ISO9001/ISO14001
コンサルティング・研修


解説・論評
 
    実務の視点    規格要求事項の解釈
このセクションでは、ISOマネジメントシステム規格の要求事項を
実務の視点で、様々な角度から読み解き、解説します。
目  次
MSS 共通テキスト
定義・上位構造
13
実務の視点 解説
ISO9001:2015
変更点と移行対応
15 実務の視点 解説
ISO14001:2015
変更点と移行対応
14
2015年改定の要点
ISO14001
規格の論理
ISO9000/14000
英語で読み解く
ISO9000/14000
実務の視点による
ISO9001の解説
よく見られる
誤った取組み
ISO9001/14001
この方がよくわかる
ISO14001:2004
実務の視点による和訳
規格と認証の利用
ISO9001/14001 事例研究
改定の要点
ISO14001:2004
10 改定の要点
ISO9001:2000
11 改定の要点
ISO9001:2008


2015年版 ISO14001
関連情報
>解説・論評
共通テキスト・共通定義
論評
規格理解・解釈の問題点
解説
ISO14001 規格の論理
解説
英語条文の正しい解釈
論評
認証制度 運営

14 ISO14001 2015年改訂の要点 31/31f
ISO14001の2015年版に向けての規格改訂の内容について、
実務の視点で考えます。

最新号>

6. 2015年版ISO14001 FDIS 発行−結局 2004年版から何も変わらなかった (H27.7.10)
5. 2015年版ISO14001 DIS 発行−CD.2からの変更点及びDISに基づく改訂版の評価 (H26.8.13)
 
目 次
 テーマ別 目次
解説  何が変わるか 2015年版 ISO14001             <a1>
 
6. 2015年版ISO14001 FDIS発行− 結局2004年版から何も変わらなかった(H27.7.10)
5. 2015年版ISO14001 DIS発行− CD.2からの変更点及びDISに基づく改訂版の評価(H26.8.13)
4. 2015年版ISO14001 CD.2版の変更点は7つ、実質改定点はひとつ − ISO/TC207の見解(H26.1.13)
3. 2015年版ISO14001 全体像がほぼ確定  ― CD.2版の評価及び残された問題点 (H25.12.5)
2. 2015年版ISO14001 骨格判明 ― 要求事項変更2ケ所、条項・条文全面変更、難解の可能性も (CD.1版 評価) (H25.8.14)
1. ISO14001:2015 の全容予測  ― 体裁一変、中味変更僅少、意義や意図が明瞭な規格に(H24.10.14)
   
 


 6.  2015年版ISO14001 FDIS発行  −結局 2004年版から何も変わらなかった
   2015年版ISO14001  FDIS−DIS―04年版の比較表
 
共通テキスISO14001の改 7月2日に賛否投票が始まったFDIS(最終国際規格原案)版の英語版を入手し、これまでのCD.1、CD.2、DIS版の評価の延長線としてFDIS版を評価し、2015年版の20004年版から変更点を分析した。
 
  DISからの大きな変更点は、6.1項標題を「脅威と機会に関連するリスクへの取り組み」とした条項構成と規定表現が、標題を「リスクと機会への取り組み」に戻しての条項構成と規定表現になったということである。DISの表現は、正負の不確実性を意味するという「リスク」の定義と規定の「リスクと機会」という表現との論理矛盾を避けるためであったと思われ、FDISでは、「リスク」と並列的に「可能性のある不都合な結果(脅威)、及び、可能性のある好都合な結果(機会)」という「リスク及び機会」の新たな定義を設けることにより問題を回避して、共通テキストに沿った条項と規定の表現にしたものである。従って、6.1項に係わる規格の意図や規定の趣旨には何ら変更はない。
 
