ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
2 ISO14001:2015 改定解説      4.2  利害関係者のニーズ及び期待
- 変更点と移行対応 -
<31g-01-02>
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0.1
概要   こちら

   
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応    
 
環境経営(活動) ⇔ 環境マネジメント$19-0-1;  環境経営体制 ⇔ 環境マネジメントシステム$19-1-3;
  事情 ⇔ 課題$65;  重要な環境側面 ⇔ 著しい環境側面$16;  順守義務事項 ⇔ 順守義務$18;
  組織の置かれた状況 ⇔ 組織の状況$63;   要件 ⇔ 要求事項$1;   履行 ⇔ 実施$4
   
   
規定条文(JISQ14001:2015)
組織は、次の事項を決定しなければならない。
a) 環境マネジメントシステムに関連する利害関係者
b) それらの利害関係者の、関連するニーズ及び期待(すなわち、要求事項)
c) それらのニーズ及び期待のうち、組織の順守義務となるもの
   
1. 条項の趣旨
  本項は、トップマネジメントが環境経営活動を方向づけるための基礎となる環境保全責任の遂行に係わる時代の変化に関する情報(4.1項)の中に、利害関係者のニーズと期待の変化の情報を含めなければならないことを明確にしている。
 
 
2. 論理と用語
<利害関係者§19.3>
  経営論では「利害関係者」は、組織の事業活動を進める上で主体的に関係を持たなければならない関係者のことを指し、組織の戦略や経営目標の決定は、これら関係者に及ぼし、又は、及ぼされる様々な影響を考慮し、組織と利害関係者の利害を調整することと見做される(54)。規格では、「利害関係者」は組織の決定や活動が影響を受ける相手と、組織の方が影響を及ぼす相手と定義され#61、同定義の注記には例として顧客、所有者、組織内の人々、提供者、銀行家、規制当局、組合、パートナー、社会が挙げられている#61-1
 
  どの「ISOマネジメントシステム規格」も、対象とする特定分野§2.2における利害関係者のニーズと期待に組織が必要で可能な程度に応えるという双方の利害の調整によって組織の存続発展を図ることが基本原理である。ISO14001規格の狙いは持続的発展可能な社会の実現であり、永続的な存続発展を図る組織は、その事業活動によって引き起こす環境影響を社会的ニーズと経済的ニーズの調和を図りながら継続的に低減するという環境取組みを行なって、その環境保全責任を果さなければならない§1.2。この環境保全に対する社会的ニーズを代弁するものが規格の「利害関係者のニーズと期待」であり、経済的ニーズはそれを満たすために必要な費用である。組織は、利害関係者のニーズと期待に適切に応える環境取組みを行なうことにより、現実に環境影響を受ける利害関係者からも支持、支援され、その存続発展を可能とする様々な利益を得ることができる§20.2
 
  なお、利害関係者とは、組織起因の環境影響に関連する組織の経営管理上の決定や活動が影響を受け、或いは、影響を及ぼす人又は団体、社会のことであるから、組織内部(正確には組織の環境経営体制の中)の人はこれに含まれない。供給者或いは外部提供者(8.4項)は、利害関係者ではあるが、そのニーズと期待を満たすことが組織の環境保全責任遂行に寄与する事例は容易に思いつかない。
 
<利害関係者のニーズと期待の理解§19.1>
  標題の「利害関係者のニーズと期待の理解」も、4.1項標題の「組織と組織の置かれた状況の把握」に含まれる「外部及び内部の事情」の変化を元にしたトップマネジメントの洞察とその結果の「利害関係者のニーズと期待」に関する認識である。また、「理解」は英文から「把握」の意味であり、従って、JIS和訳「利害関係者のニーズと期待の理解」は、組織がその環境保全責任を果すことに関連する「組織及び組織の置かれた状況」の一部としての「利害関係者のニーズと期待」に係わる状況を、トップマネジメントが把握することを意味する。
 
 
3. 規定の真意
  組織の狙いの環境状態とその実現に影響を及ぼす外部及び内部の事情の変化に関する情報(4.1項)の一環として必要な利害関係者及びそのニーズと期待の変化に関わる情報を特定しなければならない。
 
  共通テキスト解説FAQ(18)も、利害関係者のニーズと期待の状況は「組織の置かれた状況」の一部であると明確にしているように、4.2項はその趣旨が4.1項に包含されているから、重複規定である。これは、対象の利害関係者がそれぞれに異なる多数の「マネジメントシステム規格」の規定表現を同一にすることが目的の共通テキスト化のための、規定記述上の便宜のために過ぎない。すなわち、「利害関係者のニーズと期待」の状況は「組織と組織の置かれた状況」に含まれる概念であるが、それぞれの規格で対象とする「利害関係者」が異なるので、これを規格ごとに明確にする必要があり、そのために本項が4.1項と別に設けられたものと考えられる。
 
<2004年版からの変更点> 04年版のマネジメント レビューへのインプットの規定(4.6 g)項の「環境側面に関係した法的及びその他の要件の進展を含む、変化している周囲の状況」が、15年版で1)環境経営体制に関連する外部及び内部の事情、2)順守義務事項を含む利害関係者のニーズ及び期待、3)重要な環境側面、4)リスク及び機会の「変化」に変わり(9.3 b)項)、1)、2)の特定の必要が共通テキストに従って4.1項と4.2項に分けられて記述されることになった。規定表現の変化に過ぎない。
   
