ISO9001/14001 コンサルティング・研修
マネジメント の定義(ISO9000:2000, 3.2.6)
組織を指揮、管理するための活動」ではなく 「指揮、管理する活動」
英語で読み解く ISO9000/14000  (6)
32-02-06
  マネジメント」は managementであり、組織の運営管理活動のことである。組織は存立の目的を追求する事事業活動を行っているが、合わせて、その維持発展のための管理の活動が存在する。 経営論ではこれらはそれぞれ、作業活動管理活動と呼ばれる。管理活動に関して経営論では、合併、多角化、製品転換など組織の在り方を決するのが「経営(administration)」であり、この経営の戦略、基本方針の執行の ために人々はじめ資源を効果的、効率的に活用するよう作業活動を指揮管理する活動が「マネジメント」である。(参考: 品質マネジメント)
   
  JISQ9000:2000の定義では「組織を指揮し、管理するための調整された活動」である。上記のようにマネジメントは「管理の活動」であり、「作業活動を指揮、管理する活動」である。JIS定義は、「指揮、管理する活動(マネジメント)のための活動」と言う意味にも受けとめられ、 「指揮し、管理する活動」のためのもうひとつの活動があって、それがマネジメントであるかの錯覚を抱く表現である。
   
   この英原文は「coordinated activities to direct and control an organaization」であるから、activities to direct and controlが 「・・のために」と翻訳されている。 英文法ではto + 動詞不定詞である。その用法については、日本の教科書は、名詞的用法、形容詞的用法、副詞的用法に分けて説明している。
 
  この内、形容詞的用法では、名詞、代名詞の後に不定詞が置かれる。この用法では、不定詞はその名詞(代名詞)を修飾し、あるがどう使われるか、どんな効果をもつのかを言う場合に用いられる。名詞(代名詞)が「ある物」であり、不定詞の動詞がその用途や効果をあらわす。そしてこの形容詞的用法は細かくみると、意味の上で、名詞(代名詞)が不定詞の動詞の主語になる場合、目的語となる場合、及び、名詞(代名詞)が不定詞の後の前置詞の目的語になる場合の3種に分かれる。
 
  上記英原文の不定詞は、この形容詞的用法であり、to  direct  and  control がactivities に掛かり、意味上は activities が主語で direct, control が動詞となる。従って、activities が 組織を direct し、control するという意味合いで、「組織を指揮し、管理する活動」とするのが、正確な翻訳である。
 
   不定詞を「・・ために」と訳すのが適切なのは、副詞的用法における 人の目的をあらわす場合である。形容詞的用法に「・・ために」を充てて訳しても日本語としておかしくない場合もある。下表の例文でも、「駒を入れるための箱」「風邪を治すための何か」と訳しても日本語として意味は通じる。 しかし、「飲むための何か」では違和感が漂う。英文法では、不定詞の形容詞的用法副詞的用法は、用途、効果と目的、理由と一見類似した意味をあらわすが、前者はの用途、効果であり、後者はの目的、理由であるという点、また、前者は名詞を修飾するのに対して後者は動詞、形容詞、副詞、文全体を修飾するという点で、厳然とした違いがある。誤解を招かない翻訳が大切である。
 
  英文法に従えば「指揮し、管理するための活動」ではなく、「指揮し、管理する活動」である。「指揮し、管理する」のは、経営の目的(組織の目的: ISO9001 5.3 a))を実現するため、或いは、組織の事業の繁栄、発展を図るためである。 マネジメント自身は目的ではなく組織の経営の手段である。 また、形容詞的用法の不定詞を「ために」と翻訳することによって、目的と手段を取り違えた解釈を招いている。
 
  なお、JISQ9000の定義に関しては、形容詞的用法の不定詞の翻訳に「・・ために」が充てられている場合が他にもある。マネジメントシステム、継続的改善、手順、力量の定義についてであるが、いずれも「ために」を除いて読むとよくわからなかった意味がはっきりする。
 
   因みにマネジメントの定義における「調整された」は coordinated の訳であるが、調整は、「調子や過不足をととのえる」の意味だから、組織的、統一的、システマチックの意味の「体系的」「統制された」の方が、適切のように思う。 そして、 direct は「方向づけること」であり、control は その目標の範囲に入るように「制御すること」であるから、 マネジメントとは「組織の目的(ISO9001 5.3 a))を実現するために、組織の諸業務を方向づけ、制御する統制された活動」であると言うのがわかり易い。


