ISO9001/14001 コンサルティング・研修
ISO9001の適用範囲(規格使用の目的)
(ISO9001:2000, 1.1)
「顧客満足向上の実証と顧客満足向上の追求」
英語で読み解く ISO9000/14000  (9)
32-02-09
1. 適用範囲と適用
   1項の標題は「適用範囲」で、1.1項は「一般」、1.2項が「適用」である。原英文では「適用範囲」は「Scope」で、1.2項の「適用」は「Application」である。 この1.2項は、品質マネジメントシステムに特定の条項を「適用する」ことを除外することについての規定である。  Scope は、「行為、目的、意図の範囲、程度」と定義されているから、「適用範囲 」は規格が意図する範囲、つまり、どのような場合に規格を使用するのかということであり、規格を使用する目的というような意味でもある。そして 1.1項には、規格には a)項と b)項の2つの場合のための品質マネジメントシステムの要求事項が規定されている、と規格使用の目的が規定されている。


2. 1.1 a)項の意味
(1) 品質保証
   a)項は、「組織が顧客要求事項及び適用される規制要求事項を満たした製品を一貫して提供する能力をもつことを実証する必要がある場合」である。JISQ9001規格書の巻末の解説(4.c))はじめ多くの解説文が、この a)項を品質保証の能力の意味に解釈している。それは、「顧客要求事項」を94年版の「製品の規定要求事項」(4.2.1)や「契約要求事項」(4.3 a))と同じ性質の「顧客が要求する事項」の意味に解釈し、それを満たした製品を「一貫して提供する」のだから「品質の保証」であると考えられたものと推察される。そして、規格序文のJIS版にしかない「この規格で規定された品質マネジメントシステム要求事項は、製品の品質保証に加えて、顧客満足の向上をも目指そうとしている」という記述(ISO9001のForewordの一文を引用したもの)と合わせて、2000年版が品質保証と顧客満足の両命題を扱っているという主張の根拠となっている。
(2) 顧客満足
   しかし規格の用語では、「顧客要求事項」は「顧客が要求すること」ではなく「顧客に関する必要事項」の意であり、顧客の「ニーズ若しくは期待」である。(詳しくはこちら)  また、「顧客の要求事項が満たされている程度に関する顧客の受けとめ方」が顧客満足(JISQ9000 3.1.4)であり、「顧客要求事項を満たすことによって顧客満足を向上させる」(JISQ9001 0.1)ことが規格の基本概念である。  「顧客要求事項を満たした製品を提供する」とは、製品の品質保証ではなく、顧客満足の製品を提供することを意味する。
(3) 規制要求事項
  「規制要求事項(regulatory requirement)」には定義がないが、ISO14001の「法規制(legislation and regulation)」と同じ事で、製品に係わる法やその他の規制のことと考えられる。規制要求事項は 2000年版では基本的に顧客要求事項のひとつの要素であるが、この記述のように「顧客及び規制要求事項」と記述(他に 5.1など)されることもある。しかし、  大半の箇所では単に「顧客要求事項」と記述(5.2, 5.5.2など)されている。
(4) 一貫して
   JISQ9000は、「顧客のニーズ及び期待は変化し、かつ、競争と技術の進歩がある」ことを指摘し、継続的改善の枠組みが「組織が要求事項を満たす製品を一貫して供給することができるという安心感を顧客に与える」(2.1)と、継続的改善の意義を規定している。「一貫して」の consistently は、「確固とした変化しない様」の意であるが、規格の意図においては時代の変化や事業環境の変化にもかかわらず常に、というような意味と受け取ることが適切である。
(5) 審査の基準 
   a)項は、組織がいつの時代にも顧客満足の製品を提供することができるよう品質マネジメントを実施している状況を前提に、組織が現にそのような能力を有していることを実証する場合に規格をその判断基準として使用することができる、という意味である。 JISQ9001規格への適合を評価する第三者審査制度はここに根拠を置いているものと考えることができる。


3.1.1 b)項の意味
(1) システム構築、運用の指針
   b)項では、「組織が顧客満足の向上を目指す場合」と規定されているから明確である。 規格は顧客満足を目指す場合の品質マネジメントシステムの要求事項を規定している。従って b)項は、これからシステムを構築する、あるいは、システムを運用する組織にとって規格が指針となる、という意味である。
(2) システムの適用
   ところで b)項のJIS条文 は、「システムの効果的な適用、並びに 顧客要求事項及び適用される規制要求事項への適合の保証を通して」と、顧客満足の向上を目指す2本の道筋を示唆している。 最初の「システムの効果的な適用」の「適用」は application の直訳であるが、applicationは「実用に供する、役立たせる、使用する」の意味の英語である。この場合の「適用」とは実際にシステムの諸活動を行なうことであり、このことは「システムを運用する」と表現されるのが一般的である。
(3) 効果的な運用
  因みに「効果的に( effectively )」も規格でよく使われる表現であるが、effective が「明確な、疑う余地のない、または、望んだ効果を生む」という意味の形容詞であり、effectively は副詞で、「effective なやり方で」という意味である。「システムを効果的に運用する」とは、システムの諸業務を決められた通りに、所定の結果が得られるように、管理された状態で実行することである。   
(4) 顧客要求事項及び規制要求事項への適合の保証
   もうひとつ道筋、「顧客要求事項及び規制要求事項への適合の保証」であるが、「適合の保証」は the assurance of conformity to... である。 assurance は、「assureする行為」であり、assure は ensure (規格ではよく使われ、「〜を確実にする」と翻訳されている) と同意語であるから、「保証する」というより「〜を確実にする」という意味である。従って、顧客及び規制要求事項への適合の保証」は、顧客及び規制要求事項(顧客要求事項と考えてもよい)への適合を確実にすること」の意である。
(4) 構文
   このように個別の翻訳を原英文に沿った表現に修正しても JIS翻訳の構文では、「システムを効果的に運用すること」と「顧客及び規制要求事項への適合を確実にすること」によって「顧客満足の向上を目指す」ということになり、ちょっと違和感を覚える。なぜなら、これではシステム運用と顧客要求事項への適合の確実化とが異なった活動であることになるからである。 ここにJIS翻訳では、この「効果的に運用すべきシステム」が「品質マネジメントシステムの継続的改善のプロセスを含む」のである。しかし、英原文の構文を見ると、「継続的改善」と「顧客及び規制要求事項への適合を確実にする」「プロセスを含む」「システムの効果的運用」であるから、「システム」には「継続的改善」と「顧客及び規制要求事項への適合を確実にする」という2つのプロセスが含まれる。
(5) 継続的改善のプロセスと顧客要求事項適合の確実化のプロセス 
  上記をまとめると b)項は、「品質マネジメントシステムの継続的改善のプロセスと顧客及び規制要求事項への適合を確実にするプロセスとを含む、システムの効果的な運用を通じて顧客満足の向上を目指す場合」という意味になる。規格は、顧客満足の向上を目指すためのシステムとその効果的運用の指針を示している。そのようなシステムは、継続的改善のプロセスと顧客及び規制要求事項への適合を確実にするプロセスとを主要な構成要素としている。
 

