ISO9001/14001 コンサルティング・研修
品質マネジメントシステムの計画とは
(ISO9001:2000, 5.4.2)
「品質目標の達成の手はずを整えること」
英語で読み解く ISO9000/14000  (8)
32-02-08
1. 要求事項
   5.4.2項のJIS和訳は、標題が「品質マネジメントシステムの計画」で、その a)項は、「トップマネジメントは、品質目標及び4.1に規定する要求事項を満たすために、品質マネジメントシステムの計画が策定されることを確実にすること」である。  ここに、「品質マネジメントシステムの計画」が何を意味するのか、どのような「計画が策定される」ことが必要なのか、また、「品質目標」と「4.1項に規定する要求事項」の2つを「満たすために」行われるとする計画の内、何かに対する具体的な要求事項ではない「一般要求事項」を満たすことを目的として行う計画とはどのようなことか、について解釈が別れている。
   
  この英原文は、それぞれ次のようなものである。
* 5.4.2 Quality management system planning
* Top management shall ensure that
the planning of the quality management system is carried out in order to meet the requirement given in 4.1, as well as the quality objectives
 
   
2.英語の用法と文法
(1) 計画が策定される
  JIS和訳の「計画」は原文では動名詞の「planning」であるから、「計画すること」の意味である。規格では、計画活動が実行された結果(計画活動のアウトプット)は名詞の plan(計画)であるが、その文書も plan であり、例えば、quality plan(品質計画書)である。  is carried out は「実行される」であるから、「〜の計画が策定される」は「〜を計画する行為ないし作業、活動が実行される」であり、「plan が策定される」ではない。「計画の策定」は「計画書の作成」の意味に受け取れるが、規格は「計画活動を実行する」ことの必要を指摘しているだけである。
 
(2) 品質マネジメントシステムの計画
  標題を含めて「品質マネジメントシステムの計画」は、「品質マネジメントシステムを計画すること、計画する活動」である。ここに、動詞 plan は「将来やりたい事を詳細に手配すること」の意味で、規格も「(活動、予定の行動の)手はずを予め整える」と定義している。日本語の「計画」は「物事を行うに当たって、方法、手順などを考え企てること」であるが、plan は企て、準備を整えることである。 「品質マネジメントシステムを計画する」とは、どのように品質マネジメントを行うのかを決め、いつでも実行に移せるよう手はずを整えることである。品質マネジメントシステムの方法論は「方針及び目標を確立し、それら目標を達成する*」(ISO9000; 3.2.2: マネジメントシステム)ようなPDCAサイクルを回すことであるから、「品質マネジメントシステムを計画する」とは、品質目標を達成するための業務手順を定め、原材料、設備、要員など必要な資源を用意し、関係者に手順を周知させることに相当する。
 
(3) 品質目標 及び 4.1の要求事項
  JIS条文は「及び」で2つの「満たす」ものを結んでいるが、原英語では「as well as」であるから、「及び」ではなく、「〜ばかりでなく 〜も」、「〜はもちろんのこと 〜も」の意味である。 すなわち、「A as well as B」のAとBは同列ではなく、「BだけでなくAも」ということで、どちらかというとBに重きが置かれ、Aは付随的であることを意味している。 規格 5.1項(経営者のコミットメント)の a)項には「as well as」の構文が用いられているが、JIS9001 はこれを「法令・規制要求事項を満たすことは当然として、顧客要求事項を満たすことの重要性を・・」と翻訳している。 5.4.2 a)項の場合は、「品質目標と4.1項の要求事項を満たす」のではなく「品質目標だけでなく 4.1項の要求事項も」というのが条文の意図である。 従って、「品質目標を満たす」ことが主意であり、その上に更に「4.1項の要求事項も満たす」ことが必要であるということである。
 
(4) 満たすための計画
  JIS条文では、「〜を満たすために」品質マネジメントシステムの計画が策定されなければならないとされているが、この「ために」の原英語は「in order to」である。 この熟語は、目的を表す不定詞と同じ働きをし、「人の目的、又は、あることを行う理由」を表す。 このような不定詞は日本語では、「〜のために」の他、しばしば「〜となるように」という意味で用いられる。2つの日本語は、前者が行為の動機、狙いを強調し、後者は行為により実現すべき結果を強調する表現で、共に行為の目的を表しているのであるが場合によっては意味が大きく異なることになる。 4.1項という抽象的な一般条件を「満たすために計画する」では意味が通じないが、「4.1項を満たすように計画する」というのが条文の趣旨である。
 
  また、条文の日本語では「満たす」の主語が明確に記されておらず、「組織が〜を満たす」と読み取られる。しかし、「満たす」の原英語「meet」の主語は文法上「planning」であるから、「満たす」のは組織ではなく「計画活動」である。意味が明確になるように原英文を直訳すると、「計画活動が〜を満たすように、計画活動が実行される」である。
 
