ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
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      2015年版 ISO14001 骨格判明
           ― 要求事項変更2ケ所、条項・条文全面変更、難解の可能性も
                        CD.1 版 の評価
<31f-01-02>
(0.1) 概要  こちら
   
(0.2)  2015年版 ISO14001(CD.1 版)の現行2004年版との差異 一覧    一覧表へ(本文末)
 
 
(1) CD.1版の発行
  3月11日発行の2015年版ISO14001の最初の原案、第一次委員会原案(CD.1)の日本語私訳文を日本規格協会主催の説明会資料として入手した。改訂作業は「ISO14001の将来像」報告書の11項目の改定推奨事項に基づいて行われることになっており、これら改定の趣旨は共通テキストの採用と序文や1章、定義、付属書Aの大幅書き換えで満たされ、既存要求事項の変更は外部への環境情報発義務の強化の現行4.4.3項の改訂のみであると予想した*。
 
  この観点からCD.1版を評価すると、ほぼ想定通りの小幅な改訂でありながら、現行条文までが大幅に書き直され、共通規格構造化と相まって外見上は現行版の面影がないほどの大改訂となっている。さらに共通テキストの論理に関係する条文記述など未熟な表現が目立ち、加えて条文記述の抽象的で法律書並みの硬い表現に改善が見られず、難解な条文が並んでいる。CD.1版段階では予測の「中味変更僅少」は的中、「体裁一変」は想定以上であり、「意義や意図が明確な規格に」には程遠い。
 
 
(2) 新規な条項、用語、要求事項
  今回の改定目的は、(1)ISO14001が世界の環境取組みの中核的指針であるとの位置づけを確立する、(2)ISO14001の意図を明確にする、(3)ISO14001の内容を時代の変化に適応させる の3つである。CD.1版では、次の3種の新規条項、用語、要求事項があるが、いずれも改定推奨事項との関係で考えることができる。04年版規定からの変更はa)@Aのみであり、b)は規定表現の詳細化であり、c)は04年版に従って環境マネジメントを行う組織なら当然満たしていた経営管理活動の基礎的要件が共通テキスト化の中で明確に規定されることになった事項である。
 
a) 外部への環境情報の発信の強化
@ 7.4.3 外部コミュニケーション及び報告(環境情報の外部への報告の必要)
A 8.2 バリューチェインの計画及び運用(製品の著しい環境影響の情報提供の必要の検討)
 
  これは、規格を時代の変化に適応させるための必要な変更を行うという改定目的(3)の内の組織の社会的責任としての環境情報の外部発信の強化の必要(改定推奨事項I)に対応するものである。@は、どの程度が必要かの長い間議論があった問題であり、組織の環境影響発生と低減の考え方や実績の社会や利害関係者への自主的な情報発信の必要に関して、04年版の『外部コミュニケーションを行うかどうかを決定する』から『法的及び自主的義務により要求され、コミュニケーションを計画する際に決定された環境情報を外部に報告する』と少々突っ込んだ規定となった。Aは、04年版の組織が影響を及すことができる環境側面としての製品の著しい環境側面の管理の方法論に『製品の使用及び最終廃棄処理、又はサービス提供の間の潜在的な著しい環境を影響に関係する情報提供の必要性について考慮する』ことがあることを明らかにした規定である。これは、下記と同じ改定推奨事項Hにも対応する規定である。
 
b) 管理対象の環境影響の明確化
B 8.2 バリューチェインの計画及び運用(供給者の環境側面の組織による管理の手順)
C 9.1.1 監視、測定、分析及び評価(供給者・使用者の環境影響の監視測定)
 
  改定目的(1)ISO14001が環境取組みの中核的指針であることの明確化と改定目的(2)のISO14001の意図の明確化に関連しての、ISO14001がすべての性格、種類の環境影響を取り扱い、ISO14001の環境影響が原料採掘から製品廃棄に至る製品の全寿命に係わる、或いは、受注から製造・サービス活動から製品配送を含む全事業に係わるものであることを明確にするという改定推奨事項HFの反映である。
 
