ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
63 ISO14001:2015 改定解説      4.1  組織及びその状況
- 変更点と移行対応 -
<31g-01-01>
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0.1
概要   こちら

   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応    
 
環境経営(活動) ⇔環境マネジメント$19-0-1;   環境経営体制 ⇔環境マネジメントシステム$19-1-3;
   経営管理(活動) ⇔ マネジメント$19;   事情 ⇔ 課題#65;   組織の置かれた状況 ⇔ 組織の状況§63;
      
   
規定条文(JISQ14001:2015)
組織は,組織の目的に関連し,かつ,その環境マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える,外部及び内部の課題を決定しなければならない。 こうした課題には、組織から影響を受ける又は組織に影響を与える可能性がある環境状態を含めなければならない。
   
1. 条項の趣旨
  4章は、規格の環境経営体制に係わる全般的な要件を規定している。
  
 規格は、環境保全責任を果す観点から組織の永続的な存続発展を図る環境経営§2.2の在り方を規定している。その基本要件は、あるべき環境の状態に関する経営戦略§35.2を環境方針(5.2項)に定め、これを時代の変化に応じて適切に変更し、それを確実に実現させるという循環的活動§33の形で環境経営活動を行うことである。
 
 規格の規定は、この環境保全責任遂行のPDCAサイクル§43.2の形の循環的活動の中核に、あるサイクルの最終段階の活動としての「マネジメントレビュー」の活動 (9.3項)を置き、これにより環境保全責任遂行の環境取組みに係わる時代の変化を把握し、これら変化に対応するために環境方針の変更を含む環境経営の手はずの変更と必要な処置を決め、次のサイクルの環境経営活動を方向づける。
 
 本項は、4.2項と合わせて、トップマネジメントが環境経営活動を方向づけるための基礎となる環境取組みに係わる時代の変化に関連する情報についての要件を規定している。付属書A(A.1)は、組織の環境保全責任の遂行のためにトップマネジメントが認識すべき組織の内外の事情の変化の具体例を挙げている。
  
  
2. 論理と用語
<組織の無限持続体としての存続発展§35.2>
   
  経営論では経営管理は事業組織を無限持続体として存続発展させる活動であり、組織を取り巻く外部環境に組織の有する潜在能力を適応させながら創業の目的を達成していく過程であるとされる。どのように適応させるかは、組織の将来像としてのあるべき姿とそこに到達するための道筋或いは方策を示す経営戦略として明らかにされる。時代の変化により外部環境も組織の能力も変化するから、組織はこれに合わせて経営戦略を見直し変更し、常にその時代に適切なものであるようにしなければならない。経営論では、このような経営戦略の変更とその確実な実現を図る無限持続体としての経営管理の方法論をマネジメントサイクル§33.1として整理している。
  
<環境経営活動の定期的方向づけ§33.2.2>
  規格の環境経営§2.2は、組織全体の経営管理活動の一部或いは一側面であり、環境保全責任遂行の観点から組織の存続発展を図る活動である。この環境取組みとは、持続可能な地球社会を目指して、組織の事業活動から生じる環境への影響を、利害関係者のニーズと期待に応えて技術的、経済的に可能な限りの経営施策によって低減していく継続的な活動である。規格では、このような環境経営の方法論を、上記の経営論のマネジメントサイクルの考えを基礎として組織起因環境影響の必要で可能な低減を追求するPDCAサイクルの繰り返しの循環活動として整理している§33.2.1
  
  規格の環境経営活動では、組織の経営戦略の一環としてのあるべき環境の状態#2-1の実現のための道筋或いは方策を決め、これを経営方針、経営目標の一部としての組織の環境目標を含む環境方針(5.2項)として表さなければならない。また、トップマネジメントは定期的にマネジメントレビュー(9.3項)を行って、達成した環境業績と業務能力の問題点、及び、変化しつつある「外部及び内部の事情」(4.1/4.2項)に照らして、組織の引き続く存続発展のための環境取組み上の経営課題を抽出し、必要な環境方針(5.2項)の変更を含み課題に取り組むための経営施策としての処置(9.3.3項)を決定する。これにより、組織の実態と時代の状況に合った環境状態の実現を図るよう、環境経営活動を方向づける。
 
<外部及び内部の課題§19.2>
  この「課題」は英文では“issue”であり、これは話題や題目の事柄という意味の「問題」のことであり$65、共通テキスト概念説明文書(16)も同様の説明をしている。単なる話題や題目という意味の「問題」のことであり、問題があるとかないという意味の「問題」ではないので、「事情」が適当である。すなわち、「外部及び内部の課題」は「外部及び内部の事情」のことであり、組織の無限持続体として存続発展のための環境取組みに影響を及ぼす組織の「外部及び内部の事情」の意味である。
  