  FDISから次のISまでは表記上の変更に限られるのが通例であり、FDISが投票で否決されることはまずあり得ないから、2015年版はこれで決まったと考えることができる。そうなると、2004年版に比べて条項構造が大きく変わり、規定の条文の文章や用語、表現が大きく変わり、記述が詳細になっているが、効果的な環境経営であるための必要条件、或いは、効果的な環境経営を行おうとする組織が満たすべき要件は何も変わらないという、2015年版規格の実体が確定したということになる。
 
  この評価は、2015年版の改訂方針が、規格の意義や条文の意図の明確化と組織の外部への環境情報発信義務の強化であったこと、後者が一旦CD.2(7.4.3)に反映されたがCD.2で取り消されたという事実に鑑みて正当である。また、TC207主張の変更点7項目は、規格執筆者の改訂作業に対する想いに関し、実際にはいずれも04年版の規定の背景にあり、規定化され、指針規格ISO14001や付属書Aで説明されていることである。つまり7項目はいずれも、改訂方針の意図の明確化という範疇の変更であり、条文の文章や用語、表現の変更であって、規格の意図、或いは、効果的な環境経営であるための必要条件の変更ではないと言うことができる。
 
  なお、04年版の「環境マニュアル」「管理責任者」「予防処置」は2015年規定には見られない。ここに、前二者は規格の全体的な意図が変わっていないことに鑑みるとその必要性は不変であり、後一者は「予防処置」に関する規格の意図の変更に基づくものであるから、効果的な環境経営のために必須とは言えないとする規格執筆者の判断であり、必要性は組織が判断すればよいということである。
このページの先頭へ 詳しくは<31f-01-06>

 5. 2015年版ISO14001 DIS 発行 −CD.2からの変更点及びDISに基づく改訂版の評価
  2015年版ISO14001 DIS−CD.2―04年版の比較
 
  7/1発行の英語版を入手しCD.2版からの変更点を分析し、04年版との違いを評価し、改定版が認証組織に及ぼす影響について考察した。
 
  変更点では、CD,2に見られた4種類の問題点の内の@冗長表現の中の最大の問題点であった「リスクと機会」の概念が整理され、位置づけが明確になり、その記述が11ヶ所から6ケ所に減ったことが特筆される。すなわち、『脅威と機会に関連するリスク』に表現が変更されて、リスクが経営論での組織の発展の障害となり又は発展に資する外部事情をそれぞれ意味する「脅威」と「機会」に関連づけられ、それらに係わる環境影響の起きる可能性が小さいかわからない場合が『リスク』であることになった。そしてリスクに関する規定は、重要な<著しい>環境側面の管理に万全を期するためにはそれの直接的な管理だけでは十分でなく、それらに関係する法規制の管理やリスクの管理という間接的な観点からの管理も必要という論理で規格に取りいれられたことが明確になった。
 
  またDISでは、TC207改定方針に則っての唯一の要件<要求事項>変更候補であった外部情報発信の要件<要求事項>が緩和されて04年版並みとなり、新表現『バリューチェインの計画及び運用』がなくなった。CD.2の他の問題点であるA消化不良の論理、B硬直した婉曲表現、C共通テキストの骨抜きについては目立った進歩はない。
 
  2015年改定版の詳細がこれでほぼ決まりとすると、改定版には改定方針に基づく変更点としての意図的な新たな条項も新たな規定<要求事項>もなく、04年版との比較では序文や本文注記又は付属書Aの記述の詳細化、及び、ライフサイクルなどの概念が明示的に規定に含まれるという違いに留まる。一方で、規格の構造や規定の文章は04年版から大きく変わり、内容的も実務的な方法論に経営管理<マネジメント>の基本的論理が規定に加わって文章量や要件<要求事項>の複雑さが大幅に増加した。
 