  このためにCD.1版では、供給者−組織−顧客というマネジメントシステム規格のサプライチェーーン概念に新用語『バリューチェイン』を当て、04年版の『4.4.6 運用管理』の中の供給者の環境側面の組織による管理の手順をBの『8.2 バリューチェインの計画及び運用』として詳細化し、更に上記Aの規定を加えた。条文は全面的に書き換えられたが、Aを除き規格の意図には変更はない。04年版の供給者管理の規定はあまりに粗雑であったから、この新しい条項と規定は改定目的-3のD認証制度信頼性毀損に繋がる規格解釈のばらつき防止のための規定表現の明瞭化にも関係すると言える。
 
  CはBと同じ目的、趣旨であり、04年版の『4.5.1 監視及び測定』が監視測定の対象を『著しい環境影響を与える可能性のある運用の鍵となる特性』と一括規定していたのを、『運用の鍵となる特性』『バリューチェインの鍵となる特性』『遵守評価に必要な情報』等と分割記述したものである。
 
c) 共通テキスト化に伴う要求事項
D 4.1 組織とその状況の理解
E 4.2 利害関係者のニーズと期待の理解
F 6.1 リスク及び機会への取り組み
G 5.1 リーダーシップ及びコミットメント
H 9. パフォーマンス評価
 
  DEFは改訂目的(2)のISO14001の意図の明確化の中核であるISO14001の環境マネジメントが組織の事業戦略を司る経営管理の一環であることを明確にするという改訂推奨事項C への対応に共通テキストの経営管理サイクルの規定を活用したものである。経営論では、(イ)組織の事業環境と組織の能力を把握し、(ロ)その釣り合いで実現可能な(ハ)組織のあるべき姿と(ニ)到達の道筋を意味する(ホ)戦略を決め、 (ヘ)方針、(ト)目標として表し、その追求を図るための(チ)事業実行体制を確立し、その下に(リ)事業活動の実行管理を行う。
 
  共通テキストとCD.1版では、組織の状況の(イ)が DとEであり、 戦略の(ヘ)が『5.2 方針』、(ト)が『6.2 環境目的』、体制確立の(チ)がFの『環境マネジメントシステムの計画』であり、『環境マネジメントシステムの計画を策定するときには、4.1及び4.2の要求事項を考慮する』として戦略決定の必要と過程が表わされている。04年版では、戦略の (ヘ)が『4.2 環境方針』、(ト)が『4.3.3 環境目的・目標』であり、組織の状況の(イ) が4.3.3項の『法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項、技術上の選択肢、財務上、運用上及び事業上の要求事項、並びに、利害関係者の見解』であり、『環境目的・目標を設定するにあたっては、(イ)を考慮すること』として戦略決定の必要と過程が表らされている (4.3.3項)。また、4.2項の『環境方針は組織の活動、製品及びサービスの性質、規模及び環境影響に対して適切でなければならない』も、組織の状況の(イ)に基づく戦略決定の規定である。
 
  従って、DEFは、組織の経営管理における普遍的な経営戦略の決定の必要とその方法論の規定であり、趣旨は04年版と変わらない。規格を効果的な環境保全の経営管理活動の指針と受けとめ、『環境方針』『目的・目標』を経営戦略と目標として位置付けて経営管理活動を進めてきた組織にとっては、それらの方法論が改めて示されたということに過ぎない。04年版のかなり非体系的な表現と比較すると改定目的-3のD認証制度信頼性毀損に繋がる規格解釈のばらつき防止のための規定表現の明瞭化にも適うものと言える。
 
  Gは、経営者の業務としての経営活動に対する一般的な責任を羅列するものである。効果的な経営管理活動の実用的指針としての規格にこのような規定が必要かどうかは議論のあるところだが、規定がCD.1版に織り込まれたこと自体は、規格理解や規格に沿った環境保全の経営管理を行う点では何の影響を受けるものではない。Hも表現の変更であり、規格の意図には変更はない。前者は改訂目的(2)の改訂推奨事項C に関係し、後者は改訂目的(3)の改訂推奨事項Dにも関係する。
 
