任者を管理責任者としているなら、そのまま品質経営体制の組織図に残せばよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  ISO事務局は廃止し、業務は関連する組織図などに決められた責任権限分担に従って分散させる。トップマネジメントが多忙な場合は、品質保証機能を担う最上位の管理者に顧客満足の追求に関連する日常業務を統率させる。 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-22>
 
 20.改定解説(2015年版):   4.3  品質マネジメントシステムの適用範囲の決定  -変更点と移行対応(13)
(1) 08年版からの変更点
 
08年版の1章は規格の範囲(1)に関する規定であり、15年版の本項は品質マネジメントシステムの範囲の規定であるから新規な規定である。ISO14001の4.1項を受けた共通テキストの規定がISO9001に採り入れられたものである。但し、ほとんどどの組織も品質マニュアルの形式としてその1章に組織とその事業、製品サービスの概要を記述してきたから、新規規定であっても特段の変更ではない。また、規格規定の適用除外は1.2項からの移動であるが、内容的には、サービスをも意図した柔軟な除外が可能な表現に変わっている。
 
(2) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
 
変えるところはない。但し、認証範囲を実際の事業範囲より狭く限定している組織は、この機会に改めるのがよい。また、規格規定適用除外が7章(15年版では8章)に限定する規定がなくなったので、無理をしていた組織は実態に合わせるのがよい。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
 
これを機会に、ISO9001が現場中心の品質改善運動の仕組みを規定する規格であるとする認識を正すのがよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-20>
 
 19改定解説(2015年版):   9.1.2   顧客満足  -変更点と移行対応(12)
(1) 条項の趣意
  本項は、業務実行管理における実績評価(9.1.1項)の活動の一環として、品質経営活動の業績としての顧客満足追求に関する実績評価の必要を規定し、顧客満足の状態の実績把握と評価の要件を規定している。
 
(2) 規定要旨
 組織は、狙いの顧客満足の状態を確実に実現させる品質経営の業績管理のために、品質経営活動の実績として実現した顧客満足の状態を監視し、評価しなければならない。このために、組織は、狙いの顧客満足の状態の達成度に関係する情報の収集及び使用の手はずを整え、手はずに則って必要により適時に情報を収集し、実現した、又は、期末までに実現する可能性のある顧客満足の状態に関して分析、評価しなければならない。
 
(3) 08年版からの変更点
  08年版と比較して顧客満足の意味が、定義では「顧客の要求事項が満たされている程度」から「顧客の期待が満たされている程度」と分かりやすくなる一方で、規定では「顧客要求事項を満たしているかどうか」から「要求事項が満たされた程度」と逆にわかりにくい表現になった。また、監視するべき顧客満足が「品質マネジメントシステムの業績の尺度<成果を含む実施状況の測定>」であるという規定表現がなくなったことも本条項の意図を不明確にしている。しかし、表現の変更だけで条文の意図は全く変わっていない。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  全く何も変えることはない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  トップマネジメントや管理者にはその製品・サービスを顧客に気に入ってもらうために、製品・サービスの品質や顧客対応に関して何を注意し、考慮しなければならないかについての一定の考え方がある。これを、当面の売上又は取引量を維持又は必要により増加させるために、どのような業務結果や製品・サービスの機能性能と品質、顧客の評価結果に注目して、それらをどのような程度、水準に維持することが必要かの観点で整理して、具体的な管理の方法を決めるとよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-19>

 17.改定解説(2015年版):  9.1.1  監視、測定、分析及び評価  一般  -変更点と移行対応(10)
(1) 条項の趣意
 規格は、製品サービスの顧客満足§10の追求により組織の永続的な存続発展を図る品質経§2.1の在り方を規定している。その基本要件は、あるべき顧客満足の状態に関する経営戦略§35.2を時代の変化に応じて適切に変更し、それを確実に実現させるという循環的活動§33として品質経営活動を行うことであり、規格の規定はこれを、品質経営製品サービス実現との2種類のプロセスアプローチ/PDCAサイクル§43.2の形で記述している。
 
  規格では、狙いの顧客満足の状態を確実に実現させるための品質経営のプロセスアプローチ/PDCAサイクルにおいて、業務が品質経営体制の計画(6.1項)及び製品サービス実現の計画(8.1項)で決められた通りに行われ、決められた通りの結果を確実に出すようにする業務実行管理の活動の中の、決められた必要な結果が得られたかどうかを判定する活動は「実績評価」である。9章は効果的な品質経営活動に必要な実績評価の活動を取り上げ、狙いの顧客満足の状態を確実に実現させるという観点で効果的であるための要件を規定している。
 
  本項は、業務実行管理において必要な結果が得られたどうかを判定する実績評価の活動が効果的であるための要件を、すべての業務や活動に当てはまる共通的な表現で規定している。9.1項の他の条項では特定の実績評価の活動又は特定の側面についての要件を、同じくすべての業務や活動に当てはまる共通的な表現で規定している。
゚  

(2) 規定の趣旨
 組織は、狙いの顧客満足の状態を確実に実現させる品質経営の業績管理の基礎として、決められた通りに業務が行われ決められた結果が確実に出されるようにする業務実行管理の活動を行わなければならない。このために組織は、業務実績を狙いの業務結果に照らして評価する実績評価の手はずを整え、手はずに則って決められた通りの業務結果が出ているかどうかを評価し、これに基づいて業務実行の問題点を抽出して、問題を正し(10章)、決められた通りの結果だけが次の業務に供されるようにしなければならない。
   
  実績評価の活動が狙いの顧客満足の状態の確実な実現という観点で効果的なものであるためには、その手はずでは、a)~d)を必要に応じて決めておかなければならない。ここに、a)は、業務実行管理の対象業務を適切に決めておくことであり、b)は、業務実行管理の方法を適切に決めておくことであり、c)、d)は、業務実行管理の態様を適切に決めておくことである。
なお、実績評価の結果の記録は必要に応じて維持しなければならない。
 