  しかし、これらの変化はSL(上位構造・共通テキスト)の採用に伴うものであり、SLは多くのマネジメントシステム規格の条項と規定<要求事項>の構造と文章を統一するために作成されたものであるから、改定版の見掛けの変化は規格の意図や趣旨、そして、要件<要求事項>の変更ではない。従って、改定版は04年版と比べて構造が大きく変わり、規定の条文はその文章や用語、表現が大きく変わっているが、効果的な環境経営<管理マネジメント>であるための必要条件としての規定の意味は変わっておらず、規格の意義と意図の理解の浸透のために関連する説明の記述が詳細化になっているだけと考えられることができる。
 
  規格作成者や認証機関からは04年版と異なるとする改定版の規定<要求事項>の解釈の講習会やインターネットでの広報が盛んであり、戦略的判断、リスクと期待、予防的、パフォーマンス重視、ライフサイクル視点、組織の特質の理解、トップマネジメントの責任強化などを改定版における変更点とする見解が欧米でも認証機関を中心に発表されている。これらの見解は、04年版に存在するそれらの観点に係わる意図が認識されていなかったという実態に立っての改定版の特徴を述べているものと捉えればよい。現行版でそのような観点を意識していない組織には、喧伝される変更点を受け止めて規格解釈に務めて正しい規格取り組みをすれば規格の効用を実感することが可能になる。現行版でも環境経営の指針として規格に取り組んでいる組織は、変更点と言われる規定<要求事項>の文章を現行の業務の実態に適合するように読むことが大切である。その過程で規格の意図の理解を更に深め、現行の業務体制の改善を進めることが出来れば、規格改定とそれへの移行の意義をそれなりに認めることができるかもしれない。
 
  しかし、認証審査では現場中心の環境改善運動だとする誤った規格解釈の基本をそのままに、改定版がSLに従って表した04年版にそのままでは存在しない規定の文章、用語、表現から、上記の欧米認証機関主張の変更点に沿って引き出される様々な形式的業務や文書の形式が要求される可能性が強い。認証組織に逃げられないように要求に手加減がされるのだろうが、それにより益々規格と認証制度の意義がわからなくなっていきそうだ。

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 . 2015年版ISO14001 CD.2版の変更点は7つ、実質改定点はひとつ  −ISO/TC207の見解
  共通テキスISO14001の改ISOのTC207/SC1は昨年11/20付けで、ISO14001 CD.2版に関連して「範囲、進捗、日程及び変更点についてのお知らせ」をウェブで発表した。改定版執筆当事者の見解発表であるから、改定と改定条文の意図の正しい説明であり、改定解釈の基本となるべきという点で注目される。
 
  この発表では、改定作業は@高位構造・共通テキストの採用、A「ISO14001の将来像」報告書の改定推奨事項の考慮、B04年版の基本原則及び要求事項の維持と改善の確保という考えで行われ、04年版からの変更点は@戦略的環境経営、Aリーダーシップ、B環境の保全、C環境業績、Dライフサイクル思考、E情報交換、F文書化の7点であるとされている。
 
  @は、組織の置かれた状況の認識から取り組むべきリスクと機会を決定するという戦略的環境経営のあり方についての新要求事項と説明されており、説明では共通テキストからの4.1、4.2の規定の意義が述べられている。但し、これら規定は、経営を「組織の有する能力を取り巻く状況のニーズに適応させながら組織目的を達成していく活動」と定義する普通の経営論の戦略決定の方法論を写したものであり、04年版もこのような方法論に依拠していることは、序文や4.2、4.3.3、4.6項の条文にも現れている。新要求事項というのは、単に4.1、4.2のような直接的な記述が04年版にはなかったという意味であろう。
 
  Aでは、トップマネジメントの責任を割り当てる新条項の追加と説明されているが、トップマネジメントの経営管理上の普遍的な役割を整理した共通テキストの5.1の導入を指しているものと思われる。04年版にはトップマネジメントの主導性や責任に関する規定がなかったので新条項と言われているだけと考えられる。
 