 
(3) 条文記述の大幅変更
  2つ目の条文記述の変更であるが、改定推奨事項DEとしては解釈のばらつき防止と小企業の規格理解のためにあいまいさをなくし、簡潔な表現にするということであった。しかし同じ目的の04年改定で生まれた『4.5.2 遵守評価』や『4.3.3 目的、目標及び実施計画』までもが書き換えられていることが象徴的であるように、ISO14001独自規定のほとんどの条文が大なり小なり変更されている。ISO9001改定CD版の条文記述の大幅変更は全業種業態向けの表現汎用化ということで理解されるが、こちらの変更は改定推奨事項では説明できず、CD.1版にも説明はない。
 
 
(4) 未熟な条文記述
a) 消化不良の論理
  改定推奨事項を反映して取り入れた共通テキストの経営サイクルの論理と規格のマネジメントシステムのサイクルの論理との関連の整理が不十分であり、条文が条項毎にそれぞれの論理や用語で記述されており、同じ事を別条項で違う言葉で重複記述されている。例えば、事業体制の確立の意味のISO14001には新用語である『環境マネジメントシステムの計画』に関して、共通テキストからの6.6.1項に『環境マネジメントシステムの計画を策定するとき、組織は4.1に規定する課題及び4.2に規定する要求事項を考慮し….』と規定しながら、04年版からの6.1.3項には『組織はそのEMSを確立し、実施し、維持する上でこれらの法的要求事項及び自主的義務が考慮されることを確実にしなければならない』をそのまま残している。
 
  また、04年版の4.3.1項の『著しい環境側面』というのは組織が管理する必要がある環境側面ということであるから、CD.1版では『組織の状況』(4章)に基づいて決め、その環境影響の継続的低減を図る『リスクと機会』を決め、それに取組むための手順を決め資源を準備する(6.1.1項)するという順番である。CD.1版ではこのような意義や脈絡に触れずに『著しい環境側面』が6.1.2項として配置され、記述も変更されているが04年版の趣旨のままである。
 
  更に、非常事態での管理基準逸脱環境影響の発生リスクを取り扱う04年版の『4.4.7 緊急事態への準備及び対応』が6.1.1項の『リスクと機会への取り組み』の規定の中で言及されないまま、8.3項の規定となっていることも論理表現の一貫性を欠く状況である。
 
b) 冗長な表現
  いわずもがなの枕詞や挿入句が、『ライフサイクルの観点』『リスク』『事業プロセスへの統合』など繰り返し使われているものも含めて目につく。これらが付く場合と付かない場合で意味が変わるなら、付けることも必要であるが、当たり前の修飾語が付されたり付されなかったりでは条文理解の障害以上の何者でもない。
 
 
(5) 2015年改訂版の予想される姿
  CD.1版での改定点は環境情報発信の2つの要求事項の追加だけである。この点では改定作業は計画通りに進められていると考えられる。CD.1版特有の事情として新旧論理の整理不十分など未熟な条文記述があるが、今後の検討で条項配置も含めて見直しが期待される。問題は04年版改定の理由であり、今回の改定推奨事項にもある規格解釈のばらつき防止のための表現の明瞭化については何の進歩もみられず、逆に04年版の条文は理由なくほとんど全面的に書き換えられていることであるが、これらが今後改められることは期待できない。 2015年版は、本質的変更は2ケ所、それも大きな変更ではないのに、共通テキスト導入もあり条項、条文がほぼ全面的に変更されたものとなろう。序文によると『次の20年間に亘る環境に係わる挑戦に対応する』ことのできる規格ということであるが、何が変わったからそうなのか、使用者は改定からどのような利益が得られるのかの説明があることを期待したい。
 