(3) 08年版からの変更点

  プロセスアプローチ/PDCAサイクルの管理/Cに相当する管理業務の必要に関する規定であり、08年版8.1項(測定、分析及び改善 一般)の「改善」の部分が除かれているだけで趣旨は同じである。ただし、08年版では8.1項の規定は目的を主体とし、方法論はプロセスの監視及び測定(8.2.3項)と製品の監視及び測定(8.2.4項)に分けて規定していたのに対して、15年版は方法論を詳しく規定するものとなっている。また、管理の方法論の用語としての監視、測定、分析の意味が整理されて規定表現の一貫性が向上した。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  用語や表現の変更のみで、管理業務に関する論理や要件が変わった訳ではない。移行のために何も変えることはない。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  トップマネジメントの頭の中にある実現すべき顧客満足の状態の指標とそのためにトップマネジメントが実行と結果に関心を持ち、報告させ、必要な指示を出している業務と期待している結果を、一度書き出してみればよい。これを整理して、管理項目と管理の指標とその管理基準として明らかにする。この実績情報を月1回の会議で報告を受け、吟味する体制をつくるとよい。 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-17>
 
 12. 改定解説(2015年版):   6.2  品質目標及びそれらを達成するための計画策定    -変更点と移行対応(5)
6.2 品質目標及びそれらを達成するための計画策定
6.2.1 組織は、品質マネジメントシステムに必要な、関連する部門、階層及びプロセスにおいて品質目標を確立しなければならない。
品質目標について次の事項を満たさなければならない。
a) 品質方針と整合している
b) 測定可能である
c) 適用される要求事項を考慮に入れる
d) 製品及びサービスの適合、並びに顧客満足の向上に関連している
e) 監視する
f) 伝達する
g) 必要に応じて更新する
組織は、品質目標に関する文書化した情報を維持しなければならない。
 
6.2.2 組織は、品質目標をどのように達成するかについて計画するとき、次の事項を決定しなければならない。
a) 実施事項
b) 必要な資源
c) 責任者
d) 達成期限
e) 結果の評価方法
 
(1) 規定の趣旨

  本項は、品質方針及び品質目標(5.2項)として表される品質経営の業績目標たる狙いの顧客満足の状態を確実に実現させるために必要な業務の手はずを整えることの必要性と、それらの実行管理のための管理基準に関する要件を規定している。
 
  規格の『計画』は手はずを整えることを意味し$28、『品質目標の達成の計画』とは品質経営体制の計画のことであり品質経営の業務の狙いの結果である品質目標を達成するための手順を確立し必要な資源を用意することである。品質経営体制の計画の結果は一般に手順書などの文書に表されるが、品質目標の達成に関して業務実行手はずに不確実性がある場合には、手段や日程を明確にした“programme”、JIS和訳では「実施計画」として表される。
 
  品質目標§4は「品質に関連して達成すべき結果」と定義され、品質経営$2.1に係わる目標、つまり、顧客満足§9の追求に関係する狙いの結果はすべて「品質目標」と呼ばれる。品質方針と合わせてトップマネジメントが決める組織の品質目標(5.2項)は達成すべき顧客満足の状態を表す品質経営の業績目標のことであり、業績目標を確実に達成するように関連する業務が確実に狙いの結果を出すようにする業務実行管理における各業務の狙いの結果たる業務目標も品質目標である。
 
  また、実務では一般に年度品質方針の下の品質目標は何らかの問題点に対応するものであり、現状改善を図るための品質目標であるから「改善の品質目標」である。改善の品質目標の達成に不確実性がつきものであるから日程と手段を明確にした業務実行計画が策定され、これに基づいて狙いの業務結果を確実に出すように計画の進捗管理が行われる。一方で日常の業務実行管理活動の対象はこれら以外の定常業務であり、それら業務が狙いの業務結果を出すことによりこれまでと同様の顧客満足の状態の実現、維持を図ることができる。従って、これらの狙いの業務結果は「維持の品質目標」であり、維持の品質目標は確立した品質経営体制の中の業務実行の手はずの中に、業務の管理基準や結果の合否判定基準の形で明確化にされている。
 
  JIS和訳「部門」の英文“function”は「経営機能、職能」の意味であり、実務的には機能部門制組織構造における各部門の担当機能業務を指す$61。「階層」は“level”の和訳で、文脈からは経営管理上の観点という意味である$61
 
6.2.1(業務実行管理の手はず)
  組織は、品質方針及び組織の品質目標(5.2項)に表される品質経営の業績目標としての狙いの顧客満足の状態を確実に達成するために必要な業務の手はずを整えなければならない(6.1項)。この手はずには、各業務が決められた通りに実行され決められた結果を確実に出すようにする業務実行管理(9,10章)の手はずを含めなければならず、このための管理基準を明確にしなければならない。
 
  業務実行管理の手はずが効果的であるためには、管理対象業務とその管理基準としての狙いの業務結果は、狙いの顧客満足の状態の実現に関連する経営機能、経営管理上の観点、及び、特定の業務という観点から、業績目標達成の管理項目として必要で十分なものでなければならない。また、これら管理基準として業務目標は、a)~g)項のようでなければならない。a)~d)は内容、e)~g)は取り扱いに関する要件である。さらに、これら業務目標は、文書に表されていなければならない。
 
6.2.2(計画進捗管理の手はず)
 狙いの顧客満足の状態の実現のために関連業務の手はずを整える品質経営体制の計画 (6.1.2項)では、その業務目標の達成に技術的又はその他の不確実性が見込まれる場合には、a)~e)を明確にした実行計画を策定し、これに基づいてその業務目標を決められた期限内に確実に達成するよう進捗管理をしなければならない(9.1.1項)。
 
