ISO9001/14001 コンサルティング・研修
品質目標を設定する部門、階層
(ISO9001:2000 5.4.1)
品質目標は すべての 部門、階層で設定する必要はない
英語で読み解く ISO9000/14000  (5)
32-02-05
     ISO9001の2000年版はマネジメント(運営管理)の規格であり、その方法論は、方針を定め目標を設定して、その達成を図るというPDCAを廻すことである。 規格の 5.4.1項(品質目標)では、この品質目標が「組織内のそれぞれの部門、階層」で設定されなければならないと規定している。 この「それぞれ」という言葉のために、品質マネジメントシステムに組み込まれたすべての部門が品質目標を設定しなければならないかの誤解を生じる。 また、「それぞれの階層」という言葉から、「部」から「係」の単位にまでそれぞれの品質目標の設定が必要とか、品質目標をQCサークルの対象とするかの議論も生まれている。
   
  しかし、「それぞれ」と和訳されている原英語は、relevant である。 これは、「関連がある」という意味であり、それも「論理的に間違いなく関連している」という意味での「関連している」である。ここから、適切な、妥当な という意味が派生したのだと思う。  relevant には、「それぞれ」とか「すべて」の意味はない。
 
    品質目標の定義の参考2に、「品質目標は通常、組織内の関係する部門及び階層で規定される」とあるが、この「関係する」は relevant の翻訳である。 環境マネジメントシステムの環境目的、環境目標についても同様の要求事項が規定されているが、ここでも、 relevant を「関連する」と訳している。 また、94年版の品質方針に関しては、relevant は「対応する」と訳されている。いずれも適切な訳語であり、JISQ9001の 5.4.1項だけが relevant を 「それぞれ」と訳しているのである。
   
   品質目標は、品質方針の特定期間における到達点であるから、「品質目標は品質方針と整合」(JISQ9001; 5.4.1)がとれていなければならないし、「通常、品質方針に基づいている」(ISO9000; 3.2.5,備考1)はずである。 従って、組織の各部門の機能や役割の分担からして、特定の部門が設定された品質方針に係わる業務を行っていないことはあり得るので、すべての部門が品質目標をもつことにはならない。 規格は、品質方針の実現に関係のある部門で品質目標を設定することを規定しているのである。これが relevant の意である。
 
   品質目標は、品質方針に関係する業務を担っている部門が、その業務遂行の目標として設定するものである。全社でひとつの品質方針が設定され、多数の事業部や事業所から成る組織では、異なった品質目標が事業部、事業所単位で定めることになるのかも知れない。その場合も各品質目標はそれぞれの関係する「部」や「課」に実行が割り与えられるであろう。また、現場の日常的改善活動で達成できる種類の品質目標のため、「係」や「班」毎にそれぞれの品質目標をもつこともある。これらが「関連する階層」である。品質目標の実行責任を組織のどの階層に負わせるかという問題は、品質目標をどの程度細目に分割して掲げるか、組織の中の各階層にどの程度の機能、権限を付与しているかによって変わる。
   
  すべての個人が品質目標を持つということは、あっても差し支えはないが、それを規格が意図していることを示す証拠はない。 組織がその存立を懸けて顧客満足向上を目指し追求するもの が品質目標であり、個人レベルの活動やQCサークルの活動に依存できるようなものではない。 6.2.2 d)に品質目標達成への個人の貢献に関する要求事項が定められているがこれは、単に決まりの通りに仕事をするのでなく、ひとりひとりが組織の目指すところを理解して進んで自らの能力を傾注するような状況をつくりあげることの大切さ(品質マネジメントシステムの原則: c) 人々の参画)を述べたものである。各人がそれぞれの品質目標を分担するとの意味ではなく、組織の日々の仕事という意味で品質目標の達成活動という言葉を用いているに過ぎない。
 
[追記]
  ISO9001:2008年版では原文は不変で“relevant”であるが、JIS和訳が「しかるべき」に変えられた。
JISQ9001 (5.4.1項) ISO9001 (5.4.1項) 規格の意図
組織内の
それぞれの

部門、階層
品質目標が設定されている
quality objectives are established
at
relevant functions and levels
within the organization
組織内の
品質方針に関係する
部門、階層
品質目標が設定されている


<語意>
relevant    (W)
 bearing upon the case in hand (扱っている問題に関係をもつ),
 pertinent (適切な)
relevant    (Camblidge Int.Dic of English

  connected with what is happening or being discussed (起きていること、
     議論していることに関連している
)
 correct or suitable for particular purpose (特定の目的に正しい、又は、適切な)
relevant    (
* 関連した
* 適切な、 妥当な

<規格における relevant の用法とJIS翻訳>
★ 品質目標 (JISQ9000; 3.2.5)
 * 品質に関して追求し、目指すもの
  参考2.  品質目標は、通常、組織内の関係する部門及び階層(relevant functions and levels)で規定される。

★ 環境目的・環境目標 (JISQ14001; 4.3.3)
 * 組織は、組織内の関連する各部門及び階層(each relevant function and level)で、
    文書化された環境目的及び目標を設定し維持すること。
 
★ 品質方針 (JISZ9901; 4.1.1)
 * 品質方針は、組織の到達目標(organaizational goals)と顧客の期待とニーズ
    に対応する(revlevant to) ものであること。


<品質方針と品質目標; 94/2000年版の違い>
★ 94年版 品質方針
(JISZ9901; 4.1.1)
 *
経営者は品質方針を定め、文書にすること
 *
品質方針には、品質に関する目標(objectives for quality) 及び品質に対する
    経営者の責務(commitment)を含むこと

★ 2000年版 品質方針
に関する要求事項( JISQ9001 )
 *
品質方針を、適切性の持続のためにレビューする( 5.3 e))
 *
マネジメントレビューでは、品質方針及び品質目標の変更の必要性の評価も行うこ(5.6.1)。
 *
組織は、品質方針、品質目標、・・・、マネジメントレビューを通じて、
    品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善すること( 8.5.1)。  



<環境方針の見直し
>  (JISQ14001: 4.6)
★ 経営層による見直し
 *
見直しは、監査の結果、変化している周囲の状況、継続的改善の約束(commitment)
    に照らして、環境方針、目標の変更の必要性に言及すること( 4.6)
引用辞書: (W) Webster's Encyclopedia of Dictionary;  (M-W) Merriam-Webster's;  
              (広) 新村:広辞苑;   (実) 海野:実用英語大辞典(日刊アソシエーツ); 
              (S) M.Swan/金子他:現代英語用法辞典(桐原書店);
翻訳: 英文辞書、ISO規格の翻訳は著者による。また、JIS規格の文章でも*印は、JISと異なる著者の翻訳
論点: (黒字) 著者の見解; (茶色) 著者の問題提起;  (青色) 規格の条文;  
(紫色) 文献(辞書)の引用 
作成 H15.3.16(改 H15.5.6、6.18) (追記:H21.3.13)
 
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