ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
マネジメントレビュー とは  (ISO9000/14000)
マネジメント(経営管理活動)を見直す こと
英語で読み解く  ISO9000/14000  (2)
32-02-02
   マネジメントレビューは、management review である。JISQ9000の 94年版では『「マネジメント・レビュー(経営者による見直し)』と翻訳され、JISQ14001でも『経営層による見直し』である。
   
 『マネジメント』は、『運営管理活動』とも訳されているが、JISQ9000の2000年版では『組織を指揮、管理する体系的活動』と定義され、「経営管理活動」の意味である。また、同定義の備考において、英語の management には経営層、管理者層の意味もあるが、規格では定義のマネジメントとの混乱を避けるため『トップマネジメント』など何らかの修飾語を付けて用いることと記されている。
 
  review は、見直し、再考の意味であるが、➀ それでよいかどうかを評価する、 ② どのようなことであったか過去の出来事を振り返える、という意味で物事を見直すというふたつの観点がある。 この場合は、②の意味の見直しであり、ある期間の経営管理の実績を振り返るということである。規格の定義では『対象事項がその目標を達成するのに適切か、妥当か、有効かを判定するために行われる活動』である。
   
  英文法語では、2つの名詞を組合わせた名詞は群名詞と呼ばれる。群名詞では第2語だけが名詞として使われ、第1語は形容詞の働きをしている。日本語の形容詞は、美しい、寒いなど、事物の性質、状態を、超時間的持続性の属性に着目して表す語(広辞苑)であるが、英語の形容詞(adjective)はもっと意味が広く、名詞、代名詞の意味を限定する語(新英語:清水周裕、数研出版)である。例えば、environnmental management(環境マネジメント)の environmental(環境の)は形容詞であり、 management が環境に関するものであると、名詞(management)の意味を限定している。 quality management(品質マネジメント)の場合は、qualityに形容詞形がないので、名詞(quality)が形容詞の役割を果たす群名詞となっている。
   
  また、群名詞では、第2語が主語的で第1語は目的語的な意味となる。特に、第2語が行為を表す名詞の場合は、第1語はその行為(を表す動詞)の直接目的語に相当する使われ方が一般的である。例えば、adult education(成人教育) の場合、adult(成人) は education(教育)の目的語的な役割であるから、「成人が教育する」のではなく、「成人を教育する」である。
 
  群名詞の用法によると、“management review”の managementは主語的な役割を果たすことはなく、review の目的語である。 従って management review とは、「management(経営層)が見直す」ではなく、「management(経営管理活動)を見直す」の意である。実際、94年版JISQ9001の contract reviewは、「契約が見直す」のではなく、「契約内容の確認」(4.3)である。また、2000年版では product requirement(製品要求事項)が、場合によって requirements related to the product(製品に関連する要求事項: 7.2.1)と表されていて、「product が要求する」のではないことが明確になっている。
 
 規格の経営管理活動は、方針を定め目標を設定してその達成を図るPDCAの活動であり、マネジメントレビューはこのA(処置)に相当する活動である。規格ではこれを、システムの継続的な適切、妥当、有効性を確実にするための活動であると規定している。顧客満足の向上、あるいは、環境パフォーマンスの向上を目指す上で、経営管理活動が適切、妥当、有効であることを確実にするためには、定期的にそれまでの経営管理活動を顧みて、問題点を見出し、問題解決の方向、対応処置を決定し、場合によっては方針、目標を変更するなど、以後の経営管理活動を方向づけることが必要である 2000年版JISQ9001及びJISQ14001ではこれを、「マネジメントレビューでは、品質マネジメントシステムの改善の機会と変更の必要性を評価すること」「方針、目的、環境マネジメントシステムのその他の要素の変更の必要性に言及すること」と規定して、マネジメントレビューが経営管理活動のPDCAのAであることを示唆している。
 
 見直しの実施は当然ながら経営管理活動の実施責任者であるトップマネジメント(経営者)である。規格もこれを要求事項で明確にしている。つまり、マネジメントレビューが「経営者による見直し」であるには違いない。しかし、この表現では経営者が何のために、何を見直し、どのような結果を出さなければならないのかが明確でない。経営管理活動はトップマネジメントの仕事そのものであり、組織の経営管理に係わる業務はすべてトップマネジメントの責任である。マネジメントレビューをトップマネジメントが実施することは、わざわざ「トップマネジメントによる見直し」と強調するまでもないことである。
 
 規格には多くの群名詞が用いられている。 適切な和訳も多いが、誤解を招き兼ねない和訳や、英文法が無視されて、マネジメントレビューと同じように正しくない和訳も少なくない。
   
★ ISO14001:2004改定
   
2004年版では、management review がJISQ9001 と同じく 「マネジメントレビュー」と和訳されている。

 
マネジメント レビュー
関連情報
ISO9001/14001 規格の論理と用語
§6   マネジメント レビュー 
実務の視点による ISO9001:2008 要求事項の解説       
29.  5.6.3項  マネジメントレビュー からの アウトプット
28.  
5.6.2項  マネジメントレビュー への インプット
27.  
5.6.1項  マネジメントレビュー  一般
ISO9001/14001 よく見られる 誤った取り組み
39.  毎日実施するマネジメント レビュー