(2) 改定版品質マニュアル外部説明用)の記述例
  品質基本方針 (5.2項)に基づく狙いの顧客満足の状態を確実に実現させるために必要な業務の実行の手はずを整え、文書化する。これには、業務実行管理(9.1.1項)で狙いの業務結果であるかどうかを判定するための管理基準を明確にする。
  部門長は、その実現に責任のあるそれぞれの狙いの顧客満足の状態に関して、その実現に重要な業務と狙いの結果を日常的な業務実行管理の項目として実績を管理する(9.1.1項)。
  年度品質方針に係わる年度重点取み組み事項(5.2項)に関係する部門長は、部門の担当機能の観点から責任があると考えられる事項を決定し、狙いの顧客満足の状態を実現させるのに必要な取組みと狙いの結果を部門年度業務目標計画書に定め、計画進捗を管理する(9.1.1項)。
  トップマネジメントは、業績目標としての両品質方針に決めた狙いの顧客満足の状態の確実な実現を図る観点から管理が必要で十分と考えられる業務を選び、実績の評価方法と共に月例業務検討会(7.4項)の議事録書式に明確にする。
 
(3) 08年版からの変更点
  共通テキスト化のために、08年版5.4.1項 (品質目標)と5.4.2項(品質マネジメントシステムの計画)が組み合わされ、ISO14001 (4.3.3 実施計画)の規定が織り込まれたものであり、品質経営体制の計画に関する規定としての趣旨に変更はない。
 
(4) 改定版への移行対応
➀ 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  年度品質方針、品質目標を設定する組織では普通、その達成の手はずの中に進捗管理のための実行計画書を作成してきたと考えられるから、何の変更の必要はない。但し、6.2.1項の品質目標を改善活動の目標として取り扱っている組織は、実際の日常管理項目の位置づけを規格の意図に沿って変えることが大切である。
② 認証取得の条件として規格を認識し、負荷と効用に不満を持つ組織
  トップマネジメントは日常の業務実行と結果に関して一定の関心事があり、あれはどうだったか、どうなったかと担当者に聞き、会議でよく質問し指示を出し、或いは、知らされなかった場合に怒るのは、それらの事柄が、必要な業績を確実に挙げ又はそれを危うくすることにつながるとトップマネジメントが考えているからである。これを整理すれば業績管理のためのトップマネジメントの想いの業務実績の管理項目が明確になるので、管理者の意見も取り入れて組織として必要な管理ホ項目を決めることができる。これら管理項目の実績の情報をどのように収集し、まとめ、トップマネジメントに報告されるのかの手順を、規格の関連規定に従って決めるとよい。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-12)

 9.改定解説(DIS):  2つのPDCAサイクルの観点からの検討  -変更点と移行対応(2)
  [業績管理と品質保証管理との2種類のPDCAサイクルに基づく整理と比較]
 

1. 2つのPDCAサイクル
  規格の各章、条項を、組織の存続発展に必要な顧客満足を確実に実現する品質経営<品質マネジメント>の業績を管理するPDCAサイクルと、この方針、目標に沿って受注製品の仕様と品質を決め、確実につくり、顧客に引き渡すようにする品質保証の管理のPDCAサイクルとの2つのPDCAサイクル、及び、両サイクルの業務の円滑な実行のための基盤要素とで構成されるとして整理すると、規格を組織の日常の活動により近づけて理解することができる。
 
2. 2つのPDCAサイクルの観点からのDIS版の08年版からの変更点
  改定版には条項の標題の変更が多く、新規条項も無くなった条項もあるが、この考えで各条項を図に整理し08年版と対比させると、改定版が基本的に08年版と同じ考え方、狙いであることがわかる。この観点での変更点を次の3点である。
 
① 外枠のPDCAサイクルのA、P部の新規条項
  4.14.2項、及び、6.16.3項は、新規な条項であるが、先の改定解説(マネジメントサイクル)で明らかにしたように品質経営<品質マネジメント>の業務に対する新たな必要条件<要求事項>の追加ではない。
 
② 両枠のPDCAサイクルのC部の条項構成の大きな変更
  08年版の8章(測定、分析及び改善)が、改定版ではSL(共通テキスト)に従って9章(パフォーマンス評価)と10章(改善)とに分けられると共に、条項構成が大きく変わり、同時に、条項の規定<要求事項>の性格が大きく変っている。
 
  すなわち、SL(共通テキスト)の9章は、08年版の8章の原理・原則を示す規定8.1項に相当する9.1.1項(一般)と内部監査(9.2項)にマネジメントレビュー(5.6項)をここに移入させた構成である。ISO9001の15年改定版ではこれに8.2.1項(顧客満足)と8.4項(分析及び評価)が追加されている。しかし、製品の監視及び測定(8.2.4項)はその検査の方法の部分のみが8.6項(製品及びサービスのリリース)となって移動し、残りの趣旨とプロセスの監視及び測定(8.2.3項)の条項全体が消え、改善の処置と管理手法との2種類の意味で規定されている8.5.3項(予防処置)も条項もろとも無くなった。また8.4項(データ分析)が重要な管理項目を具体的に規定しているのに対し、9.1.3項(分析及び評価)は、一般論として必要な管理の観点を箇条書きするものとなった。
 
  そもそも00年版(08年版)の8章は、全業種業態に適用可能な表現とする改定の狙いに沿って、94年版の製造業主体の管理の方法論や手法の規定を8章に集めて、一般的な管理の方法論の形に格上げ、拡大して書き直したものである。改定版は方法論や手法が排除され、論理のみの規定となっている。両PDCAサイクルのC部は08年版とは似ても似つかない外形と中身であり、改定というより刷新である。しかし、実態は、全業種業態に適用可能な記述の汎用化を更に進めるという改定の狙いがSL(共通テキスト)の採用と合わさっての結果としての表現の汎用化、非具体性化に過ぎず、考え方や意図は何ら変わっていないと受け止めてよいと思われる。
 