<組織及びその状況の理解§19.1>
  JIS和訳「組織の状況」は英文から、その中に組織が存在している状況、つまり、組織を取り巻く状況ということであり$63、従って「組織及びその状況」は、「組織と組織の置かれた状況」である。トップマネジメントは、マネジメント レビュー(9.3項)によって、環境経営における環境取組みの狙いや方向性、活動の在り方に影響を及ぼす様々な組織の「外部及び内部の事情」の変化を、組織の引き続く存続発展のために対応すべき「組織と組織の置かれた状況」として認識し把握し、それに基づいて環境方針(5.2項)の変更を含み環境経営を方向づける経営判断を行う。
 
  すなわち、「組織と組織の置かれた状況の理解」とは、「外部及び内部の事情」の変化を元にしたトップマネジメントの洞察とその結果の認識であり、経営論で経営戦略の決定§35.2の基礎となる組織の外部環境と組織の有する能力の状態と変化に関するトップマネジメントの認識のことである。従って、標題のJIS和訳「組織及びその状況の理解」は、組織及びその置かれた状況を把握することを意味している$64
  
  
3. 規定の真意
  JIS和訳「外部及び内部の課題」は英文から「外部及び内部の事情」であり$65、トップマネジメントはこれを元にして、対応すべき「組織と組織の置かれた状況 」を認識し把握し、それに基づいて環境方針の変更を含み環境経営を方向づける経営判断を行う。本項標題の「組織及び組織の置かれた状況の把握」とは、経営論で経営戦略の決定§35.2における、組織の外部環境と組織の有する能力の変化の状況とその把握のことを指す。
  
  トップマネジメントがマネジメント レビュー(9.3項)により、時代の変化に合わせて次のサイクルでの環境経営活動の環境取組みを効果的に方向づけるためには、「組織及び組織の置かれた状況」を適切に認識し把握していることが必要である。このために、評価し分析することが必要な、組織の狙いの環境状態とその実現に影響を及ぼす「外部及び内部の事情」の変化に関する情報(9.3 b)項)を特定し、それら情報を日常的に収集し、必要に応じて分析評価することが必要である。
  
  本項は4.2項と合わせて、組織がどのような情報に基づいて時代の変化に応じた環境経営活動の方向づけを行なうことが効果的であるかを明確にしておく必要を規定している。巻末付属書Aでは、組織の環境保全責任を果すための環境経営の在り方に影響する重要な事情をトップマネジメントが認識、把握することの必要を規定するために本項が設けられた$92と説明されている(A.4.1)。
  
  「外部及び内部の事情」に関する情報は、実務では環境保全責任を果すための環境取組みに関連する組織の外部環境と組織の有する能力の状況に関する情報のことである。情報は、組織の維持発展に必要な環境状態の継続的維持という観点で、トップマネジメントが変化する状況を適切に認識し把握することの出来るものであり、どのような対応が必要かという経営判断をすることの基礎となり、それにより環境経営を効果的方向づけることが出来るものでなければならない。
  
  付属書A(A.4.1)では、次の3項目が事例として示されているが、①②が経営論の外部環境、③が組織の有する能力に相当する。
① 組織の存立又は維持発展が脅かされることに繋がる、つまり、組織起因の環境影響が関係する環境状態(気候、大気品質、水質、土地利用、汚染の実態、天然資源量、生物多様性)
② 事業環境(外部の文化的、社会的、政治的、法的、規制上、財務的、技術的、経済的、自然環境、競争環境)
③ 組織内部の事情又は状態(事業活動、製品サービス、経営戦略、文化、能力(要員、知識、業務実行、体制)
  
<2008年版からの変更点> 「外部及び内部の事情」の変化のことは04年版規格では、「環境側面に関係した法的及びその他の要件の進展を含む、変化している周囲の状況」と表わしている(4.6 g)) 。15年版で表現が変わったのは共通テキスト採用の結果である。新しい概念ではなく、04年版でもマネジメント レビューでの情報評価の規定がある以上、「外部及び内部の事情」の情報の特定と評価分析が必要であり、実際に行われてきた。
<ISO9001:2015との違い>同じ共通テキスト化による規定表現の追加であるが、ISO9001が情報の特定と収集の規定となっているのに対して、ISO14001は共通テキストに忠実に情報の特定だけの規定となっている。その他の規定表現も詳細には両者で異なるが、規定の意図は同じである。
  
 
① 組織は、組織の目的に関連し、かつ、その環境マネジメントシステムの意図した成果を達成する組織の能力に影響を与える、外部及び内部の課題を決定にしなければならない。
  「外部及び内部の課題」は英文から「外部及び内部の事情」であり$65、「明確にする」は「特定する」である$6。規格の表現では「環境経営体制の意図した成果」は「環境経営活動の意図した結果」のことであり§2.4、環境経営の業績目標としての狙いの環境状態のことである。「組織の目的」は経営用語の「経営目的」であり、実務的には組織の経営によって到達したい点(ゴール)や挙げたい成果など、それを追求するために創業したという創業の動機、意図を表すものである§35.3。
 