JISQ9001/14001 ISO9001/14001
規格の意図
マネジメントレビュー(JISQ9001)
経営層による見直しJISQ14001)
Management review 経営管理活動の見直し
(マネジメントのレビュー)
<JIS規格 表記>
★ 2000年版(5.6):  マネジュメントレビュー
★ 1998年版(4.1.3): マネジメント・レビュー(経営者による見直し)
★ JISQ14001(4.6): 経営層による見直し

   
   
<規格における定義>
★ マネジメント(JISQ9000,3.2.6):  組織を指揮、管理する活動(運営管理活動)
★ レビュー(JISQ9000,3.8.7):  対象事項がその目標を達成するのに適切か、妥当か、有効かを判定するために行われる活動
   
<ISO9000: 2000年版における「マネジメント」の用法 (JISQ9000, 3.2.6 備考) >
英語では、用語"マネジメント"が人を指すことがある。
すなわち、組織の指揮及び管理を行うための権限及び責任をもった個人又はグループを意味することがある。
"マネジメント"がこの意味で用いられる場合には、この項で定義された概念 "マネジメント"との混乱を避けるために、常に何らかの修飾語を付けて用いるのがよい。
 例えば、"マネジメントは・・・すること" には使ってはならないが、 "トップマネジメント(3.2.7)は・・・すること" を使うことは許される。

   
   
<英文法>    (S)
★ 名詞を2つ組み合わせた名詞は、群名詞と呼ばれる。
★ 群名詞では第2語だけが名詞として使われ、第1語は形容詞の働きをしている。
★ 群名詞の用法例(形容詞と群名詞
   形容詞は、名詞を修飾する(意味を制限する)場合に用いられる。補語にもなる。
           beautiful woman(美しい女性)、cold water(冷たい水)、 high quality(高品質)
          presidential election(大統領選挙)、economic growth(経済成長)
★ また、第2語が主語的で第1語は目的語的な意味で使われる。
★ 特に第2語が行為を表す名詞の場合は、第1語はその行為(を表す動詞)の直接目的語に相当する使われ方が一般的である。
  用法例
      ・adult education(成人教育) = 大人を教育する
      ・a blood test(血液検査) = 血液を検査する

   
   
< 群名詞 "Management Review" の文法上の意味>
(正)
マネジメント(運営管理活動)レビューする(見直す)
(誤)
マネジメント(経営層)レビューする(見直す)
   
 
< 規格におけるマネジメントレビューとは >
★ 品質システムの現状と妥当性を公式に評価する活動(ISO8402:1994:  3.9)
★ 品質マネジメントシステムの改善の機会と変更の必要性を評価する活動(JISQ9001: 5.6.1)
★ マネジメントシステムが継続する適切性、妥当性、かつ有効性を確実にするために、マネジメントシステムを見直す活動
       (JISQ9001: 5.6.1;  JISQ14001: 4.6 )

 
<規格で用いられている "Review" >
★ management review
★ contract review (4.3(ISO9001:1994)):
契約内容の確認 = 契約内容を見直す(確認する)
★ design and development review (7.3.4(ISO9001:2000)):  設計開発のレビュー= 設計活動を見直す
design review (4.4.6(ISO9001:1994)):  設計審査)= 設計活動を審査する
★ initial environmental review (4.1.3(ISO14004)): 初期環境レビュー = 環境に関する現状を見直す
 
   
<規格のその他の群名詞>
★ product realization (ISO9001:2000): 製品実現 = 製品を実現させる
★ quality policy (5.3(ISO9001:2000)): 品質方針 = 品質に関する方針
★ product requirement (8.4 b) (ISO9001:2000)): 製品要求事項
          = requirement related to the product(同: 7.2.1::製品に関連する要求事項)
★ quality management: 品質マネジメント= 品質に関する運営管理活動
  ⇔  ★ environmental management (環境マネジメント = 環境に関する運営管理活動)
★ customer communication(7.2.3(ISO9001:2000): 顧客とのコミュニケーション
   ⇔  ★ internal communication(5.5.3(ISO9001:2000)) 内部コミュニケーション = 内部における情報伝達)
     
   
<群名詞 "Management" の文法的に正しい解釈>
★ management responsibility (5(ISO9001)) :経営者の責任⇒ 運営管理活動に係わる責任
★ management representative(5.5.2(ISO9001) /4.4.2(ISO14001)): 管理責任 ⇒ 運営管理活動代行者
★ management commitment(5.1(ISO9001)): 経営者のコミットメント ⇒ 運営管理活動に関するコミットメント(公約)
引用辞書:  (W) Webster's Encyclopedia of Dictionary;  (M-W) Merriam-Webster's;  
              (広) 新村:広辞苑;   (実) 海野:実用英語大辞典(日刊アソシエーツ); 
              (S) M.Swan/金子他:現代英語用法辞典(桐原書店);
翻訳: 英文辞書、ISO規格の翻訳は著者による。また、JIS規格の文章でも*印は、JISと異なる著者の翻訳
論点: (黒字) 著者の見解; (茶色) 著者の問題提起;  (青色) 規格の条文;  
(紫色) 文献(辞書)の引用 
H14.11.25(H17.7.4)  修(H25.9.4:運営管理→経営) (9/6)
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