③ 資源マネジメントの要素の増加
  SL(共通テキスト)では職務能力<力量>と認識はそれぞれ独立した条項となり、資源の規定は必要な資源を用意する必要を一般的に規定した08年版6.1項と同様の7.1項のみである。改定版では、これに08年版のインフラストラクチャー(6.3項)と作業環境(6.4項)を組み入れ、監視機器及び測定機器(7.6項)をここに移動させた。さらにCD版で『知識』(7.3.4項)、DIS版で『人』(7.1.2項)が追加された。この新たな資源の追加の意図の説明はないが、必要な知識の取得、維持、改善は職務能力<力量>、インフラストラクチャー、文書や記録の管理の中に反映されていることであり、人の充足は職務能力<力量>の充足と同じことであり、どちらも新たな資源の必要の規定<要求事項>ではない。
 
3. 15年版への移行対応
(1) 品質経営体制の指針として規格を実践する組織
  ①②③のどれも規格の意図の変更、追加ではないから、何も変えることはない。
 
(2) 審査対応至上主義で、規格実践の負荷と効用に不満を持つ組織
改定版の規定条文に基づいて新たに9章、10章の規定<要求事項>を満たす規格の意図する業務の手はずを整えることは難しい。問題は、トップマネジメントが意図する業績を挙げるために、どの業務のどこに注意していかなければならないと考えて、日々に関心も持ち、管理者に問い、指示を出し、或いは、定例会議で報告を求めているかということである。これを整理した上で、規格の規定<要求事項>と照らし合わせて過不足を調節するという方法がよい。
 
  経営論では、経営管理<マネジメント>は組織の存立の目的に沿って事業を存続発展させる活動である。どのように存続発展を図るのかの組織の基本的意思決定は、経営戦略の策定と呼ばれる。経営戦略とは一般に、組織目的を果たすための組織のあるべき姿とそこに到達するための道筋或いは方策のことを意味する 組織はその置かれた環境と組織の有している能力を勘案して、実現の可能性と実現により得られる利益や効用の大きさとが釣り合う最適解として自らの存続発展の道を選択する。これは一般に、組織の有する能力を外部環境条件にマッチングさせることと表現される。 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-09>

 8.改定解説(DIS): マネジメントサイクルの観点からの検討     -変更点と移行対応(1))
 [マネジメント)サイクルに沿った08年版/DISの整理と比較]
 

1. マネジメントサイクル
 
経営論では、経営管理<マネジメント>は組織の存立の目的に沿って事業を存続発展させる活動である。どのように存続発展を図るのかの組織の基本的意思決定は、経営戦略の策定と呼ばれる。経営戦略とは一般に、組織目的を果たすための組織のあるべき姿とそこに到達するための道筋或いは方策のことを意味する 組織はその置かれた環境と組織の有している能力を勘案して、実現の可能性と実現により得られる利益や効用の大きさとが釣り合う最適解として自らの存続発展の道を選択する。これは一般に、組織の有する能力を外部環境条件にマッチングさせることと表現される。
 
  経営管理<マネジメント>活動の方法論は一般にマネジメントサイクルとして捉えられる。様々な表現があるが、例えば経営管理活動を計画‐リード‐統合という繰り返し活動に準える。ここに「計画する」は戦略の策定とその目標、方針、計画としての明確化、「リードする」は人々をその方向に動機付け、導くこと、「統合する」は戦略(計画)の達成に向けての組織の能力を調整、制御することにそれぞれ関係する。この繰り返し活動の統合と次のサイクルの計画との間には、そのサイクルの経営管理<マネジメント>活動の成果としての目的達成度の評価と次のサイクルへの反映という経営の意思決定が含まれる。
 
  マネジメントサイクルの最も重要な段階が経営戦略決定と見直しの「計画する」である。組織の永続的な存続発展のためには優れた戦略の維持が必須であり、戦略は内外の状況の変化に合わせて適切に見直し変更されなければならない。これには組織の能力と外部環境に関する情報が日常的に体系的に収集、分析、評価される体制が組織内に確立していなければならない。
 
2. 品質マネジメントのサイクル
  規格の品質マネジメントは品質方針(5.3)、品質目標(5.4.1)の策定とその達成を図る業務実行管理の循環的活動であり、計画/P‐履行/D‐管理/C‐継続的改善/Aのプロセスアプローチ/PDCAサイクルの形で表わされている。ここに、品質方針は品質保証ないし顧客満足のあるべき姿とそこに到達する道筋を示す組織の経営戦略を意味し、品質目標は特定期間又は時点での顧客満足の到達点又は狙いである。
 
  この戦略の実現を図るよう業務実行の手順を決め資源を用意して経営管理体制を確立することは、品質マネジメントシステムの計画(5.4.1)であり、戦略実現の活動と管理は製品実現の活動(7章)、監視及び測定(8.2)であり、業績評価と戦略としての品質方針、品質目標の見直しがマネジメントレビュー(5.6)である。この見直しが組織の能力と外部環境の変化に基づくことはISO9000やISO14001:1996では直接的な表現でも規定されている。さらに、戦略見直し評価に必要な情報収集の必要についてもISO14001:1996では直接的に、ISO9001でも マネジメントレビューに必要な情報を箇条書きで規定することにより間接的に示されている。
 