   
① 組織は、次の事項を決定しなければならない。
  この「決定する」の英文は“determine”であり、この場合は、探し出してこれだと決めるという意味であるから、「特定する」が適当である$6。組織は、組織及び組織の置かれた状況の把握のために収集が必要な外部及び内部の事情の変化に関する情報(4.1項)の一環として、次に関する変化を表す情報を特定しなければならない。
 
② 環境マネジメントシステムに密接に関連する利害関係者 [ a)項 ]
  「環境マネジメントシステム」は「環境質経営体制」であり$19-1-3、それに則って環境経営活動を行うために整えられた手はずの集まりである§2.3。規格の規定では、環境経営活動を行なうことを「環境経営体制 を確立、履行、維持、継続的に改善する」と表現される(4.4項)から、「環境経営体制と密接に関係する利害関係者」は、組織の「環境経営活動に密接に関係する利害関係者」のことである。
 
  このような利害関係者を規格では、組織の「ある決定事項又は活動に影響を与え得るか、或いは、その影響を受け得るか、その影響を受けると認識している個人又は組織」と定義#61している。前者は、環境保全責任遂行に関して経営判断を行い、或いは、そのための環境取組みの在り方を決める際に、組織が考慮しなければならないニーズと期待を持った利害関係者という意味であり、後者は、組織の経営判断或いはそれに基づく環境取組みの結果の環境状態の下に置かれるという立場の利害関係者という意味である。
 
  後者の表現の利害関係者とは、組織起因の環境影響の被害を直接、間接に被っているという観点での利害関係者であり、その故に組織がそのニーズと期待を考慮しなければならないという観点の前者の利害関係者になる。従って、定義は、前者と後者の2種類の利害関係者がいるということを意味しているのではなく、環境経営に密接に関連する利害関係者を抜けなく特定するために用いるべき異なる2種類の観点を意味している§20.2
 
③ それらの利害関係者の、関連するニーズ及び期待(すなわち、要求事項) [ b)項 ]
  「関連する」の英文は“relevant”であり、「(検討中の課題などと)関連のある」という意味であり、条文は、上記②で特定した利害関係者のそれぞれに関係のあるニーズと期待のことを指す。この場合のニーズと期待とは、当然ながら、特定の環境状態、或いは、その原因の組織起因の環境影響の維持、改善に関するニーズと期待のことである。
 
  なお、条文末尾の括弧書き「すなわち、要求事項」は、利害関係者の「ニーズ及び期待」が、組織にとっては「利害関係者に関して順守しなければならない要件」であることを明らかにしている。
 
  すなわち、「要求事項」は、その英文“requirement”が「必要とされるもの又は望まれるもの」という意味であり、日本語では一般に「必要条件」のことであり$1、規格の規定では満たすべき或いは満たされるべき条件の意味合いで用いられているから、「要件」が適当である。また、この「要件」は、規格では「明らかな形で、又は、慣例として、若しくは、当然として、必要とされ又は望まれるもの」と定義され#18、様々な性格の「ニーズ又は期待」を意味し、規格の「ニーズと期待」は「要件」でもあることを明確にしている。条文の「すなわち、要件」とは、「利害関係者のニーズ及び期待」が規定においては、組織が「利害関係者に関して満たさなければならない要件」として扱われることを明確にした規定表現である。
 
④ それらのニーズ及び期待のうち、組織の順守義務となるもの [ c)項 ]
  「順守義務」は、その英文“compliance obligation”から、義務として順守しなければならない事項という意味の「順守義務事項」であり$18、定義から「組織が順守しなければならない法的要件、及び、組織が順守しなければならない又は順守することを選んだその他の要件」のことである#10。これは、04年版(4.3.2)ではJIS和訳「法的及びその他の要求事項」と表されていたから、15年版で用語が変更されたものである。
 
  組織は、上記③で特定した利害関係者のニーズと期待の内で、組織が順守しなければならないものを特定しなければならない。組織が環境経営を方向づけ、環境経営を方向づけ、環境取組みの進め方を決め或いは変更する場合には、利害関係者のニーズと期待を考慮して、それらに技術的、経済的に可能な最大限の対応をすることが必要であるが、これらの順守義務事項である利害関係者のニーズと期待には無条件で対応し、満たさなければならない (6.1.3項)。
 
 
4. 解釈事例
① 環境マニュアル (04年版(4.6 g))の利害関係者に関する情報の実態を記述すればよい)
  期末総合検討会(9.3項)による環境方針(5.2項)の見直し検討の基礎として収集、分析する外部環境の変化に関係する情報(4.1項)には、法規制及びその他の順守が必要な事項の制定、改訂を含む利害関係者のニーズと期待の変化を表す情報を含める。
 
② 組織の業務
  実務では、外部環境の変化に関係する情報の一部として4.1項の情報に含めて収集、管理している。
 
③ 初めての規格導入
  頭の中は変える必要がなく、収集する情報の整理の際に抜けのないようにすればよい。

H28.12.1
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サニーヒルズ コンサルタント事務所