  BとDは、ISO14001が地球環境保全への取組みであることと、対象とする環境影響の範囲の広さを2つの観点から説明したものである。しかしISO14001が地球環境保全のための組織の主体的取組みのあり方を示すものであることは初版以来一貫しており、説明の趣旨や例示された環境影響は、04年版でも3.1、3.18、4.2、A.3.1に現れ、断片的に記述されている。Dの要求事項の拡大と説明されているライフサイクル思考も、製品・サービスの環境側面の特定の際の基本となってきた。BDのどちらも04年版に明示的な規定がなかったという点で新しい観点或いは要求事項と説明されていると理解できる。
 
  Cではマネジメントシステムの改善から環境パフォーマンスへと重点が変わった説明されている。これは、共通テキストからの9.1.1の環境パフォーマンスの評価の規定に加えて、評価基準の決定と評価結果のマネジメントレビューへの提供の必要の規定が追加されていることを指すものと思われる。システムの改善かパフォーマンスの改善かは、「環境パフォーマンスの改善のための環境マネジメントシステム向上を図る活動」という継続的改善の定義からも議論の余地のない問題である。説明の通り、規定表現の重点が変わっただけである。
 
  Eは、改定推奨事項に沿った04年版4.4.3(コミュニケーション)の外部への情報発信の強化と予想されたが、実際には内部情報交換の外部への情報発信と同程度の重視の必要を追加したと説明されている。これは、7.4.1の情報の品質に関する規定と7.4.2の要員が環境マネジメントシステムの改善に寄与し得る機構の検討の必要の規定を指していると思われるが、上記のいずれの改定の観点にもない変更である。前者は当たり前のことであるが、後者が確定すれば何らかの対応が必要となろう。
 
  Fは、「文書」と「記録」を一緒にして「文書化された情報」と呼ぶ共通テキストからの7.5項を指し、単なる呼称の変更である。
 
  以上のようにCD.2版の04年版からの変更は7点と説明されるが、04年版に明示されていなかった或いは断片的にしか記述されていなかった事柄が条文化されたという意味で変更点、或いは、要求事項の追加や変更と説明されているだけである。組織の環境経営の実務の変更が必要なのは内部情報交換に係わる1点のみである。実質改定が1点というTC207見解は、筆者の改定予測やCD.1、CD.2版の評価の結論とほぼ一致している。
このページの先頭へ 詳しくは<31f-01-04>

 . 2015年版ISO14001 全体像が確定     CD.2版の評価及び残された問題点
  2015年版 ISO14001(CD.2版)の現行2004年版との差異 一覧表  
 
 
10/22発行の第二次委員会原案(CD.2)の英語原文を読んだ。CD.1との比較では、改定の本質は変わらず、未熟条文の一部の改良の一方で規定の詳細化を意味する2つの条項の追加を含み多数の条文の追加と変更がある。また、冗長表現や非体系的表現が重大なものも含めてなお残っている。しかし、このCD.2版からは、改定作業が「ISO14001の将来像報告書」の改定推奨事項に沿って進められてきたことがわかり、これで2015年版の全体像は決まりと考えられる。
 
  2015年版全体像を表すものとしてのCD.2版の04年版との比較における特徴は、@序文の好ましい変更、A要求事項のわずかな変更、B条項と条文の大幅な変更である。すなわち、@によって規格の狙いが持続的発展の可能な地球社会の実現にあり、規格は組織が社会的及び経済的ニーズと均衡させて環境保全を図る環境経営の枠組みを規定するものであることが明確になっている。Aの改定は2つの副次的要求事項のみである。これは改定方針に照らして妥当であり、@で確認されるように規格の狙いと論理が変わっていないということからも当然である。
 