3. マネジメントサイクルの観点からのDIS版の08年版からの変更点
  08年版とDIS版の品質マネジメントのサイクルを経営論のマネジメントサイクルに沿って表し比較したところ、両版に基本的な相違のないことが明瞭になった。外見上で異なるのは①4.1項と4.2項、②6.1項、及び、③6.2項と6.3項の3点である。
 
  しかし①は戦略見直しのための組織の能力と外部環境の情報収集と分析の必要の規定であり、08年版でも間接的に規定され、又は、示唆、説明され、実際にもそうでなければ効果的な戦略見直しを行い得ないという問題でもあるから、新たな追加の要件<要求事項>ではない。
 
  ②の リスクと機会は実務的には品質方針、目標の決定の理由のことであり、トップマネジメントの頭の中にあり、方針や目標と合わせて説明され、記述されることもある事柄である。「リスクと機会に対処する処置」とは組織の品質目標としての狙いの顧客満足を実現させるための方策、手はずのことであるから、DIS版の「リスクと機会に対処する処置を計画する」は08年版の「品質目標を満たすように品質マネジメントの計画を行う」と同じことである。
 
③は08年版の5.4.1項と5.4.2項の条文の趣旨を再編して新たな2つの条項に織り込んだものであり、単なる条文の変更である。
 
4. 2015年版への移行対応
上記3.①②③のいずれも新規要件<要求事項>でも変更でもない。ISO9001を効果的な経営管理<マネジメント>の要件<要求事項> と受け止めて実務に適用してきた組織には、仕事のしかたの何も変える必要はなく、頭の中を整理すればよいだけだ。規格を品質改善運動の仕組みとする組織には、予想される新しい要求に沿った移行対応よりは正しい品質方針、品質目標の理解に転換する方が楽かもしれない。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-08>

 72015年版ISO9001 DIS版で変わったこと
            -リスク規定大幅減、方法論復活、適用除外緩和、なお論理未整理
      ★  2015年版ISO9001 DIS-CD―08年版の比較 一覧表
 
  5/9にDIS版が発行され、この英語版を入手した。CD版からの変更点について評価した。評価は先に行ったCD版の08年版との比較評価及び問題点指摘を基礎として行った。
   
   評価の結果、CD版のDIS版への変更が全体として意味のある方向で行われたと言える。特に、新用語リスクがリスク思考を意図したものであることが明確にされ、リスクに言及した規定が11ヶ所から3ケ所へと大幅に削減されたこと、及び、人為的過誤による不適合の防止の規定が削除されたことは、改定版の品質の向上という点で特筆すべき変更点である。CD版で不用意に削除された製造業の業務手法に由来する方法論の6件の内、設計開発、校正、受入検査が08年版のままではないが規定として復活したことも、規格理解の容易さという点で一定の進歩があったと考えることができる。
 
  また、プロセスアプローチ、PDCA、リスク思考の3つの概念が序文に整理され、CD版で削除されたプロセスアプローチの実務的表現である08年版4.1項の規定が復活した。これらの変更も規格の正しい理解のために好ましい。その他の重要な変更には、適用除外の条件が緩和されたことがある。これにより製造業と違いの大きい業種業態もその実体に合った規定適用が可能となり、規格の有用性が一段と高まることとなった。
 
  しかし、リスク規定の削除と残留が一定の基準に基づいて決定されたのかどうかわからないし、製造業の業務手法に由来する方法論の復活と削除のままという判断が記述の汎用化と規格の実用書としての具体的規定表現の必要性という矛盾する問題にどう折り合いをつけるのかの明確な考えで行われたようにも思えない。その他にも言わずもがな表現など論理的整合性の乏しい規定が残るだけでなく、新たに追加されている。さらに規格理解の点で重要な条文の統一的記述表現という点ではCD版から手つかずの状況にある。多様な物事の本質を見抜いて整理して体系化、論理化し、これを一貫した言葉と表現で表すというのが規格作成者の基本任務であるとすると、次のFDIS版までに規格作成者に期待されることは少なくない。 
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-07>

6.2015年版では品質改善成果を重視する規格解釈に。 審査には高負荷業務の簡素化が可能に
          -  ISO9000 DIS版の新定義が規格解釈・認証審査に及ぼす影響
  ISO9001の2015年版と平行して進められている指針規格ISO9000(品質マネジメントシステム-基本及び用語)の改定作業が4月にDIS版発行まで進んだ。その英語表記のDIS版を入手した。
   
   今日ISO9001認証組織の大半が効用を実感できず過大な負担と不満を感じているのは、規格を正しく実践していないからであり、この原因の根本は規格作成の目的や狙い、規格の論理、条文の意図を顧みない誤った規格理解と条文解釈である。本来このようなことを防止するための用語の定義にもまた誤訳と文字面を追うだけの間違った読み方による誤解があり、用語によっては規格解釈の誤りを誘導し或いは支える役割をさえ果たしているのが現状である。
   
  定義が正しい規格解釈を助けるためにあるという原点に立って、DIS版の新定義を現行06年版と比較して、規格解釈に及ぼす影響の観点から検討した。特に、今日の誤った規格解釈が正されるきっかけになるのか、また、2015年版規格がどのように受け止められることになるのか、認証審査がどのように変わるのかについて予測した。
   
   定義の変更について、(1) 基本的誤解に関係する定義、(2) 2015年版の新規概念に関する定義、(3) その他の誤訳と誤解に関係する定義に分けて評価し、各用語の定義の変更が関係する規格解釈の誤解にどのような影響を及ぼすかを検討した。
(1)では、①マネジメントシステム、②継続的改善、③パフォーマンス、④品質目標、 ⑤部門及び階層、⑥要求事項を取り上げた。(2)では、①組織の状況、②リスクを取り上げた。(3)では、①力量、②顧客満足、③設計及び開発、④品質マニュアル、⑤アウトソースを取り上げた。
   