 
3.まとめ
  条文の趣旨は「品質目標及び4.1項の要求事項を満たすために品質マネジメントシステムの計画が策定される」ではなく、「品質マネジメントシステムを計画する場合は、品質目標だけでなく4.1項の要求事項も満たすように行わなければならない」であり、品質マネジメントシステムの計画活動がこのように行われることを「トップマネジメントは確実にしなければならない」である。規格は、品質マネジメントシステムを計画することの必要を「品質マネジメントシステムの計画活動」という標題の条項を設けたことで指摘しており、5.4.2項の条文はこの「品質マネジメントシステムの計画活動」に対する必要条件を規定している。この計画活動とは、品質マネジメントシステムの各プロセスについて、その品質目標を達成するできるように業務手順を定め、原材料、設備、要員など必要な資源を用意し、関係者に手順を周知させることに相当する。
JISQ9001, 5.4.2; 
品質マネジメントシステムの計画
ISO9001 規格の意図
★ 品質目標及び4.1に規定する要求事項
を満たすために、
品質マネジメントシステム
計画が策定される
下記 ★ 品質目標だけでなく、 4.1の要求事項
満たすように、
品質マネジメントという活動
手はずを整える
<ISO9001; 5.4.2 a)  Planning  of quality management system>
the planning of the quality management system is carried out
 in order to meet the requirements given in 4.1 as well as quality objectives

<ISO原英文の翻訳:  JIS条文と意味を踏まえた直訳>


< planning の意味> 
文法(動名詞)     (S)
  * -ing で終わる動詞形は、現在分詞、または、動名詞と呼ばれる。
  * 動名詞は、どちらかと言えば名詞のように用いられる。
    ・ Smoking is bad for you (煙草を吸うことは良くない)

planning(動名詞:計画すること) ⇔ plan(動詞:計画する) 
plan(動詞) の意味    (OALD)
    to make detailed arrangements for something you want to do in the futute  将来やりたい事を詳細に手配すること
plan(動詞) の意味    (M-W)
  to devise or project the realization or achievement of  〜の達成、実現を案出、考案すること
計画 の意味   (広)
  物事を行うに当たって、方法、手順などを考え企てること。また、その内容



< 規格における定義 >
plan (動詞) 定義 (ISO/TC176/SC2/N526R)
  arrange in advance (an action or proposed proceeding)  [(活動、予定の行動の)手はずを予め整える] 
plan (名詞) 定義 (ISO/TC176/SC2/N526R)
  formulation or organized method by which something is to be done
         [それによって何かが行なわれるべき、組織的な方法、または、体系的処方]



< as well as  の意味 >  (S)
〜の上に、〜の他に;  〜と同じく、〜に劣らず;  (コンサイス英和辞典)
★ 並びに、〜ばかりでなく、〜はもろんのこと 〜も; 〜と同じ位に、〜に負けず劣らず  (海)
★ not only...but also (〜だけでなく〜も)と似た意味で使われる    (S)
 
as well as B   Bだけでなく
* He has a car as well as a motorbike  ⇒  バイクの他にも、自動車をもっている  (S)
* She is
clever as well as beautiful  ⇒  美しいだけでなく、頭もよい   (S)
* He gave me
clothes as well as food  ⇒  食べ物だけでなく、着物までくれた  (コンサイス英和辞典)


< 規格における
 A as well as の用法 >
★ 経営者のコミットメント(5.1 a))
   communicating to the organization the importance of meeting
customer as well as statutory and
         regulatory
requirements
   
法令・規制要求事項を満たすことは当然として顧客要求事項を満たすことの重要性を組織内に周知する


< in order to  の意味 > 
for the purpose of [〜のために]      (W)
so that it is possible to [〜となるように]   (COLLINS) 
人の目的、あることを行う理由を表す(目的を表す不定詞と同じ働き) (S)
I got up early in order to have time to pack  ⇒ 荷造りする時間ができるように、早起きした  (S)
He came in quietly in order not to wake his wife  ⇒ 妻を起こさないように、静かに入った   (S)
He stopped working for a minute in order to rest ⇒ 休憩するために、ちょっと仕事の手をとめた  (S)

引用辞書: (W) Webster's Encyclopedia of Dictionary;  (M-W) Merriam-Webster's;  
              (OALD) Oxford Advanced Learner's Dictionary;  (実) 海野:実用英語大辞典(日刊アソシエーツ); 
              (S) M.Swan/金子他:現代英語用法辞典(桐原書店);  (広) 新村:広辞苑; 
翻訳: 英文辞書、ISO規格の翻訳は著者による。また、JIS規格の文章でも*印は、JISと異なる著者の翻訳
論点: (黒字) 著者の見解; (茶色) 著者の問題提起;  (青色) 規格の条文;  
(紫色) 文献(辞書)の引用 
H15.8.10, H17.7.20<35-01-21に合わせて改訂)
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