  Bは、04年版が環境経営の枠組みをその論理に関する要件(JIS和訳『要求事項』)を主体に規定していたのを、15年版では共通テキストの採用及び条項と条文の追加、変更によって各論理の実現のための効果的な方法論に関する要件が大幅に追加されたことに関係している。例えば『環境目的、目標』について04年版では『……を設定しなければならない』と効果的環境経営のための論理の規定であるが、15年版ではこれに加えて「……を設定する場合は、〜を考慮しなければならない」と環境目標設定の方法論をも規定している。とりわけ、環境保全戦略の決定(4.1,4.2,5.2)から関連する『環境側面』の特定(6.1.2)、管理対象である『著しい環境側面』の決定(6.1.4)、その管理の基準と方法の決定(6.1.5)、管理の実行(8.1,8.2)、管理実績の評価(9.1.1)、戦略と戦術の見直し(9.3)へと繋がる環境経営のPDCAサイクルのそれぞれの効果的な方法論に関する要件が詳しく規定されている。他にも多くの条文が変更になっているが、特定の意図のない、或いは、変更の理由を吟味するまでもない単なる記述上、表現上の文章の変更と考えてよい。
 
  CD.2版には、@冗長な表現、A消化不良の論理、B硬直した婉曲表現、C共通テキスト化の骨抜きといった改善すべき問題点が残されている。@は、改定効果を誇示するために『リスクと機会』『ライフサイクルの観点』『事業プロセスへの統合』等の謳い文句が条文に不必要に含まれていることであり、CD.2では『リスクと機会』が更に8箇所の条文に追加されて拡大した。これらの多くは単に不必要であるだけでなく、規格の論理と整合せず、規格解釈を困惑させる不適切な条文表現である。Aは、論理整理が不十分のため同じ事が条項によって異なった用語や表現で記述されているという問題である、CD.2版で改良された跡は見られるが、規格としてあってはならない統一性のない条文記述がなお多く残っている。
 
  Bは、わかりやすい表現を改定理由のひとつに挙げながら、序文、条文、定義や注釈、付属書に至るまでの硬直し、かつ、直接的でない婉曲表現の、わかりにくい文章形式は04年と全く同じであること、Cは、規格使用者の便宜を理由として作成された共通テキストであり、その適用が改定理由のひとつになっているのに、共通テキストの条文の変更や独自の条項の追加が無造作に行われ、是非は別として共通テキスト化そのものは早くも骨抜き状態となっていることである。
 
  2015年版規格は内容的には、環境経営のあり方を詳しく明瞭に示すものとなり、組織が規格を正しく理解し、実践に努め、その意図の成果を上げることが容易になることが期待される。改定要求事項がわずかなため、認証制度の下の改定版への移行の負担はマニュアルの書き換えだけで済む。しかし、条文の文言がすなわち要求事項とする規格解釈では全面的に改定された規格となる。上記のCD.2版の問題点が放置されれば、あり得る不適切なJIS和訳と合わさって、条文の意図の理解が困難になり、表面的な理解から様々な解釈が生れて、規格解釈が混乱する可能性もある。最悪は、方法論の規定の読み取り易い文言だけが抽出されて、様々な新たな形式の文書や業務が認証審査で要求されることである。共通テキスト化で喧伝される利益を組織が享受できる可能性は低い。
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 . 2015年版ISO14001 骨格判明 
     
−要求事項変更2ケ所、条項・条文全面変更、難解の 可能性も (CD.1版 評価)
  2015年版 ISO14001(CD.1版)の現行2004年版との差異 一覧表    
 
  3月11日発行の2015年版ISO14001の最初の原案、第一次委員会原案(CD.1)の日本語私訳文を日本規格協会主催の説明会資料として入手した。改訂作業は「ISO14001の将来像」報告書の11項目の改定推奨事項に基づいて行われることになっており、これら改定の趣旨は共通テキストの採用と序文や1章、定義、付属書Aの大幅書き換えで満たされ、既存要求事項の変更は外部への環境情報発義務の強化の現行4.4.3項の改訂のみであると想定された*。
 