   (1)は経営管理の枠組みの意味のマネジメントシステムを改善活動の仕組みとする誤解であるが、新定義が規格解釈の誤りを正すきっかけになる可能性はまずないであろう。この基本をそのままにして品質改善成果の継続的改善が規格の狙いであると言われることになる可能性が強い。(2)(3)ではこれまでの和訳と解釈の誤りが明確になる定義の新設と変更がある。これにより品質目標の展開、力量管理、購買管理が簡素化される可能性がある。しかし、逆に新たな誤解から新たな無駄が求められかねない定義の変更もある。リスクについては改善活動の目標たる品質目標に係わるリスクに限定されるものと新定義が読まれることになる。規格解釈を全面的に認証業界に委ねてきた組織では2015年版で効用のないまま更に負担が増す勢いにあるが、この新定義により負担増加の最大懸念要因が解消されることが期待される。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-01>

5. 「リスク及び機会」は新しい概念・要求事項ではない ‐TC176改定説明第1報 「リスク思考」
  ISO9001改定を担当するTC176/SC2が改定経緯説明の第1報として昨12月に「リスク思考」という標題の文書を発行した。この文書には説明不足の部分も多いが、最大の特徴は、「リスクと機会」の規定に関する規格の意図が明確に説明されていることである。
 
  すなわち、同文書では、規格が「リスク管理」の必要を規定しているのでなく「リスク思考(risk-based thinking)」や「リスク立脚取り組み(risk-driven approach)」の必要を規定しているということ、及び、この「リスク思考」「リスク立脚取り組み」が組織の実務では当たり前のことであり、これまでのISO9001にも明示的ではないが暗に含まれていたということが、明瞭に記されている。
 
  前者については文書標題を「リスク思考」とした上で、本文で組織の改定版対応が「組織の業務実行にリスク立脚取組みを用いること」であると述べられている。さらに、リスクと機会を特定するという規定は「組織が完全な、公式のリスク評価を行ったり、リスク登録を維持したりすることを自動的に求めているのではない」とも記されている。  後者の「リスク思考」が組織の実務においては目新しいことではないということについては、「リスク思考とは誰もが自動的に、また、しばしば無意識に行っていることである」「成功組織では、本能的にリスク思考の取組みが行われている」と直接的表現で説明されている。また、ISO9001にとっても新規な概念ではないことは、「リスクという概念は、ISO9001には常に暗に含まれていたが、今次改定ではこれをよりはっきりと述べ、マネジメントシステムの全体に組み込まれることになる」「リスク思考は、これまでも プロセスアプローチ の一部であった」として説明されている。これは、改定作業責任者Croft氏の「ISO9001の多くの項目でリスクへの対応が暗に含まれていますが、明示はされていません。そのため、多くのユーザーが、リスク管理の要素が既に規格に含まれていることに気付いていません。」という改定作業前の説明と軌を一にしている。
 
  しかし、暗黙的であることにどういう問題があり、なぜ明示的な表現としなければならなかったという説明はない。理由の説明らしいものは、高位構造・共通テキストの用語「リスク及び機会」の導入に伴い、経営管理活動の予防的性格に鑑みて予防処置の規定が不要になったというCD版に付記された変更点説明だけである。また、リスクの概念の説明は十分でなく、論理性、具体性に欠け、あいまいである。
 
  全体として、規定における「リスクと機会」の明示化が確固たる必要性に基づいたものでなく、その概念の整理も不十分なまま改定版に織り込まれている感がある。しかし、「リスクと機会」の規定が、これまでの規格も依拠してきた「リスク思考」の明示的表現に過ぎないことが明瞭となった。従って例えば、戦略的取り組みが要求されることになったとか、リスクと機会の特定が要求されることになったという類の改定解釈が誤りであることは明白である。
 
   普通の認証組織は、現行の品質方針や目標、手順や資源を決めた時に「自動的に或いは無意識に」考慮した「リスクと機会」が何であったか振り返って自らに対して明確にすることが改定版対応となる。例えば、年次方針としての品質方針なら通常、なぜこのようでなければならないか、つまり、どんな「リスクと機会」に対処するのかのトップマネジメントの説明がある。製造手順は、所定外の理由で品質不良が出ないように、怪我をしないように、汚染水を垂れ流さないように、機械を壊さないように等々の様々なリスクに対応するように決めてある。今から特に何かをしないといけないというものではない。
このページの先頭へ TC176/SC2改定経緯説明 第1報 「リスク思考」  全文和訳 詳しくは<31e-01-05> 

42015年版 ISO9001/CD 新要求事項 「知識」   (変更点の評価‐3)
  共通テキスト7.1項(資源)に追加されたCD版7.1.5項は「必要な知識を決め、維持し、保護し、必要に応じて利用できるようにしておかなければならない」として品質マネジメントの効果的な実行には資源としての「知識」の充足が必要であるということを規定しており、新しい要件<要求事項>である。
   
  この規定の導入についてふたつの見方が可能である。ひとつは、新条項が経営資源としての知的資源の重要性を示すために現行6章の人的資源、物的資源、作業環境の規定に追加されたという見方である。組織の業績に及ぼす知識や情報の重要性の認識のこの10年来の高まりを背景にCD版に「知識」に関する規定が織り込まれたとすれば、時代の変化への対応という改定作業の目的に沿うものと考えることもできる。 しかし実務では、形のない「知識」は例えば物的資源に織込まれ、或いは、手順書や報告書などに表わされ、要員の職務能力の一部として管理される。規格では、組織が例えば、インフラストラクチャー (6.3項)、文書と記録(4.2項)、『力量』(6.2項)の規定への適合を図ろうとするならすなわち、CD版規定の「知識」の充足の規定を満たすことになる。例えば、JIS和訳『力量』の「職務能力」とは「知識と専門性を発揮して意図された結果を出す能力」と定義される。『要員は力量がなければならない』という規定は、組織にどのような形式知たる「知識」と暗黙知たる「専門性」が必要であるかを「決め」、これを要員の職務能力として「維持し保護し」、その要員にその業務を行わせることにより「知識を利用できるようにする」ことを意味する。この点で「知識」の規定は既存の規定と内容的に重複し、無くても済む規定である。
 