4.まとめ
 1.1項のa),b)項共、顧客満足を取り扱っている。 両者の違いは実質的に、各文末の「・・の能力をもつことを実証する場合」と「・・を目指す場合」にある。後者は顧客満足の向上を目指して品質マネジメントシステムを構築し運用しようとする場合、前者はそのような品質マネジメントシステムを現に効果的に運用していることを実証する場合、のことである。規格の要求事項は、後者では満たすべき指針となり前者では合否判定基準となる。 1.1項は、規格がこのような2種の場合に遭遇した組織によって使用されるためにあることを明確にしている。 規格の要求事項は、継続的改善により顧客のニーズと期待を満たす(顧客満足の)製品を、いつの時代も変わらず提供することができるような品質マネジメントの在り方を規定している。


JISQ9001
ISO9001 規格の意図
1.1 適用範囲(一般)
この規格は、次の二つの事項に該当する組織に対して、品質マネジメントシステムの要求事項を規定するものである。
a) 顧客要求事項及び適用される規制要求事項を満たした製品を一貫して提供する能力をもつことを実証する必要がある場合
b) 品質マネジメントシステム の継続的改善のプロセスを含む システムの効果的適用、並びに 顧客要求事項及び適用される規制要求事項への適合の保証を通じて、 顧客満足の向上を目指す場合
下記
1.1  規格を使用する目的
この規格は、次の二つの事項に該当する組織に対して、品質マネジメントシステムの要求事項を規定するものである。
a) 情勢の変化によらず常に顧客及び適用される規制要求事項を満たした製品を提供することができる能力を実証する必要がある場合。
b) システムの継続的改善のプロセスと顧客及び規制要求事項への適合を確実にするプロセスとを含む、品質マネジメントシステムの効果的な運用を通じて顧客満足の向上を目指す場合
<ISO9001; 1.1  Scope (General)
This international Standard specifies requirements for a quqlity management system
 where an organization

 
a) needs to demonstrate its ability to consistently provide product that meets customer and
      applicable regulatory requirements, and
  b) aims to enhance customer satisfaction through the effective application of the system,
    including processes for continual improvement of the system and the assuramce of conformity
    to customer and applicable regulatory requirements.


<構文と文意>



<規格の定義>    (ISO/TC176/SC2/N526R:用語の指針)
★ Scope    The range or extent of action, main purpose, intention (行為、目的、意図の範囲または程度)


<英語の意味>
★ application   (W)
 * the act of applying to a particular purpose or use
(特定の目的、用途にapplyする行為)
★ apply    (Collins English Dictionary)
 * to put to practical use
(実用に供する);  utilize(役立たせる);  employ(使用する)
★ consistent    (W-M)
 
* marked by steady continuity (確固たる連続性の) ;
    free from variation or contradiction
(変動ないし矛盾のない)
★ effectively   (M-W)
 * in an effective manner
(effective なやり方で)
★ effective    (M-W)
 
* producing a decided, decisive, or desired effect(明確な、疑う余地のない、または、望んだ効果を生む)

★ assurance    (M-W)
 * the act or action of assuring
(asuureする行為、行動)
 * the state of being assured (assureされている状態)
★ assure       (M-W)
 * to make sure or certain
(〜にするようにする、〜を確実にする)
* to make certain the coming or attainment of (〜を生む、〜を達成することを確実にする)



引用辞書: (W) Webster's Encyclopedia of Dictionary;  (M-W) Merriam-Webster's;  
              (広) 新村:広辞苑;   (実) 海野:実用英語大辞典(日刊アソシエーツ); 
              (S) M.Swan/金子他:現代英語用法辞典(桐原書店);
翻訳: 英文辞書、ISO規格の翻訳は著者による。また、JIS規格の文章でも*印は、JISと異なる著者の翻訳
論点: (黒字) 著者の見解; (茶色) 著者の問題提起;  (青色) 規格の条文;  
(紫色) 文献(辞書)の引用 
H15.9.14
禁無断転載  (個人的使用のための複写歓迎)
 サニーヒルズ コンサルタント事務所    〒458-0031 名古屋市緑区旭出2−909