  この観点からCD.1版を評価すると、ほぼ想定通りの小幅な改訂でありながら、現行条文が想定を超えて大幅に書き直され、共通規格構造化と相まって外見上は現行版の面影がないほどの大改訂となっている。さらに改訂推奨事項の反映のために取り入れた論理に係わる条文記述の未熟さが著しく、加えて条文記述の抽象的で法律書並みの硬い表現に改善が見られず、難解な条文が並んでいる。CD.1版では予測の「中味変更僅少」は的中、「体裁一変」は想定以上であり、「意義や意図が明確な規格に」には程遠い。
 
  すなわち、要求事項の改訂であるが、想定の通り環境影響情報の外部発信の義務(7.4.3項)に加えて、製品の使用、廃棄に関する顧客への情報発信の義務(8.2項)の要件が明確に規定された。また、現行4.4.6項の供給者の環境影響の組織による管理の要件が『8.2 バリューチェインの計画及び運用』として詳細に記述された結果、『バリューチェインの鍵となる特性』の監視測定(9.1.1項)と合わせて新たな要求事項としての対応が必要となる解説や組織もあるだろう。共通テキスト化に伴う『4. 組織の状況』『5.1 リーダーシップ及びコミットメント』『6.1 リスク及び機会への取り組み(環境マネジメントシステムの計画』『5.1 リーダーシップ及びコミットメント』はISO14001には新しい概念、用語、要求事項ではあるが、規格を効果的な環境保全の経営管理活動の指針と受けとめ、『環境方針』『目的・目標』を経営戦略と目標として位置付けて経営管理活動を進めてきた組織にとっては、それらの手順が改めて示されたということに過ぎない。『9. パフォーマンス評価』の新しい用語、条文についても同じである。
 
  2つ目の条文記述の変更であるが、改定推奨事項としては解釈のばらつき防止と小企業の規格理解のためにあいまいさをなくし、簡潔な表現にするということであった。しかし同じ目的の04年改定で生まれた『4.5.2 遵守評価』や『4.3.3 目的、目標及び実施計画』までもが書き換えられている他、ISO14001独自規定のほとんどどの条文も大なり小なり変更されている。ISO9001改定CD版の条文記述の大幅変更は全業種業態向けの表現汎用化という理由があるが、こちらの変更は改定推奨事項では説明できず、CD.1版に特定の説明もない。
 
  3つ目の条文記述の未熟さに関しては、改定推奨事項を反映して取り入れた共通テキストの経営サイクルの論理と規格のマネジメントシステムのサイクルの論理との表現に整合性がとれておらず、同じ事を別条項で違う言葉で重複記述され、或いは、無関係なことのように扱われていること、及び、いわずもがなの枕詞や冗長な表現が目立つことである。
 
  2015年版の改定は想定通り、環境情報発信に関する2つの要求事項の追加だけである。CD.1版での表現の未熟さは今後の検討で修正されることが期待できる。しかし、不必要な条文変更がとり消され、条文記述の硬直さが平易な表現に改められることは期待できない。2015年版は、本質的変更は2ケ所、それも大きな変更ではないのに、共通テキスト導入もあり条項、条文がほぼ全面的に変更されたものとなろう。序文によると『次の20年間に亘る環境に係わる挑戦に対応する』ことのできる規格ということであるが、何が変わったからそうなのか、使用者は改定からどのような利益が得られるのかの説明があることを期待したい。
 
*: ISO14001:2015 全容予測 ― 体裁一変、中味変更僅少、意義や意図が明確な規格に (H24.10.14) こちら
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 1. ISO14001:2015 全容予測  −体裁一変、中味変更僅少、意義や意図が明瞭な規格に
  共通テキスISO14001の改定作業が始まり、2015年に改定規格が発行されるといわれている。改定作業は共通テキストの導入とTC207の特別作業班による「ISO14001の将来像」報告書の改定推奨事項の検討によって進められる。このことから、改定版の全容と現行版からの変化を予測してみたい。
 