  「知識」の規定の導入のもうひとつの背景として考えられるのは、日本の国内委員会の規格改正に向けたTC176への要請との関連である。要請は、認証組織が不適合や事故・不祥事を出し、製品品質に関して顧客の期待に応えられていないことへの対応として「製品及びその提供に係わる固有技術の獲得・向上」と「知識、スキルの不足…….を防ぐ仕組み」を含む3つの要求事項の追加であったと言われている。しかしそもそも、事故・不祥事の原因を組織の固有技術や要員の知識が十分でないことであると断じ、その防止の文言を規定に追加すれば問題が解消するというのは、6.1 i)項の「人的過誤による不適合が阻まれていること」と同様の信じられないほどに単純で短絡的な考え方である。こちらの点での「知識」の規定の追加であるとすれば、必要性の論評に値しない愚挙である。
 
  さらに、この新7.1.5項の規定の「知識」の充足の記述は内容的に資源一般の充足の必要の記述(7.1.1項)の域を出ないから、重複記述に近い冗長な規定である。また、「知識」の重要性は他の事項のマネジメンにおいても変わらないのに、品質マネジメントのISO9001にだけ規定するというのは、共通テキスト化の精神に反するものである。
 
  現行版で既に「知識」の重要性は明確であり、必要な「知識」の充足の管理は「知識」を体現し又は含蓄する媒体の管理の規定の中に含まれている。品質マネジメントに重要だとしても、このような規定表現の観点だけでなく、特徴のない規定の内容の点からもこの「知識」の規定の追加が効果的な品質マネジメントの指針としての規格に不可欠とは考えられない。いずれにせよこの規定によって、日本の認証審査では必要な知識或いは固有技術の一覧表の作成と更新といった無意味な形式が要求されることになるのであろう。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-04>

3 2015年版 ISO9001/CD 運用管理におけるリスクと予防処置  (変更点の評価‐2)
  94年版の「製品実現」はCD版では共通テキスト8章の“operation”に変わった。JIS仮訳では『運用』であるが規格の意図では「業務実行」である。CD版では「業務実行の管理」の規定の中にも経営管理用語『リスク』が5箇所に取り入れられている。これには、現行規格にリスクへの対応が暗に含まれていることが気付かれていないために明記したとの説明がある。一方で『予防処置』の規定がなくなった。
 
  元来、業務実行管理は決められたことが決められた通りに実現することを確実にする活動であり、それは同時に、決められた通りにならないことを防止する活動でもある。実務では業務実行管理とは実質的に、決められた通りにならないこと、つまり、管理用語では不良や異常、規格用語では不適合の発生を防止する管理の活動である。
 
  不良や異常が発生するのは決められた通りに業務が実行されないからであり、そのようなことが起きる原因は、管理用語では要因の意図しない変動である。用語『リスク』は「不確実性の影響」と定義されるから、業務実行管理にあてはめると、要因の意図しない変動の結果で生じる可能性のある不良や異常のことである。すなわち、業務実行管理とは本来、『リスク』の現実化を防止する管理活動である。リスク対応をしていないのでなく、不良や異常の防止を図ることをリスク対応と言うのを知らないだけである。
 
  一方、用語『リスク』の採用を理由に『予防処置』の概念と規定が消去された。しかし、規格の『予防処置』は、起き得る不良や異常の発生を未然に防止するという業務実行管理の目的を果たすための効果的な方法論の規定である。規定は、不良や異常の発生の兆候を検出し、原因を突き止めて問題発生の未然防止の処置をとるという普遍的な業務実行管理の方法論を示している。方法論を明確にせずに用語『リスク』を導入したから『予防処置』は不要になったという論理は業務実行管理には当てはまらない。
 
  実務では確立した業務実行管理の概念と用語と手法がある。これに経営用語の『リスク』を持込み、加えて業務実行管理に必須の『予防処置』を無くするCD版改訂は、規格の価値を毀損する愚挙である。規格執筆者は規格が効果的な経営管理の指針であるという原点を忘れてはならない。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-03>

2 2015年版ISO9001/CD 新要求事項   「人的過誤による不適合が阻まれていること」     (変更点の評価‐1)
  CD版の数少ない新しい要求事項のひとつが、現行7.5.1項の『製造及びサービス提供』の実行管理のための『管理された状態』に追加された「意図しない過ち及び意図的な規則違反のような人的過誤による不適合が阻まれていること」である(8.6.1 i)項)。
 
  しかし、人的過誤による不適合の防止は「管理」そのものを意味するので、この規定は基本的に不必要な重複規定である。加えて、このような管理の対象或いは目的を意味する規定を、管理の手段としての『管理された状態』のひとつとして現規格に追加されており、論理性に欠ける訳のわからない規定表現である。また、組織においては『意図的な規則違反』はないのが前提であり、これを業務実行管理の対象とする規定は現実離れしている。
 
  この規定は、「不適合や事故・不祥事の主な原因となっている知識、スキル不足、意図的な不順守、意図しないエラーを防ぐ仕組みにする明確な要求事項の追加」という日本の要請に基づくものであろうが、事故・不祥事の原因の断定も、その原因の防止の文言を規定に追加すれば問題が解消するという考えも、単純で短絡的である。
 