* ISO14001:2015 全容予測 ― 体裁一変、中味変更僅少、意義や意図が明確な規格に (H24.10.14)  こちら
 
   
 

2015年版ISO14001 (CD.1)の現行2004版との違い

(1)  ISO/CD.1 149001の標題和訳は入手資料のまま。

(2) 赤字条項CD.1版の新規条項、 青字条項CD.1版には存在しない04年版条項

   共通テキスト:共通テキストにある条項(但し大部分の条項の中味はCD版で修正、追加されている)

ISO/CD.1 14001

 

ISO14001 2004

章タイトルと構成

章タイトルと構成

序文 

序文

1

適用範囲

1

適用範囲

2

引用規格

2

引用規格

3

用語及び定義

共通テキスト

3

用語及び定義

4 組織の状況 <標題のみ>

共通テキスト

4.1

組織及びその状況の理解

共通テキスト

 

4.2

利害関係者のニーズ及び期待の理解

共通テキスト

 

4.3

環境マネジメントシステムの適用範囲の決定

共通テキスト

4.1

一般要求事項

4.4

環境マネジメントシステム

共通テキスト

5 リーダーシップ <標題のみ>

共通テキスト

5.1

リーダーシップ及びコミットメント

共通テキスト

 

5.2

方針

共通テキスト

4.2

環境方針

5.3

組織の役割、責任及び権限

共通テキスト

4.4.1

資源、役割、責任及び権限

6 計画 <標題のみ>

共通テキスト

4.3 計画

6.1

リスク及び機会への取り組み <標題のみ>

共通テキスト

 

6.1.1

一般

共通テキスト

4.3.1

環境側面

 

4.3.2

法的及びその他の要求事項

6.1.2

環境側面

4.3.1

環境側面

6.1.3

法的要求事項及び自主的義務

4.3.2

法的及びその他の要求事項

6.2

環境目的及び

それを達成するための計画策定

 <標題のみ>

共通テキスト

4.3.3

目的,目標及び実施計画

6.2.1

環境目的

共通テキスト

6.2.2

環境改善プログラム

共通テキスト

7 支援 <標題のみ>

共通テキスト

 

7.1

資源

共通テキスト

4.4.1

資源、役割、責任及び権限

7.2

力量

共通テキスト

4.4.2

力量、教育訓練及び自覚

7.3

認識

共通テキスト

7.4

コミュニケーション <標題のみ>

共通テキスト

 

7.4.1

一般

共通テキスト

4.4.3

コミュニケーション

7.4.2

内部コミュニケーション

共通テキスト

7.4.3

外部コミュニケーション    <要求事項変更あり>

共通テキスト

7.5 文書化された情報 <標題のみ>

共通テキスト

 

7.5.1

一般

共通テキスト

4.4.4

文書類

7.5.2

作成及び更新

共通テキスト

4.4.5

文書管理

7.5.3

文書化された情報の管理

共通テキスト

4.4.5

文書管理

 

4.5.4

記録の管理

8 運用 <標題のみ>

共通テキスト

4.4 実施及び運用 

8.1

運用の計画及び管理

共通テキスト

4.4.6

運用管理

8.2 

バリューチェインの計画及び運用    <要求事項変更あり>

8.3

緊急事態への準備及び対応

 

4.4.7

緊急事態への準備及び対応

9 パフォーマンス評価 <標題のみ>

共通テキスト

4.5 点検

9.1

監視、測定、分析及び評価 <標題のみ>

共通テキスト

 

9.1.1

一般                

 

4.5.1

監視及び測定

9.1.2

順守評価

4.5.2

順守評価

9.2

内部監査

共通テキスト

4.5.5

内部監査

9.3

マネジメントレビュー

共通テキスト

4.6

マネジメントレビュー

10 改善 <標題のみ>

 

10.1

不適合及び是正措置

共通テキスト

4.5.3

不適合並びに是正処置

および予防処置

10.2

継続的改善

共通テキスト

4.1

一般要求事項


H25.8.14
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サニーヒルズ コンサルタント事務所