  まず、改定版では要求事項は4.1〜10.2項として規定され、現行の4.3.1, 4.3.2, 4.4.6, 4.4.7, 4.5.1項(パフォーマンス、目的・目標の監視測定を除く)が8章の8.1項に続く条項として記述され、恐らくこの順番で新しい条項番号の下に現行の条文がほぼそのままで記載される。残りの条項と条文は現行版では文書量で約70%を占めるが、これらは共通テキストの8章を除く4.1〜10.2項の各条項と条文にそっくり置き換わる。共通テキストは各マネジメントシステム規格の条文を統一したものであり、要求事項の変更ではないが、共通テキスト化によって規格全体の条項の順番と標題と条文が様変わりする。
 
  一方、「ISO14001の将来像」報告書は改定検討11項目と変更推奨24項目から成る。これを改定検討の目的で分類すると、次の3種類となる。
 (1) ISO14001が世界の環境取組みの中核的指針であるとの位置づけを確立する
 (2) ISO14001の意図を明確にする
 (3) ISO14001の内容を時代の変化に適応させる
 
  (1)の狙いは持続的発展の原理に則る地球環境保全への自主的取組みの指針としてのISO14001の意義と意図を明確にすることである。ISO14001がCSR(企業の社会的責任)規格の中の環境取組みの基盤を成すこと、他の環境改善関連規格の取組みを包含すること、更に、各国や世界の環境政策の基本となるべきことの3項目の主張を社会に認知させるためにどのように改定しなければならないかが検討される。
 
  (2)には、ISO14001の環境マネジメントが組織の経営管理(マネジメント)の一環であること、狙いが組織の環境業績の改善にあること、原料採取から廃棄までの製品の一生、受注から製品実現、顧客サービスから内部管理業務を含む全業務に係わる環境影響が対象であることを明確にすることと、法規制遵守の方法論と程度を明確にすることの4項目が含まれる。いずれも(1)の主張に関係して明確にしなければならない項目である。
 
  (3)は本来の規格定期見直しに係わる検討項目であり、外部への環境情報発信義務の強化、利害関係者のニーズと期待の把握の確実性の強化と、規格解釈のばらつき防止と小企業のための規定表現の明瞭化の4項目が挙げられている。
 
  報告書の11項目の内、(1)と(2)の全項目及び(3)の2項目は規格の意義と条文の意図、意味を明確にすることが目的あり、現行版で序文や1章(適用範囲)、用語の定義で非直接的表現で、また、条文(要求事項)として非体系的に記述されているものを、整理し直接的に表現しようとするものであり、推奨事項としては付属書Aでの説明の強化が主に挙げられている。また、共通テキストでは経営管理(マネジメント)の論理がそのまま規定となって記述されているので、4.1、4.2、7.4、9.1項によっても改定目的を達成できる。従ってこれら改定の大部分は、序文や1章、定義、付属書Aの大幅書き換えの形をとる。一部が現行版の条文の変更又は共通テキストへの追加に及ぶことがあり得るが、これも条文表現の変更であり、条文(要求事項)の意図の変更ではない。
 
  要求事項の変更となる可能性があるのは外部への環境情報発義務の強化であり、共通テキスト7.4項への条文追加又は7.4.2項が設けられることになるかもしれない。また、現行版の4.3.1項に条文が追加され、注記が付加されて、新条項となる可能性がある。
 
  この度の改定の作業が明確な目標と基準に則って行われることは、近年の何百件もの提案を議論するという改定ありきの作業と対比して画期的で正しい取組み方である。その目標と基準によると、改定作業は規定たる要求事項の変更より、ISO14001の狙いや意義を明確にすることの方に焦点が当てられることになる。作業が順調に進めば、2015年改定は現行2004年版と比較して体裁は一変するが、中味の要求事項の変更は1項目のみのごく簡易な改定となる。同時に、狙いと意義、条文の意図が明瞭でわかり易い規格になる。これによって、現場中心の環境改善活動から脱して、組織が社会に信頼されて発展することを図る環境取組みへと歩みだすことが期待される。
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