  このことを合わせてこの新規定は、本質的に無意味で不必要な規定であり、規格表現として必須の論理性、体系性に欠ける不適切な規定でもある。規格執筆者は組織の実務をよく勉強し、物事を体系的に表わす力を磨くべきであろう。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-02>

12015年版ISO9001の 全体像判明 -見掛けは全面改定、但し論理は不変   (CD版でわかること)
  2015年版 ISO9001(CD版)の現行2008年版との差異 一覧表    
 
  改 訂作業中のISO9001の6月3日付けのCD(委員会原案)版原文を入手した。条文には今後改められる未熟な表現も少なくないが、CD版が2015年改訂版の骨組みを示すものとすると、大きく3つの特徴が読み取れる。ひとつは条項の順番、用語が大きく変って条文が00年版改訂の時以上に原理的で抽象的な方向にほぼ全面的に改められることであり、ふたつ目は見掛けの変更にもかかわらず品質保証・顧客満足追求の効果的な経営管理活動の指針としての規格の本質と支える論理には変更がないことであり、3つ目に認証業界の思惑に迎合する言わずもがなの表現が所々に見られることである。
 
  ひとつ目の特徴は、CD版序文で明確にされている改訂版執筆方針としての、共通テキスト化と規格の全業種業態に適用できる汎用化の一層の推進及びサービス産業への適用の容易化を図った結果である。このために、サービスを含む概念である『製品』というこれまでの表現が「物品及びサービス」に変えられた他、共通テキスト以外の条文記述もほぼ全面的に変えられている。また、より重要なことは「製造業の業務手法に由来する要件(requirement)表現の規範的性格(prescriptive nature)を薄める」という考え方から、方法論の規定が大きく簡略化され、基本的な必要条件のみを表すものとなった。これにより例えば、設計開発管理の『レビュー、検証、妥当性確認』の用語とその方法論(新8.5.2項)の規定がなくなり、計測器の校正の必要性と方法論(新7.1.4項)、及び、『プロセスの妥当性の確認』の条項と方法論(新8.6.1項)も規定からは消えて、注記での説明に変わった。初版の『受入検査』から続く現行『購買製品の検証』(7.4.3)、初版から続く品質管理手法としての『予防処置』(8.4 c))のそれぞれの具体的規定が無くなったこと、登録取得の代名詞であった『品質マニュアル』作成の規定(4.2,2)がなくなったこともこの一環であろう。
 
  ふたつ目の特徴であるが、規格の条項で新たに追加されたのは共通テキスト化に伴う『4.1 組織とその状況の理解』と『4.2 利害関係者のニーズと期待の理解』『4.3 品質マネジメントシステム適用範囲』の他、8.2.1項の「顧客との意思疎通の活動」の規定と「7.1.5 知識」「8.6.5 引き渡し後の活動」「8.6.6 変更管理」だけである。それも、前三者はこれまでも当然実行されていることの規定としての明確化であり、その次の新7.1.5項も言わずもがな規定である。新8.6.5項は00年版で「7.5.1 製造及びサービスの提供の管理」に統合された94年版の『4.19 付帯サービス』の再登場であり、新8.6.6項は現行の『5.4.2品質マネジメントシステムの計画』の中の変更管理の規定を分離したものである。また、現行版から「8.5.3 予防処置」の規定が削除されているが、CD版前書きで現行版の規定が重複記述で不必要であったと説明されている。改定を特徴づける条項の追加、廃止さえ規格の意図、論理の変更ではなく、規格の本質は揺るがない。
 
  3つ目であるが、認証業界では規格に不祥事の発生を防ぐことを狙いとする直接的な規定を設けることで認証制度離れ  を食い止めたいという思惑があり、これに迎合する表現が目につくことである。その典型がリスクであり、共通テキストで取り入れられた『6.1 リスク及び機会への取り組み』を含めて『リスク(及び機会)を特定する、決定する、考慮する、に取組む』と和訳されるであろう規定記述が数えると11カ所もある。しかし管理とは『機会』たる狙いの結果を確実に出すようにする活動であり、それは同時に『リスク』たる狙いに反する結果が出ないようにする活動であるから、規格がなにがしかの管理を規定するのに リスク云々に言及することは必要なく、一般に冗長感が拭えない。また、資源マネジメントの「7.1.5 知識」の「品質保証・顧客満足に必要な知識を決め、維持、保護、必要により使用可能な状態にしなければならない」の規定は要員が『意図した結果を達成するために知識及び技能を適用する能力』たる『力量』を『備えることを確実にする』という規定(7.2項)との重複かつ内容的に矛盾する記述である。「8.6.1 物品製造及びサービス提供の管理」の「人為ミスによる不適合を防止しなければならない」に至っては、規格の価値を問われる規定である。
 
  08年版を除き過去の改訂は、日本製品の高品質の秘密の探究を基礎とする初版の品質保証の基本論理からずれることなく、論理の整理の進展と世界で定着した手法を取り入れつつ、表現の汎用化を進める形で実用的経営管理指針としての価値を高めてきたとしてその意義を認めることもできる。2015年版でも共通テキストの採用と更なる汎用表現化があり、『認識』『力量』『教育訓練』の完全分離という論理の整理にも進歩が見られる。通俗的な言わずもがな表現が今後の詳細条文検討において他の未熟表現と共に適切に修正される可能性もあるから、2015年版改訂はこれまでと同じ意義のある方向で進められていると考えることもできる。この結果の唯一の懸念は、規格が普遍的な論理だけを表す教科書的なものとなり、経営管理活動の実用的な指針書としての性格を失い、将来には各種の産業分野別(セクター)規格が乱立する可能性である。
このページの先頭へ 詳しくは<31e-01-01>
|ホーム| ISO規格| システム構築要求要項コンサルティング・研修海外の動向コンサルタント切り口|
ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修  サニーヒルズ コンサルタント事務所