  ISO9001の「組織の戦略的な方向性に関連する」との表現はないが、条文からは、環境経営の経営戦略である狙いの環境の状態が、創業の目的や組織全体の経営戦略に沿ったものでなければならないということが明確である。これは規格の意図の環境経営活動が、組織全体の経営管理の一部ないし一側面としての、環境保全責任遂行の観点から組織の永続的な存続発展を図る特定分野経営管理活動§2.2であることを明示的に示すものである。
 
  組織は、無限持続体としての組織の存続発展を目的に必要な処置をとるために、環境経営活動の狙いの環境状態の在り方とその実現を図る環境取組みに影響を及ぼし、従ってそれらの変化についての情報を監視しなければならない組織の外部及び内部の事情を特定しなければならない。
 
② こうした課題には、組織から影響を受ける又は組織に影響を与える可能性がある環境状態を含めなければならない。  
  「組織から影響を受ける環境状態」は、付属書A(A.4.1)の「組織の置かれた状況」に関連する「外部及び内部の事情」に関する説明にある「組織の環境側面の影響を受ける可能性のある環境状態$93-2」に対応する。すなわち、その環境状態に組織の環境側面の発生させる環境影響が大なり小なり関係していることから、組織の責任としてその環境影響を低減して、改善又は維持に努めなければならない環境状態のことである。
 
  「組織に影響を与える可能性がある環境状態」は、同じく付属書A(A.4.1)の「組織の目的に影響を及ぼす可能性のある環境状態」と$93-2に対応する。これは、悪化した環境状態を放置すれば、地域社会など利害関係者の支持を失って事業の存続発展に支障を来し、更には、地球環境の深刻な悪化により事業の存立さえ脅かされることになり、組織が創業の目的を追求できなくなりかねないという危機感から、組織起因の関連する環境影響を低減して、改善又は維持に努めている環境状態のことである。
 
  前者は、組織が改善、維持を図る必要があるという観点での環境状態を指し、後者は、組織の環境取組みが必要な理由或いは目的§1.1の観点からの環境状態を述べている。条文において両者を繋ぐ「又は」は、等位接続詞“or”の和訳であるが、両者は組織が環境経営によって改善、維持を図る同じ環境状態を異なる観点で述べたものであるから、「又は」ではなく「つまり、すなわち、言い換えると」の意味である$93-1
 
  条文の意図は、トップマネジメントが マンジメント レビューにより環境経営を方向づけるために用いる外部及び内部の事情の情報(9.3 b)項)には、組織が環境保全責任を果すために環境方針に掲げて改善、維持を図る、環境状態の実態と変化に係わる情報を含めなければならないということである。
 
 
4. 解釈事例
① 環境マニュアル (04年版4.6 g)項に関する実態を記述すればよい)
  期末総合検討会(9.3項)による環境方針(5.2項)の見直し検討の基礎として必要な外部環境の変化と業務能力の問題点に関係する情報を日常的に収集し、必要に応じて分析する。
  
  これらの情報はトップマネジメントが決め、期末総合検討会(9.3項)の議事録書式に明確にする。重要な内容又は緊急の対処が必要と考えられる変化や問題点の情報は、月例業務検討会(7.4.2項)でのトップマネジメントの評価に供する。
  
② 組織の業務
  実務では、組織の能力の情報は、業務実績と生じた問題点と対応の実績、及び、内部監査の結果の情報であり、外部環境の情報としては一般に、次に関係する情報が主体である。
① 関連する環境状態の変化と環境改善に関する利害関係者のニーズと期待の変化或いは改善要求の動向
② 環境取組み体制と実績に対する地域社会の評価とそのニーズと期待の変化
③ 製品の環境特性或いは環境取組みに対する顧客の受けとめ方と顧客のニーズと期待の変化
③ 競合組織、同業組織の環境取組みの動向、環境事故の発生実績
④ 環境技術の開発、実用化の動向
⑤ 環境に関係する法規制、規格化、改訂の動向
  
③ 初めての規格導入
  実際にトップマネジメントや管理者の頭の中にあって、それに基づいて業務実行を指揮し、方向づけており、又は、業務基準の中に反映されている環境問題対応の組織の実際の考え方を整理し、次にこのような考えの背景の事情を外部事情と組織の能力とに分けて改めて考えてみる。組織の継続的な存続発展のためには、それらが今後変化すれば、新たな環境取組み、利害関係者への対応や仕事のしかたが必要になるのであるから、それら事情の実態と変化を把握するための事項を選択し、その情報の収集、評価の方法を決める。それらの情報は恐らく、トップマネジメントや管理者がいつも関心を持ち、気にかけ、又は、定期会議に報告させている類の情報と一致するはずだ。
H28.11.13
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サニーヒルズ コンサルタント事務所