JISQ9000 (5.4.1項) ISO9000 (5.4.1項) 規格の意図
組織を
指揮し、管理するための
調整された活動
coordinated activities
to direct and control
an organaization
組織を
指揮し、管理
する
体系的活動
<英文法:  不定詞(to 動詞)の用法> (吉田研作: NET総合英語(文英堂))
形容詞的用法 (不定詞が名詞、代名詞も後ろにきて その名詞、代名詞を修飾する)
名詞が意味上の主語になる場合
Jill was the only one to remember my birthday = ジルだけが私の誕生日を覚えていた。(一人が覚えていた)
名詞が意味上の目的語になる場合
・Would you like something to drink ? = 何か食べ物は如何ですか。(何かを飲む)
* 名詞が前置詞の目的語になる場合
・I have parents to take care of = 私には世話をすべき両親がいる。(両親を世話する)
副詞的用法 (不定詞は副詞の働きをして、 動詞、形容詞、副詞、文全体を修飾する)
目的を表す(〜するためには、〜するには
・Push this number to get the operator 交換手を呼ぶにはこの番号を押しなさい。
* 原因・理由を表す(〜して)
・Your father will be pleased to see you = お父さんはあなたに合うのをお喜びでしょう
* 結果を表す(〜して(その結果)・・なる)
・Boys grow up to be men = 子供も大きくなって大人になる。

<英文法: 不定詞(to + 動詞)の用法>    
(S)
★ 名詞の後に続く不定詞(ある物がどう使われるか、どんな効果をもつのかを言う場合に用いられる)
* 名詞が不定詞の主語となる場合  
I need a box to hold my chessmen. = 私のチェスの駒を入れておく箱がいる。(箱が駒を入れる)
Have you anything to cure a bad cold ? = 何かひどい風邪を治すようなものをお持ちですか。(ものが風邪を治す)
* 名詞が不定詞の目的語となる場合
I gave her a comic to read. = 私は彼女に漫画をあげた。(彼女は漫画を読む)
Can you give me some work to do ? = 何か仕事をいただけますか。(私は仕事をする)
* 名詞が前置詞と共に用いられる場合
Mary needs a friend to play with = メアリーには遊び友達が必要だ。
★ 人の目的や、あることをする理由を述べるのに用いられる(目的を表す不定詞)
My brother got a job to earn money for his holiday = 兄は休暇のための金を稼ぐために仕事についた。
I went to Brighton to learn English = 私は英語を勉強するためにブライトンへ行った。

<調整された活動 体系的、統制された活動>
★ coordinate (M-W)
  to bring into a common action, movement, or condition
(共通の行為、行動、状態にする)
  
 同意語:harmonaize(調和させる、一致させる)
★ 調整する  (広)
  調子や過不足をととのえること
   
★ 体系的  (広)
  組織的(個々のものが一定の系統に従っているさま)、統一的、システマチック
 

<JIS規格の誤解を招く翻訳(不定詞の形容詞的用法)、その他の例>
マネジメントシステム(方針、目標を定め、その目標を達成するためのシステム: 3.2.2)
   
system to establish policy and objectives・・
〜を定め、その目標を達成するシステム
継続的改善(要求事項を満たす能力を高めるために繰り返し行われる活動: 3.2.13)
   
recurring activities to increase the ability to fulfil・・  〜を満たす能力を高める活動
★ 手順 (活動、プロセスを実行するために規定された方法: 3.4.5)
     
specified way to carry out an activity or ・・・ 〜を実行する方法
★ 力量 (知識と技能を適用するための実証された能力: 3.9.12)
   
demonstrated ability to apply knowledge and skills 〜を活用(適用)する能力
引用辞書: (W) Webster's Encyclopedia of Dictionary;  (M-W) Merriam-Webster's;  
              (広) 新村:広辞苑;   (実) 海野:実用英語大辞典(日刊アソシエーツ); 
              (S) M.Swan/金子他:現代英語用法辞典(桐原書店);
翻訳: 英文辞書、ISO規格の翻訳は著者による。また、JIS規格の文章でも*印は、JISと異なる著者の翻訳
論点: (黒字) 著者の見解; (茶色) 著者の問題提起;  (青色) 規格の条文;  
(紫色) 文献(辞書)の引用 
H15.5.8(修: H17.7.5)
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